グルメ界の食材もっと掘り下げたいですよね。
赤く光る単眼のレンズが、道端の小石を見るような無機質な視線で俺を見下ろす。
「邪魔をするなら殺すが……どうする……?」
とんでもない殺気。どんだけだよ……。
機体越しで、しかも遠隔操作だというのに、肌がヒリつくほどの死の気配が放たれている。
足の震えを必死に抑え込む。でもここで、「どうぞどうぞ」と道を譲って通すほど、俺も無責任じゃない。あいつの向かう先には、育ての親であるリーガルママがいるのだから。
「邪魔をするつもりはないんだけど……お茶でもどう……?」
俺が引きつった笑顔で提案すると、GTロボは冷徹に言い放った。
「——邪魔だ、どけ」
「まぁ、そう言わずに——」
俺が両手を軽く上げて、適当な愛想笑いを浮かべながら口を開きかけた、その瞬間。
一切の予備動作もなく。空気の抵抗すら無視したようなGTロボの手刀が、俺の首元を薙ぎ払うべく伸びてきた。
「っ……!!」
俺は首をすくめるようにして、上半身を大きくのけぞらせる。
鼻先数ミリを、暴力的な風圧を纏った金属の腕が通過していく。前髪が数本、音もなく切断されてハラリと宙に舞った。
背筋を駆け抜ける悪寒。俺は冷や汗を撒き散らしながら、バク転で大きく距離を取った。
「ほう……今のをかわすか」
GTロボが、赤い単眼のレンズを微かに細めるような動作をした。
「つまらん虚勢を張っているだけでは無いようだ……」
「ハハッ……初対面の挨拶がわりにしちゃあ、ちょっと物騒すぎないかな?」
俺は軽口を叩きながら、内心では心臓をバクバクと暴れさせていた。
ヤバい。速すぎる。目が追いついたからといって、体が完璧に反応できるわけじゃない。今のはマジでギリギリだった。
そこからは、ひたすら息の詰まるような防戦一方だった。
スタージュンの放つ無慈悲な連撃が、岩を紙切れのように砕き、周囲の大木を容易くへし折りながら俺を追い詰める。
俺は目を血走らせながら、ギリギリのステップと体捌きだけで回避し続けた。
「『ボーンシザース』!!」
俺は地面を蹴り、反撃に転じた。
回避するだけじゃジリ貧だ。人差し指と中指をハサミの形に展開し、GTロボの装甲の隙間、首元の関節部を正確に狙い打つ。
骨すら断ち切る俺の指の刃。いくら機械とはいえ、関節部分なら!
——ガキッ!!
「……いっ、つぅぅぅっ!?」
火花が散った。
だが、GTロボの首元には傷一つ、いや、塗装の剥がれすら生じていなかった。逆に、俺の指の骨が砕けそうなほどの凄まじい反発力が襲いかかってくる。
「威勢はいい、狙いも正確だ。……だが、いささか火力が足りないな」
スタージュンの操るGTロボは、微動だにせず冷酷に言い放ち手刀を放つ。
「しまっ……!」
回避のために踏み込んだ足元の岩が、GTロボの攻撃の余波で崩れた。
俺の体が空中に投げ出され、完全に体勢が崩れる。
足が地についていない。体の制御が利かない。
その絶対的な隙を見逃すスタージュンではない。鋭い金属の貫手が、空中にいる俺の心臓めがけて一直線に迫る。
——回避不可能。
「『トングロック』!!」
俺は空中で自分自身をトングで挟み込み、強引に上方向へと軌道をズラした。
直後、さっきまで俺の心臓があった空間をGTロボの腕が通り抜け、背後の分厚い岩盤を乾いた破壊音と共に粉々に粉砕した。
「はぁっ、はぁっ……!」
間一髪で地面に転がり落ちた俺は、荒い息を吐きながら距離を取った。
ここで、凄まじかった猛攻が一旦止む。
GTロボが岩盤から腕を引き抜き、自身の金属の掌をジッと見つめていた。
「……やはり、視覚センサーと四肢の連動にわずかなタイムラグがある」
GTロボのコアと操縦者の感覚のズレ。その誤差、およそ千分の一。
俺たちからすれば無に等しいそのわずかなズレも、スタージュンほどの高みにいる強者にとっては、致命的な枷となる。
