光文明のマスター、『ローズ』と
この世界に迷い込んだばかりの少女、『レイ』。
2人の決闘は、レイの勝利で幕を閉じた。
そして、
「...安心しろ。」
「大好きなデュエマで、人の命は奪えない。」
レイは、ローズにトドメを刺すことはしなかった。
それだけでなく、地面に膝を着いたローズに、手を差し伸べた。
勝者が敗者に手を差し伸べる状況に、その場の誰もが息を飲んだ。
ローズ自身も、その状況が理解できなかった。
「...ふざけているのか...?決闘で勝った者は、負けたものを殺す。それが掟だ...!」
ローズの目からは殺気が滲む。
決闘が終わってもなお、その鋭い殺気が消えることは無い。
「...ローズ。手を取ってくれ。私は...お前と友達になりたいんだ。」
「とも...だち...?」
友達。レイは、はっきりと言った。
(私と...?)
(誰もが恐れ、近づこうとすらしない...この私と...?)
「...ふざけるな!!!!」
ローズの手が、レイの手を弾き飛ばした。
骨のぶつかり会う音が、その場に響く。
「トドメを刺さないならターンをもらう!私は、私はまだ負けていない...!私は...!!」
殺意とともに、ローズの体にマナが滾る。
ローズは強引に手札を手に取った。
そしてそのまま、無理やり試合を続行しようとした。
だが、その手は止まった。
レイが、ローズを抱きしめたからだ。
「────────ぇっ、」
ローズの体から、力が抜けた。
殺気が、消えた。
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テキストデュエル・マスターズ・F(フォージ)
第4話
君の手を取るための戦い
戦いの最中、レイは常にローズの殺意に晒されていた。
その圧倒的な気迫と威圧感。
ローズが「最強」と呼ばれている理由を、体で理解した。
きっと、大抵の人間はその気迫に晒されただけで戦意を奪われてしまうだろう。
だが同時に、疑問もあった。
自分と大して歳も変わらないように見える彼女が、なぜこれほどの殺気を放てるのだろうか。
「───────!!」
疑問はすぐに晴れた。
戦いの最中、『見えた』。
比喩とかじゃない。
見えたんだ。
ローズが感情をむき出しにした瞬間、どす黒い感情の塊の中で、一瞬だけ
柔らかい光が見えた。
ああ...そういうことだったんだ。
本当は、戦いたくないんだ。
戦うことで、心に隠した何かを、覆い尽くしているんだ。
だから、それに気づいたから
戦いが終わったあとに、やるべき事は決まっていた。
今の彼女に必要なもの、それは...
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ローズは、抱きしめられたまま動かなかった。
いいや、動けなかった。
目を見開いたまま、硬直していた。
自分でも驚くほどに、力が抜けていた。
纏っていた殺意も、威圧も、嘘のように消え去っていた。
(...な、なんで、こんな...)
(暖かい...?)
訳も分からぬまま、その暖かさの正体も分からないまま、
その場を動けなかった。
少しの沈黙の後、レイはゆっくりと手を離す。
「...ローズ。私は...『味方』だ。」
ローズは、口を開くことなく、ただレイを見つめていた。
迷っているような、躊躇うような、そんな眼差しで。
だが、
「...ふざけるな。」
「...次会った時には...お前も、闇文明も、徹底的に潰す。」
力のない声でそう言い放ち、レイに背を向けた。
「...ま、待って!」
レイは慌てて呼び止める。
だが、次の瞬間には、ローズの体は光に包まれ、傍にいたローゼンと共に姿を消していた。
「...行っちゃった。」
あの瞬間、たしかにローズの心に触れた。
でも、和解は叶わなかった。
あと少しで、分かり合えたかもしれないのに...。
レイの心には、またモヤが残された。
勝利したのに、心が晴れないこの感覚。
感じるのは、何度目だろうか。
しかし、そんなレイの心とは裏腹に
戦場では、拍手喝采が起こっていた。
「...えっ!?」
今まで誰も太刀打ちできなかった最強のマスター、ローズ。
それが今日、打ち倒された。
文明同士の戦争は避けられ、誰の命も奪われることなく、全ては丸く納まった。
そのことに対して、その場の誰もが歓喜の声をあげていたのだ。
文明の壁すら超え、誰もが喜んでいた。
そしてその歓声は、それを成し遂げたレイへの賛辞でもあった。
「そ、そんな褒めないでくれよ!!すごいことをした訳でもないし...それに...」
「......あいつと、和解できなかった。」
レイは、俯きながらそう呟く。
そんなレイに声をかけたのは、戦いを隣で見ていた『ランス』だった。
「顔をあげてください。あなたは...間違いなく偉業を成し遂げたのですよ。」
ランスはレイに声をかけ、励ます。
だがその直後、突然地面に頭にをつけ土下座をし始めた。
「レイ様、あなたに...謝罪しなければならないことがあります。」
レイに口を開かせる間も与えず、土下座の姿勢でしゃべり続ける。
「私は...あなたがローズへ戦いを挑んだ時...。『そのまま殺されてしまえばいい』と、そう思ったのです。」
「......。」
最強の決闘者への反逆。
そんな命知らずな行動を行ったレイのことを、ランスは見限っていた。
そのまま殺されるのを、待っていたのだ。
これほど命知らずな人間は、火文明のマスターには相応しくない、と。
(なのに私は...こうして、彼女が優秀だと分かった瞬間に掌を返している。)
頭を下げる自分にすら、嫌悪を抱いていた。
