光明機動ネメシスエイト   作:星々

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第11話「夜が明けるよ」

「軌道に乗った。速度安定…周回軌道に固定したわ。」

 

ヴェーガスの雰囲気は暗かった。

まだ十代半ばのパイロットを3人も見捨ててきてしまったのだから仕方のないことといえばそうだろう。

 

「これからどうするよリーダー。」

「進路をワシントンへ向けろ。」

 

レックニックの質問に対しエリックはこう答えると、ブリッジにざわめきが走った。

 

「ワシントンっていうと…地球連邦軍最高司令官に会いにいくつもりなんでしょうけど、何のつもりエリック?」

「……真相を確かめる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

同刻、地球連邦軍司令本部。

そこの広大な一室には、執務机に座る男とその補佐官の女のみがいた。

男の方は50歳、女の方は27歳という年の差だ。

 

「任務に失敗したようです。」

「彼が邪魔に入ったか…で、ネメシス08は。」

「アポカリプスは戦線を離脱、IAD3機及びそのパイロット3名を失いました。」

 

窓から傾き始めた太陽の光が差し込む。

部屋の照明は付いておらず、少し薄暗い。

 

「関東地区は蒸発…リリスの回収は困難か。」

 

男は手を組んでそれを鼻の下に当てる。

 

「仕方あるまい、不本意な展開ではあったが駒を進めるとしよう。」

 

女は軽く頭を下げる。

すると男は、思い出したように右手を上げ彼女に言う。

 

「その前にエリック・ノヴァ特務大佐と話がしたい。彼もまた、計画について知ってしまった。」

罪人(ラベルブラック)ですか?」

「否、彼は私の口から真相を聞きたがっているはずだ。」

 

男は笑みを浮かべる。

 

「親しいご関係なのですね。」

 

無言。

男のその反応に対し、女は地球周回軌道にいるヴェーガスに暗号通信によるメッセージを送ろうと手元の端末を広げる。

しかし、男はそれを制止した。

 

「彼は来る、必ずな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人の男が対面した。

一方は地球連邦軍最高司令官"ピーター・シャーウッド"。

もう一方は特殊部隊アポカリプス隊長"エリック・ノヴァ"。

それぞれ斜め後ろには付き添いがいる。

ピーターには"サンドリヨン・アナズィ"。

エリックには"カトリーヌ・レイン"だ。

 

「お久しぶりです、ピーター司令。」

「待っていたよ、エリック特務大佐。」

 

2人は互いを睨むように目を見合い、数瞬の沈黙が薄暗い部屋を支配した。

 

「用件は分かっている。ジョウ・フリエン少佐に聞いたことだろう?」

「はい。その真相を伺いに参りました。」

 

ピーターはふっと笑い、立ち上がった。

 

「彼の話していたことは間違いではないよ、言葉選びに問題はあったがね。ゴーストはリリスの失敗作。ネメシスタイプのゴースト化の危険性は否定できない。」

「…………」

 

黙り込むエリック。

ピーターは再び笑みを浮かべて話を続けた。

 

「確かに関東のように、ゴースト自爆によって国民の財産は失われてしまった。しかし、それを防ぐのが君たちの仕事だろう? なってしまったことについてとやかく言うつもりは無いし、成功自体が困難な任務だということも理解している。しかし、全ての責任が、私にあるというのは間違いだろう。」

「そうは言ってません。」

「そういう目に見えたのだがね。」

 

再び睨み合う2人。

付き添いの女性2人はこの空気に口が開かない。

 

「とにかくだ、今我々が戦うべきなのはイスダルンであり、その為の計画なのだ。」

 

ピーターが数歩歩く。

その足音でさえ、この場では大きく聞こえた。

 

「もしネメシス08が健在ならば、計画の駒は進めずにこのまま停戦状態を保とうとも考えたさ。だがネメシス08どころか、テンペストやギガンティックが無き今、駒を進めざるを得ないだろう。最後のゴーストがイスダルン支配地域に現れれば都合はいいが…こちら側に出た時は、君たちに働いてもらうよ。」

 

傲慢。

この単語がエリックの頭に浮かんだ。

ブチ切れそうになったエリックを止めるように、カトリーヌが口を開いた。

と言っても、彼女もまたキレ気味であるが。

 

「パイロットの話は、しないのですね。」

「この世界事情では、我が軍にとって重要なのはネメシス08だ。あれは-----」

「子供達ですよ…!」

 

ピーターの言葉を聞き終える前にカトリーヌが言った。

ピーターは目をつむり、口角を上げた。

さらに隙を見つけたエリックが遂に声を上げた。

 

「いつからそんな神を気取ったような人間になったピーター! だいたいな……!?」

 

エリックの怒鳴り声も、カチャという金属音と共に静寂に還った。

ピーターのその行動によって、場の空気は凍りついた。

まるで、氷結したダイヤモンドのように。

崩れることのなかったであろう空気が、銃という冷気によって凍りつき、一触即発の大変脆いものとなった。

 

「調子に乗るのも大概にしてもらおう。私は今すぐこの引き金を引くこともできる。」

 

金で飾られた銃が妖しくきらめく。

エリックが半歩下がって両手をゆっくり上げた。

カトリーヌもそれに続く。

それを見たピーターは顔を緩め、銃口を天井へ逃がした。

 

「とはいえ、あまり荒っぽいことはしたくないのでね。それに、こんな着飾った銃で胸板を撃ち抜いたとしても、私に感動を与えない。」

「何だと…?」

「死は、人の感情に強烈に訴えかけるものがある。何一つとして、無意味な死などあり得ないのだよ。」

「何が言い……何を仰いたいのですか。」

 

ピーターが銃を机の上に置き、エリックへ向き直った。

 

「私も、心を痛めているのだよ。だからこそ、イスダルンとの戦争は早期決着が望ましい。」

 

エリックとカトリーヌは手を下ろした。

少し冷静になったのか、きちんとした軍人の態度で姿勢を正した。

 

「では、その駒を進めた先というものをお聞きしたい。」

 

ピーターは「じきに判るさ」とだけ言い、執務机に腰を下ろした。

話は終わったといったピーターの態度にエリックは部屋を出ようと踵を返した。

それよりも少し遅れ、ピーターの横に立っていたサンドリヨンが小型の通信機を耳に当て驚いた顔をすると、ピーターに耳打ちをした。

 

「待ちたまえエリック特務大佐。」

 

ピーターの声にエリックとカトリーヌの足が止まる。

 

「たった今報告があった。ゴーストが出現したそうだ。場所は旧エジプト。」

 

エリックの眉が動いた。

先ほどピーターが言っていた、「イスダルン支配地域にゴーストが出現すれば都合がいい」という言葉を思い出した。

エジプトは現在、イスダルンの支配下にある。

重要拠点などはないものの、ある程度の人口とIAD待機数がある地域だ。

 

「君たちの仕事はゴースト殲滅だが、ネメシスタイプ無き今、任務の遂行は自由だ。」

 

エリックはピーターの言葉を背中で聞き、そのまま無言で歩き出した。

その目は力強く、しっかりと前を見ていた。

 

「行くぞカトリーヌ。」

 

小声でそう告げ、ヴェーガスへ向かう。

夜明けの太陽が2人の背中を照らす。

 

 

 

 

 

 




どうも星々です!

爆発に巻き込まれた主人公たちが全く出てきませんでしたね
てか今回は対談ということもあり、会話ばっかでしたねw
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