光明機動ネメシスエイト   作:星々

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最終話「無音の警告(前篇)」

地球連邦軍江ノ島派遣部隊は厳戒態勢を保っていた。

と言うより、隊の指揮を執るエリック准将の合図を待っている状態だ。

江ノ島があった場所から出現した白い巨体は、ただただ何かの構造物のように黙り込んでいた。

よく見ると、10mほどの人型の何かが集まって数千メートルはあろう巨大な身体を構成しているのがわかった。

それは、偵察機が接近しても反応を見せずに、ただそこにいた。

それが余計に、連邦兵たちの恐怖を煽っていた。

しかしエリックは沈黙を守っていた。

 

(リリスにこちらから手を出したら終わりだ)

(あちらが動くまで、待つんだ)

 

元アポカリプスということもあり、一部の者にしか開示されていない情報を彼は持っていた。

その中でもリリスのことはよく理解している部類で、彼もユウと同じような認識を持っていた。

故に、「攻撃開始」のその一言を言わずにいた。

しかしだ、

 

「ヴェーガス級航空戦艦-401(ヨンマルイチ)が飛行魚雷発射!」

「こちら旗艦ヴェーダ! 命令違反である! 直ちに攻撃を中止せよ! 繰り返す、これは命令違反である!」

 

ヴェーガス級航空戦艦の内の一隻が、この状況に耐えかねずに飛行魚雷を発射してしまった。

それにより張り詰めていた緊張の糸が弾かれ、周囲のAD、戦艦もが攻撃を開始してしまった。

指揮官の指示を無視した行動は、数分の内に大きな混乱を招いた。

 

「落ち着け! まだ命令していない!」

 

エリックの額から汗が落ちた。

 

(連邦軍はここまで無能な指揮官だらけだったとは…ッ)

(しかしどうするこの状況は……こちらが先手を打ってしまったら…!)

 

行動を起こさなかった旗艦ヴェーダとハルト率いる空戦部隊を除く連邦軍の大部隊は隊列を乱し、皆が白い巨体に突撃したがために艦配置の間隔が狭まり、身動きが取れなくなってしまった。

 

「愚か者めが!」

 

ハルトが歯ぎしりして叱責した。

その時。

巨体の頭に当たる部分が動いた。

顔を上げるような挙動をすると、その頭の中央が赤く光り輝き始めた。

次の瞬間、細い一筋の光が海面をなぞり、海を斬り裂いた。

直撃を受けた戦艦は綺麗に両断され、射線上のADは消滅した。

その一瞬の出来事に、五月雨のような乱射は止み、不気味な静けさが江ノ島海域を包んだ。

割れた海に海水が流れ込む音と、戦艦やADの駆動音が、その海域の全てだ。

ジリジリと後退りする連邦艦隊。

しかしエリックの指示なく後退するというこの行為も、陣形を余計に崩すこととなるのは目に見えている。

 

「空戦隊、高度を維持したまま動くなよ。私が様子を見てくる。」

 

ハルトがそう言うと、飛行形態のカグラから飛び降り、自ら飛行形態へ変形した。

十分に高度を取り、一定の距離を保ったままリリス周囲を旋回する。

 

「次弾発射までのタイムラグがあるのか、それとも単なる気まぐれか…どちらにせよ油断はできんな……」

 

実際、周囲を旋回するアマツを、リリスはその目で追っていた。

その目に睨まれる感覚は、ハルト自身、身に覚えがあった。

 

(ネメシス…アーク……)

 

心の中でそう呟いた。

宿敵、好敵手のその機体の名を浮かべた刹那だった。

リリスの瞳が、ギラリと光った。

 

「…ッ‼︎ 全機戦闘態勢! フォーメーションα‼︎」

 

リリスが跳躍した。

水柱を立てて、成層圏まで届く勢いで、()()()

瞬時に指示を出したハルトは再び人型に変形し、カグラに飛び乗る。

高性能機を与えられ、適格な指示が出せたとは思ったが、これも気休め程度、否、それ以下かもしれない、という直感がハルトの頭の中を駆け巡った。

 

「エリック准将! 防御の指示を!」

「わかっている! 全艦、衝撃に備えよ! 出力低下も止むおえん、イミュニック・フィールドを上方に集中!」

 

並程度の指揮官であれば一瞬の出来事に状況把握が追いつかなくなり状況報告を求めるのに対し、エリックは瞬時に指示を出すことができた点、彼が有能な指揮官であることが伺える。

 

(ネメシスアークという言葉に反応した…? 否、まさか…な……)

 

ハルトは何か突っかかるものを胸に感じながら、リリスの行動を凝視する。

小さな点になったリリスが徐々に大きくなっていく。

連邦の大部隊は身構えた。

全員が緊張の中それを見上げる。

そんな中、リリスは上空で停止し、雄叫びを上げた。

 

