ゴーストの体心に大穴が空いた。
苦しみもがきながら倒れ込むゴースト。
そこに再び超音速の光が通過し、ゴーストが真っ二つに裂ける。
「な、なんだ…? レックニック、レーダーで捉えられるか!」
「無理だ、速過ぎる!」
再び閃光が走ると、今度はゴーストが押し潰されるように地面にめり込む。
そこに、それの姿はあった。
青い幻想的な光を放ちながら顔を上げると、そこにあるエメラルドの如き瞳が光る。
起き上がろうとするゴーストに、左の拳を撃ち込む。
断末魔の叫びを上げるゴースト。
耳を劈くようなその悲鳴は響き渡り、雲を払った。
そしてゴーストは、赤い光へ還った。
「ネメシス…08‼︎」
カトリーヌが身を乗り出し、正面モニターに映し出されたその姿に見入る。
その向こうの砂丘には、3つの影も見える。
その目には涙が浮かんでいる。
「ヘッ、生きてやがったが…ズタボロじゃねぇか。」
エリックは、上半身の右半分と頭部装甲の一部を失ったその機体を見て鼻をかく。
アポカリプスは、これで助かると安堵した。
願わくば、ピーターの計画も打ち破ってくれとも思った。
その想いが伝わったかのように、満身創痍のネメシス08は立ち上がり、量産型の群れに向き合う。
光のマントがなびく。
「ほぉ…流石は成功品、といったところか。しかし、邪魔するつもりならば思うようにはさせんよ…」
「し、司令…?」
先ほど撤退した戦艦の内の1隻が、回頭して戦闘区域へ戻ってくる。
その艦を指揮しているのは地球連邦軍最高司令官ピーター・シャーウッドだ。
「アレを使う。」
「い、いけません司令! あれは、人に向けていいものでは!」
冷たい視線をネメシス08へ向けるピーター。
「私の目の前に立ち塞がっているのは、人類の敵になり得る存在だ…害虫は孵化する前に駆除せねばならん。」
クルー全員が顔面蒼白になり、空気が硬直する。
ピーターは艦に搭載されているある兵器の発射権を手元の端末に移動させ、発射ボタンを表示させた。
しかし、そこに指が触れようとした時、艦を大きな揺れが襲った。
下から何かがぶつかったことによって起きた揺れだった。
『
通信回線で話しかけてきたのはエリックだった。
ピーターはヴェーガスから離れるように指示すると、キャプテンチェアに座り込んだ。
「いいだろう、一騎討ちといこうかエリック‼︎」
「総員、対艦戦闘用意‼︎」
サンドリヨンの号令で戦闘態勢に入るデネイヴ級航空戦艦。
今、艦同士のドッグファイトが始まろうとしていた。
上空で航空艦同士のドッグファイトが始まった頃、地上では4機のIADが50機の量産型と対峙していた。
ネメシス08、テンペスト、ギガンティック、リルモアだ。
「一人当たり13機の割り当てね。できる?」
「ゴーストに比べたらよゆーだよ。」
「えっと、ユリは?」
「余裕だよ。なんなら私が半分受け持ってもいいくらいにね。」
どの機体も満身創痍でとても余裕そうには見えないが、彼女らには冗談を言えるほどに心の余裕がある。
不思議と、自信が湧いてくる。
「じゃあ行くわよ。フィルシアは後方援護、ユリと私でアタッカーをやるわ!」
「「了解!」」
ネメシス08の後ろに立つ3機が同時に動いた。
ギガンティックは片方しか残っていないキャノン砲と、無理やりこじ開けたミサイルポッドとホーミングビームをフル回転させ、怒涛の弾幕を形成した。
「ユウ君の道を切り拓くのよ!」
「分かっている!」
テンペストとリルモアは、初の共闘とは思えないほどに連携をこなし、量産型を左右に押し広げるように道を作っていく。
もちろん、量産型も無抵抗というわけではなく、物量でこちらを押し返そうとする。
しかし、50機のライフルよりも、ギガンティックの形成する弾幕の方が圧倒していた。
