薬漬けTS少女、今日も吐く 作:辛子明太子
なんでこんな曇らせが沢山出来そうな設定の作品の二次がハーメルンで無いんだ………?
もし、来世があるのだとしたらどんな所で生まれたいだろうか。
どんな死に方だとしても基本的には穏やかな場所で生まれたいと願うのが自然だと思う。俺もそうだ。
命を脅かされる恐怖を感じる事なく過ごせるような場所。現代日本では当たり前過ぎるこの前提の貴重さを、自分はこの世界で嫌なほど痛感した。
いきなり空が黒い霧に覆われて、ずっと親と住んでいた場所は突然現れたモンスターによって蹂躙された。親は俺を逃してモンスターの注意を引いた。俺が走り出した時に後ろから鈍い水音と絶叫が聞こえる。後ろは振り返れなかった。
外の世界は知らない場所だった。ついさっきまで青空だったのは黒い霧になり、建っていた建物はモンスターに壊されて瓦礫が山となっている。
俺は訳も分からず走り続ける。目的地もわからぬまま、ただ生存本能に従う。
誰か居ないのかと探して、会う人は皆んな血を流し倒れている。
昨日話したご近所さんや商店街のおじさんが、みんなみんな死んでいる。
死体の横をどれだけ走り続けても、俺は所詮人間だ。モンスターどもは簡単に追い付ける。背後から俺に襲いかかり至る所の肉を齧る。少しずつ、弄ぶかのように命を食べられる恐怖に絶叫して命乞いをしてもこいつらは
意に介さない。
体中血だらけの中、必死に逃げようともがいていると虫のようなモンスターたちが自分に太い針のようなものを向けてきた。地面を引っ掻いて距離を取ろうとするがそんな健気な対抗を無視して俺に針を突っ込んだ。口やお尻、使ったこともない生殖器や臍にまで。痛みに悶える暇もなく針からは何か固形物が出されて体を汚し尽くしていく。そのまま破裂するのでは無いかと感じるほど膨らんでいく体を見ることしか出来ない自分をモンスターたちは嘲笑うかのような鳴き声をあげながら俺を見る。そしてそのまま体が膨らみ続けて────
飛び起きるようにベッドから転げ落ち、口から昨日食べたものを吐き出す。
「あ、大丈夫ですか……?今ナースコールするからちょっと待って下さいね」
横のベッドで寝ていた少女、セレニエルはナースコールを押した後、俺の背中をさすり口元に袋を用意してくれた。
俺はそこに胃をひっくり返す勢いで吐き続ける。
しばらく吐いていると看護師が部屋に入ってきた。
「あぁ、彼女の『フラッシュバック』ですか。………時間もちょうど良いですし血清の投与をしちゃいましょう」
血清という言葉を聞いてビクリとセレニエルは体を震わせる。
血清、それは俺達が治療の為に受けている治療薬。この世界でカオスに体を汚染され、長く生きられない人々を救うものだ。けれど、研究途中であるその血清には大きな副作用がある。俺の腕に体を寄せて必死に恐怖を抑え込もうとしてるセレニエルは副作用で幻覚や幻聴にいつも苦しんでいる。俺の副作用は特に辛いものではないのでセレニエルが苦しんでいる時は出来るだけ安心させるようにしている。
だからこのフラッシュバックは薬のせいでは無い。ただの、トラウマに過ぎない。
俺とセレニエルの腕に点滴が繋がれる。その中身は青緑で、とても人に投与して良いものとは思えない。けれど、俺達が将来を生きる為に必要なものだ。
「はぁっ……はっ…はっ……あぁ、モンスターが、私を……苦しい……」
先に薬が効いてきたのはセレニエル、さっき吐いたばっかりであまり体調がよく無いが、せめてもの思いで手を繋いであげる。セレニエルが幻覚と幻覚の中で孤独にならないように、力強く。
