光明機動ネメシスエイト   作:星々

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第12話「We're Still Here」

黄金の砂漠を進行する黒い巨体。

全長は40mほどで、頭、胴、四肢が判別できる人型だ。

地元のイスダルン軍が緊急で迎撃を試みるが、ロングレンジではどんな兵器も効き目はなく、ADやIADで接近しても、ゴーストの素早い動きに手も足も出ない。

幸い、まだ市街地には到達していないため、早急に住民の避難が行われていた。

イミュー粒子を初めて兵器運用し、ADを改良してIADを開発したイスダルン軍の技術力を持ってしても、ゴーストに有効な攻撃はできていなかった。

 

 

 

 

 

「どうやって太刀打ちすりゃいいんだ…」

 

エリックは自室で頭を抱えていた。

ゴーストに接近していても自由に戦えるほど高い性能を持つ兵器はネメシスタイプのみ。

火力は十分なヴェーガスであるが、それでもどういう作戦を立てればいいか悩んでいた。

そこに、ノックの音が響いた。

 

「入るわよ、エリック…」

 

カトリーヌだ。

彼女はベッドに座り込むエリックの隣に腰を下ろした。

 

「私はアンタがどんな作戦を立てようと、全力で付いて行くわ。」

 

優しく声をかけるカトリーヌ。

エリックは彼女の微笑みを見て少し心が落ち着いた。

 

「無茶だっていい。無謀だっていい。でも、"無理"だなんて思わないで。」

「カトリーヌ…」

 

2人の手が重なる。

目線を下ろして少し考え込んだエリックは、顔を上げてしっかりと前を見据えた。

その目は何かを決意したようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「作戦を説明する。」

 

ゴーストの索敵圏内より遥か上空でパイロン飛行状態で自動操縦に切り替えてあるヴェーガスのブリーフィングルームに集まったメンバー。

彼らもまた、やる気や決意に満ちた表情だった。

 

「目標の直上から一気に急降下し、射程に入り次第ありったけの火力をぶつける。その間ヴェーガスは減速せずにギリギリまで接近、そのまま一気に離脱する。」

 

一撃必殺の無謀な作戦だった。

クルーへの負担、艦体への負担、リスク、その全てが大きかった。

だが、反論する者はいない。

作戦会議は、例になく短い時間で終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令、アポカリプスはゴースト殲滅を執行する模様です。」

 

サンドリヨンがピーターに報告する。

ピーターは相変わらず執務机に座り、手を組んでいる。

 

「構わん。計画を最終段階へ進める。」

「………はい。」

 

ピーターは表情を変えずにそう言った。

しかしサンドリヨンはどこか悲しげで、涙を流したように見えた。

 

「何故泣く。」

「…泣いてなんていません。」

「ならいい。早急に取り掛かろう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コンバット・フォーメーション発動‼︎」

 

エリックの掛け声で、ブリッジの各所から赤い光が点滅する。

 

「作戦開始‼︎!」

「舌引っ込めておきなさいよ!」

 

操舵士のカトリーヌが大きく舵を切った。

すると、ヴェーガスは艦首を真下へ向ける。

 

「歯食い縛れ!」

 

メカニックのシンジがエンジンのリミッターを解除する。

直後、全員に猛烈なGが襲いかかった。

重力も味方してヴェーガスはスピードを上げる。

 

「熱源反応! 敵さん気付いたぞ‼︎」

 

レーダー士のレックニックが報告する。

カトリーヌはそれを聞き、操縦桿を大きく動かす。

ヴェーガスがローリングする。

 

「ミサイル発射管、ホーミングビーム発射管、主砲、フルオープン!」

 

ゴーストとそのビットが放つ攻撃を回避しながら接近するヴェーガス。

カトリーヌの正確な操舵とレックニックの正確な情報が相まって、被弾することなく射程距離まで近付いた。

 

「ぶちかませ‼︎」

「ファイヤー‼︎!」

 

砲術士のアインがトリガーを引いた。

ヴェーガスが怒号を噴いた。

地面ごと抉らんとする量のミサイルやビームが放たれる。

それらは一直線にゴーストに向かっていく。

着弾。

立ち上がる炎と爆煙から飛び出したヴェーガスは、振り向かずに上空へ離脱する。

手応えはあった。

ここにいる全員がそう感じた。

しかし

 

「目標健在! まだ立ってやがるぞ‼︎」

「何だって!?」

 

煙の中立ち上がる巨大な黒い影。

無傷というわけではなかったが、まだ元気があるようだ。

エリックは迷わず次の指示を出した。

 

