更新遅くてすみません。
数十万本の極細の髪の毛が、四方八方から俺の全身を狙って蠢いている。
一触即発の空気をどうにかやり過ごすため、俺は両手を軽く顔の前に掲げ、降伏のポーズを取りながら極力無害そうな声を出した。
「ストップストップ落ち着いてよ。僕は別に敵じゃない。この第一ビオトープで暮らしてるだけのただの人間だよ? モノクって言うんだ、よろしくね」
俺がそう名乗った瞬間。
怒りで逆立っていたサニーの髪が、ピタリと空中で静止した。
「モノク……モノク……お前があのモノクね……」
サニーは射殺すような鋭い視線を俺に向けたまま、低く唸るようにその名を口にした。
その瞳の奥で、数日前にIGO本部で交わした忌々しい記憶が鮮明に蘇っていた。
◇
「サニー、お主にジュエルミートの捕獲を依頼したいんじゃが……」
重厚なデスク越しに、一龍はいつもより少しだけ真面目なトーンで切り出した。
呼び出されたサニーは、自身の艷やかなピンクと青の髪を片手で優雅に靡かせながら、ふっと自信に満ちた笑みを浮かべる。
「へえ、リーガルマンモスの
自身の美学と実力を誇示するようにドヤ顔を決めるサニー。しかし、一龍の視線はサニーを完全に通り越し、窓の外の虚空に向けられていた。
「どうやら美食會も裏で動いておるようじゃ」
「って無視かよ!!」
華麗なポーズのまま完全に放置されたサニーが、額に青筋を立ててツッコミを入れる。だが、一龍は意に介さない。
「トリコと……一応ココにも依頼は出しておいた。ほんじゃ、あと頼んだぞっ」
「おいっ! なんも会話しねぇじゃんかっ! このクソジジイ!!」
伝えたいことだけを一方的に捲し立てた一龍は、サニーの猛抗議を背中で受け流し、ささっと足早に部屋から消えてしまった。
残されたサニーが苛立ちに任せて盛大な舌打ちをした、その直後。
バタンと閉まったはずの扉が再び細く開き、そこから一龍がひょっこりと顔を覗かせた。
「あ、そうじゃった。モノクっていうビオトープ内で生活してる、お主ら四天王と同年代のやつもおるから協力するんじゃぞー」
「おいおい……」
サニーはあからさまに顔を顰め、心底嫌そうな声を上げた。
「第一ビオトープ内で生活してる男がいるっつー噂話は聞いてたが、マジなのかよそれ……風呂とか入ってんのかそいつ? きしょいの確定。協力なんてぜってーしねぇしっ。ぱぱっとマンモス捕まえて終わらせっし」
美しいものを何より愛するサニーにとって、野性味溢れる環境で泥に塗れて生活している男など、想像するだけで虫唾が走る存在だった。
しかし、そんなサニーの強烈な拒絶を聞いた一龍は、扉の隙間からニヤリといやらしい笑みを浮かべた。
「協力せんのは勝手じゃが……今のお主より強いんじゃから大人しく協力しとけっ」
「はああ!?」
サニーの声が裏返った。
四天王としての誇りと圧倒的な自信を、真正面からへし折られたのだ。
「俺がそんなやつに負けるわけないしっ!?」
「いーや絶対勝てんの。天と地がひっくり返っても勝てん。まっ、精々頑張るんじゃな。ほいじゃっ」
「言い逃げすんなジジイイ!!」
最高にうざい呆れ顔で煽り散らし、今度こそ完全に姿を消した一龍。
後に残されたのは、不機嫌ゲージが限界突破し、怒りで周囲の家具を自慢の髪の毛で粉砕しそうになっているサニーだけだった。
(モノクだかなんだか知らねーが、この俺が絶対勝てねーだと??)
誰もいなくなった部屋で、サニーはギリッと奥歯を噛み鳴らす。
(ふん、冗談も程々にしろってーの。だったら本当かどうか、直々に試してやんよ!!)
