問題児? いいえ、神殺しです。   作:怜哉

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第3話 『サタン・コンプレックス。略してサタコン』

 

 

 

「な、なんであの短時間で《フォレス・ガロ》のリーダーと接触して喧嘩を売る状況になったのですか!?」「しかもゲームの日取りは明日!?」「それも敵のテリトリーで戦うなんて!」「準備の時間もお金もありません!」「聞いてるのですか三人とも!」

 

「「「ムシャクシャしてやった。今は反省してます」」」

 

「黙らっしゃい!!!」

 

 

スパパパーンッ! と軽快な音が、夕方の広場に響く。

昼間のレストランでの出来事を聞いた黒ウサギが、耳を逆立てて問題児達に雷(ハリセン)を落とした音だ。

 

「ヒャッハハハ! まぁそう怒るな黒ウサギ。禿げるぞ?」

「一体誰のせいだと......!」

 

まるで他人事のように言ってくるローリーに再度怒りが湧いてくるが、これ以上言っても無駄なことも分かる。

はぁ、と一つため息を吐き、佇まいを直した。

 

「まぁ、《フォレス・ガロ》を許せないというお気持ちは分かります。それに、《フォレス・ガロ》程度であれば十六夜さんがいれば楽勝でしょう」

「は? 俺は参加しねぇぞ。これはお嬢様達が売った喧嘩だろ」

「え?」

「あら、分かってるじゃない」

「え!?」

 

十六夜がいるから大丈夫。そんな考えがあっさり砕かれ狼狽する黒ウサギに、ローリーが追撃を打ち込む。

 

「いやつーか、そもそもこれは俺がガルドに叩き付けたゲームだろ? なんで久遠達も参加することになってんだ。《フォレス・ガロ》もその後ろの奴らも、俺一人でやるに決まってんだろ」

「仲良くしてくださいこの問題児様方ッ!!!」

 

スパパパーンッ! と再び小粋の良い音が響く。

音の割には全く痛そうな素振りを見せないローリーに、不満を隠そうともしない飛鳥が食ってかかる。

 

「あの場には私も、春日部さんもいたわ。私達にも参加する権利があるんじゃなくて?」

「えー...」

「えー、じゃありません! 協力してください! きょ・う・りょ・く!」

「いや協力も何も......はぁ。仕方ない。いいぜ、お前ら二人と、ついでにジンも参加して」

「当たり前よ。あの悪党に一発お見舞いしてやらないと気が済まないんだから」

「もうホント、仲良くしてください......」

 

先が思いやられる、と項垂れる黒ウサギをジンが慰めるように声をかけた。

 

 

 

 

✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

 

 

時は少し過ぎ、もう太陽が半分以上も地平線へ沈んだ、夜とも夕方ともつかない時間帯。

 

「まっ」

 

「待ったナシですお客様。うちは時間外営業はしていません」

 

ジンと一度別れ、ローリー達をとある場所へ案内すると言い出した黒ウサギに付いて歩くこと十数分。

蒼い生地に向かい合う女神の絵が描かれた旗を掲げる商店────《サウザンドアイズ》支店の店前で箒を手にしていた割烹着姿の女性店員は、伸ばされた黒ウサギの手をにべなく払って店の札を『本日閉店』にひっくり返した。

 

「閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」

「文句があるなら他所へどうぞ。ついでに今後貴方達の出入りを禁止します。出禁です」

「このぐらいで出禁とか御客様を舐めすぎなのですよ!」

 

いっそ仲が良いのでは?

やけにテンポの良いやり取りにそんな感想を浮かべながら、涙目の黒ウサギを横目にローリーは商店を見上げる。

ここ《サウザンドアイズ》は箱庭の東西南北・上層下層全てに精通する巨大商業コミュニティで、ギフトの鑑定などもしていると黒ウサギから聞かされ、少し興味を持ったらしい。

 

「ギフトの鑑定とやらにゃあ興味がなかったが、確かにこりゃ立派な店だ。おもしれー奴もいるみたいだし?」

 

ニタリと口を歪ませるローリーを、飛鳥と耀は横目で見る。

昼間のような狂気は感じられない、ただただワクワクしているだけの様子に安堵する。

 

「(...アレは、一体なんだったのかしら)」

 

生まれてこの方、一度たりとも感じたことのない「恐怖」。飛鳥は戦闘の経験こそ無いものの、“怪物”と呼ばれる政界の重鎮や大商人達にも数多く会ってきた。

その誰もが特有の気配を放ち、常人を屈させる威圧感を持っていたものだが、それらとは明らかに“質”が違う。

もっと、生物としての根幹を脅かすような、圧倒的な恐怖。自分に向けられたものでもないのに、ただそこに在るだけでこちらまで引きずり込まれてしまいそうになる狂気。

目の前にいる青年が、ただの青年でないことは初めから分かっていた。自分と並ぶ素質を持っている存在だ、と。

 