「今よユウ君!」
「行って! 私たちの希望を託すわ!」
サクラとユリが切り拓いた道を駆け抜けるネメシス08。
追い越しざまにリルモアからビームの大剣を受け取ると、その刃を乱舞させた。
量産型の数が目まぐるしく減っていく。
戦闘中のネメシス08から、ヴェーガスへ座標データが送られてきた。
「エリック、ネメシス08からだ! "ここにデネイヴ級を誘導しろ" 座標を表示する!」
「カトリーヌ、アイン、できるか!」
「勿論よ! 私はカトリーヌ・レインよ!」
「無論だ!」
ヴェーガスは錐揉みしながらミサイルをばら撒きデネイヴ級を翻弄するように不規則にその首を振った。
それに食いつくデネイヴ級。
カトリーヌは操縦桿を勢いよく引く。
ヴェーガスは艦首を後ろに持っていくように宙返りし、瞬く間にデネイヴ級の真後ろについた。
続け様に主砲を放ち、見事にエンジンを破壊する。
「届けてやったぞ! デリバリー料金は高くつくからな!」
ヴェーガスはそのまま減速し、ホバリングするように空中に停滞する。
すると、眼前に光の柱が突き上がった。
「な、何これ……」
「ネメシス08が出してるのか…!?」
ネメシス08から伸びる光の柱は、ピーターを乗せたデネイヴ級を包み込み、表面装甲を剥がしていく。
地上でも量産型が次々と破壊されていく。
「何が起きてるレックニック!」
「高濃度イミュー粒子の流れだ…ゴーストの自爆と同じ現象を、超限定的に発動してるんだ!」
放出されたイミュー粒子とそのエネルギーを収束し、天に向けて放つネメシス08。
その周りを囲むように集まるテンペスト、ギガンティック、リルモア。
ボロボロの手を繋いだ彼女らは、ネメシス08に、ユウ・ヴレイブにありったけの想いを注ぐ。
「駄目だエリック、ここはもう危険だ!」
高濃度イミュー粒子領域下では、どんな現象が起きるかまだ完全に解明されていない。
故に、これ以上あの現象の近くにいると危険だと判断したレックニック。
しかし、クルーたちははまた子供たちを置いていくのかと思った。
「大丈夫だ、アイツらは必ず帰ってくる。その時が来て、帰ってくる家が無くなってたなんてことになんねぇように、俺たちは精一杯生きるだけだ。」
エリックは何処か誇らしげに、しかし寂しそうに、光の柱を眺める。
他のメンバーもその光を眺め、彼らの無事を祈った。
光の柱は、神々しくも優しく、乾いた大地を照らしていった。
それは人々を温かく包み込み、心の中に希望の光を灯していく。
人の心の希望を信じるかのように。
こうして、真のアポスル神話計画は阻止され、軍内で大きな改革が行われた。
ピーター・シャーウッド及びサンドリヨン・アナズィ、以下10名のデネイヴ級クルーは、その痕跡すらも発見されていない。
アポスル神話計画推進派は軍から追放され、最高司令部もそのほとんどの人員を入れ替えた。
地球連邦軍は大きく変わったと言っていいだろう。
しかし、
しかし、あの日の光の柱は、いつまでも人々に語り継がれることだろう。
あの神々しい現象は、本当の意味での神話となるだろう。
彼らがあの時、何を望んだかは定かではない。
しかし、そこに希望があったことは、疑いのない事実だと言える。
第一章
終
どうも星々です!
ここでひとまず第一章終了です!
ご愛読していただいた方々に感謝の意を示すと同時に、これからも楽しく書かせていただくことを、ここに書かせてもらいます
第二章ですが、割とすぐに執筆に入れると思います
主人公であるユウ、今回は登場しましたが一言も喋りませんでした
この辺について、あと消化不良で終わった設定などに触れていきたいと思ってます
乞うご期待っ!w