「ッ!? な、なんだ!?」

 

終幕を告げるような雄叫びと共に、リリスを中心に雲が渦巻いた。

それはみるみるうちに巨大化していき、旧江ノ島どころか旧日本の空を覆い尽くした。

そして、豪雨と暴風が吹き荒れる。

 

「気象現象をコントロールしたとでも言うのか…!?」

 

それは、台風(タイフーン)

それも超大型と呼ばれる規模のものだ。

強烈な風と猛烈な雨を伴い、空を支配する()()()

それが今、連邦軍を襲っていた。

 

「雨の影響で粒子兵器の威力低下、粒子発電の発電効率低下……イクス、高度維持はできるか?」

「ギリギリではありますが、なんとか可能ですわ。」

「すまん、耐えてくれ。」

 

2機分の重量を支えるカグラは、推力低下によってとても不安定な状態に陥った。

さらに暴風雨がそれを揺さぶる。

これではまともに戦闘することは不可能に近い。

それは海戦仕様の機体や、巨大なDADにも言えることで、連邦軍の戦力は一気に無力化されてしまった。

 

「手も足も出んか…ッ!」

 

ハルトは歯を食いしばり屈辱の表情を浮かべた。

それは手も足も出ないことよりも、自らの力不足に対する怒りにも思える。

 

 

 

 

 

 

その頃、旗艦ヴェーダもバランスを崩して高度をどんどん落としていた。

 

「これより本艦は海上航行に移行する。総員、着水の衝撃に備えよ‼︎」

 

荒れ荒ぶ海に轟音と共に着水したヴェーダは、波に揺られるまま敵を睨むことしかできなかった。

海に降りたところで艦体バランスは不安定なままで、攻撃はおろか防御すらもままならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、とある艦が現海域に接近していた。

荒れる海を潜行して戦闘海域に接近していく。

 

「久しぶりに、暴れようかしら。」

 

白髪の女性がグローブを手に馴染ませる。

 

「復元機では性能の限界がある。イスダルンの技術といえど過信しないで。」

 

桜髪の女性が髪を後頭部で束ねる。

 

「その辺は腕で補えるでしょ? まぁウチには3Aの産物があるけどねー。」

 

翡翠色の髪の女性がヘアピンの位置を整える。

 

「みんなは俺たちの接近を援護してくれ。」

 

車椅子の少年が言った。

 

「では、いきましょう。」

 

それを押す茶髪の少年が力強く言う。

 

 

5つの勇姿が、戦場に赴く。

その背中は光に照らされ、その視線は嵐の中へ。

迎え入れる愛機の目は優しく、包み込むような抱擁感を含んだコックピットへ導く。

 

「久しぶり、リルモア…」

「復元機だけどできる限りの再現はしたつもりよ。」

 

青いIAD。

 

「よいしょっと。こんなに燃えてきたのは10年ぶりくらいかなーっ!」

 

黄色のIAD。

 

「行きましょう。僕たちの未来のために。地球の住民としてではなく、ひとつの種族としての。」

「…………………」

 

(なんだ…この、懐かしいような、どこか覚えのある感覚は……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

人類自立の時が、近付いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも星々です!

いやぁラスボスですよ
強そうですね(小並感)
台風作っちゃうなんて只者ではないですはい
厳密には台風的な気象現象ですかね(台風の目が存在しない、もしくは極端に小さいという辺り)

さて、決戦に際し色々モブ機体でてきたんでそれの紹介しますね↓


DAD-E2 ビショップ

連邦軍のD(デストロイド)A(アーマー)D(ドール)シリーズの一機。拠点攻略用大型機動兵器として運用され、攻撃力、防御力ともに強力である。結果的に大型化し、その全高は40mに達する。このサイズはDADシリーズにおいても大型で、製造コストも高く数こそ少ないものの、多くの戦場で多大な戦果を挙げている。ホバリング可能で、江ノ島海戦にも投入された。

-武装-
・ビームキャノン×2
・多連装ミサイルランチャー
・ヒートネイル/スティンガーミサイル
・主肩部ミサイルポッド
・ビームブレイド/ビームスラッシュ
・粒子爆発式弾頭"メテオ"
・大出力反重力圧縮粒子砲"ブラスターローア"


【挿絵表示】











型式番号不詳 アカツキ

アマツ、カグラの流れを組む機体。特筆すべき特徴は、世界初の変形無しに飛行可能な非ネメシスタイプであること。背中に大出力のスラスターを背負い、装甲の軽量化によって実現した。しかし問題点として、脆弱な防御力と短い稼働可能時間が挙げられる。量産を視野に開発が進められていた実験機であったが、急遽戦線に投入された。


【挿絵表示】
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