「アイン、残弾は!」

「ミサイル残弾60%! ホーミングビーム発射管は70%が使い物にならん!」

「ジェネレーターも過度なエネルギー消費に悲鳴を上げてる。だがあと1回は行ける‼︎」

 

シンジがジェネレーターの負担を指摘する。

以前の彼なら「あと1回は」など言わなかっただろう。

誰よりもこの艦を愛していたシンジが、ヴェーガスを壊す覚悟で言ったのだ。

 

「いい目をしてるじゃねぇかシンジ! よっしゃ、もう一度やるぞ‼︎」

「ちょっと待って!」

 

通信士のリンが制止した。

ヘッドホンを耳に押し当てながら、画面に表示される暗号を解読していく。

 

「連邦の航空艦隊が接近中! 戦闘態勢に入ったみたい!」

「援護か?」

「確認した。数は…10隻!? それぞれから5機ずつADが発信した!」

 

ヴェーガス級航空巡洋艦よりもひと回り大きいデネイヴ級航空戦艦10隻が横の隊列で現れ、腹にあるカタパルトデッキから5機ずつのADが飛び出した。

ここにきて、初めて軍からの援護だ。

 

「いや違う…こりゃADじゃないぞ‼︎」

 

アインが声を上げ、船外カメラで捉えた映像を正面モニターに回した。

そこには、青い光の尾を引きながら空を飛行するヒト型のロボットが50機映っていた。

 

「量産されていた…のか?」

 

投下された連邦製量産型IADが一斉に手に持ったライフルを放った。

防御力に優れている種のゴーストであるため決定打にはならないが、状況は少しは楽になった。

 

「結局、IADがなきゃ勝てないってことか…」

「そうね…じゃ、もういっちょ行くわよ。あの子たちの分まで!」

 

カトリーヌが操縦桿を握りなおす。

 

「待て、何かがおかしい。」

 

アインの抑止で再びブリッジで動きが止まる。

 

「艦隊が撤退していくぞ…!?」

「んだと!?」

 

連邦の艦隊がIADを置いて撤退していく。

目下では50機のIADがゴーストに取り付き、押さえ込んでいる。

困惑するアポカリプスに、映像通信が入った。

アインが映像を正面モニターに繋ぐと、そこには連邦軍総司令官の顔が映し出された。

 

『作戦中失礼するよ。奮闘ご苦労だ。しかし、君たちも早く撤退したまえ。』

「何だt…何故ですか?」

『じきにあの量産機がここを土地ごと破壊する。その後、近辺からその身を犠牲に破壊活動を始めるだろう。あのパイロットたちのようになりたくなければ、早く離脱しろ。』

 

騒然とする一同。

連邦軍はこの機に乗じて、本格的にイスダルンを潰しにかかるつもりだ。

停戦協定を破って。

 

「それじゃまるでゴーストじゃない…」

 

カトリーヌが額に汗を流して呟いた。

各地に侵攻して自爆する。

ピーターの言葉にはこういった意味が含まれていた。

 

『少し違うな。アレこそが、アポスル神話計画の最終段階。迷いのない自立型IAD…私の求めた天罰(ネメシス)だ‼︎』

 

人の手によって放たれた感情なき兵士たち。

生物兵器の躊躇のなさと、機動兵器の制御性を併せ持ったアポスル神話計画の完成形。

否、ピーターの頭の中には、イスダルンが大陸ごと消滅するまでのシナリオが描かれているいのだろう。

彼は狂気に蝕まれていた。

一度地球を統一し平和を手にしてしまったが故に、現れた平和を脅かす存在に過剰に反応してしまったのだ。

まるでアナフィラキシーショックのようなその行動は、最早誰にも止められない。

 

「そんなの…人のすることじゃねぇ‼︎」

 

不敵に笑うピーターに向けエリックが叫ぶ。

 

「訳の分からんバケモノが襲ってきて、そいつの爆発に巻き込まれて死んでいくなんたァ、人の死に方じゃねぇ‼︎」

『分からぬと言うのならば、貴様らもイスダルンと共に地球の膿となれ‼︎ 私はもう、止まれないのだ‼︎』

 

通信はノイズに阻害され、ついに途切れた。

高濃度のイミュー粒子が電波に干渉した結果だった。

そして、これはゴースト。もしくは量産型IADの"自爆"を意味する。

やはりネメシスタイプがいなければゴーストは倒せないとエリックは痛感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、

 

 

 

新たな青い軌跡が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも星々です!

今回もパイロットたちは登場せずと、はい
それはそうと、通信士のリンさんってもしかして初登場?w
アポカリプスの特性上、通信士の出番が少ないのは仕方ないことですが、さすがに遅すぎましたか…
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