「反応が遅すぎて、思う様に体が動かんな……」
不満げにこぼすスタージュンに対し、俺は額の冷や汗を拭いながら強がって笑った。
「事実なんだろうけど、攻撃が当たらない言い訳にしか聞こえないね」
「すまない。ロボで無ければ、20回は殺せているのものでな……」
「……そんなに殺さないで……」
冗談でもなんでもない、底冷えするような事実を突きつけられ、俺は引きつった笑いを返すことしかできなかった。
「そろそろ終わりにしよう……無駄な時間は過ごしたくない」
スタージュンの声の温度が、一段と下がった。
だめだ、まともな時間稼ぎにもなっていない。
俺は焦りを悟られないように、ゆっくりと息を吐き出した。圧倒的な実力差。このまま回避に徹し続けたところで、遠からず必ず殺される。
だが、ほんの少しでもいいから、稼げるだけ時間を稼ぎたい。ここで俺がこのバケモノの足を止めていれば、リーガルママの体内に向かうトリコ達の危険もそれだけ減るはずだ。
ギギッ、と。
重い駆動音を鳴らし、確実に死の距離を詰めてくる。逃げ場はない。
俺は、一か八かの賭けに出ることにした。
「——俺は、あんたの探してる食材を知ってる」
ピタリ、と。
GTロボの重厚な歩みが止まった。
「なに……?」
「探してる食材があるだろ?」
「我々が求めているのは
スタージュンは淡々と答えたが、その声には微かな波立ちがあった。俺はあえて余裕のある笑みを浮かべてみせる。
「『
風が止んだ。
森の猛獣や虫たちすら息を潜めたような、異様な数秒の沈黙が流れた。
GTロボの単眼レンズが、俺の表情の真意を探るようにジッと見つめている。やがて、GTロボはゆっくりと腕を上げ、頭部の横を金属の指で
トン、と押す動作をした。
「視覚と音声共有機能はオフにした。もうここは見えていない。この会話を聞いているのは私とお前だけだ」
スタージュンはそう言うと、威圧感を残したまま静かに両腕を下ろした。
「5分間だけ聞こう……さぁ、何を知っている……」
◇
美食會副料理長、スタージュン。事実上の美食會No.2と言っても過言ではない圧倒的な強者。
そんな彼は、ずっと『ある食材』を探している。しかし、当の本人ですら自分が『何の食材を探しているのか』わからないのだ。後に原作で、トリコと小松に彼自身が食材を探していると言うシーンが存在する。
その探している食材の正体とは、ズバリ魚宝『アナザ』なのだが……俺から言わせれば、それは少し違う。彼が真に求めているのは、食材そのものではなく、アナザを食べることによって蘇る『失われた記憶』なのだ。
アナザを食すことで新たな味覚が開花し、スタージュン自身の過去が蘇る。その記憶の中には、「自分とトリコが双子の兄弟である」という衝撃の真実。
そして、記憶を取り戻すことで初めて認識し、食べることができるようになる、スタージュンに唯一足りていないもの…『食運』の存在が含まれている。これがかなりややこしい。
前世で漫画を読んでいた俺も、「運が食材として適合した」というくだりには「え、食運って食材なの?」と思わず首を傾げたものだ。でも、実際この世界では食材として成立するらしい。まあ、あのアカシアも食運だけを狙って食べたりしていたし、概念のようなものでも『認識』さえできれば食べられるのだろう。
しかし、今ここで「あんたの探してるのはアナザで、トリコの兄貴なんだよ!」なんて全てをペラペラと教えてしまったら、原作崩壊まっしぐらである。間違いなく俺の手に負えなくなる。
つまり、超重要な核心部分は隠しつつ、スタージュンの興味が薄れないギリギリのラインで情報を伝え、時間を稼がなければならないのだ。
俺は小さく深呼吸をし、GTロボの目を真っ直ぐに見据えて口を開いた。