◇
色鮮やかな髪の毛を周囲にふわりと漂わせながら、その男は不機嫌極まりない視線で俺を上から下まで値踏みした。
「てめーか、ジジイの言ってたモノクっつーやつは?」
初対面からバリバリの敵意である。
どうやら、一龍が余計な何かを言ったせいで、完全に俺をロックオンしているみたいだ。
だが、ここで真正面からやり合うのは面倒すぎる。俺は両手を軽く前に出し、あくまで友好的な笑みを浮かべた。
「あ、会長から何か聞いてるの? あのガングロオヤジがなんて言ってるかは知らないけど、とりあえずここは穏便に……ジュエルミートを取りに来たんでしょ? 僕も協力するよ」
「協力なんていらねー」
食い気味の全否定だった。
「えぇ……」
「リーガルマンモスの捕獲なんて俺一人で充分だし? さっさとお前の後ろのマンモスをノッキングして、持って帰るっつーの」
サニーは自身の艷やかな髪を片手で払いのけながら、俺の背後で怯えているチビを指差した。
「ちょ、ちょっと待ってって! そもそもチビ……このリーガルマンモスはまだ……」
「っるせぇ! 邪魔すんならお前も拘束すんぞっ。んで、あのクソジジイに証明してやんだし!」
サニーの堪忍袋の緒は、最初から切れていたらしい。
俺を倒し、マンモスを捕獲する。どうやらそのシナリオで頭がいっぱいのようだ。
「証明ってなに……? いやいや野蛮すぎるって」
俺はため息を吐きながら、少しでも彼を宥めようと無防備に一歩、距離を詰めた。
その瞬間。サニーの口角が、ニヤリと釣り上がった。
「おっと、そこ……もう範囲内だぜ?」
(っ!! まずっ!
俺が気づいた時には、すでに遅かった。
足元から、頭上から、そして死角から。数十万本の極細の髪の毛が一斉に牙を剥き、四方八方から俺の身体に巻き付いてきた。
「ヘアロック!!」
ギリッ、と全身を強烈な張力が締め付ける。
0.1ミクロンという肉眼では到底見えない極細の触覚。端から見れば、俺は何もない空間で見えない力に縛られ、ピタリと静止しているようにしか見えないだろう。
だが、俺の目にはしっかりと見えていた。全身を網目状に幾重にも縛り上げる、色鮮やかな極細の糸の存在が。
「はい、一丁あがり。んだよ、やっぱし俺より強くねーじゃん」
自身の触覚を通じて獲物を完全に拘束したことを確信し、サニーはフッと息を吐いて満足げに笑った。
「よし! このままこいつとリーガルマンモス拘束して、トリコ達の前に行ったらインパクト抜群っしょ! うん、
さっきまでの不機嫌はどこへやら。一龍に一泡吹かせられる嬉しさからか、サニーは両手を広げて高らかに勝利宣言をしている。
その、完全に油断しきった背中へ向かって、俺はポツリとこぼした。
「なんか変なこと吹き込まれてるみたいだね。会長の言ってることなんて、信じるに値しないよ?」
「あー全くだ。あんのクソジジイ、
サニーが弾かれたように振り返る。
そこには、彼の真横に並んで立ち、ボリボリと頬を掻きながら話しかけている『俺』がいた。
「てめー……どうやって俺のヘアロックを解きやがった? ……いや、ヘアロックはまだ解かれてねぇ」
サニーは驚愕に目を見開きながら、先ほどまで俺が拘束されていた位置を見た。
端から見れば何もない空間。だがサニーの触覚は、そして俺の目には見えている。
サニーの極細の髪の毛が、まだしっかりと『俺一人分の網目』の形を保ったまま宙に浮いているのを。
だが、その中身は空っぽだ。
いや、正確には……見えない何かによって、内側から髪の毛の網目が『俺一人分のスペースを開けたまま』押し広げられ、固定されているのだ。
