その瞬間、世界が、ゼニスに染まった。
『「創世」の頂 セーブ・ザ・デイト!!!』
天門から、異形の天使が現れる。
大陸を覆い尽くす程のその巨体に、レイは目を見開く。
本能が警鐘を鳴らす。
この場から今すぐ逃げろ、と。
「なん、なんだよ...。このクリーチャー...!」
戦場に、鐘の音色が響いた。
聖なる鐘の音。
だがレイにとっては、絶望の音。
「...これこそが私の切り札。創世を司るゼニス。」
ローズの右腕が、無慈悲に攻撃を命じる。
「ここからは...蹂躙の時間だ!!!」
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テキストデュエル・マスターズ・F(フォージ)
第3話
こんちきしょうめ
...『正義』。
光文明が、最も重んじる言葉。
光文明のマスターとなった者は、皆それぞれの形で『正義』に殉じてきた。
(闇文明の民を皆殺しにする。これこそが、私の正義。)
(何人にも...邪魔はさせない...!)
その天使の降臨に呼応するように、天門から、次なるブロッカーたちが次々と現れる。
その数10体。
戦場の空を埋め尽くす天使の大軍だ。
「ブロッカーが...こんなに...!?」
その光景に戦慄する少女がいる。
彼女は札斬レイ。
異世界からこの世界へと迷い込んだDMPだ。
彼女は、かつてないほどの危機を感じ取っていた。
この戦いは、ただの戦いではない。
負ければ命を落とす、命のかかったデュエマなのだ。
だがそんなレイをよそに、ローズは容赦なく攻撃を仕掛ける。
「『真実の名 バウライオン』でシールドをダブルブレイク!!!」
「...!!!」
次の瞬間には、そのクリーチャーの双剣が、シールドを粉砕していた。
ものすごい突風が発生し、思わず後ろに倒れそうになる。
「...いっ...!!!」
シールドの破片が肌を掠めた。
赤い血液が、腕から飛び散った。
(これが...クリーチャーの...攻撃...。)
頭では分かっていた。
だが、実際にそれを受けると、何もかもまるで違う。
等身大の死の恐怖が、目の前に現れたのだ。
「...トリガーは無いようだな。なら『創世の頂 セーブ・ザ・デイト』でさらにシールドを攻撃!」
ローズは間髪入れずに攻撃を仕掛けようとする。
だが、そこに、火文明の執事であるランスが割り込んだ。
「ローズ様...!いくらなんでも、ゼニスを使うのは行き過ぎています!!」
「そのクリーチャーがどれほど危険な存在なのか、わかっていらっしゃるのですか!?」
ランスは必死で止めようとする。
さっきまでレイと殴りあってたとは思えない必死さで、ローズへと訴えかける。
それほどまでに、このクリーチャーは危険な存在なのだろうか。
だが、ローズはその訴えにも聞く耳を持たない。
「黙れ。当然分かった上で使っている。相手が誰かは関係ない。闇文明を庇うものは全員悪だ。悪に容赦は必要ない...!!」
レイは感じ取った。
その言葉の裏に隠れた、闇文明への深い憎悪。
そして、歪んだ正義感。
「どうして...そこまでして闇文明を...!」
なぜこれほどまでに闇文明を敵視しているのか。
レイの頭に疑問が浮かんだ。
しかし、今はそんなことを考えている暇はない。
10体以上のブロッカーが、全員攻撃可能。
このまま攻撃を受け続ければ、このターン中にゲームに負けてしまう。
そしてゲームに負けてるということは、自分が死ぬということを意味する。
(...くっそ、負けてたまるか...!)
(こんなとこで死んでたまるかよ...!!)
