今日のアグネスタキオンの朝はかなり早い。というか昨日はスティルインラブの発見により色々あって…そのまま学園へと泊まったのだった。軽く体を伸ばし…昨日着ていた服を再び着込む。
「さて…少しでも遅れを取り戻さないといけないねぇ…」
「タキオン、少しいいかな?」
眠気覚ましの紅茶を入れ、PCを起動させ、キーボードに触れようとした瞬間…来客が現れた。ジャングルポケットだ。
「ジャンポケ君…今日は随分と早いじゃないか。」
「いや、君がそれを言うのか?と言うか帰ってなさそうだね…子供はいいのか?」
「ブリザード君が見てくれている…彼女には本当に頭が上がらないよ。」
「…まぁ、家庭の事情はそれぞれだから私が突っ込むことじゃないな。LANEでだけど会長からスティルインラブが見つかったと聞いた…お疲れ様。」
「本当だよ。全く…」
アグネスタキオンはジャングルポケットにも紅茶を入れ、自身の分を口へと含む。
「これでようやく私の仕事に戻れるという訳だ。」
「…タキオンってそんなにワーカホリックだったっけ?」
「新しい『因子』が手に入ったんだ…調べるには目先の報告書を済ませないといけなくねぇ。はぁ、それはそうと早く家に帰って『ミック』を抱きしめてあげたい。」
「研究欲と母性の2つ混ざってないか?…さて、そんな君にプレゼントだ。」
「また折り紙の新作かい…って風車?しかも2つ?」
「あぁ、健やかな成長を祈って君の娘のミックちゃんとブリザードさんの息子さんのえーと…ごめん。名前が出てこない…んん!とりあえず、ミックちゃんと2人にプレゼントするよ。」
「すぐに壊れることになる。正直、君が折ったものは綺麗過ぎて…勿体無く思ってしまうよ。」
「子供が楽しんだ…それだけで私は嬉しいよ。」
アグネスタキオンはジャングルポケットの作品を机に飾る。その後、訪ねてきた姉から朝食とハグを受け取り…滅茶苦茶仕事した。
………
「ふむふむ…やはりデサイレン君の『因子』が含まれている!実に興味深い!!」カタカタ
「…おい。」
「さて、N極かS極かを調べるとしよう!まぁ、今まで集めたデサイレン君を含む『因子』はほぼN極だったからN極だろうけども…」
「おい!」
「うるさいねぇ…何かな?見ての通り、私は忙しいのだが…」
「スティルの件、シンボリルドルフに丸投げしたのでいいのか?」
───時は放課後。各ウマ娘たちがトレーニングに入る時間、アグネスタキオンはスティルインラブの『因子』について解析をしていた。
「私が受けたのはネオ君の『スティルインラブのナニかの復活』だ。会長の言っていた協力はスティル君を捕らえたことで終了。彼女の意思を変えるのは私ではどうすることも出来ない。まとめると私の出番もこれで終わりということだよ。」
「…そうかよ。」
「話はそれだけかな。ではさっさと部屋から出て…」
「今から話すのが本命だ!プイのやつ…担当を俺からソウジに変えたいとか言ってきやがった…!何とかしてくれ!」
「…変えてあげればいいじゃないか。」
「ふざけんなっ!無敗の3冠取ってまだまだこれからって時にあんまりだろっ!」
「だからより良いトレーナーを選択したくなったのだろ。実績はともかく、トレーナー期間だけをみれば君は新人トレーナーと同等だからね?」
「…」
アグネスタキオンの指摘に言葉を失くすサンデーサイレンス。しかし、ニヤリと口元を緩ませる。
「ソウジに変更したい理由だけどよ…惚れたらしいぜ?」
「は"ぁ"!?」
アグネスタキオンからドスの効いた声が漏れる。そして、サンデーサイレンスの襟元を掴んだ。
「どういうことかな?ソウジは私の夫だよ?」
「はっはっは!何でも模擬レースで『ウマ人』になったアイツに何度も何度も負ける内に惚れていったみたいだな!」
「…ブリザード君にお姉ちゃん、カフェまでいるのに…これ以上増えてたまるか!」
「はんっ!アイツなら寧ろ喜んで歓迎するだろ?どうすんだ?止めるか?」
「君の思う通りになるのは嫌だが…いいだろう。全力で止めるとしよう。」
「そうしてくれ。それで、具体的にはどうすんだ?」
「…まぁ、今夜辺りにブリザード君へ告げ口すれば大丈夫だろ。」
「結局は他人任せかよ!?」
話は終わったとアグネスタキオンは機械へと自身とスティルインラブの『因子』をセットした。
ピカーン
「…え?」
機械から光が溢れ…どす黒い『合成因子』が完成した。
「どうしたタキオン?」
「いや…これは予想外だ。まさか彼女の『因子』がS極だったとは…サンプルは僅か3つしかなかったというのに。」
「は?『合成因子』が完成したんだろ?いいことじゃねぇのか?」
「3冠バの『因子』という貴重なサンプルが減ってしまったんだ。」
「また回収すればいいだろうが。」
「それはそうなのだが…んん!では、次は…」
「ん?さっき使ってた俺を視認する望遠鏡か?」
アグネスタキオンはケースに入ったデサイレンスコープを1つ取り出した。
「これは単純だ…君の『因子』をスティル君のに変えるだけだ。」
「それでどうなるんだ?」
「スティル君の『内なるナニか』が見れるようになる…はずだ。」
「…これから試すつもりか?」
「勿論だとも…ほら!完成だ!名前は…『スティルインスコープ』って所か。赤いシールでも貼っておくとしよう。」
スティルインスコープと名付けたスコープをカバンへとしまうアグネスタキオン。取り出されたサンデーサイレンスの『因子』はそのまま机の上へと置かれた。そして、アグネスタキオンはサンデーサイレンスの方へと顔を向けた。
「さて、出来た『合成因子』の実験だ!ソウジの所へ向かうよ!」