TS最強勇者セツナは催眠・洗脳済だと気づけない 作:早乙女ユウリ
「――勇者殿。勇者殿」
耳元で囁く声。
同時に首元に吹きかかる熱い吐息。
「オ、レ……は……いったい……」
「勇者殿、目覚められたか」
声の方向に首を向けると、視界いっぱいにこちらを覗き込む王様の顔。
彼と目が合った瞬間、ドクンと胸が大きく鳴り、一気に顔が真っ赤になって身体中が熱く火照りはじめた。
「お、王様……!?」
「なに、勇者殿を冷たい床に放置するのも失礼かと思ってな」
「それは……えっと……あぅ♡」
(オレ……今、王様に抱きしめられてる……っ!?)
鼓動が早くなる。
オレは王様の逞しい両脚の間にすっぽりと収まり、背後からふくよかなお腹とカラダに密着するように抱きすくめられていた。
「ここは謁見の間だ。そなたは、『洗礼』の儀式が終わると同時に倒れたのだ」
「そう、だったんですね……迷惑かけてごめんなさいっ」
「よいよい」
背中に伝わる心地の良い体温。
太い両腕がオレの体を壊れ物でも扱うみたいにやさしく包み込んでいる。だけれど、落ちないようにオレをがっしりと抱き寄せている。
それに、オレのお尻に当たる彼の固い感触。大きい……それに熱された鉄みたいだ。
(……男らしくてカッコいい……♡)
うっとりとした目で王様を見つめ返す。
まるで生まれ変わったみたいだ。
「カラダに大事ないか?」
「はい♡ セツナは元気いっぱいです♡」
以前抱いていた嫌悪感は嘘みたいだった。彼の匂いも、感触も、吐息さえも、今のオレにはたまらなく魅力的に思える。
(オレ、なんでこんな素敵な男性をいやがってたんだろう……)
「それはよかった……どれ、ワシがカラダに異常がないか確かめてやろう」
「ひゃん!」
王様はオレの両胸を鷲掴みにして、グニグニと力強く揉みしだいてくる。
思わず甲高い甘い声を漏らしてしまった。
まるで、本物の女みたいな声を……。
(……女?)
一瞬、脳裏をよぎる違和感。
いやいや、オレは元々——女、なんだっけ?
けれど、その疑問は王の触診ですぐさま霧散した。
「どれ、ここも確かめてやろう」
「王様……そこはぁ♡」
そんなところまで触るなんて……♡
でも、この世界では女性の胸を揉むのは挨拶みたいなものらしい。いわゆる欧米のスキンシップやボディランゲージと同じだ。
(オレも嫌な気がしないし……♡)
どうせこの世界の登場人物は元々全員美少女なのだ。
だからこれは実質百合。うん、何も問題ないな。
「だ、大丈夫ですからぁ……っ♡ んぁ……っ♡」
「そうか……ふむ、異常はないようだな」
名残惜しそうに手が離れる。途端に、触れられていた場所へぽっかりと穴が空いたような寂しさが襲ってきた。
もっと触ってほしい、もっと乱暴に揉んでほしいと思ってしまうのは、オレがおかしいのだろうか。
「では、仕上げに『婚姻の儀』を執り行うとしよう」
「『婚姻の儀』……?」
「うむ、王族と契りを結ぶことで、王家の伝説装備を身に纏えるのだ。それに……」
素敵な脂汗を浮かべたふくよかな顔が、目と鼻の先まで近づいてくる。
「わしと結ばれるのだ……嬉しいだろう?」
「は、はいっ♡」
ちょっと前の自分なら絶対なぜだか今はすごく乗り気だった。
大好きな王様と契りを結べて、おまけに伝説の装備がもらえるなら、やらない手はない。
……けれど、ふと急に不安が胸をよぎる。
(でも……本当にオレなんかが、王様のお嫁さんになっていいのかな……?)
「王様……こんなオレでいいんですか」
「もちろんだ勇者殿……いやセツナ」
きゅん♡と胸が大きく跳ね上がった。
名前を優しく呼ばれただけで、股間が疼く。愛が溢れてしまいそうだ。
王様の太い指がオレの顎をすくい上げ、熱い眼差しで見つめ返してくる。
「ワシと結婚しろ。いいな?」
「はいっ……♡ 王様、よろしくお願いします♡」
本当は『隷婚の儀』にしようとしたけどやめました。