この状況を打開する方法な無いか、必死で考える。
だが、今はローズのターン。
レイにできることは、シールドトリガーに希望を託すこと以外、何も無かった。
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セーブ・ザ・デイトの砲台に、エネルギーが装填されていく。
そのままエネルギーが放出される寸前。
ふと、セーブ・ザ・デイトの動きが止まった。
ローズが、止めるように指示を出したのだ。
「...」
ローズは、レイを見つめていた。
レイは明確に怯えていた。
虚勢を張っているものの、心の奥では、目の前の巨大なクリーチャーへの恐怖を隠せていなかった。
そのレイの姿を見て、ローズは思わず、攻撃を取りやめたのだ。
「...ランス。たしかに、お前の言うことも一理ある。デュエルの経験が浅い相手にこれほど本気を出すのも些か残忍だ。」
ローズは右手でクリーチャー達を制止する。
戦闘態勢だった無数のブロッカー達が、一斉に武器を下ろした。
「レイ。貴様の未熟さに免じて、今回だけは慈悲をくれてやる。今すぐに降参するのなら、命を奪いはしない。」
「.........!」
自ら負けを認めることは、決闘者にとっては屈辱的な行為だ。
だが、今はプライドなんかを気にできる状況ではない。
このまま決闘を続ければ、きっと...自分は死ぬ。
自分の命のためにも、ここで負けを認めるべきだ。
...だが、レイは躊躇していた。
ここで降参すれば、きっとローズは、再びあの闇文明のマスターを一方的に殺しに行くだろう。
(...負けを認めれば...あいつを、見捨てることに...。)
彼を庇うために、光文明のマスターに戦いを挑んだ。
なのにここで降参してしまえば、結局彼は...。
(...いや。余計なことを考えるな。)
(......このままじゃ、きっと負ける。生きようとするのは...恥じゃない。)
レイのデッキは、世界線を超えたせいか、ほとんどのカードが色を失い使用不可能に陥っていた。
普段通りのデッキならばいざ知らず、この状態のデッキで勝つのは絶望的...。
これ以上戦いを続けるのは、あまりにも無謀だ。
人間にとって、基本的に命より大事なものは存在しない。
だから、こうして逃げることも、恥じゃない。
そう自分に言い聞かせ、口を開こうとした...その時だった。
「...そもそも、その程度の軟弱な切り札で戦いを挑んできたことに腹が立つ。」
「二度と私の前に顔を見せるな。」
開きかけていたレイの口が、止まった。
ローズのその発言が、心に引っかかったのだ。
「......お前、今なんて言った?」
「...聞こえなかったのか。その程度の軟弱な切り札で、戦いを挑んできたのが腹立たしいと言ったんだ!」
人間にとって、基本的に命より大切なものは存在しない。
だが、たとえ命がかかっていても、譲れない矜持というものも、人にはある。
「.......お前は...人の切り札を...バカにするようなヤツだったんだな。」
地面に膝をつきかけていたレイは、今一度立ち上がった。
「人の切り札を尊重できねぇ奴は、決闘者としては下の下。ましてや、そんな奴が『デュエルマスター』だなんて...あまりにもふざけてやがる!!」
レイの決意が固まった。
再び勢いよく手札を手に取り、ローズを力強く指さす。
「私は決めた。お前にだけは、絶対に負けてやらねぇ!人の切り札をバカにするようなやつには、絶対に!」
これがレイの矜恃。
目の前にいるこの相手にだけは、絶対に負けたくない。
その怒りが、レイの胸に、確かな炎を燃え上がらせた。
(勝利の可能性は十二分にある。まだ死ぬと決まったわけじゃない。ここから...絶対勝ってやる!!)
