光明機動ネメシスエイト   作:星々

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最終話「無音の警告(後篇)」

3機のIADが解き放たれた。

そのうちの1機、ギガンティックアサルト、パイロットはフィルシア・ナイトウォーカー。

たった1機で一個部隊相当の火力を有する重量級の機体だ。

水中ウェアをパージして海上に出、フライトパックでホバリングする。

フライトパックという名を冠してはいるものの、あまりの重量に水中ウェアの下に装備できるサイズでは、滞空・水平移動が限界であった。

 

「っと…さすがに荒れてるねっ!」

 

嵐の中、この重量は不利に働く。

ましてやここは海上だ。

ギガンティックアサルトが最も苦手とする環境と言えるだろう。

 

「正確な射撃は不要よ。」

「牽制だけで十分だから。」

 

続けて海上に現れたのは、白地に青のIAD。

そのフェイス部分にはツインアイ式のカメラが確認できる。

赤い瞳を持つその機体は、リルモア。

複座のメインパイロットはユリ・ノハナ、サブシートにはサクラ・ルル。

リルモアは非連邦製(正確に言えば外身は連邦製)のIADで、12年前に破壊されたと考えられていた。

しかし実際は、ユリ・ノハナが回収しサクラ・ルル指導で復元されていた。

性能は若干落ちるものの、依然として驚異的な性能は持ち合わせている。

 

「連邦が先手を打ってしまった以上、交戦は不可避だろう。だがやるぞ!」

「はい! 僕たちの言葉を、想いを届けるんです!」

 

そして、最後に水柱を上げて現れたのは、白と赤の身体に大きな翼を持つ槍突士、ネメシスアーク。

 

 

【挿絵表示】

 

 

悪天候の中でも自由に飛行できるようにウイングバインダーを換装した特別仕様だ。

腰部には立体機動用のアンカーが2本取り付けられ、ライフルは右腕に連結される方式のものに換装されている。

ネメシスアークはこの悪天候の中、暴風雨を構わない優雅な立ち居振る舞いで舞い上がった。

 

「行きますッ‼︎」

 

槍を掲げて見つめる先には、地球の守護者、希望の道が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現れた3機のIADを、連邦兵たちはしっかりと見ていた。

12年前から戦場に立っていたものも中にはいる。

エリックやE2がそうだ。

 

「あれは…ネメシス…!?」

「彼らが来てくれたんだよE2。どうやら私たちがわざわざ追わずとも、あの子たちに任せておいても同じ道だったか。」

「そうね…懐かしいわ…」

 

2人は肩を抱き合い、懐かしむ視線で彼らを見た。

我が子を見るような眼差しで。

 

 

 

 

 

 

「ネメシスアーク…ギガンティックアサルト……それに、ネメシス07…!」

「フッ…だいぶ遅かったではないか、ヘンズ!」

 

イクス、ハルトもまた、心強いもの達の登場に喜びを感じていた。

これでなんとかなるかもしれない、可能性は依然として低いが、なんとかなるかもしれない。

そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聞いてくれ! 僕の声を!」

 

ネメシスアークがリリスに突貫する。

ギガンティックアサルトを背に、リルモアの護衛連れて、真っ直ぐに。

それに対しリリスは拳を振り上げた。

しかし、何かに驚いたように()を見開き、一瞬だけその身を止めた。

 

「人類の歴史を見ていたのなら、僕たちの種がどれだけ進化したかもわかるはずです!」

「もうハイハイの赤ん坊じゃないんだ! 俺たち人間は、その罪を償えるところまできている!」

 

その声を聞いている様子はある。

だがリリスは止めた拳を振り下ろそうとする。

その時

 

「手を貸すぞヘンズ!」

 

飛行形態のカグラとその上に乗るアマツが駆けつけた。

本当ならばバランスを取るのも困難な状況なのだが、これは意地の域まできている。

 

「やつは20m級の小型の集合体よ! 上手く避け続ければ物理的なダメージを減らせるはずですわ!」

「私たちが先導する!」

 

突貫するネメシスアークと、迫り来るリリスの拳の間に入り込んだ。

 

「見よ! 本当ならばお前を倒す為に隠していたアマツの秘儀! パルマ・ブラスターァアアア‼︎」

 