とんでもない。彼は、自分では推し量れない領域にいる。

自分のギフト鑑定なんぞに興味は無かったが、彼のギフトは心底気になった。だからこそ、飛鳥はこうして黙って付いてきたのだが────

 

「いいでしょう。確かに『箱庭の貴族』と呼ばれる兎を無碍にするのは失礼でしたね。店内で入店許可を行いますので、コミュニティの名を伺ってよろしいでしょうか?」

「うぐぅ......」

 

どうやら、タイミングが悪かったらしい。

 

「(今日は無理かしらね)」

 

店員の言葉は、正しいとは言えないが一理ある。

閉店間際にゾロゾロと来店されるのはあまり喜ばしいことではないし、それが《ノーネーム》であるのなら尚更だ。

 

「《ノーネーム》だ」

 

一向に名乗らない黒ウサギに代わり、十六夜が堂々と名乗りを上げる。

 

どこの(・ ・ ・)、《ノーネーム》でしょうか」

 

「(...まぁ、そうでしょうね)」

 

箱庭に来てまだ一日も経っていないが、《ノーネーム》がどれだけ信用の無い組織なのかは飛鳥も十分理解できていた。

商売とは信用で成り立っている。財閥令嬢として生を受け、様々な商談を見てきた飛鳥はそれをよく理解していた。

 

名も無い。旗も無い。自分達を証明するものを何ひとつ持たない相手に商売など出来るはずがない。それが多くの信用と信頼を集める大手の商業コミュニティであるなら尚更のこと。

 

今回ばかりは分が悪い。ごねることもできるだろうが、今日のところは諦めて後日改めて来店しよう。

そう黒ウサギに提案しようとし、

 

「いやあああああほおおおおおおお!! 黒ウサギィィィィ!!」

 

着物風の服を着た真っ白い髪の少女が店の扉を蹴り破って飛び出してきた。

そのまま黒ウサギの腰辺りに抱きついて勢いのまま黒ウサギ諸共街道を転げ、最終的に向こう側の浅い水路に落ちて行く。

 

「......おい店員。なんだありゃ、ドッキリサービスか? 俺も別バージョンで是非」

「ありません」

「なんなら有料でも」

「やりません」

 

真剣に問い渇望する十六夜と、真剣に否定し拒否する店員。

そこにローリーが参戦する。

 

「そこをなんとか」

「なりません」

「別バージョンとは言わないあの白いのでいいからいやむしろあの白いのが良いッ!」

「...............」

 

真剣に懇願するローリーと、真剣に侮蔑を向ける店員。

飛鳥は思う。こんな男の何をそんなに気にかけていたのだろう、と。

 

「ローリーくんはあんな小さな子がいいの?」

「......“ローリー”は“ロリ”コンの意味だった?」

「酷い言われようだ」

 

まさかの集中砲火に懇願を辞め、二人へ振り返るローリーはどこにでもいる普通の青年の顔をしていた。

 

「ちょ、ちょっと白夜叉様! いい加減離れてください!」

 

水路に落ちた黒ウサギの声がする。

と同時、少女が綺麗な弧を描いて十六夜の元へと飛んでいき、

 

「ふげぇっ!」

 

足で受け止められ、潰れたカエルのような声を上げた。

 

「お、おんし......飛んできた初対面の美少女を足で受け止めるとは何様だ!」

「十六夜様だぜ。以後よろしく、和装ロリ」

 

骨の一つや二つ折れてもおかしくなかったにも関わらず無傷でいる少女を、ローリーはまじまじと見つめていた。それだけに収まらず、ニヤニヤと笑みを浮かべる始末。

 

「変質者」

「......不潔」

「やめてねー」

 

女性陣の冷たい視線を受け流し、尚も少女から目を逸らさないローリーに呆れ、飛鳥は眉間にシワを寄せながら口を開く。

 

「貴女はこの店の人?」

「ん? おお、そうだとも。この《サウザンドアイズ》の幹部様で白夜叉様だよ、ご令嬢」

 

白夜叉と名乗った少女がちんまりとした胸を張り、見た目と違いまるで老獪な口調で答える。

 

「仕事の依頼なら、おんしの発育の良い胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」

「引き受けません」

「だってよ久遠。ちょっと一肌脱いで、」

「黙りなさい、この変態」

「冗談じゃねーか。怒んなよ、老けるぞ?」

 

呆れやら怒りやら、飛鳥の眉間のシワがさらに深くなる。

 

「カッカ! まあ、立ち話もなんだ。上がるがいい。なに、店は閉めるが、私の部屋なら問題あるまい。のぅ?」

 

 

 

 

✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

 

 

「さて。では改めて自己紹介をしようかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えておる《サウザンドアイズ》幹部、白夜叉だ」

 

店の奥、白夜叉の自室だという和風の部屋に通されたローリー達は、白夜叉を上座にして座っていた。

礼儀正しく正座する女性陣と、胡座で構える男性陣。これだけで、彼らの性格が垣間見える。

 

「はい。さっきガルドも言ってたけど、外門って?」

「ガルド? なんだおんしら、あ奴と会っているのか?」

 

耀の質問へ答える前に、白夜叉はそちらを気にかける。

 

「まぁな。ちょっとゲームをすることになった」

「ほほぅ。これまた随分と手の早い。どのような経緯だ?」

「その話はもういいのです! えぇ、えぇ、もう決まったことなので良いのです諦めたのでございますよ!」

 

思い出したくないことが話題に上がったことでまた頭痛がしてきた黒ウサギは、強引に修正に入る。

 

「それより外門の説明でございましょう? 外門とは、箱庭の階層を示す外壁にある門のことです。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強力な力を持つ者達が住んでいるのです。因みに私達のコミュニティは一番外側の七桁の外門ですね」

「へぇ。白夜叉が四桁っつってたな。それじゃあ三桁ってのはもっと強いのか」

「三桁は全能領域と呼ばれる、強力も強力、強大な修羅神仏が跋扈する場所だよ。今の私より強いであろうな。まぁ、そこまでいくと単純な強い弱いの次元では無くなるがの」

「ふーん?」

 

軽薄そうな顔で、白夜叉を値踏みするように見つめる。

 

「七桁が一番外、ということは、言い換えれば一番弱いということなのかしら」

「ん? まぁそうなるな。不満か、ご令嬢?」

「いえ、その点は特に。ただ、一番弱い地域を治めているからって自慢してくるようなガルドの厚顔無恥で下衆で浅い部分が見えただけよ」

 

吐き捨てるように言う飛鳥に、白夜叉は呵々と笑ってみせる。

 

「面白い童共だ。その豪胆さや良し。黒ウサギの持っている水樹を見るに、《世界の果て》の白蛇を降したのか。言うだけの実力もあると見える」

「白蛇とやらを倒してその水樹を貰ったのは十六夜くんよ。私達は何もしていない。勘違いしないで」

 

少し怒ったように言葉尻を強くして言い放つ。

同じコミュニティの同志が獲得したというのに、まるで競い合う相手への態度だ。

これは面白い、と綻ぶ口元を白夜叉は扇子で隠す。

 

「ほう? 私を足蹴にした小僧か。して、どのような勝負を? 知恵比べか、試練を乗り越えたか」

「ぶん殴った」

「.........は?」

 

短く返ってきた十六夜の言葉に、間を開けて返答でもない声をもらす。

チラりと黒ウサギを見れば、なんとも嬉しそうにコクコクと首を縦に振っている。

 

「......ほう、ほほぅ! 人間が神格持ちを力で降したか! いやはや、面白い。実に面白い! それは彼奴もさぞ悔しがっておるだろうの」

「なんだお前、あの蛇の知り合いか?」

「ふふん。何を隠そう、奴に神格を与えたのはこの私よ」

「へぇ?」

 

平たい胸を張る白夜叉に、十六夜は獰猛さ溢れる顔を向ける。

 

「つーことはお前、あの蛇より強いのか?」

「もちろんだとも。私は東側の“階層支配者(フロアマスター)”だぞ? この東側では並ぶ者のいない、最強の主催者(ホスト)だ」

 

それを聞いた十六夜、飛鳥、燿の動きは早かった。

息を揃えたように同時に立ち上がり、好戦的な目で白夜叉を見下ろす。

 

「最強? へぇ、そりゃあ景気がいい」

「つまり、ここで貴女を倒せば最強の座は私たちのもの、ということよね?」

「.....現状からの一発逆転。これを逃す手はない」

「ちょ、御三人様?!」

 

白夜叉へとにじり寄る問題児三人組と、それを必死に止めようとする黒ウサギ。

ローリーだけが呑気にお茶を啜っている。

 

「......おんしは来ないのか?」

 

愉快そうに三人を見回した後、白夜叉は一人動かないローリーに問いかける。

ん、と湯呑みを置いたローリーは、ゆっくりと口を開いた。

 

「────ヒャハッ。()るに決まってンだろ。最強が相手だぞ? 負かして泣かして、叩き潰すさ」

「そのわりには出遅れているようだが?」

 

そう言っている間にも襲いかかってきそうな程にギラギラと目を光らせる三人を横目に、白夜叉はクツクツと笑う。

 