命がかかった決戦に、レイは既に順応しつつあった。
たとえ命がかかった戦いでも、これだけは譲ることができなかったのだ。
「...そうか。」
ローズは目を閉じたあと、再び大きく見開いた。
「せっかく生かしてやると言ったのに...。救いようのないバカが!!」
だが、いくら心を燃やそうと
現実は無情にも降り掛かってくる。
「今度こそ、セーブ・ザ・デイトで攻撃!」
異形の天使が、自らの体にエネルギーを装填した。
そして次の瞬間には、その全てのエネルギーが、レイへと向けて放たれていた。
「─────。」
刹那、世界が無音になった。
甲高い耳鳴りの音だけが、戦場に響いた。
平衡感覚を失い、地面に倒れ込む。
そして、倒れ込んだ体を、攻撃の爆風が容赦なく吹き飛ばした。
視界が白く染まる。
耳に、体に、痛みが走る。
レイの決意は、瞬時に消し飛んだ。
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「...い、痛い...。」
一瞬、自分は死んだのかと錯覚した。
右耳が痛い。
右側だけ音が聞こえない。
鼓膜が破れたのだろうか。
右耳を手で抑えると、赤い血が手に付着した。
体の方も傷まみれだ。
シールドの破片がかすった傷と、地面を転げた傷。
骨折などしたことが無いレイにとって、これは人生で最大の怪我だった。
「...うっ、うう...」
傷だらけの体を無理やり起き上がらせる。
デュエルはまだ終わってない。
シールドに遮られた一撃ですら、この威力。
直接食らったら、自分は...
きっと、塵すら残らない。
「...お前は愚かだ。素直に負けを認めていれば、命は助かったものを。」
レイの傷など見向きもせず、ローズは無慈悲に攻撃を宣言する。
「『ダイヤモンド・エイヴン』でシールドを攻撃。」
光の戦士の攻撃が、シールドへと迫った。
たったひとつだけ残ったレイのシールドも、叩き割られる....かに思われた。
だが、レイの手には、あるカードが握られていた。
「.....し、シールド・トリガー...!『ホーリー・グレイス』!」
震える体で、カードの名前を叫ぶ。
シールドから飛び出したのは、光の鎧を纏ったドラゴン。
その龍は両肩の砲台から光を放ち、ローズのクリーチャーを全て地面に縛り付けた。
ダイヤモンド・エイヴンの攻撃も、すんでのところで遮られたのだ。
「...悪運だけは強いやつだ。」
クリーチャーをタップされたローズは、このままターンを終わるしかない。
しかし、この圧倒的なクリーチャーの数の前では、1ターンの猶予ができたところで、レイが優勢になれるとは到底思えなかった。
「....私の...ターン。」
レイのターン。
レイは、ドローするために、山札へと手を置いた。
...だが、手が動かない。
引けない。
デュエルを進めることが、怖いのだ。
この絶望的な状況の中、デュエルを進めることが。
「...くっ、そ...!」
胸の中に後悔が満ちる。
あの攻撃。
あの威力。
正真正銘、本物の死を目の当たりにした。
あの時に負けを認めていれば、こうして、死ぬこともなかったはずなのに...!
(...勝てる、わけがない。あんな、バケモノに...。)
(...私は....。)
(....死ぬんだ。)
レイはもはや、勝利を諦めていた。
熱くなって、カッコつけて、喧嘩を売った。
その結果がこれだ。
自分の愚かさがこの結果を招いた。
デッキを手に取る力もなく、手札とともに、地面へと崩れ落ちる。
麻痺していた体の痛みが、一気に襲いかかる。
レイの心は、折れた。
死の恐怖を、前にして。
...ふと、その時。
そんなレイの頭に
過去の光景が、フラッシュバックした。
「...!!」
人間は、死を目の当たりにすると、昔の記憶が突如フラッシュバックすると言われている。
この現象は走馬灯と呼ばれ、人間が過去の記憶から、生きるための手段を必死に模索した結果起こる現象だそうだ。
家族の記憶。
恋人との記憶。
はたまた、昔の何気ない日常か。
どの記憶が現れるかは、人によって様々だ。
だが、レイの脳裏に浮かんだのは。
若かりし頃の、テレビに向かう自分の姿だった。
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レイの意識は、昔の記憶へと飛んでいた。
テレビに向い、デュエマのアニメを観る自分の姿。
それを、現在の自分が後ろから眺めている、不思議な光景だった。
テレビを見る自分の目は、最高に輝いていた。
最高に熱くなっていた。
テレビに映る主人公の逆転に、最高に胸が踊っていた。
「───。」
この頃の自分は、いつだって輝いていた。
デュエマの主人公達に憧れて、なにかの真似をしたりしてたっけ。
今考えるとばかばかしいかもしれない。
でも、それが最高に楽しかった。
...だが、今の自分は。
いいや、大きくなった俺たちは、
どうしても、忘れてしまう。
誰かに言われた言葉が、胸を撃ち抜いた。
『熱くなるな。子供じゃないんだから。』
『そんなテンションが許されるのは子供までだ。』
大きくなるにつれ、徐々に自分の心に自ら蓋をしてしまう。
熱くなるのはバカだから。
大人なんだから。
...でも、それでも。
この瞬間だけは、
『違う』、と。
自分の心が叫んだ。
走馬灯が徐々に消え、意識は戦場へと戻る。
...膝をついた自分。
目には涙も浮かんでいた。
...情けない。
きっと、昔の自分だったら
この程度の逆境に膝を着くことなんて...無かった...!