「まず、あんたの探しているものは、食材であって食材じゃない!」
その言葉を聞いた瞬間、スタージュンから発せられていた威圧感が、ほんのわずかに——呆れか、あるいは期待外れといった風に——霧散したように感じた。
「……5分間の約束は守ろう」
スタージュンが、ひどく平坦な、興味を失いかけた声で返す。
核心を突く情報ではなく、ただのハッタリや哲学的な言葉遊びだと思われたのだろう。殺意こそ止まっているが、ロボット越しでもわかるほどの失望感が漂っている。
「おかしいこと言ってるのはわかるよ? でも本当なんだって」
「では、それはなんだ?」
「まぁ聞いてよ」
俺は焦りを隠し、あえて余裕ぶった態度で言葉を続ける。
「そもそも、必死に食材を探してるのに『その食材が何なのか自分でもわからない』なんて、おかしな話じゃない? 自分がどうしてそれを探しているのか、……考えたことはある?」
「さぁな……。食べればきっと思い出すとは思うが……」
俺はここぞとばかりに身を乗り出し、大袈裟な身振りを交えてまくし立てた。
「そうそれ! それがおかしいんだ! 食べれば思い出す……? 食べるものを探してるのに、食べてからわかるなんて本末転倒じゃない!?」
(——とにかく具体的な食材の名前には絶対に触れず、論点をずらしながら、なるべく中身の薄い会話で時間を稼ごう)
俺は心の中でそう計算しながら、あえて妙なテンションに任せて喋り続けた。ひたすら煙に巻いて、5分間きっちりこのバケモノの思考を足止めしてやるのだ。
俺の勢いに押されたのか、スタージュンはピタリと動きを止め、深く考え込むように沈黙した。
(よしよし、いいぞ。そのまま哲学的な迷路にハマってろ……)
長く重い長考。
(なんか長いな…?)
やがて、スタージュンはゆっくりと口を開いた。
「ふむ……。では貴様は、食材そのものが目的ではなく——それを食べたことによって思い出す『何か』を、私は探していると言いたいのか……?」
「え——」
心臓が、ヒュッと縮み上がった。
「あっ、いやー? 別に、そういうことを言ってるわけじゃなくてぇー……」
俺は両手の人差し指同士をつんつんと合わせながら、あからさまに目を逸らし、冷や汗ダラダラでしどろもどろな反応を返してしまった。
(やっっっっば!!!)
脳内で警報が鳴り響く。
(いや俺、まだ大した情報出してないんと思うんですけど!? なるべく核心から遠ざかるように、めっちゃラインの端っこをなぞりながら会話してたはずなのに、なんで一瞬で自力でゴール手前まで辿り着いてるんですか!?)
美食會副料理長の洞察力、マジで舐めてた。
頭が良すぎる。俺の薄っぺらい言葉の裏にある真実の欠片を、たった数分の思考でピンポイントに拾い上げやがった。
「『何か』か……。私が何かを忘れている? 記憶……記憶の奥底に眠っているのか……? ふむ……記憶に関する食材など聞いたこともないが……調べる価値はある」
まずい。
この人、ほんの少しのヒントだけで、どんどん正解のど真ん中へ近づいていく。
「ちょ、ちょっとー? ぶつぶつ一人で考えるのやめてくれません? 僕との5分間ですよねー?」
「ならば、その忘れている記憶とはなんだ……」
「……」
あー、やばいこの人。人の話全然聞いてない。俺との対話の5分間だったはずなのに、もう完全に『自分で考察するための時間』に使っちゃってるよ。うぜー……。
でも、一人で勝手に長考してくれているおかげで、結果的に時間は稼げている。俺は冷や汗を流しながら、嵐が過ぎ去るのを待つように黙り込んだ。
そして。
「すまんな。5分を過ぎてしまったが……有力な情報だった」
不意にスタージュンが顔を上げ、頭部の横をまた『トン』と指で押した。通信機能を再開した合図だ。
(勝手に切り上げやがった、この人ッ!)