アマツの右手が輝き、その掌から圧縮されたイミュー粒子の束が吐き出された。

それは光の束となり、リリスの拳を突き刺す。

同時にカグラ、アマツ両機はリリスの拳に飲み込まれていった。

 

「ハルト!」

「未来への道先案内人は、この私が務めよう!」

「無茶だよせ‼︎」

「これは死ではない、人類が生きる為のォ……‼︎」

 

光の矢が爆ぜた。

リリスの拳が内側から晴れ上がり、爆発の光が所々から吹き出す。

その光の中、無意識の領域で2人は交わった。

涼波・ハルトと、イクス・ナッハフォルグである。

 

「これで、少しはまともな最期になったかしら…」

「思えば、華なり……思わざれば、華ならざりき………」

「え…?」

「ただ感じるままに…私は…飛ぶ……‼︎」

 

吹き出す光の中、深紅の機体が姿を現した。

飛行形態のその腕には、原型を失ったカグラが抱えられている。

そう、涼波・ハルト駆るアマツは、その想いと技術によって生還した。

そして彼らの決死の突撃により、リリスの拳から腕にかけて、一本の道ができた。

 

「行け、ネメシスアーク‼︎ お前に全て託す!」

 

ネメシスアークに、1本の天羽々斬(アメノハバキリ)が投げ渡された。

ヘンズはネメシスアークの右手に連結されたライフルをパージし、その刀を受け取る。

ネメシスアークはそれを認識し、操縦系とただちにリンクさせた。

 

「感謝します!」

「よし、行くぞみんな!」

 

ギガンティックアサルトとリルモアが幾つものビームを放つ。

それを盾にして、ネメシスアークが空を舞う。

アマツは追い越していくネメシスアークに敬礼を送り海に堕ちていく。

多くの人々の想いを、願いを乗せて、方舟(アーク)が、飛ぶ。

一筋の道に差し掛かる。

だが小型が一気に押し寄せ、ネメシスアークの行く手を遮る。

 

「負けるかよぉおおお‼︎」

 

左手の槍を、右手の刀を、鬼神の如く奮う。

その姿は尚も美しく、その表情(ツインアイ)は力強い。

 

「僕らの声は、確かに届いてるんだ。だから今度は、僕らの心を、()()を届けるんだ!」

「諦めるな! 道は見えている!」

 

2人のパイロットの少年が、白が支配する全天周モニターに囲まれながら、必死にリリスの心を探した。

そしてネメシスアークも、その必死な想いに連動して、その性能の限界を超える。

翼から放たれる青い光の量が増した。

その時

 

 

--- 撃って ---

 

 

「何…?」

 

 

--- 私を、私の()()を…撃って…! ---

 

「怒りだって…?」

「やはり……その声は…!」

 

リリスの外観が変化した。

中にいる2人には分からないが、その姿はまさしく人間そのもの。

胸が膨らみ、通った鼻筋とふっくらした唇が浮き上がる。

そのショートヘアの女性の姿に、見覚えがある人物が数名いた。

それはカグラのパイロット、イクス・ナッハフォルグ。

そして連邦艦隊副司令官、E2。

さらにギガンティックアサルトのパイロット、フィルシア・ナイトウォーカー。

また、ユウ・ヴレイブも、この声の主を知っていた。

 

「バラ…ドリム……!」

 

ユウがまだネメシスアークと融合していたころ。

彼の意識はこの機体のものとなり、その記録を記憶として有していた。

そしてその中に、この少女の姿があった。

 

「バラ・ドリム…? 誰ですか!?」

「このネメシスアークの最初のパイロット……人間だ。」

 

バラ・ドリム。

彼女の名は歴史には残っていない。

しかし、このネメシスアークがヘンズの手に渡る遥か以前、この機体を運用していたその人なのだ。

この話について多く語ることはないのだが、彼女の姿、つまり人間の姿と意思を持っているのだリリスは。

これはどういうことか。

 

「人間……そうか、なら!」

 

ヘンズは操縦の手を休めずに、リリスに語りかけるように言った。

 

「あなたが人間の心を持っているのなら、その怒りに抗う強さを持っているはずです!」

「俺は10年前、お前に乗られていてよくわかった。お前は、決して弱い人間じゃないって!」

「だからその怒りはあなたのものじゃない。あなたがその怒りを抱える必要はないんです!」

 