「...こんちき」
「.....こんちき...!」
「こんちきしょうめえええええッ!!!!」
その瞬間のレイの手に、迷いは無かった。
その右手を山札に、勢いよくかざした。
そして、手を引き抜いた瞬間。
レイの右手が、眩い輝きとともに燃え始めた。
「...!」
「...えっ!?」
「...あれは...!」
その場にいた者。
遠くから戦いを眺めていた者。
この世界の生命が、1人残らず、驚愕した。
「...まさか...それは...」
「デュエルマスターの証...!?」
世界に7つしか存在しない、『デュエルマスターの証』。
それが今、レイの右手に現れたのだ。
「私はこの手で、運命を...掴み取る!」
レイは力を込め、思いっきりカードを引き上げた。
「この逆境なんか...!ひっくり返してやらァァァッ!!!!!!」
─────────────────────
取り戻せ。
あの時の、アツい心を。
魂が燃える感覚を。
「私だって、デュエリスト。」
「私は....デュエリスト、札斬 レイだァァッ!!!」
レイがドローしたカード。
それは、紛れもなく逆転の一手だった。
「...これなら...勝てる!!」
レイはドローしたカードを、そのままプレイする。
「私は『ボルシャックの古代神殿』をバトルゾーンへ!!」
バトルゾーンに、太陽の力を纏った建造物が現れた。
「このカードがある限り、全てのクリーチャーは『ブロッカー』と『スピードアタッカー』を得る!」
「...全てのクリーチャー...?ふざけているのか...!」
ローズのクリーチャーも全て、ブロッカーとスピードアタッカーを同時に得る。
レイのクリーチャーがブロッカーになるメリットより、そのデメリットの方が圧倒的に大きいはずだ。
「私のターンはまだ終わらねぇ!『魂の呼び声』を発動!」
レイは山札の中を見て、3枚のカードを選び、山札の上へと設置した。
「...これで、次のターンの準備は整った!」
レイは、堂々とターンを返した。
「さあローズ。お前のターンだ!」
「...は?」
ローズの顔が怒りで歪む。
「貴様は...自分の置かれている状況が分かっていないのか?」
生きるか死ぬかの瀬戸際。
そんな状況でデメリットの大きいカードを出し、次のターンに賭け、中身も分からないシールドに命をさずける。
これほど愚かな行動をする者が、デュエルマスターの証を...?
「...ふざけるな...。ふざけるな...!!!」
ローズのターンになるや否や、ローズは即座に攻撃を命じた。
「お前のような愚かな人間に、次のターンがあると思うな!!!」
デュエルマスターの証も、きっと何かの間違いだ。
こんな杜撰で、弱い決闘者に、『アダム』が証を授けるわけがない!
「お前はここで死ね!札斬レイ!!」
ローズの怒りがクリーチャーへも伝わるのか、セーブ・ザ・デイトの攻撃も、苛烈さを増していた。
僅か3秒のチャージの後、その光線が、たった1枚のシールドへ容赦なく放たれた。
──────────────!!!