自分は、最低な人間だと。
だが、レイの返答はまるで予想外のものだった。
「...いや、良いんだ。分かってたし。」
「...分かって、いた...?」
レイは人の考えを見抜くことが、生まれつき大の得意だった。
ローズが秘めていた心を読み取ったのも、この特異な才能によるものだ。
「なんとなく、お前に見捨てられたのは分かってた。というか、自分で言うのもなんだけど...あれは本当に無謀だったし。見捨てられるのも当然だ。」
レイは、地面に伏したランスを起き上がらせる。
「...でも、私が勝ったから文句はないよな!!」
わざとらしいドヤ顔で、レイはそう言った。
「...ランス。私、火文明のマスターになることを受け入れるよ。そして今度は...マスターとして、ローズのリベンジを受けて立つ!」
レイの顔は、決意で満ちていた。
「私の決闘は、ただの殺し合いじゃない!手を取るための戦いだ!」
「....レイ様。」
ランスは、レイの背中に光を見た。
レイという少女は、この世界を、変えてくれるかもしれない。
その実力だけではない。
敵にも手を差し伸べ、和解の道を探るその心。
それはまさに、この世界が、何万年もの間忘れてしまった心そのもの...。
「...レイ様!」
ランスの目も、同時に決意に満ちていた。
「改めまして、我が名はランス。火文明のマスターとなるあなたに...命をかけてお仕えいたします...!!」
胸に手をあて、深々とお辞儀をしたランス。
そしてランスはゆっくりと立ち上がり、レイへ右手を差し出した。
「さあ、帰りましょう。マスターとなるあなたに、渡さなければならないものがあるのです。」
レイはその右手を...
取らなかった。
それどころか、ランスの右頬に右ストレートをぶちかました。
「グボエッ...ガッ....」
ランス、再び地面に頭をつく。
「おい。さっき揺さぶったのまだ許してねぇからな。気安く触んな。」
レイは、揺さぶられたことを相当根に持っていた。
「おいグラップ〜!こいつここに捨ててふたりで帰ろうぜ〜!!!!」
そしてドラゴンの背に跨り、そのまま帰ろうとしやがった。
「図に乗るなよ小娘がああああああァァァァァァ!!!!!!」
顔から火が出るほど...
いや、火文明生まれのランスは、物理的に顔から火を出すことが可能だったため、
全身燃え盛りながら、先程までの和解が嘘のように、レイと乱闘を始めた。
「あっつ!?熱いって!!やめろ離れろ!!!謝るから!!!!ごめんって!!!!あっっっっつ!!!!????」
歓喜に湧いていた人々も、一気に白けた顔になる。
「これだから火文明は...」とでも言いたげな面持ちで、その場を後にして行った...。
この2人が絆で結ばれるのは、まだまだ先の話になりそうだった。
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レイの勝利は、瞬時に世界中に知れ渡った。
それどころか、その試合を遠くから見守っていた者すらいた。
そして、その知らせに対する反応は、三者三様。
電脳の部屋で、『氷牙の貴公子』は微笑み、『可憐な男子』は目を細めた。
美しき庭園で、『少年』は顔を顰め、『青年』は笑う。
暗い燭台の灯る部屋で、『令嬢』は膝を抱え、『悪魔』はほくそ笑む。
抱いているのは、期待か、嫌悪か、それとも別の感情か。
だが、どのマスター達も同時に
『レイ』という少女の出現から、目が離せなかった。
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「レイ様。これをあなたにお渡しします。」
火文明本拠地。
『火山城砦 ヴァル』
その最奥にある一室で、包帯まみれのランスは、レイに対してあるものを差し出した。
「...これは...カード...?」
差し出されたのは、見慣れたデュエルマスターズのカード。
だが、そのカードは鎖で巻かれており、カードの種類を判別することはできなかった。
「これは『真のマスターのみが扱えるカード』と聞かされています。詳しいことは私も伝えられていませんが、きっとあなたの役に立つでしょう。」
そのカードを渡し終えると、ランスは1度深呼吸したあと、改めて口を開いた。
「...ではレイ様。早速ですが...火文明の執事として、あなたに最初の行動を進言します。」
時刻は夜を迎え、太陽が落ちていた。
この広大な大地に、夜が訪れる。
「この世界は、依然として不安定です。その不安定を少しでも解消するために...あなたには、全ての文明のマスターと顔を合わせていただきたい。」
太陽が沈んでも、一等星の煌めきが大地を照らす。
この世界に、完全な暗闇は存在しない。
「...いや、顔を合わせるだけじゃダメだ。」
レイの顔は、余裕と自信に満ちていた。
「私は、全てのマスターと絆を結ぶ!」
レイはその右手で拳を作り、天井へと突き出す。
「そして、世界平和を実現する!!それが私のファーストミッションだ!!」
全てのマスターに会うために、世界を巡るレイの旅が、今始まろうとしていた。
「最初の決闘編」はこれにて完結です
まだ序盤であるにも関わらず、3名もの方にお気に入り登録していただけること、なんとお礼を言ったらいいか分かりません
まだハーメルンの仕様には慣れていないのですが、今後も皆様のために執筆を続けてまいります
本シリーズを、何卒よろしくお願いいたします!
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どちらかといえば絶望神 サガ