流石にもう、これ以上言葉で時間を稼ぐのは無理か……。
俺は小さく息を吐き出し、最後の『締めの作戦』に移るべく覚悟を決めた。
「……時間も大分稼げただろう?」
スタージュンの平坦な声が、俺の内心を残酷なまでに見透かす。
「あんた、性格悪いね……」
「ここまで殺さず生かしているんだ。優しい……の間違いだろう?」
「そうだね……じゃあ、優しいあんたに『とっておき』をあげようか?」
とっておき。それはさっきまでの食材や記憶といった情報のことではない。それはスタージュンにも即座に伝わった。
一定の距離を保ったまま、しばらくの息詰まるような睨み合いが続く。
先に仕掛けたのは俺だ。
一気に間合いを詰め、視界から消えるようなスピードでスタージュンの背後へと回り込む。
「『10て——』!」
「『ミキサーパンチ』」
俺が技のモーションに入るより早く。
GTロボの腕が、異常な関節の捻りを伴って俺の胸板のど真ん中にめり込んだ。
「ガハッ……!?」
内臓をミキサーでかき回されたような強烈な衝撃。
大量の血を吐き出しながら、俺の体は弾丸のように後方へ吹き飛び、分厚い岩盤に深くめり込んだ。
「……ぐ、あぁっ……」
肺から空気が根こそぎ奪われ、視界が明滅する。全身の骨が悲鳴を上げている。なんとか岩から抜け出して地面に膝をついたが、もはや立っているのもやっとの状態だった。
「背後に回る時間が余計だ。技の溜めも遅い」
スタージュンが淡々と言い放ちながら、重い足音を立てて一歩一歩距離を詰めてくる。
「あのまま逃げていても、お前を責める奴はいなかっただろう……。死なずにもすんだものを」
そして、俺まであと数歩という距離で、GTロボの足が止まった。
口から滴る血を拭いながら、俺はニヤリと口角を釣り上げた。
「……いや、良いんだ。これで良い……。あんたが『その上』に立つのを、ずっと狙ってたんだ……」
「なに……?」
怪訝そうに、スタージュンが自身の足元の地面へ視線を落とす。
今だ。
「『トングロック・プレスーーッ!!』」
俺は残されたすべての力を振り絞り、最大張力のトングでGTロボの四肢を上から押し潰すようにガッチリと固定した。
「ほう。中々の圧力だ。抜け出すのには少々時間がかかるな……だが、動きを止めたところで貴様に私を倒す手立てはない。先ほど打ち損ねた技を使うか? しかし、他の技を使用すればこの拘束が弱まるだろう。その一瞬で私はお前を殺せるが…試してみるか?」
「いや、試さなくていい。しばらく動きを止められれば、それでいいんだ」
俺は荒い息を整えながら、ふらつく足で立ち上がった。
「あんたを倒すのは僕じゃないし。それに、僕がぶっ倒したいやつは他にいる」
俺の言葉に、スタージュンが僅かに沈黙する。
「あんたの立ってるそこ、よく見てみな。地面に円形の亀裂が入ってるでしょ? それは、ある自然現象によって起きてるんだ。上を見てみなよ。太陽が真上だ。丁度、正午」
「……」
「実は、第一ビオトープには温泉があるんだ。俺が毎日入ってる温泉が。で、ここは丁度その隣。どうやらここの地下にも太い湯脈が通ってるみたいなんだよね。だから定期的に、地面から間欠泉が噴き出るんだ。とんでもない勢いで。僕も初めて巻き込まれた時はびっくりしたよ。——めっちゃ上空まで飛ばされるんだもん」
そこでようやく、スタージュンはすべてを理解した。
「なるほど……。初めからこれが狙いだったか。わざわざ背後に回ったのも、ここに殴り飛ばされるための調整。……『とっておき』と分かりやすく私を警戒させたのも、私の択をカウンター狙いに絞らせるためか……」
スタージュンは拘束を解こうと機体に力を込めるが、ピクリとも動かない。
無駄だ。力を加えづらいように、GTロボの関節パーツの隙間をコンマ0.1ミリ単位で精密にロックしてある。そこをさらに上からプレスしているんだ。温泉が噴き出るまでは絶対に止め切る。