爆発を何重にも音割れさせたような、激しい衝突。
先程の衝撃を優に超える一撃が、シールドにぶつかる。
だがレイは、
爆風の中、立ち続けていた。
「...どうして、忘れてたんだろう。」
逆境に立たされた時、心に浮かぶのは、恐怖ではない。
むしろ逆境を覆そうとする、燃え盛る炎。
昔の自分は、そうやって生きていた。
なのに、ついさっきまで忘れていたんだ。
胸に点った炎が暖かい。
まるで故郷に戻ったような、思い出の日々に戻ったような、懐かしさだ。
「...忘れてて、ごめんな。」
誰に謝ったのかは分からない。
自分自身に対してか、アツい熱そのものか。
どちらにせよ、
レイの覚悟は、決まっていた。
「...油断したな。ローズ。」
レイはシールドを、静かに手札に加える。
そのカードは、シールド・トリガーのカードだった...!
「魂の呼び声。あれで次のターンに備えたってのは嘘だ。」
レイはそのシールドトリガーを、勢いよく盤面へと投げる。
「シールドが1枚の状況なら、山札の中身を見ることで、最後のシールドの中身を確かめられる。ここでトリガーが来ることは、既に決まっていたんだよ!」
「....。...!!」
ローズは、その言葉の意味を遅れて理解した。
「.....まさか、分かった上で、ターンを...」
ローズの顔には驚きが浮かんでいた。
「このカードで...私は勝利を掴む!!」
シールドからそのドラゴンが飛び出した瞬間、ローズのブロッカー達が、次々と爆発し始めた。
目にも止まらぬ早さでドラゴンが戦場を駆け抜け、ブロッカー達を次々と切り刻んでいるのだ!
「シールド・トリガー!!メガ・ブレード・ドラゴン!!!お前のブロッカーを全て破壊だーッ!!!!」
「ブロッカーを...全て...!?」
メガ・ブレード・ドラゴンの攻撃の対象は、元々ブロッカーだったクリーチャーだけではない。
ボルシャックの古代神殿の効果で、ローズのクリーチャーは、全てがブロッカー。
「...レイ。貴様、まさか、そこまで、読んで、」
ローズの手が震えた。
圧倒的な優勢が、一気に崩れさろうとしていた。
レイの、策略によって。
メガ・ブレード・ドラゴンの素早い攻撃に、ブロッカーたちは為す術なく破壊されていく。
10体を優に超えるブロッカーは、ついに最後の一体まで減っていた。
『『『─────────────!!!』』』
だが、メガ・ブレード・ドラゴンがセーブ・ザ・デイトに飛びかかった瞬間、光の盾が遮った。
セーブ・ザ・デイトの防衛機能が発動したのだ。
「...なっ!?あいつ、そんな効果は無いはずなのに...!」
この世界の決戦において、カードのテキストだけが全てでは無い。
クリーチャーの。そして決闘者の、負けたくないという意思が、カードのテキストには書かれていない行動を引き起こすことがある。
「...そうだ。セーブ・ザ・デイト。この程度の弱小クリーチャーに...やられてたまるか...!!」
メガ・ブレード・ドラゴンは素早く飛び上がり、盾に激突し、弾かれてはもう一度ぶつかってを繰り返す。
だが、それを何度も繰り返しても、セーブ・ザデイトには傷1つつけることができない。
「...いっ、って!!」
そして同時に、レイの右手に痛みが走った。
筋繊維がちぎれるような、小さな痛みが何重にも走る。
この右手から、メガ・ブレード・ドラゴンにエネルギーが供給されていると。
そして、それにより痛みが生じていると、レイは直観的に理解した。
「...なるほどな...!!」
レイはその右手を天に掲げた。
「私の体は心配するな!この右手が粉々に砕け散っても、ぼうぼうに燃え上がろうと...!!」
レイの右手が、再び眩い光を放った。
「そいつを...粉々に叩き潰せぇ!!!!!!」
刹那、メガ・ブレード・ドラゴンに、圧倒的なエネルギーが舞い込んだ。
『『『グルギャァァァァァァァァァ!!!!!』』』
雄叫びを上げ、かつてない速度で、
セーブ・ザ・デイトに激突する。
『『『√﹀\_︿╱﹀︿───!!!!!!!!!!!』』』
耳をつんざく悲鳴とともに、異形の天使が、地面へと落下した。
爆発の音、鉄の砕ける音。
様々な音が、何重にもこだました。
「...そ、そんな」
ローズのクリーチャーは、一瞬にしてゼロになった。
こうして最大のピンチをしのんだレイ。
今、ターンは再び、レイへと回る!
