悪夢 作:samiho
その日の僕は、Discordで複数の友達と話していた。
ふと、あるゲームのことを思い出す。前にみんなでやった、あれ。名前が出てこない。だが面白かったことだけは、はっきり覚えている。
「あれなんだっけ?面白いゲームだったから、またやりたいんだけど」
すると友達が言った。
「それな。VCに情報まとめてあるよ」
ありがたい。さすがである。……ところで、ここで冷静に状況を整理したい。
一緒にゲームを遊んだのは、ここ最近の友達だ。そして「情報まとめてあるよ」と教えてくれたのは、12年前くらいの友達である。この二人に接点はない。ないはずだ。だが夢の中の僕は一切の疑問を持たなかった。夢の中の人間関係は、時空を超えてシームレスに接続される。同窓会もオンライン飲み会も不要。夢は最強のマッチングツールである。
その後、教えてもらった情報をどうしたのかは覚えていない。VCを確認したのか、しなかったのか。記憶はそこでぷつりと途切れている。夢のくせに肝心なところで個人情報保護がしっかりしている。
さて、問題のゲーム本体の話をしよう。
僕の記憶にあるそれは、三択のカードを選んで何かに使う、ローグライク風の3Dゲームだった。洞窟の中の吊り橋を渡る場面があって、そこで3回、戦闘だかカード選択だかがあった。断片的だが、ゲームとしての手触りは妙にしっかり覚えている。そして何より、面白かった。
さらに厄介なことに、僕にはこのゲームを「昔にも夢で見た」記憶があるのだ。
……この記憶、本物だろうか?
過去に本当に夢で見たのか。それとも「前にも見たことがある」という記憶ごと、今回の夢の中で生成されたのか。確かめる方法は存在しない。夢は平気で偽の記憶を捏造してくる。「懐かしい」という感情までセットで用意してくるのだから、たちが悪い。
目が覚めた今も、あのゲームをやりたい気持ちが少し残っている。
だが待ってほしい。あのゲームは実在しない。実在しないゲームを「面白かった、またやりたい」と思わされている。冷静に考えると、僕は脳に一杯食わされている。プレイ時間0分のゲームのファンにさせられた。
いや、逆に考えよう。脳が自前でゲームをデザインし、僕を実際に楽しませたのだ。開発費ゼロ、開発期間一晩。それで「またやりたい」と思わせる完成度。うちの脳、ゲームクリエイターの才能があるのかもしれない。
ただ、できればその才能は、悪夢じゃないほうの夢で発揮してほしい。