うちの温泉宿がダンジョンと繋がっていました 〜男女比1:100の貞操観念逆転世界の冒険者をコスプレイヤーだと勘違いして丁重にもてなした結果〜 作:縦セーターおっとりおねえさんが好き
腰痛を拗らせて隠居した祖母の代わりに、山奥にぽつんと佇む小さな温泉宿を継ぐことになった。
山の斜面に沿うように建てられた木造の平屋で、大きく張り出した紺色の瓦屋根の下には細やかな木の格子がずらりと並んでいる。
そしてやって来るのは大抵渓流釣りのおっちゃんばかりで、女性なんて中々来ないはずであるのだが―――
「あれ?」
温泉宿『深山荘』にて。
客室が二部屋しかないその小さな宿で、俺こと深山カオルは玄関カウンターの裏から一冊のアルバムを発見した。
アルバムの写真には深山荘の広間を背景に、隠居した祖母とゲームに登場するような衣装を纏った女の子達が写っている。
(コスプレのお客様がよく来るのかな?)
温泉宿を継いで半年経つが、そういったお客様には未だ会ったことはない。
もしかしたら近くにあるキャンプ施設で、そういったコスプレイベントがあるのかも。
そんなことを考えていると、深山壮の引き戸がガラリと開いた。
「いらっしゃいませ。温泉宿『深山壮』へようこそ」
客だと思い挨拶すれば、そこには燻んだ金髪に深い碧眼の美しい女性が立っている。
年は20代くらいだろうか。真っ白な外套を纏い、腰には一振りの剣をさしている。ゲームやアニメからそのまま飛び出してきたような格好の女性を前に、俺は思わず目を丸くしてしまった。
しかしそこで「なるほど」と納得する。
(なるほど。これがコスプレってやつか)
そういったカルチャーに詳しくないため、この目で拝見するのは初めてだ。
すると目の前のコスプレイヤーさんは俺を一瞥すると、ぽつりとこぼした。
「…………………男?」
「へ? あ、はい。男ですが………あ、もしかして祖母が営んでいると思いました? 申し訳ないのですが、祖母は持病により隠居し孫である私が宿を継いだんです」
女性一人で男性の営む温泉宿に宿泊するのは、さぞ抵抗があるだろう。しかもこんな山奥な上に、夜は更けて外はもう真っ暗だ。
何だか申し訳ない気持ちになって様子を伺っていると、彼女は神妙な顔つきで口を開いた。
「───ここがかの有名なダンジョンに現れるという異界の宿か。ギルドマスターの言っていたことは本当だったんだな」
「はあ」
「ギルドマスターからは小柄な魔女が営んでいると聞いていたが、まさか孫………しかも男が営んでいるとは…………!」
「あの………?」
穴が開くように俺を見つめてくる彼女に首を傾げる。
(もしかして、俺ってば変な格好をしてる?)
清潔感のある白いシャツに黒いエプロンというシンプルな装いであるし、髭だって剃り残していない。
髪だってそのままにすると寝ぐせみたいになるからきちんと整えているし、まだ20代後半だから加齢臭だってしていない(はず)
するとその時、コスプレイヤーの女性はつかつかと俺のそばまでやって来て―――あろうことか、その細い片手で俺の腰をグッと引き寄せた。
「え、あの!? ちょっと!!?」
「私はサヴォア王国冒険者ギルド『暁の乙女』に所属する魔剣士、マリアンヌだ。今回はソロで《荒野の
「あ、ああああの! 離してください!!」
「ふふ、異界の男も初心なんだな。だが男手一人で宿を営んでいるんだ。女には慣れているはずだろう?」
何かめちゃくちゃセクハラされてる!!
俺の腰と彼女の薄い身体が密着していて、否が応にも体温を感じてしまう。
しかし逃れようにも力が強すぎて離れられない。
ラッキースケベとかそんな風に思えるわけもなく、ただシンプルな痴女による痴漢(?)に慄いた。
何なんだ、この人!? 通報するぞ!?
いや状況的に俺が捕まるのか!?
するとコスプレイヤーさん―――もといマリアンヌ様はしばらくして、パッと俺の身体を離してくれた。
「なんだ、本当に嫌がっているのか。悪かったな。こんな場所で男一人宿を営んでるんだ。てっきり余程の好き者かと」
「…………? は、はあ」
何だかとてつもなく心外なことを言われたような気もするが、とりあえず開放してくれて胸を撫で下ろす。
「ちなみに名前は何という?」
「深山と申します」
「ミヤマか。世話になるぞ」
不適に微笑むマリアンヌ様に「はい」と力なく頷く。
ここまでゲームの世界にどっぷりはまっているお客様なんて前代未聞だ。
「……………それでは、マリアンヌ様。こちらへどうぞ」
「マリアンヌ
変な人だなあと思いながらも、とりあえず俺は彼女をお客様として丁重にもてなすことにした。
この時の俺は、彼女はコスプレイヤーではなく男女比1:100の世界からやって来た冒険者で、丁重にもてなした結果、まさか