ポケットモンスター   作:影山ザウルス

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陰キャがポケモンに選ばれる話ー前編ー

お集まりのトレーナーの皆様、そして、そのパートナーポケモンの皆様!!

ギアナへようこそ!!

 

ポケットモンスター。

縮めてポケモン。

我々人間の良き家族であり、良き隣人であり、良き友であるポケモン達には数多くの謎があり、今なお様々な研究や調査が行われています。

多くの謎の中の1つ、ポケモン達はどこからやって来たのか?

この謎を解く鍵として期待されているのが、幻のポケモン、ミュウです。

全てのポケモンの遺伝情報を持ち、自在に姿を変え、様々な場所に現れては蜃気楼のように姿を消す。

しかし、その存在だけは目撃例や古い文献、古代の遺跡群に残された壁画などで多く確認されています。

かつて、このギアナにはミュウが住み、我らが祖ギアナの民はミュウとミュウがもたらす恩恵と共に楽園を築いたという伝承があります。

ミュウの力によって森は絶えることの無い恵みをもたらし、水はどんな傷も病もたちどころに癒すことができたそうです。

しかし、ギアナの民はいつしかミュウからの恩恵に感謝することを忘れてしまい、それを知ったミュウは深く嘆き悲しみ、ギアナの奥地へとその姿を消しました。

森の木々は枯れ、水は濁り、かつての楽園は見る影もないほどに荒れ果ててしまったのです。

恩恵を享受するばかりに慣れていたギアナの民は怒り、憤り、ミュウに激しい罵声を浴びせました。

ミュウの悲しみは怒りへと変わり、その強大な力で嵐を呼び、大地を裂き、この地を人もポケモンも住めない場所にしてしまいました。

そんな中、1人の若者がミュウに願いました。

 

『どうか、友の傷を癒してください!!』

 

若者の友であるポケモンを思う強い気持ちに触れたミュウは若者のポケモンの傷を癒し、この地を去りました。

ギアナの民は己の行為を恥じ、ミュウへの感謝と、人間とポケモンの絆を示すために3年に一度大きな祭りを催すようになりました。

 

それが"フラテルニテ"です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜フラテルニテ前日〜

ギアナ地方は大半を手つかずの密林に覆われている。

いや、伝承通りならばこの密林は人間とポケモンの手によって作り出されたものだろう。

この広大な大地を埋め尽くす程の密林を再生するのに一体どれだけの時間を費やしたのだろうか?

以来、密林に点在する部族とギアナに住むポケモン達によって、ギアナの自然は守られている。

一方で、ギアナを東西に分断する長大な川の先、河口は開発が進み、ギアナで最も大きい都市となっている。

都市は翌日に控えたフラテルニテの準備とその参加者達で賑わっている。

 

その喧騒を聞きながら、立派な造りの応接間で、ある人物を待つ2人の姿があった。

1人は白髪の混じったボサボサの黒髪と痩せて光沢の無い肌が実年齢より老けて見せる眼鏡の男、フィデル。

その隣には15歳くらいだろうか?落ち着かない様子でタブレットを見る若者がいる。

こちらも15歳くらいという若さの割に快活さが無く、どこか陰気な空気を漂わせている。

若者の名前はリアン。

一見親子にも見える2人だが、フィデルはリアンの伯父にあたる。

 

「お待たせして、申し訳ない!!」

 

応接間の扉が開いて、1人の男性が入ってきた。

ギアナに振り注ぐ太陽が育んだ褐色の肌と恰幅のいい大男だ。

フィデルとリアンは立ち上がり、大男と向かい合った。

 

「ギアナへようこそ、フィデル博士!!あらためまして、私が市長のハイランドです!!」

 

ハイランドと名乗る大男は手を差し出し、フィデルと握手する。

 

「そして、君が……リアンだね?ギアナへようこそ!!」

 

豪快な笑みと茶目っ気でウインクをして見せるハイランドだが、どう答えていいかわからないリアンは苦笑いするしかなかった。

 

挨拶を終えると、3人はソファに座って一息を付いた。

 

「ミュウ研究の権威でいらっしゃるフィデル博士をお招きできて光栄です」

 

「いえ、権威だなんてとんでもない。ぼくはミュウと人間との関係で生まれた風習や文化の研究、いわゆる民俗学の研究者であって、ミュウ研究からすれば異端者みたいなものです」

 

フィデルはハイランドが誤解しているようだったので慌てて訂正した。

ミュウ研究と言えばミュウの捜索と捕獲や生態調査が主であり、目撃例の収集や人工衛星を使ったミュウのサイコエネルギーの観測、出現場所の予測などが行われている。

一方でフィデルの研究はミュウがいたとされる場所に赴き、ミュウとその地元住民との関係や歴史、文化や風習を調査することが主である。

しかし、ハイランドは真剣な面持ちでフィデルに向き直った。

 

「いえ、だからこそです。だからこそ、今回フィデル博士をお招きいたしました。博士は……ギアナとミュウに関わる"噂"をご存知ですか?」

 

フィデルは頷いた。

 

"噂"。

 

噂が出回ったのは今から数十年前のことだ。

かつてミュウは古代遺跡の壁画、古い文献、お伽噺から神話まで様々な形でその存在を世界中で確認されていたが、目撃例は少なく、信ぴょう性も乏しい。

そのため長年に渡って、『ミュウは実在しない』『空想上のポケモン』とされてきた。

それが件の数十年前、ある研究者がミュウとこのギアナで接触したという確度の高い"噂"が広まった。

その研究者はポケモンの遺伝子研究の第一人者とも呼べる研究者であったため、その噂の信ぴょう性は高いとされていたのだ。

しかし、ミュウとの接触は公に発表されることなく、"噂"で留まったのには理由があった。

 

『ある犯罪組織からの資金援助を受けていた。』

 

『ミュウの遺伝子からクローンを作り出した。』

 

『クローンが暴走し、研究所が破壊された。』

 

『クローンの暴走の際に、研究者が行方不明になった。』

 

"噂"にはこうした公に出来ない内容が含まれていたため、ミュウとの接触を公に発表することなく、"噂"として広まることとなる。

そして広まった"噂"はミュウを捕獲しようとするポケモントレーナーや、ミュウに会えるかも知れないと思った観光客をギアナに向かわせた。

そのため、この数十年、ギアナの観光業における経済的な発展は大きいのだが、同時にミュウを狙うハンターなどの反社会的な輩も流入させてしまう結果となった。

 

「私はギアナの各部族の族長達と議論を重ね、一つの結論に至りました。フィデル博士、私達はこのギアナの自然と文化、ミュウとの絆を守りたいのです。そのために改めて博士のお力をお借りしたいのです!!」

 

ハイランドは真剣な眼差しでフィデルを見つめた。

ミュウの研究者であれば、ギアナは一度は訪れてミュウの痕跡や生息の有無を調べたい聖地とも呼べる場所だ。

無論、その際には環境への配慮は十分に行うだろう。

しかし、ハイランドが求めているのはミュウの生息の有無ではなく、長年に渡り継承されてきたギアナの自然とその文化。

そして、そこに息づくミュウとの絆を後世に残すことだった。

 

「……もちろん、ぼくに出来ることであれば、全力を尽くさせていただきます」

 

フィデルの声は弱々しい声ではあるが、その瞳には研究者としての情熱が燃え上がっている。

フィデルとハイランドは固く握手を交わした。

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