「ったく。デュランダルのやつ、ちょっと俺に憑かれたくらいでビビりやがってよ…情けねぇな。」
「それ、君がビビってるお姉ちゃんの前でも同じことが言えるのかい?」
「ビビってねえから…い、言ってやってもいいぞ。お、お前が言えって言ったんだかだかだか…」がくがくっ
「あはは☆全身ガタガタ震わせて分っかりやすーい★」
「影駭響震ってところかな。」
アグネスタキオン、ネオユニヴァース、シンボリルドルフ、サンデーサイレンスの4人はスティルインラブの行方を探しに学外を歩いて回っていた。
この捜索においてキーとなるのはスティルインラブへと憑依が出来るサンデーサイレンス。憑依出来るウマ娘が近くにいると感知することも出来るのだ。しかし、アグネスタキオンとネオユニヴァースにも憑依出来るため、少しやりにくいらしい。
「─!また憑けそうなのがいたぞ!」
「憑く前に…この周辺には何がある?」
「んー、目立つのはやっぱりあのケーキ屋さんかな☆学園の子たちにも大人気★カッコいいパティシエさんがいるからそれ目当てに行く子もいるらしいよ☆」
「…スティルインラブ以外に憑く可能性は十分にあるが、やってみないことには分からない。」
「ちょっと入ってみよ☆それでサンデーサイレンスさんに判断してもらおう★」
「それ、単にお前がケーキ食べたいからじゃないのか?」
「ユーニヴァース☆」
ネオユニヴァースはそのままケーキ屋の前へと走りだし、3人もそれに続く。
「扉の貼り紙に『デュランダルお断り』って書いてあるね★」
「はんっ!やっぱり情けねぇ…」
「サンデーサイレンスさん?」
「ひいっ!?タキオン!フライトの声真似はマジで止めろっ!?」ビクッ
「はっはっはっ!実に面白い反応だね。」
「…2年程経つし、そろそろ解除するように掛け合ってみるべきかな?」
何はともあれ4人は店へと入るとケーキを注文し、席へと座る。
「ねぇねぇ☆みんなは何を頼んだの?ワタシはね…モンブラン★」
「ショートケーキだよ。ここの一番人気みたいだねぇ…紅茶も抜かりない。4人分頼んであるとも。」
「私もショートケーキだ。モンブランと迷ったけど…まぁ、それは次回の楽しみと言うことで。」
「…レッドベルベットケーキ。まさか、ここで食えるとはな…」
「レッド…ベルモット?ワインの入ったケーキか…なぷっ☆」グイッ
目を輝かせサンデーサイレンスへ顔を近づけるネオユニヴァース。対してサンデーサイレンスは頭を掴んで引き離した。
「来たら1口やるからちょっと黙ってろ。…お前らを含めて憑けそうなのは7人だが…どうやらこの店にスティルはいねぇな。」
「ほほぉ…それはもう憑いたのかい?」
「いや、視認で十分だ。お前らを除くとアイツとアイツとあの3人組。」
「ふむ…全員トレセン学園の生徒はいないようだが?」
「デビューどころか入学すらしてねぇ筈だが…例えば、アイツ。G1を3勝したウマ娘の妹として3月前の雑誌に載ってたな。来年辺りに入学してくるんじゃねぇの?」
「ぜ、全然分からないよ…☆」
「お待たせしました~。ショートケーキが2つとモンブランが1つ、レッドベルベットケーキが1つと紅茶セットが4つになりま……サンちゃん!?」
「『ゴア』じゃねぇか!?」
「ユーニヴァース☆」
栗毛の店員が注文のデザートを持ってくると…顔を合わせたサンデーサイレンスと共に目を丸めた。
彼女の名は『イージーゴア』。アメリカのウマ娘であり、サンデーサイレンスとは同期で、現役時は互いに最大のライバルでもあった。また、アグネスタキオンが現役時は"Service Guardian(以下SG)"と呼ばれる組織に所属していて、ウォーエンブレムが来日時に『ペイザバトラー』と共にトレセン学園で過ごしていた栗毛のウマ娘である。栗毛なため、ウォーエンブレムには凄く懐かれていた。
「ゴアさん久しぶり☆ウォーエンは元気?」
「い、いや…分からないかな。SG辞めたし…」
「マジかよゴア!?」
「そういえば辞めたね★」
「ネオ君は知っていたんだね…」
「去年の天皇賞(春)を見に来てた☆」
「あぁ。ミラクル君が連覇してた…」
頭の中に浮かんでくる当時の光景。ネオユニヴァースが大阪杯後のケガで引退し、1番人気に『ヒシミラクル』、2番人気に『リンカーン』、3番人気に『ザッツザプレンティ』、4番人気に『ゼンノロブロイ』と4強が築かれていた。
しかし、伏兵『イングンラディーレ』の大逃げが決まり、最後のコーナーに入っても10バ身差以上の間が出来ていた。
間に合わない、後方にいたリンカーンはもちろん、中団もゼンノロブロイもそう感じたが…ヒシミラクルだけは違った。スタミナを活かした得意のロングスパートではなく、差しきるためのスピードに特化した鋭い末脚で大外から一気に迫り、イングラディーレを半バ身差しきって連覇を達成したのだ。
と、ここまでが過去の回想。
サンデーサイレンスはイージーゴアへと詰め寄り強く言う。
「何で走ることを辞めたんだよゴア!」
「ドリームトロフィーとはいえBCクラシック勝てたから満足しちゃって…」
「んだよそれ…」
イージーゴアの現状に不満な顔を向けるサンデーサイレンス。すると、男の店員が背後より声をかけてきた。
「ゴアさん、ゴアさん…コレ。フォーク忘れてる。お客様に素手でケーキを食べてもらう気?」
「え…?す、すみません!」
「次から気を付けてくれればいいから…知り合いかい?俺は戻るけど、少しくらいならお話しても大丈夫だよ。」
「い、いえ…しゅぐに戻りましゅ…」
「慌てなくていいからね。」
男の店員へ赤い顔を向けるイージーゴア。それへニヤニヤした顔を向けるネオユニヴァース。
「あの人と上手くいってる感じかな☆良かった良かった☆」
「いや、その…1年半くらいこの店にいるけど、まだまだで…」
「ほほぉ、ゴア君はあの店員に惚れたと。確かに顔はソウジに勝るとも劣らない…」
「タキオンの補正込みでその評価って相当だね☆」
「彼が例のパティシエか。学内でも彼のスイーツは評判だよ。しかし、彼の薬指に指輪がしてあったが…」
「…え?ということは…結婚してるのかい!?」
「ゴア、まさかお前アイツと結婚して…」
「ないわ。私は…彼の近くにいれれば満足だから…」
「…これ、俺の連絡先だ。その…愚痴くらいならいつでも付き合ってやるよ。」
「…ありがとう。」
「デサイレンさんって以外と優しいのかな☆」
「…私もカフェがああなってたら同じことをしただろうさ。」
「いや、君にとってはマンハッタンカフェとブリザードはイージーゴアさんと同じような状況で……寧ろブリザードみたいになるのがいいのだろうか?」
意外な再会をしつつも休憩を挟んだ4人は、スティルインラブの捜索を再開した。