「...さあ、行くぞ!私は『超竜 ヴァルキリアス』を召喚し、効果でヴァル・ボルシャックをマナからバトルゾーンへ!!」
クリーチャーの数は十分。
逆転の準備は、今整った!
「ヴァルキリアス!ホーリーグレイス!ローズのシールドを叩き潰せ!!!」
ローズのシールドへ攻撃が迫る。
「...舐めるな。舐めるな!!!私にはまだ、シールドトリガーの可能性が...!」
5枚もシールドがあれば、それほどシールドトリガーの可能性も高い。
だがレイは、シールドトリガーが無いことを、確信していた。
「...ローズ。大事な場面で運を味方に付けられるのは、本当の決闘者だけだ。」
「途中で油断し、高を括ったお前に、運は回ってはこない。」
「...!貴様、何を...!」
普段なら戯言と切り捨てるような言葉。
なのに、ローズは、口を噤んだ。
先程のターン、ローズの手札には、破壊耐性を付与するカードも、エスケープを持ったブロッカーも何枚もあった。
だがローズは、1枚も使うことなくターンを終えた。
そんなことをしなくても勝てると高を括っていたからだ。
油断せず、それらを出してから攻撃していれば、シールドトリガー1枚で逆転されることなど無かった。
「...、!」
...言い返せない。
レイの言葉は、まるで的を射ていた。
「デュエマってのは、最初から最後までずっと全力だった奴が勝つんだよ!途中で全力を手放したお前が、このデュエルに勝てるわけがない!」
『『グラアアアアアッ!!!!』』
ホーリーグレイス、ヴァルキリアスの攻撃がローズのシールドを一瞬でゼロにする。
そこにトリガーは、ひとつもなかった。
「.......。」
トリガーがない今、もはや為す術は無かった。
「...負ける、のか。」
「私、は....。」
今までの人生で、一度も負けたことがない。
自分は、最強の決闘者。
...なのに今、こうして、敗北が目の前に迫っている。
自分に初めての敗北を与えるのは、この世界に来て間もない決闘者。
経験が浅いはずのそいつに、出し抜かれた。
そんな現状、理解できない。
それに、そんな奴がデュエルマスターの証まで持っている。
そんなの...認められる訳がない。
だが、
このまま為す術がないというのは、どうしようもない事実だった。
「お前にトドメを刺すのは、ボルシャック・ドラゴンだ!!!!」
ボルシャック・ドラゴンが飛び上がった。
そして、ローズを目掛けて一直線に降りかかる。
「.....負け、る」
だが、
その瞬間、世界の時が、遅くなったように感じられた。
攻撃が届く寸前、ローズの前に人影が現れた。
ローズの弟でもあり、共に戦う相棒でもある『ローゼン』が、ローズの前に現れたのだ。
「....!」
「...ダメだ、ローゼン!庇うな!だめ...!!」
最愛の弟を犠牲にさせる訳には、行かない。
自分を庇おうとするローゼンを、必死で引き剥がそうとする。
だが、ローゼンはどく気はない。
そのまま、ボルシャックのダイレクトアタックが、ローゼンに当たる...
かに思われたその時。
「止まれ!ボルシャック!」
ボルシャックの動きが止まった。
レイの静止によって。
「...このデュエルは、私の勝ちだ。でも...安心しろ。」
「大好きなデュエマで、人の命は奪えない。」
どこかの漫画で見たセリフを、そのまま吐いた。
レイの胸に、まだ熱いものが残っている。
やはり、熱くなるというのは
最高に、楽しかった。