「なるほどな。自分の周りに一層分スペースを開けるために、なにか間に噛ませたな? んで、俺のヘアロックから抜けやがった」
「すごいね、当たりだよ」
俺はパチパチと軽い拍手をして種明かしをする。
「『トングロック』トングのように掴んだり、トングの挟み具合を好きな位置で固定できるんだ。今回は、僕一人分の位置でトングを固定した。君がヘアロックしたのは僕の『トング』。あとは隙間から抜け出すだけさ」
髪を直接引きちぎるような野蛮な真似はしていない。ただ、見えないトングで内側からつっかえ棒をしただけ。
しかし、それはサニーの絶対の自信である『触覚の拘束』を、力みすらなく無効化したことを意味していた。
「……便利な技だ。だったら……これは防げるか?」
サニーの声色が、一段階低く、ドス黒く沈んだ。
その周囲の空気がビリビリと震え始める。
「ちょっ、まだやる気!?」
「ったりめーだ! 幸い、ここには俺とお前しかいねーし。この
そう言って唸り声を上げながら、サニーが全身の力を振り絞る。
直後、周囲に展開されていた数十万本の髪の毛が、凄まじい勢いで一箇所に束ねられ、禍々しい形を構成し始めた。
何十メートルもある巨大な毛髪の塊。まるで意思を持つバケモノのようなそれは、圧倒的な質量を伴って俺を見下ろしている。
(……サニーのグルメ細胞が具現化した姿……『ヘアモンスター』…まじで言ってる?)
(それ、本来は敵のGTロボをぶん殴るための、奥の手だったと思うんだけど! それを初対面の俺に使うの!? どんだけ俺に恨みあるんだよ!なに吹き込んだ一龍のジジイ!!)
俺は心の中で強烈なツッコミを入れた。
「ヘアパンチッ!!」
巨大な毛髪の塊が、一つの巨大な拳となって俺に迫り来る。
あー、終わった。
防御にも使用できる『トングロック』とはいえ、流石にあれほどの質量と威力を完全に防ぎきれるほどの強度はない。ていうか、あれはもう…一発殴らないと気が済まないやつだ。前世のクレーム対応と一緒である。
(はあ…大人しく殴られよう。もしかしたら俺の首から上が綺麗さっぱり無くなるかもしれないけどね!!)
俺は抵抗を諦め、仁王立ちのままパンチを受ける覚悟を決めた。
凄まじい風圧が全身を叩きつけ、轟音が耳を劈く。
だが——。
想定していた激痛は訪れなかった。
巨大なヘアモンスターの拳が、俺の顔面からわずか数ミリというギリギリのところでピタッと静止している。
「はぁ〜あ。もうやめだ、やめ」
サニーはひどくつまらなそうな顔でため息を吐くと、自身の髪の毛の張力をふっと緩めた。
威圧感を放っていた巨大な拳がバラバラに解け、元の色鮮やかな髪の毛となって彼の背中へとスルスル戻っていく。
「え? いいの? 一発殴ってスッキリするんじゃないの?」
「ちげーしっ! べつにっ、ただ殴ってスッキリしようとしてたわけじゃねーしっ」
俺の素っ頓狂な問いかけに、サニーはムスッとした顔でそっぽを向いた。
「——ただ、あのクソジジイを見返してやりたかっただけだ。でも、お前全然本気じゃなかったし!! こんなの勝ったって意味ねー」
「いやいや、そんなこと——」
「あったろ? めちゃくちゃ手抜いてるしっ」
誤魔化そうとする俺の言葉を、サニーは鋭い声で遮った。
その瞳には、先ほどのヒステリックな怒りとは違う、四天王としての冷徹な観察眼が宿っている。
「最初に俺の髪を切った技……使わねーんだもん。あれ使ってりゃ、こんな戦い…余裕で抜けられたろ。ジジイが『絶対勝てない』って言ってた理由がわかったよ。絶望的に相性が悪い」
