光明機動ネメシスエイト   作:星々

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第十話「BANG!BANG!BANG!」

アマツχ(カイ)は強敵だった。

ただでさえ苦戦を強いられていたアマツの改良型なら当然といえば当然だろう。

しかしこちらもこちらで、力強い味方が加わったのだ。

否、加わったというのは語弊があるかもしれない。

実際は、ネメシスアークに閉じ込められた意識と眠っていた肉体が再び一つになり、目覚めを迎えた。

トリガーとなったものは不明だが、恐らくヘンズを含めた多数の意識の介入が絡んでいると推測される。

 

「急速変形!」

「はい!」

 

アマツχの天羽々斬のキレのある斬撃を俊敏な動きで回避する。

追うように放たれたビームカッターを人型に戻ってライフルで撃ち落とすと、今度は胸上部ハッチからスプレーミサイルを発射、同時に槍を手に取った。

右手に槍、左手にライフルを構え、重力に任せ落下する。

その先に捉えるのはライバルの姿。

 

『なんだこの動きは!?』

 

ウイングバインダーを羽ばたかせると、青い輝きが一層美しさを増し、空にオーロラのようなカーテンを張る。

 

『お前は、誰だ‼︎』

 

まるで別人のような動きに驚き、恐怖心さえも抱くハルト。

仮面の下の目は動揺に染まっていた。

一瞬だが、彼は冷静さを失った。

そしてこの一瞬こそが、この光明のような機動の前では致命的な隙となる。

 

「でやあぁああ‼︎」

 

しかしその槍が届くことはなかった。

一発の弾丸が2機の間を通り抜け、ネメシスアークの槍を弾いたのだ。

飛んできた方向を見ると、崖の上から片脚を岩の上に乗せライフルを構える緑色のアマツ、即ちカグラがいた。

冷静な介入者はアマツに通信を入れた。

 

『ハルト、軍からの招集がかかりましたわ。"無用な戦闘は避け、直ちに指定作戦ポイントまで移動されたし"だそうですわ。』

『しかし、これはエリック准将からの依頼だ!』

『そう言ったのですが、正式な任務ではないと言われてしまいましたの。残念ながら、決着はまた次の機会に、ということですわ。』

 

ハルトは悔しさ紛れの息を出すと、アマツχに天羽々斬を仕舞わせると、音声を外部スピーカーに繋いだ。

 

『悔しいが勝負はお預けのようだ! 今回は私の劣勢で終わったが、次は必ずや圧倒してみせよう! 待っていろヘンズ!』

 

そう言い残し、アマツχとカグラは飛行形態に変形し、離脱していった。

 

「敵前逃亡か。だがいい心の持ち主だったな。」

「ハルトが、ですか?」

「あぁ。」

 

ネメシスアークは付いた膝をゆっくり伸ばし、崩れた碇工房に歩んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃墟となった工房を歩き回るシンジ。

自分が作り上げた生活の場が破壊されたのにも関わらず、意外と冷静にいられた。

覚悟はできていたのかもしれない。

歴史の闇に葬られたアポカリプスの元メンバーである限り、いつか厄災が訪れると悟っていたのかもしれない。

ただ、それでも逃げる気にはならなかった。

 

「そりゃそうか…たった一人の弟分が、ここにいるんだからな……」

 

そういってネメシスアークの方を振り向く。

跪いた状態でシャットダウンしたネメシスアークの胸部から、2人の少年が出てきた。

肩を組み、一方がもう一方を庇う形でゆっくりと降りてくる。

 

「いや、2人か? まぁ年齢差的にはもう息子くらいだけど。」

 

自嘲気味の笑みを浮かべ、崩れた壁の破片を拾い上げる。

 

「俺も歳をとったもんだ。若いまんまのアイツが羨ましいよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地面につきますよ。せーの…!」

 

ヘンズの肩を借りてなんとか地面に降り立ったユウ。

その髪や肌は変色が治っておらず、顔や手脚はもとの形に戻ってはいるものの少し不気味な姿である。

しかし、その点以外では美少年と形容できる容姿は健在だった。

それも、12年前のあの日から変わらずに。

 

