騎士の集団は突進し斜面と長柄の列に押し返され、山裾で隊を整えて再び突進し斜面と長柄の列に押し返され、繰り返すうちに
山の正面では弓兵たちが何をするでもなく、ただ列は維持したまま呆然と突っ立っている、立つ者はもはや2千に満たぬ
撲殺単于は輿の上でプルプルと震えながら
「人は財だ、人は宝だ、人は石垣だ、人を、人財を、あれほど失って貴様らは恥ずかしくないのか、人財を何だと思っている、これほどに、これほどに、財を蕩尽して、いったい誰が国を支えていくのだ、守っていくのだ、なぜこのような事に、いったい誰がこのような事を!」
撲殺単于の輿の前にモアチョイ4が駆け込んでくる
「キングモアチョイさま討ち死に!、騎士の半分が倒れ敵陣は牢固として抜き難く、我が軍にもはや勢い無く」
「だから何だッ!」
撲殺単于は絶叫して輿から飛び降りる
「できない、と言うのは嘘つきの言葉だ!、やろうと思えば出来る!、何だって出来る!、不屈の精神と無比なる闘志と忠君愛国の誠心があれば何だってできるのだ!、突撃だ!、前進だ!」
そこへ正面から幽鬼の如き集団が押し寄せてくる、くすんだ血を満身に滲ませた弓兵たちである
「陛下!、もはや我等に矢は無く兵も無く戦闘を継続する力は・・・・」
「負け犬どもがっ!、負け猫どもがっ!、矢が無いから何だっ!、戦争は矢でするのでは無い、気合でするものだっ!、矢が無いなら剣がある!、剣が無いなら拳がある、拳が無いなら歯で噛みつけッ!、それが男と言うもんじゃ!」
「うひぇあーーーん」
撲殺単于はしくしくと泣き始めた
「物笑いの種だ、人々が、大陸中の人々が私を何と言うか、あの原始人どもに負けたと、原始人に負けた撲殺単于ぞよと誰もが噂しあうに決まっている、貴様らは私に恥をかかせようとしているんだな、戦いに負けたのは私が弱かったからではない!、お前たちが弱かったからだ、負け犬どもが、お前らを指揮する事になった、私が不幸なのだ、ああ私は何と不幸な単于なのだろう」
臣モアチョイ5が進み出た
「撲殺単于は勇敢にも単騎にて敵の大軍に突進し戦死なされた!」
誰もが戸惑いを含んだ目でモアチョイ5を見た、一瞬ののち得心のいったように今度は撲殺単于を見た、弓兵の1人が血の染みのある剣を引き抜くと、もう1人が剣を引き抜き、臣たちも剣を引き抜き、騎士も他の弓兵も剣を引き抜いた
「な、なんだ貴様ら、ここは殿中でござるぞよ」
「うるせえ死ね!」
全周より剣は突き出され、それは無数に剣の生えた肉塊となった、人々は剣を突き刺し突き刺し斬り付け斬り付け、肉片の上でジャンプしてジャンプして骨を砕き跳ね回り、棍棒を叩きつけ叩きつけ