少しセレニエルの苦しそうな呼吸が落ち着いた頃、俺にも薬の症状が現れ始めた。
ふわりと体が浮くような感覚。ぷかぷかと水の上を揺蕩っているかのような錯覚に陥る。体中から力が抜けていき、残る感覚は浮遊感のみ。
景色もいつの間にか病室から自宅に変わっていて、お母さんが夕飯を作っていた。今日のご飯は多分バターソテーだ。
お父さんと一緒に夕飯までテレビを見る。ちょうどいつも見てるドラマが始まる時間帯だったようだ。お父さんとドラマを見ていれば夕飯の美味しそうな匂いが強くなってお腹が空いてくる。
ドラマを見終えるとお母さんが食器を並べていたので手伝う。
食卓には鶏肉のバターソテーとコーンスープ、そしてサラダが並ぶ。家族みんなであいさつを、してご飯をたべようと────
景色が歪んだ
自分がいたのはよく知る病室。腕を見ると点滴はもう抜かれており、時計を見るともうすぐ夕飯の時間になろうとしていた。
「あ、気付きましたか?」
隣には同じく血清を打ち終えたセレニエルがベッドに座っており、俺の手を優しく握っている。
………そう、そうだ。あんなのは夢に過ぎない。お父さんもお母さんも、あの日、全てがカオスに呑まれた日。全部終わったんだ。
自分に残されてるものはもう、無い。
しばらくして夕飯が運ばれてきた。とても質素で量も少ない、味も薄い。
お腹が空いた体は美味しく感じてしまう。空腹こそ最高の調味料とは良く言ったものだ。
夕飯を食べ終わるとすぐ消灯の時間がやってくる。
看護師が食べ終わった夕飯を回収し、部屋を出ていく。
そしてセレニエルが俺達以外この部屋の近くに居ないことを確認するとおずおずと枕を持ってこちらのベッドへ近付いてきた。
「………すみません。今日も、いいですか?」
ふと夜中目が覚めて、隣から苦しそうなうめき声が聞こえた時。自分と比べて副作用と遥かに辛そうなセレニエルが睡眠もうなされているとなると可哀想だと感じ、セレニエルのベッドに入り頭を撫でながらあやしてあげると寝息が落ち着いたのがきっかけだった。落ち着いたらベッドから出ようと思っていたのだがつい寝落ちしてしまい、朝セレニエルを驚かせる羽目になった。事情を説明するとセレニエルはその日の夜から一緒に寝ることをお願いしてくるようになった。
セレニエルは俺よりも一回り小さい、こんな子が不安そうに添い寝をお願いしてくるのを誰が拒否出来るだろうか。
枕を並べるとちょうど電気が消える。ゆっくり布団に入ってくるセレニエルを胸元で抱きしめ、優しく頭を撫でる。そうするとすぐに静かな寝息をたて始めた。
きっと治る。そう信じて、俺達は日々を過ごし続ける。
カオゼロを知らない人の為のざっくりキャラ解説
セレニエル
生まれた時から親の遺伝で体が汚染されており、それを治すために血清を投与されている。今は主人公よりも一回り小さいぐらいだが成長すると推定身長185〜190cmで尻も胸も凄いおっとり系美少女になる。気になる人は『カオゼロ セレニエル』で検索してみよう!メインヒロインの予定
主人公
オリ主。前世は普通に生活習慣病になり心筋梗塞で死んだ。なんか来世があったのだが女の子ということで色々苦労、ようやく慣れてきたという所にカオス襲来、故郷の町はカオスとモンスターにぐちゃぐちゃにされて親も周りの人も殺された。体中を食べられて卵を産み付けられていた所を救助に来た人達に救出される。
カオスに居た影響と卵を産み付けられたせいで体が重度の汚染状態となりセレニエルがいる汚染の除去を研究しているところに入れられる。汚染されたカオスが違うのでセレニエルとは投与されている血清も違う。