「ありがとうヘンズ………ッ!?」

 

降りたユウは、突然の全身の圧迫感に驚く。

それは抱擁によるものだと分かったのは、肩が少し濡れた時だった。

 

「ユウ君……よかった、ユウ君……!」

「ユリ…なのか……?」

 

幼馴染で、想い人。

その成長した姿に戸惑いながらも確かに覚えている彼女の感覚に、ユウの心は安らいだ。

(はた)から見れば年の離れた姉弟の再会に見えるだろう。

そう思えるほど、ユウはあの日のままだった。

 

「おかえり、ユウ君。」

「無事でよかったよーほんと。」

 

サクラとフィルシアもユウへ歩み寄る。

サクラは涙を隠してサングラスをかけ直し、フィルシアは相変わらずの笑顔で、彼を迎えた。

ユウとユリが抱き合う姿を目で示し、サクラの脇腹を肘でツンツンする、この揶揄(からか)いも相変わらずだ。

しかし思えば、12年ぶりにサクラとフィルシアが再会して以来、彼女はサクラを一度も揶揄っていなかったように思える。

フィルシアもまた、心のどこかで辛さを抱えていたのだろうか。

 

「みんなもう大人だな…そうか……オレは12年間もネメシスの中にいたんだもんな………。」

 

悲しそうに呟くユウ。

その四肢には、抱きしめてくれるユリの背中に手を回すほどの力も残っていなかった。

精神はあの日のままでも、肉体は12年もの間の硬直で自由が利かなくなっていたのだ。

成長が止まっていたとはいえ、経年劣化とでも言うべき衰退に限界を迎えていた。

そんな弱り切ったユウにそっと声をかけるかつての兄分。

 

「よくまぁ生きてたもんだ。お前ってやつは、いつも無茶ばっかりして…」

「シンジ…? だいぶおっさんになったな。」

「うっせ。あぁ、それはそうと。お前どうやってあの状態から抜け出したんだ?」

 

シンジの問いに涙を腕で拭って答えた。

 

「引きちぎった。」

 

子供のような笑顔でそう言い放ったユウ。

腕の筋肉が無事ならグーサインをしていただろう。

 

「ったくお前ってやつは……」

 

彼の無謀っぷりに呆れた様子で頭を掻くシンジ。

だがユウの相変わらずの言動に元気があることを確認し、少し安心した面もある。

とはいえ、ユウの身体がどのような状況にあるか、もあいくはあったかを調べる必要がある。

下手に手を出せない状況でも()()()()()という無茶苦茶な行動を取れる勇気、勇敢さを持ち合わせているのが、ユウ・ブレイヴという男だ。

 

「ほんっと、相変わらず向こう見ずのバカね。」

「耳が痛えよ、サクラ。」

 

そう、向こう見ずとも言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、

戦場に向かったハルトとイクス。

向かった場所は

 

 

()()()

 

 

偶然か必然か、

運命の悪戯とも言える彼らの行く末は、最初から仕組まれていたとも思える程に深く交わっていた。

そうだとしても、彼は、涼波・ハルトはヘンズとの決着を望んでいた。

彼自身、何か悪い予感のような、所謂、()()感覚を抱いていた。

 

「そうだとしても…」

 

サブモニターに映されたネメシスアークの画像データを睨みつける。

仮面の下から覗くその目は、笑っているように見えなくもなかった。

戦いに生きる者。

兵士としてではなく、武士や騎士といった精神を持ち合わせた男。

そしてイクス・ナッハフォルグもまた、宿敵と向かう場所が一致していたのだが、その話に関してここで深く語る事ではない。

ただ近いうちに、また彼らが交わることとなるのは目に見えた事実であった。

 

 

 

 

 

 

そして警告は、鳴り響く

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも星々です!


ユウ君復活です!
といっても身体ボロボロですが

そして次回!
色々と判明しますっ(←なんたるアバウト)
お楽しみに!
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