 

--- ……! ---

 

 

「だから、その心を解放し、僕たちに道を開けてください! 今判ったんです…僕らの想いを伝えるべきなのはあなたじゃないって…本当に伝えるべきなのは、その怒りの正体なんだって!」

「お前の身体はもう宇宙の果てかもしれない。だが心は、俺が受け止めてやる!」

 

 

--- 私は人間じゃない ---

--- 地球に数多存在する魂の集合体 ---

--- この姿はその中のたった一部の姿や形を模倣したデコイ ---

 

 

「デコイ…なら尚更、人類を理解できるはずです! お願いです、僕たちに…人類に、償いのチャンスをください‼︎」

 

 

 

--- ………その想い、確かに、受け取りました ---

 

 

リリスが光り輝いた。

人の姿は崩れ、小型たちは形状崩壊を起こす。

液体と化した白いそれは海に吸い込まれていった。

そして、心臓にあたる部分に残った、30m級の本体。

 

 

--- さあ、撃って! あなた方の想いを、私たちに伝えて見せて! ---

 

 

リリスの言葉を受け止めたヘンズ。

そしてネメシスアークもまた、同類であるリリスの声と、パイロットである人間の声を聞いた。

その架け橋となるべく、より一層の力を発揮する。

身体の所々の装甲が弾け、暖かい光が溢れ出す。

 

「行こうネメシスアーク! これが、最後の希望(ファイナルアタック)だ!」

 

ネメシスアークの槍がしなり、弧の形になった。

その両端を光の糸が結ぶ。

アマツから受け取った天羽々斬(アメノハバキリ)が、ネメシスアークの光に包まれる。

その槍は()となり、その剣は()となった。

ゆっくりと(ゆみ)()をつがえる。

ネメシスアークの右肩から大量のイミュー粒子が吹き出し、矢を力強く引く。

その眼は、届けるべき道を真っ直ぐに見つめる。

 

「届け! 希望の光明(ディバイン・シュート)ォォォオォオオ!!!!」

 

光を穿つ。

それは大地を照らし、雲を裂いた。

音すらも飲み込み、荒ぶる海を静寂へ還す。

矢は、道を開いた。

太陽を押し返す勢いで輝く光はリリスを飲み込み、数々の意思を、その想いを流し込む。

 

 

--- あなた達を、もう一度信じてみようと…そう、思います ---

 

 

最後にそれだけ残し、リリスは、江ノ島海域深海に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後のことを言えば、人類は良くも悪くも変わらなかったと言っていいかもしれない。

リリス出現が騒がれたのも最初の内。

すぐに人々は元の生活を送り始めた。

変わったことと言えば、地球連邦軍が乱獲したリリスと、そのクローンを処理したこと。

もちろん、然るべき場所にだ。

かといって戦争が終わったわけではなかったが、人類はその罪の重さを、無意識に皆が自覚しているのは、ハッキリといえる事実だろう。

 

 

 

 

 

道を拓いた勇者たちはと言うと、両軍から追われる形となり、世界のどこかでひっそりと暮らしている。

戦災孤児だったヘンズは、誰の疑問もなく、その生活に()()として迎え入れられた。

もう戦う必要はない。

成り行きでネメシスアークに乗り、多くの戦いを経て、そして人類の生きる道を切り拓いた。

これから彼が選ぶ道は、誰にも振り回されることのない、彼自身の選択だ。

これだけは、かけがえのない、事実である。




どうも星々です!

終わりました、はい
これまでご愛読していただいた読者の皆様、アドバイス等をしていただいた方々、その全てに感謝し、ここに"光明機動ネメシスエイト"、完結です
未熟者故、「煮え切らない終わり方だ」とか「展開が……」とか色々あると思いますが、これからも活動を続け、精進していきたいと思っているので、またどこかで私の作品を読むことがあれば、応援していただけると幸いです



完結、と言いましたが、あと1話だけあるんですよ実は
これを書くためにあえて中途半端なエンドにしたっていうのはありますが、物語的な最終話は今回のです
エピローグ的な位置になると思いますが、これも読んでいただけると嬉しいです
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