「別に、急ぐこともないと思ってな。最強なんだろ? だったら後でも先でも変わらねぇ。それに、俺とやる前にこいつらに負けるんならその程度ってこった」

「言ってくれるじゃねぇかローリー。そりゃ俺たちへの宣戦布告か?」

「いや? まぁ、そうだな。逆廻とやってみるのも面白そうだ」

「仲良くしてくださいッッ!!!」

 

黒ウサギの悲痛な叫びが、ローリーと十六夜の交差する視線を裂く。

 

「カカカッ! いやいや、若い若い。本当に面白い小僧共だ! だが、少々傲慢が過ぎるな」

 

笑う白夜叉は、懐から一枚のカードを取り出した。《サウザンドアイズ》の紋章が描かれたそのカードは、淡い光を放つ。

 

 

 

瞬間、世界は流転した。

 

 

黄金色の稲穂が垂れ下がる草原、白い地平線を覗く丘、森の湖畔。様々な風景が流星群の様に過ぎ去っていく。

気付けばローリー達は、水平に太陽が廻る、白い雪原と凍った湖畔がある世界にいた。

 

「.........なっ............!?」

 

一瞬で過ぎ去った、あまりにも超次元的な異常。

この箱庭に来てから一度たりとも余裕の顔を崩さなかった十六夜が、初めて驚愕に染まる。

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は”白き夜の魔王”───太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への”挑戦”か? それとも対等な”決闘”か?」

 

世界の流転とは関係の無い空気の変化を、飛鳥と燿は感じ取る。

十六夜と黒ウサギは気付かない、冷たく澱んだ空気。世界が廻るなどという超常現象が起きたのだから空気が変わるのも当たり前、ということはない。

身に降りかかるこの圧力を、二人は知っている。

反射で、二人は同時にローリーのいる方向を向いた。

 

「「ッ、」」

 

そして二人仲良く息を飲む。

世界の流転に加え、コレ(・ ・)だ。二人の許容できる気の動転など、とうに超えていた。

 

「.........ハッ! 参った、降参だ。今回は大人しく、」

「決闘だ」

 

箱庭にきて最初の驚き、最大の興奮。

十六夜がその二つを押し殺して「挑戦してやる」とどこまでも上からな譲歩をしようとするが、それに被せたようにローリーが放った。

 

「...今、なんと?」

 

白夜叉の顔に先程までの楽しそうな笑みは無く、細めた目で射抜くようにローリーを見る。

常人であれば身が竦み戦意を削がれるであろう眼光を、ローリーは正面から受け止めた。

その上で、嗤う。

 

「決闘だ。お前は俺が殺す」

 

ユラりと、ローリーの身体が不自然に揺れた。

まるで何かに取り憑かれたかのように、ゆらりんゆらり、熱に浮かされたような足取りで白夜叉に向かって歩を進める。

ローリーの変貌に、十六夜と黒ウサギは理解が遅れた。その場で固まり、ただただローリーを見つめることしかできない。

誰もが言葉を失っている中、白夜叉だけは冷静に、そして呆れたように口を開く。

 

「......全く、力の差も分からんか。そこまでいくと傲慢でも、ましてや勇敢でも無いな。阿呆、愚者。その類だ」

「力の差ぁ? ああ、そうだなぁ。お前はきっと俺より強いよなぁ。────だから?」

「......だから、とは?」

 

狂気に歪んだローリーは止まらない。

老人のように覚束無い足取りではあるものの、一歩、また一歩と着実に白夜叉との距離を詰めている。

 

「お前が強いから、俺が諦めるって? ヒャハっ、冗談だろ。強いだ弱いだなんてもんは関係ねンだよ」

 

瞬間、狂気の中に明確な怒気が浮かび上がった。

それに気付くことができたのは白夜叉だけ。

何故唐突に怒りを向けられているのか。そこのところは分からないが、目の前の男が止まりそうにないことは分かる。

仕方がない、と扇子を構えた。

それに反応したのか何なのか。より一層の感情の昂りをみせるローリーが、限界まで見開きぐちゃぐちゃに歪んだ目を、白夜叉に、《魔王》に向ける。

 

「魔王、魔王、魔王ッ!! 俺の目の前に魔王がいやがるッ! だったらどうする? 殺すよなぁ? 魔王だもんなァ!!? ヒャッハハハハハハ!!!」

 

咆哮と共に、自然のモノとは思えない強風がローリーを中心に吹き荒れた。

白い地面には亀裂が入り、冷たい大気が怯えるように震える。

 

「...なんなのだ、こやつは」

 

本当に悪霊にでも取り憑かれているのかと少し心配になるほどの豹変具合。《魔王》に対する異常な執念。

先程までの少しチャラけた雰囲気など欠片も無く、明らかに正気ではない。

どうしたものかと考える白夜叉へ、ローリーはグチャグチャに歪み切った視線を飛ばす。もういつローリーが飛び出しても不思議ではない。

 