「やれやれ……やられたな。貴様、名前は?」
ゴゴゴゴゴ……と、地底から凄まじい地鳴りと振動が響き始めた。そろそろ来る。
「——モノクだ」
「覚えておこう。美食屋モノク」
スタージュンがそう言い残した瞬間。
爆発音と共に、GTロボの足元の地面が弾け飛び、凄まじい水圧と熱気を伴った間欠泉が一気に噴き上がった。
「あ、一応、美食屋ではないん——だけど……」
俺の虚しい否定が聞こえていたのかいなかったのか。
スタージュンを乗せたGTロボは、大量の熱湯と共に、はるか空高くへと吹き飛ばされていった。
「ははっ……なんとかなった、な……」
張り詰めていた糸が切れ、俺はその場に力なくへたり込んだ。
トリコたちを追いかけてリーガルママのところへ向かわなきゃいけないのに、
「早く行かないと……」
全身の骨が軋み、千切れるような痛みが走る。
俺は強烈なダメージに顔を歪めながら、ゆっくりと、地面を這いずるようにしてリーガルママがいるであろう方向へと動き出した。
一歩進むだけで、肺の奥から血の味が込み上げてくる。
だが、そんな身体的な痛みよりも、俺の心を折りにくる事実に、ふと気がついてしまった。
(……スタージュンの飛ばされた方向、そっち側じゃん……)
空の彼方へ消えていったGTロボの放物線が完全に俺の向かう方向と一緒で、完全にフリーズした。
折角、死に物狂いで時間を稼いで足を止めたというのに。稼いだ時間が全て帳消しになるショートカットをさせてしまったのではないだろうか。
「なんだよ……食運、あるんじゃん、あいつ……」
俺はズーンと暗いオーラを背負いながら愚痴をこぼした。
(なんなら、俺が無さすぎる? ……これ多分、リーガルママから遠い順に食運ないよね? きついって、流石に……)
弱音を吐き出しながらも、俺はゆっくりと、着実に前へ進んだ。
だが、そんな俺の行く手を遮るように、巨大な影が立ちはだかった。
ドスン、と重い足音。
見上げると、そこには緑色の岩のような分厚い皮膚を持った、二つの頭を持つ巨大なワニに似た生物がいた。
——『オブサウルス』だ。
「まじか……」
俺はボソリと零し、目の前のオブサウルスとじっと見つめ合った。
オブサウルスは低い唸り声を上げると、二つの大きな口を開き、俺に向かって一気に飛びかかって——。
——ベロベロベロベロベロッ!!!
「わっ!ちょっ、ワニ子〜〜!!」
俺の顔面は、二つの巨大な舌によって嬉しそうに舐め回されていた。
ちなみにこのワニ子は、俺が第一ビオトープのジャングルで修行していた時に遭遇した個体だ。
その時なりゆきでバトることになり、なんとか俺が勝ったことで強さを認めてくれたらしく、それ以来、一応俺を『主人』として懐いてくれている。
とはいえ俺自身も放任主義なので、普段はビオトープ内で自由にさせている。たまにワニ子が自分で狩った獲物を『お土産』として俺のところに持ってくるくらいの、ゆるい距離感の仲なのだ。
「まさかこんな所で会えるとは! え? なに? 温泉入ってたの? うわ、丁度良すぎるよ〜。よかった〜、僕も食運はぎりぎりあったみたいだ」
オブサウルス——俺が『ワニ子』と名付けたこの個体は、俺が話しかけている間も構わず、ザラザラとした舌でベロベロと親愛の情を示し続けてくる。どうやら、近くの温泉に浸かってのんびりしていたところを、間欠泉の音か何かに気づいて様子を見に来たらしい。
ある程度舐めて満足したのか、ワニ子は低い姿勢になり、「乗れ」と言うように鼻先で俺の体をクイッと押し上げた。
俺はボロボロの体に鞭打ちながら、ワニ子の広くて温かい背中によじ登る。
「よし……頼むよ、ワニ子。リーガルママのところへ!」
グルルッ! と頼もしく喉を鳴らし、ワニ子は凄まじいスピードで鬱蒼としたジャングルを駆け抜けていく。
強力な助っ人を得た俺は、急ぎリーガルマンモスのもとへと向かうのだった。
これは原作沿いだろうか…?