進みゆくのは豪華な輿である、金箔を張り宝石を散りばめ手すりに見事な象眼は施され絨毯の刺繍の細やかさは見るも華やかなり、上部は中々に広く撲殺単于がのんびりと仰臥してとその寵姫、メリメ、マレーナ、サレマと戯れている、その下の床一枚下にいて輿を支えて歩くのは奴婢どもである、今にも押しつぶされそうな表情である
押しつぶされたときは交換すればよいのである、後ろに続くのは5万の兵、クサッタ川の右岸を船団と平行して南下し、フワトロ山の麓に至る、撲殺単于が気だるげにその低い山を見上げれば虫けらのような人々がびっしりと
陣は張られ豪もある、矢が1矢、ひょうと飛んできた、紙が結わえられている、矢文である、こうあった
「カヤバンダの地は貧しく惨めで貧相で痩せこけ、とてもとても貴方様の様な高貴でご立派で麗しく厳かな方を迎える用意はできません、私たちには石弾と鉛弾しか差し上げられる物がないのです、どうかどうか背後に気を付けてお帰り下さいませ、敬具」
撲殺単于は紙切れを破り棄て、剣を抜き放ち2度3度と斬りつけると、近くにいた臣モアチョイを斬り捨て、コナイコフを斬り捨てると、カボネン・オベを呼び、奴婢兵を進ませてカヤバンダの虫けらどもを殺せと命じた
カボネン・オベと
輿の上では撲殺単于がメリメとサレマと賭けをする
「ふへへへへへあひ、カヤバンダに1チャポネ」
金貨をポンとメリメの肉体に乗せる、ちなみに
「王様ったら~あ、ひどーいい、かわいそうな奴隷どもを信じられないなんてえー」
撲殺単于は奴婢兵を差しながら
「ふへへひ、あの酷い様を見ろ、腐った犬でもあれほどの惨めさは発しない、あの汚い連中はカヤバンダの奴等に処分してもらうのさ、町が綺麗になる」
サレマはわぁーと笑顔は満開に
「私綺麗なのだーいすき、あの汚いのはいらなーい」
きゃぴきゃぴと黄色い声を背景に薄汚い奴婢兵たちが進む、大きな横隊を成して、それが山の麓に差し掛かった時、フワトロ山の全体より無数の小さなものが立ち上がるようにして飛び上がり、前に流れて覆いかぶさってくる、個々は黒い丸であり
風を切る音がする、パッと地面が跳ねる、土が小さく上がり黒い粒子は跳ね飛び、トン、トンと言う音、1つ2つ3つ、1人の奴婢兵の頭蓋はえぐれ赤く血は吹き飛び眼球は飛び出し、「ウワー、アアアアーーー!」と声は甲高く響く
もう1人、盾はめくれるように跳ね上がり木屑は飛び散り木枠は歪み、ある者は腕の先が捻じ曲がり骨は飛び出して手の指の大きく広がり捻じ曲がり、またある者は片足が赤く折れ崩れ手を振り回しながら倒れ、投げ槍の穂先は弾け飛び、背に束ねる投げ槍は大きく振れて
続いて石が降ってきた、腕に当たり頭に当たり肩に当たりそれぞれの部位を赤く染めて雨あられと降ってきた、掲げられた盾を揺らし跳ね弾け大きな音を立てた
フワトロ山の上では列を成した投石兵たちが投石紐を回している、近衛投石兵の投射は正確であった、精鋭投石兵の投射も正確であった、ただの投石兵の投射の精度は酷いものであった、石は遠くへ近くへ右へ左へ飛んでいった、それでも3万もの兵が広く帯を成して攻め来ればどこかには当たる、右に大きく逸れた石弾は盾の内側へと滑り込み腕の付け根を砕き、左に大きく逸れた石弾は盾の左を掠めて内側へ飛び込み肩を砕き
山から前方象限下方へ雨あられと撃ち下ろされる石礫と鉛弾とは帯を成して押し寄せる奴婢兵を点々と打ち倒し血の赤は所々に見られ、倒れる者は次第に増え叫び声と泣き声とは次第に強くなる