十六夜も、飛鳥も、燿も。共に異世界へ飛んできた青年の狂乱を前にして、一歩も動けなかった。思考と傍観、混乱と恐怖、野生の勘。理由はそれぞれだったが、「動けない」という結果だけは同一だ。

そんな中でただ一人、黒ウサギだけが硬直を打ち破った。

 

「──......おっ 落ち着いてください、お二人とも! ヒッ」

 

一触即発、どころか一方はすでに爆発している状況で待ったをかけた黒ウサギに、ローリーの澱んだ目がギロリと向けられる。思わず声が漏れた黒ウサギを誰が責められるだろう。

だがしかし、さすがは《箱庭の貴族》といったところか。身が竦んだのも一瞬で、すぐにローリーに向き合った。

 

「落ち着いてください! いいですか、ローリーさん! 白夜叉様は魔王(・ ・)では(・ ・)あり(・ ・)ませ(・ ・)ん!(・ ・)

 

「...............。...んぁ?」

 

少しだけ間の抜けた声と共に、張り詰めていた空気が弛緩した。

 

 

 

 

 

✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

 

 

「いやぁ、悪かったなぁ白夜叉」

 

そう、ローリーが何も悪いなどとは思っていなさそうに謝罪の言葉を口にした。

どす黒い空気を出していた先程までとはまるで別人で、今はどこかフワフワとした、軽々しい雰囲気を醸し出している。

 

「お前、二重人格か何かか?」

 

先程と今。正反対といっても過言ではない変わりように、やはり同一人物とは思えず十六夜が問う。

ヘラヘラと白夜叉にその気もない謝罪をしていたローリーが「んー?」と十六夜に向かった。

 

「そんなんじゃねーよ。どっちも“俺”だ。《魔王》を前にしたらちょっとだけ自制が効かなくなるだけさ」

「ちょっと、ねぇ?」

 

アレで少しなら自制を完全に無くしたらどうなるのか。そう思うが、口にはしない。意味が無いからだ。

 

「昼間も《魔王》に反応してああ(・ ・)なっていたのね」

「ああ。実は俺は《魔王》アレルギーの呪いにかかっていてだな」

「冗談が言えるだけの正気に戻っていてなによりよ」

 

ヒャハハと笑ったローリーは「それで」と自分が原因で逸れた話題を元に戻す。

 

「“挑戦”か“決闘”かを選べ、だったっけか。お前らはどうすんの?」

「癪だが、試されてやることにした」

「私もよ。白夜叉に試されてあげる」

「右に同じ」

「ヒャハハッ! なんだお前ら」

 

どうしようもなく上からな、負けず嫌いが目に見えるセリフにローリーは軽く笑う。

それは白夜叉も同様で、クツクツと笑っていた。

 

「く、くく......よかろう。して、おんしは? おんしも私に“試させてくれる”のかの?」

 

楽しそうに問う白夜叉に、ローリーもニッコリと満面の笑顔を浮かべる。

それを見て、黒ウサギは心から安堵した。

なんとか丸く収まりそうだと、黒ウサギはホッと胸を撫で下ろし、

 

「冗談。さっきも言ったろ? 俺は“決闘”だ」

 

再び硬直する。

 

「...ほう?」

 

笑顔をしまい、かといって「面白い」という感情は消さずに。白夜叉はローリーをしっかりと見る。

 

「ちょ、ちょっとお待ちください! 言いましたよね? 私、さっき言いましたよね? 白夜叉様は魔王では────」

()、魔王だろ? 聞いてたよ」

 

ヘラヘラとした態度を崩さないまま、ローリーは白夜叉が向けてくる視線に正面から真っ直ぐ返す。

 

「是が非でも殺す、とはもう言わないけどな。一度『決闘をする』っつったんだ。理由もなく取り下げたんじゃあ、カッコがつかないだろ?」

「なっ......格好がつくつかないの話では───」

 

それに、と黒ウサギの言葉を遮り、ローリーは獰猛に笑う。

 

「せっかく異世界くんだりまで来たんだ。強ぇ奴とは戦ってみてぇじゃねぇか」

 

その言葉には、第三者に否応言わせないプレッシャーがあった。

先程までのドス黒いモノではなく、純粋なモノ。

それ故に黒ウサギは恐怖する。ただただ真っ直ぐに、好奇心と欲望に駆られて“最強”に挑もうとしている人間に、言いようのない恐れを抱いた。

 

「良い。下がれ黒ウサギ」

 

ローリーの闘気を正面から受けて、白夜叉はまた笑い出す。

面白さを堪えた笑いではない。ローリー同様、欲望に駆られた笑いだ。

 

