悪夢   作:samiho

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何故か今日の夢日記をつけるまで「国語の教師かオメーはよォォォォ」ってギアッチョの発言だと思ってました。


2026/8/26 夜

その日の僕は、教室にいた。

 

小学校の教室だった気がする。国語の授業で、問題集を解く時間らしい。社会人になって何年も経つのに、夢の中の僕は当然のように小学生をやっている。ランドセルを背負っていい年齢ではない。周りの児童も、僕を見て何も言わない。夢の教室は年齢に寛容である。

 

配られたのは、プリント二枚。僕は二枚目から解き始めた。二枚目は、普通の漢字の読み書きドリルである。ここまでは平和だった。

 

そのとき、先生が「一問目のヒント」を出し始めた。

 

聞いてみると、僕が今解いている問題と全然違う。……あれ? 手元のプリントを見直す。二枚目だった。僕は二枚目から解いていた。順番を間違えていたのである。なぜ二枚目から始めたのかは、僕にも分からない。夢の中の僕は、順番というものに興味がない。

 

慌てて一枚目をめくる。そこにあった問題は、こうだ。

 

「ちぎれたイラストを復元せよ」

 

国語とは。

 

一問目は、「鬱」みたいに画数の多い漢字を六分割したものだった。バラバラのピースを組み合わせて、元の漢字を復元する。ジグソーパズルである。少なくとも国語ではない。そして何より、小学生に出す漢字ではない。「鬱」が常用漢字に入ったのだって比較的最近だ。教育課程を何段飛ばししているのか。

 

しかも、である。この難問パズルが一枚目で、普通の漢字ドリルが二枚目なのだ。順番がおかしい。ボス戦のあとにチュートリアルが来ている。プリントに順番もくそもないと言われればそれまでだが、それにしてもおかしい。

 

結果から言うと、解けなかった。先生のヒントを聞いていたはずなのに、解けなかった。ただし、言い訳はある。どう見ても、ピースの一つにハングル文字が混ざっていたのだ。ハングルを含む漢字。そんな漢字が、この世に存在しただろうか。存在しない、と思いたい。中国四千年の歴史をもってしても、たぶん無い。QuizKnockの山本さんなら解けたかもしれないが、僕には無理だった。夢の作問者は、出題ミスを認めてほしい。

 

気を取り直して、二問目。飛空艇の画像を復元する問題だった。

 

国語のテストか、これは?と思いつつも解き始める。

 

いや、待て。

 

「国語」ってよォ~~~……。プリントの上に「国語」って書いてあるんだよ。授業が国語で、プリントが国語で、だから「国語」って書きてーって気持ち……!それはわかる。スゲーよくわかる。時間割どおりだからな……。

 

だがッ!中身が飛空艇のジグソーパズルってのはどういう事だああ~~~っ!?

 

文字がどこにもねえーじゃねーかッ!読解もねえ!漢字もねえ!絵だッ!絵しかねえんだよォオオォオオオ─────ッ!絵を並べて国語が身につくかっつ──のよ────ッ!身につくもんならつけてみやがれってんだ!ナメやがってこのプリントォ、超イラつくぜぇ~~~ッ!!それって納得いくかァ~~~おい?オレはぜ──んぜん納得いかねえ……。

 

……夢の中の僕は、完全にギアッチョだった。プリント一枚に本気でキレていた。小学校の教室で。

 

とはいえ、キレても問題は解けない。ピースは明らかに合わない。どう組んでも、飛空艇の形にならない。翼の隣にまた翼が来る。船底の下にまた船底がある。だいぶ悩んだ。

 

だが、悩んでいるうちに、なんとなく構造が見えてきた。

 

——これ、もしかして。

 

そう思ったのと同時に、近くの席の友達がつぶやいた。「これじゃね?」

 

僕らは目を合わせた。そして、叫んだ。

 

「船は2隻あったッ!!」

 

一隻分だと思っていたから合わなかったのだ。二隻分のピースが混ざっていた。授業中に二人で叫ぶ内容ではないが、あの瞬間の僕らは、確かに真理に到達していた。叫びながら、ブチャラティもこんなこと言ってたなぁ、と思い出した。あちらはもっと切実な状況だった気がするが、脳内での格好良さは同格である。ギアッチョになった直後にブチャラティになった。この夢、暗殺チームと護衛チームを一人で回している。

 

ひとしきり達成感に浸ったところで、僕は学校のトイレに向かった。

 

小便をしながら、ふと考える。今日投稿する話、どうまとめようかな。さっきの飛空艇の話は使える。ハングルの件も入れよう。ギアッチョのくだりは、あれ、そのまま書いていいんだろうか。プロットが頭の中で組み上がっていく。

 

……ん?待てよ。

 

これ、夢だよな?

 

夢の中で、夢日記のプロットを練っている。ネタの現地調達にもほどがある。しかも今、僕は何をしている?小便をしている。夢の中で。

 

これ、まずいやつじゃないか?

 

僕は慌てて目を覚ました。飛び起きて、確認する。

 

……おねしょはしていない。よかった。心の底から安心した。

 

——というのも、夢でした。

 

二重構造である。夢の中で「夢だ」と気づいて起きたはずが、その目覚めごと夢だった。「安心した」という感情まで、夢の中で消費させられた。もう何度目か分からない偽りの覚醒だが、今回は事情が違う。賭けているものが違う。いつもは「電気がつかない」で済んでいたのに、今回は社会的な何かがかかっていた。

 

改めて、今度こそ現実で目が覚めた。

 

そして、確認した。二回目である。無事だった。

 

得られたもの:飛空艇が二隻だったという真理。

失われたもの:おねしょの心配のない安眠。

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