サニーは忌々しそうに自身の髪をひと房、指に絡めた。
「今の俺の髪の強度じゃ、お前の『切断』には耐えられねぇ。強度には絶対の自信があったが……今は無理だ。い・ま・は・な!!」
ものすごい負けず嫌いである。わざわざ「今は」を強調してきた。
『ボーンシザース』
サニーの髪の毛を出会い頭に切った、指をハサミに見立てて切断する技だ。骨を断ち切るほどの威力——は今はまだ無いが、今後そうなりたいという願望を込めての技名だ。俺があえてこれを使っていなかったのをサニーは気づいていたようだ。
俺は苦笑いしながら弁明を試みた。
「まあ、ハサミのように切る技だね。でも僕がそれを連発できない可能性だって——」
「ねぇよ」
きっぱりと。サニーは一刀両断に言い切った。
「最初にマンモスを拘束してた髪を切った時、必要最低限の本数しか切ってねぇ。拘束の軸となる要の部分だけを見極めて、最小限の切断で抑えてやがる。その状況判断能力と技の使いこなしで、『一回しか使えねー』なんて嘘、信じるわけねーだろ?」
「……あぁ、まぁ…切りすぎたら悪いと思って…」
俺はポリポリと頬を掻いた。
流石は美学を追求する男。ただキレていたように見えて、俺の『ボーンシザース』の精度や加減を完璧に見抜いていたらしい。
「そんな手抜きのお前に力任せで勝ったって、
「わかった! わかったよ!」
これ以上言わせるとまたヒートアップしそうだったので、俺は慌ててサニーの言葉を遮った。
とにもかくにも、戦闘の意思を収めてくれたのなら御の字だ。
「……とりあえず、落ち着いてくれてよかったよ。じゃあ改めて……僕はモノク。君は……四天王サニーだよね。よろしく」
これからの関係を考えれば、顔を繋いでおくに越したことはない。
俺は歩み寄り、友好的な笑みを浮かべて右手を差し出した。
「ふん。握手はしないし」
サニーは鼻を鳴らすと、差し出された俺の手を完全に無視して、スイッと体をそっぽに向けた。むさ苦しい男の手を握るなど、彼の美学に反するのだろう。
……本当に、どこまでもブレない人だな。
俺は宙に浮いた右手を引っ込めると、そっぽを向いているサニーの横顔に、イタズラっぽい顔を向けてニヤリと笑った。
「——い・ま・は・?」
「ずっとだし——!!」
俺のからかいに、サニーは今日一番の嫌そうな顔をして叫んだ。
第一ビオトープの青空に響き渡ったその怒声を聞きながら、俺たちの最悪なファーストコンタクトは、なんとか幕を閉じたのだった。
◇
「しっかし、本当でけーな。これで子供ってどゆこと。まじパネェ。大人リーガル、どやって捕獲すんの? ムリじゃね?」
「捕獲は無理だろうねぇ……」
サニーとの一触即発の戦闘を終えた俺たちは、トリコ達が来ているであろう第一ビオトープのメイン施設に向かっていた。も 移動手段はチビの広大な背中の上だ。
あまり好意的に思われてないはずだが、いざ隣に座ってみると意外と話は弾んだ。そして話題は自然と、あの不良爺さんが事の発端で何を吹き込んだのかという話に行き着いた。
「はああ!? そんな大袈裟に僕の実力盛って伝えてたの? あのガングロジジイ」
「ああ、 天と地がひっくり返っても勝てねーとか言ってたからな」
「いやないない。サニーとは相性が——ってだけだし。ビオトープ内で生活してる割には成長も遅いよ、僕は。グルメ細胞の悪魔もまだ出せてないし……」
謙遜でもなんでもなく、これは本当のことだ。