「あい分かった。おんしの覚悟は受け取ろう。先の力、少し興味もあるしの。遊び相手には私も飢えていたところだ」

「で でもですね白夜叉様、ローリーさんはまだ箱庭に来たばかりで」

「関係なかろう。なに、調子に乗った馬鹿を諌めてやるのも階層支配者としての仕事だよ」

「言ってくれるぜ。ゼッテー泣かす」

 

ヘラヘラとした顔から一変、愉しそうに白夜叉を睨み付けるローリー。

白夜叉もまた、面白いとニヤつく口元を扇子で隠しながら睨み返す。

そんな散る火花を終わらせたのは、意外にもローリーだった。

 

「まっ、“決闘”は後でもいいだろ。まずは試練から初めてくれ」

 

一歩身を引き、どーぞどーぞと十六夜たちを見る。

自分たちとは違い“決闘”を選んだ男のその態度に、三人は少しばかり腹を立てた。

が、それを言葉にすることはない。自分は降りた、ローリーは乗った。文句があるなら最初から降りるな、という話である。

 

「ふむ、そうだな。では三人の“挑戦”から始めるとして、その内容だが、」

「......今、知らない声が聞こえた」

 

白夜叉も一時闘気を引っ込めて試練の内容をどうするか考える。その途中で、耀がふと、遠くにある山脈の方を向いて呟いた。

 

「おぉ、彼奴か。ちょうど良い。おんしらを試すにはうってつけかもしれんの」

 

湖畔を挟んだ向こう岸にある山脈に、チョイチョイと手招きをする白夜叉。一体何なのかと、全員がそちらを見る。

 

「おー? ヒャハッ、いいねぇ。ありゃグリフォンか? そうだな」

「グリフォン!?」

 

箱庭にきてから初めて聞く耀の大きな声に、皆若干驚いた。

 

「ど どこにいるの」

 

興奮しているのか、ソワソワと山脈へと目を向ける耀だったが、彼女の目に映るのは凍った湖畔と悠然と佇む山々だけ。グリフォンの姿などどこにも見当たらない。

 

「ちと遠いからな。でも結構な速さでこっちに向かってる。もうすぐ見えるんじゃないか?」

「......ん.........」

 

ジッ、と目を細めて遠視に注力する耀と同じように、十六夜も山脈の方を眺める。

 

「......ゴマみてぇなのが見えてきたな。お前、アレがハッキリ見えるのか。俺は視力にも自信があるんだが、お前どんな目してんだ?」

「視力を測ったことはないけど、まぁ二十キロ先にいるルーくらいなら見えるぞ」

「ルー?」

「カンガルーだ。視力に頼らなけりゃ最大百キロ先くらいは視れる」

「あ? どういうことだよ」

「ひ・み・つ♡」

「殴るぞお前」

 

わざとらしく拳を握ってみせる十六夜に、ローリーは笑って返す。

 

「ヒャッハハハ! 冗談だよ。ま、俺もお前と同じで色々“力”ってやつを持ってんのさ」

「力、“恩恵”か。そういやお前、古代語も扱えるとか言ってたな。さっきイカれてた時も妙な風を出してたみたいだし」

 

“恩恵”と聞いて、ローリーは少し考え込む。

三秒ほど「そうなのか? 違うかも」と自問自答しながら小首を傾げたあと、改めて十六夜に返した。

 

「そうだなぁ。言語が分かる、ってのは多分“恩恵”だけど、遠視や風とかは違うと思うぜ? ありゃただの技術だ」

「技術で百キロ先が見えてたまるかよ。なんだ、目に望遠鏡が入ってます、とでも言う気か?」

「そういうのとはまた別の術ってことさ。それより、ほれ。グリフォンのお出ましだ」

 

十六夜から目を外し、上を見る。

納得のいっていない様子の十六夜だったが、つられて上を見上げると、そこには巨体があった。

鷲の上半身に、獅子の下半身。全長五メートルはあるかという大きな翼を広げたその巨体の獣は、まさしく伝説に記される《グリフォン》そのもの。

 

「初めて見た......本当にいるなんて」

 

耀の感嘆が漏れる。グリフォンに驚き逃げようとする三毛猫をギュッと抱き、キラキラとした目をグリフォンを向けている。

異世界組の全員が驚き、感心しているようだが、耀の感動が一番大きいであろうことは皆想像できた。

 

「鳥の王にして獣の王。"力""知恵""勇気"の全てを備えたギフトゲームを代表する獣だ」

 

言いながら白夜叉がパンパンっ、と二度手を打つと、一枚の羊皮紙が現れた。

 

 

 

『ギフトゲーム名"鷲獅子の手綱"

 

プレイヤー一覧:逆廻十六夜、久遠飛鳥、春日部耀

 

・クリア条件 グリフォンの背に乗り、湖畔を舞う。

・クリア方法 “力”“知恵”“勇気”いずれかでグリフォンに認められる。 

・敗北条件 降参、またはプレイヤーが上記の勝利条件を満たせなかった場合

 

宣誓。上記を尊重し、誇りと御旗と主催者ホストの名の下、ギフトゲームを開催します。

“サウザンドアイズ”印』

 

 

十六夜の手に渡った羊皮紙を、皆で覗き込む。

さて誰が挑むかと話し合いが行われる前に、燿が真っ直ぐ手を挙げた。

 

「はい。私がやる」

 

反論など認めないとばかりに、宣言と共にグリフォンへ歩み寄る。少しばかり不満そうにした十六夜だったが、大人しく燿の背を見ていた。

グリフォンの目の前に立った燿は、深呼吸をしてからグリフォンに目を合わせる。

 

「はじめまして、春日部燿です」

 

ピクッ、とグリフォンの肢体が軽く跳ねた。

猛禽の瞳に僅かな戸惑いの色が浮かぶ。

 

「...へぇ。春日部は動物と言葉を交わすのか」

「まぁ三毛猫とも喋ってたし、なんならペンギンとも話せるらしいぞ? なら幻獣くらい余裕だわな」

「ハハッ、メルヘンだ」

 

燿の“恩恵”を初めて見た十六夜が感心したように呟く。

その間も一言二言グリフォンと会話を交わす燿に、飛鳥は若干不安の篭った目を向けていた。

 

「...大丈夫かしら、春日部さん」

「どうだろうな。春日部もおもしれぇ力を持ってるっぽいが、あのグリフォン、中々気位が高いぞ? 『小娘一人に負けるようじゃ私の名誉も失墜する』だってよ。春日部を本気で負かす気満々だ」

「...何?」

 

なんでもないように放たれたローリーの言葉に、十六夜だけでなく飛鳥や黒ウサギ、白夜叉にグリフォン、そして燿までも一斉に目を向ける。

 

「お? なんだよそんなに見やがって。俺に見蕩れたか? 仕方ねぇなぁ。ちょっと待ってろ、今至高の玉体を見せてやるから目をよォくかっぽじって、」

「なッ、ぬ 脱がないでこの変態ッ!!」

「ぐえっ」

 

おもむろに上着を脱ぎ始めたローリーの頬に、飛鳥の右ストレートが綺麗にキまる。

その後ろでは黒ウサギがハリセンを構えていたが、先に殴られてしまい行き場の失ったハリセンが虚しく揺れていた。

 

「へ、へへ...やるじゃねぇか久遠、黒ウサギよりも速い反応、鋭いパンチ。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね...」

「見逃したから食らったんじゃねぇのか」

 

十六夜のツッコミはスルーして、ローリーは渋々と上着を着直す。「ったく、俺の玉体披露を邪魔するなんて...」などとブツブツ言っていたが、今度は無言のハリセンがローリーの頭部を襲った。

 

「お前らさぁ、人の頭をポコポコポコポコ殴りやがって。バカになったらどうしてくれる」

「もうすでにバカでしょう貴方は」

 

叩かれた箇所をさするローリーに向けられる飛鳥の目はとても冷たい。

 

「つーか、そんな話はどうでもよくてだな」

「あ゙ぁ゙!? 俺の裸がどうでもいいって!?」

「じゃあ一旦置いておくとしてだな」

「まぁ...それなら......」

「本当に何なの貴方?」

 

頭を抱えたくなる衝動に駆られる飛鳥と、本当に頭を抱えている黒ウサギを一旦無視し、十六夜は話を続けようとする。

が、それに割り込んだのは燿だった。

 

「ローリー、グリフォンの言葉が分かるの!?」

「ん? ああ、分かるぞ」

「ホントに!? それじゃあ、三毛猫の言葉は!?」

「そっちは分からん」

「......そっか」

「.........え、ごめん」

 

興奮が一気に冷めたのか、輝いていた目がスッと元に戻る。思わず謝ったローリーに、今度こそ十六夜が質問した。

 

「グリフォンの言葉だけが分かるのか?」

「そうだなぁ。神獣の言葉は分かる。幻獣もまぁ似たようなもんだし、実際グリフォンのは分かったしな。うん、多分ほぼほぼ全部の幻獣の言葉が分かると思うぞ?」

「神獣?」

「ほら、ナーガとかそういう。神話に出てくるような獣だよ」

「んなこた知ってんだよ。そこじゃない。お前、神獣と会ったことがあるのか?」

「ひ・み・......OK、分かった。冗談だよ。その手を降ろせ逆廻」

 

まぁこのまま逆廻と戦ってみてもいいんだが、とは言葉に出さず、ローリーは一つ息を吐く。

 