初期トリコの基準で考えると、バカみたいにレベルが高いこの第一ビオトープで生活しているのに、俺は全然成長が遅い。やはり四天王と呼ばれる連中は、そもそも体の作りからして違うのだろうか。原作のように、あんなにテンポよくポンポン強くなれるわけがないのだ。
以前、無理やりグルメ細胞の悪魔を出そうと試みたこともあったが、激しい息切れに陥った後、そのまま気絶してしまった。顕現させるための体づくりがまだまだ足りていないのかもしれない。
「え、なにお前、まだ出せないの? それヤバクネ?」
サニーが小馬鹿にするような、からかうようなニヤケ顔を向けてきた。
「俺らと同年代っしょ、お前。俺らはもう十代ぐらいの頃から出せてた感じだし? 俺らより才能ないにしても、今の歳でまだ出せないとマジでヤバクネ?」
「あーあーわかってる! わかってるよ。焦らせないでよ。……まったく、会長にも同じような煽りされたよ」
俺はため息を吐き、ジト目でサニーを見つめ返した。
「……これから『会長』って呼ぼうか?」
「ふざけんなっ! あんなシワシワジジイと一緒にするんじゃねぇし!!」
瞬時にブチギレるサニー。
サニー、めちゃくちゃイジりがいがあるな……。俺は内心でほくそ笑みながら、今後も適度にイジり倒すことを心に誓った。
「お、そろそろ見えてきたね。IGOの施設」
「おし。じゃあ華麗に
サニーが自身の艶やかな髪を靡かせながら、自信満々に立ち上がる。
「いや、大丈夫です」
「即答すんなし!!」
◇
一方その頃、眼下のメイン施設前では絶賛パニックが巻き起こっていた。
「ト、ト、ト、トリコざ〜〜ん!! ど、どうするですかあれ!!? リーガルマンモスが、かんっぜんにこっち向かって来てますよ! トリコさんっ!!」
「落ち着け小松っ! まさかリーガルマンモスの方からこっちに来てくれるとは思わなかったぜ。探す手間が省けてラッキーだ…と考えるべきか…」
ワタワタと逃げ惑う小松に対し、トリコは獰猛な笑みを浮かべて拳を構えていた。
だが、その内心は決して余裕ではない。
(GTロボとの戦闘の負担がまだ抜けきってねぇ……。こんな状態で、あのリーガルマンモスとやれるのか?)
「もう目の前まで迫って来てるし! どうするトリコ〜!」
「くそ、やるしかねぇ! ——って」
悲鳴を上げるリンを庇うように前に出たトリコだったが、ふと鼻をヒクつかせた。
スンスンッ、と迫り来る巨体から風に乗って流れてくる匂いを嗅ぎ取り、ピタリと動きを止める。そして、構えていた拳をゆっくりと下ろした。
「どうやら、その必要はないみたいだ。リン、小松」
「えっ、なんでですか!! まずいですよ!! このままじゃ潰されちゃいます!! うわああぁっ! ……って、あれ?」
両腕を顔の前にクロスし、ギュッと目を瞑って防御姿勢を取る小松。
だが、待てど暮らせど踏み潰される衝撃は来ない。恐る恐る目を開けると、戦車よりも巨大なリーガルマンモスがきっちりと停止していた。
「と、とまった……? どうなってるんですか! トリコさん!」
腰を抜かしてへたり込んだ小松が、隣のトリコを見上げる。トリコは警戒するどころか、嬉しそうにリーガルマンモスの頭上へ向かって叫んだ。
「お〜い! 久しぶりだな〜!!」
その呼びかけに答えるように、遥か上空のリーガルマンモスの背中から、一つの影がふわりと飛び立った。
「とうっ!」
それは、空気抵抗を利用しながら優雅に舞い降りてくるサニーだった。時折、空中で無駄に美しいポーズなどを決めながら降下してくる。
「シュタッ」