「ま、後でまとめて教えてやるよ。それより今は試練だろ?」

 

そう言い、燿とグリフォンに目を向ける。

まだ言いたいことがある様子の十六夜も、一旦はそれで納得することにしたのか、振り上げた拳を降ろした。

 

「...うん。よろしくお願いします」

 

グリフォンに敬意を示して頭を下げてから、耀は緊張した面持ちでグリフォンに跨る。これから始まる試練に対する恐怖ではなく、初めて見たグリフォンへの好奇心に拠る緊張だろう。

 

「春日部ー、頑張れー」

 

軽い調子で応援してくるローリーに一瞥もくれず、グリフォンはスタート位置で構えた。主の合図を待ち、静かに、それでいて雄々しく立つ。

 

「ふむ。準備はいいな? それではスタート」

 

流れるように、白夜叉から試練の開始が告げられる。と同時、グリフォンが旋風を起こして飛び立った。

 

「...いや、やっぱあれ、飛んでるわけじゃないな」

 

数秒で一キロは遠ざかったグリフォンの背を見て、ローリーが呟く。

 

「確かに、ありゃ空気を踏み締めて走ってるな。なるほど、あの巨体にしちゃあ翼が小さすぎると思ったぜ」

 

十六夜もまた、ローリーと同じ見解を持つ。

白夜叉はもちろん、グリフォンに対する知識がある黒ウサギもそれに驚きはしない。唯一見抜けなかった飛鳥だけが、二人の男を信じられないもののように見る。

 

「...貴方達、よく見てるのね」

「そりゃお前、知識はあっても実物を見るのは初めてなんだぜ? 観察・解析は戦いにおいて一番最初にやることさ」

「ローリーくんはあのグリフォンと戦わないでしょう」

「そうだな。あいつと戦っても面白くなさそうだし...まぁグリフォンの味が少し気になるから、わんちゃん狩るかなってくらい?」

「狂ってるわね」

「食べるなよ?」

 

飛鳥に続き、白夜叉までも非難に似た目を向ける。

 

「なんだよ。食ったことのねぇ食材だ、普通味が気になるだろ? なぁ逆廻」

「俺にふるなよ。まあ、鷹も獅子も肉食で美味くねぇって聞くし、グリフォンも美味くはないんじゃねーの?」

「バッカお前、不味いかもしれねぇけど、どう不味いかが気になるんじゃんか」

 

ローリーに向けられる視線の中にに、「そういえば自分も食べられかけたな」と数時間前のローリーの奇行を思い出した黒ウサギの恨みと恐怖が乗った目も合わさる。

 

「確かに鷹もライオンも不味かった!」

「食ったのかお前。鷹とライオンを」

「食ったぞ? 腐った肉っぽいっつーか、筋張ってるし、臭ぇし、出汁まで不味い。何も良いとこがなかったが、だからといってグリフォンもそうだとは限らない。不味かったとしても、鷹やライオンと似た味がするのか、全く別の味がするのか。未知ってのはワクワクするよなぁ!」

「まぁ未知にトキメクってとこだけは同意だけどな」

 

山脈の向こう側に隠れたグリフォンが悪寒に襲われているなどいざ知らず、周りからの正気を疑う懐疑的な視線をあえて無視し、ローリーは目を輝かせて想像を膨らませていた。

 

「うーん、考えてたら気になってしかたなくなってきた。なぁ白夜叉。俺が決闘に勝ったらちょっとアイツを、」

「ダメに決まっているだろう阿呆」

「勝者の言うことは絶対なんだろ? ギフトゲームってやつは」

「馬鹿者。相手の同意も必要だ。そんな暴論が通ってしまえば秩序など存在せんだろう」

「ふーん...」

「まぁ、おんしの嫌う《魔王》はその横暴を押し通すがの」

「だろうなぁ。俺含め(・ ・ ・)、《魔王》っつークソ共は本当にクソだからな」

「ああ、全く──────ん?」

 

同意を示そうとしたところで、ふとローリーの言葉にひっかかりを覚えた。

白夜叉だけではない。十六夜も、飛鳥も、黒ウサギも。なんでも無さげに零れたその台詞を聞き流すことができず、ローリーに目を向ける。

 

「ん? なんだよお前ら。やっぱり俺の玉体が気になるのか? そうだろうそうだろう。よし、その目をかっぽじって、」

「そういう“お巫山戯”は要らねぇ」

 

自分の服に手をかけたローリーに、十六夜が目を鋭くして言う。

 

「説明しろ、ローリー。『俺含め』ってのはどういう意味だ」

 

多少不服そうにしたローリーだったが、渋々脱衣を止めて、これまた何でもないかのようにこう返答した。

 

「あ? 説明も何も、言葉のままだが? 俺も《魔王》なんだよ」

 

 

 

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