着地。まさかの口に出して言っていた。
サニーは髪をふわりと収め、ドヤ顔でトリコを振り返る。
「どうだトリコ。
「変わってないようで安心したぜ、サニー」
「こ、この人が……四天王のサニーさんですか?」
あまりの登場に呆然とする小松。
「お前は……以前より細胞が活性化しているな。肌の弾力性も高いし、良いもの食べてる証拠だ」
「いきなり肌触りまくるんじゃねぇよ、気持ちわりぃ」
「なんだと!?」
トリコのツッコミに青筋を立てるサニーだったが、すぐに別の標的を見つけて顔を顰めた。片手に巨大なパフェを持っているリンだ。
「んで、リン! お前! なんだその土管みたいな足はッ! 久々に会ったら、皮下脂肪もハンパねぇ! そんな甘いもんばっか食べてるからだ!」
「なっ……このくらいが健康的で丁度いいし! てかお兄ちゃんには関係ないしー!」
「関係したくないしー! こんな男みたいな女と!」
「はあ? 女みたいなお兄ちゃんに言われたくないしー!」
「ねぇしねぇし、うるせいしー!」
ギャーギャーと子供のように喚き散らしながら言い合いを始める兄妹。
「こ、この二人が兄妹かぁ……」
美しさの欠片もない口喧嘩に、小松はひきつったような呆れ顔を浮かべた。
「つーかサニー! なんでお前がリーガルマンモスの背中に乗って現れてんだよ……どういう経緯だ?」
「ん? あぁ、まぁ色々あってな」
「色々ってなぁ…とりあえずじゃあ、このリーガルマンモス食っていいのか?」
トリコが口元からダラダラとヨダレを垂らし、期待に満ちたキラキラの眼差しで尋ねる。
「そいつはダメだな」
サニーがきっぱりと否定した。
「…上に居る奴が関係してるのか?」
匂いで、すでにマンモスの背中にもう一人の存在がいることに気づいていたトリコが、遥か上空を見上げながら言う——その時だった。
——ズドガァァァァァァァァンッ!!!!
鼓膜が破れそうな凄まじい轟音と共に、小松の目の前の地面が爆発したかのように弾け飛んだ。
視界を埋め尽くすほどの土煙。顔面にバラバラと降り注ぐ土砂。
あと一歩、本当にあと半歩ズレていたら、小松は即死していただろう。
「ヒィィィィィッ!?」
小松は完全に魂が抜けかけた顔で、硬直した。
土煙が晴れた後、そこには人型に深く陥没したクレーターが出来上がっていた。
「だ、だれか……降って来ましたよ……?」
小松がガチガチと歯を鳴らしながら、恐る恐るすり鉢状の穴を覗き込む。
すると、クレーターの底から『ムクリ』と、一人の男が起き上がってきた。
男——モノクは、ボロボロの服についた土をパンパンと気怠そうに払い落としながら、トリコたちを見回した。
「こいつはまだ子供。僕と兄弟みたいなもんなんだ。だから食うのは無し」
「えぇぇぇぇ……っ!? 落下してきて平然と話し出したぁー……っ!!」
常軌を逸した登場の仕方に、小松の喉から裏返ったツッコミが飛び出す。
モノクはそんな小松に向かって、ビシッと親指を立てた。
「あ、いつもこうやって降りてるから気にしないで」
「初対面でなんですがっ、何か別の降り方考えた方がいいかと思いますぅっ……! 心臓止まるかと思いましたよ!?」
涙目でかしこまりながら抗議する小松。だが、モノクはどこ吹く風で首を傾げる。
「うーん。でも、楽で一番早いからこれで良くない?」
——また、変な人きた〜〜っ!!
小松の切実な内心のツッコミが、第一ビオトープの青空に虚しく響き渡った。
勢いで書いています。
ヒロインは決めていますがヒロインまでが遠い…。開始地点間違えた…?