絶対無敵スパイダーマッ! 作:映画好きのガキ
転生って言葉を知ってる?
仏教やヒンドゥー教の教えの一つなんだけど。
簡単に言えば生物は死んだら次の生があってそれを無限に繰り返してるよーって感じの教え。
基本的には記憶とかは持ち越さない。
まあ前世の創作物で流行った異世界転生なんかは記憶どころか自我をもって生まれなおしてたけど。
お察しの通り僕は記憶も自我も持って転生したよくあるテンプレ転生者だ。
いや、少し違うかも。
テンプレでは転生者はチートを持っている事が多いし。
残念ながら僕は死後、神様にあったりそこでチートをもらったりとかは無かった。
前世の記憶をもって人生を一からやり直せることはチートじゃないのかって?
うーん…たしかに。
まあそんなことはどうでもいい。
重要なのは生まれてこの方、転生者っぽいことが一度もできてないことだ!
突如教室に魔法陣が現れて異世界に召喚もされないし現代日本の裏で妖怪や魔物とドンパチもしてない。
もしかしたら僕が知らないだけかもしれないけど…
なんか、こう…もうちょっと何か不思議なことがあってもいいと思うんだ。
「どうしたのピーター、不満そう顔して」
「この世の不条理を嘆いてる」
「何言ってるのかわかんないや」
僕の言葉をどうでも良さそうに流してるこの女は幼馴染のペニー・パーカー。
僕と同じアメリカ系日本人だ。ついでに僕の唯一の友達でもある。
なんだって?人生二回目なら友達くらい作れだって?
馬鹿な事言うなよ。
今の僕は小学生だぞ、周りの精神年齢低いやつらにわざわざ合わせてられるかって話だ。
ペニーが友達なのは家が近いのと同じハーフなのと…認めるのは癪だけど天才だからだ。
自慢になるけど、僕は頭がいい。
小学生の中でとかじゃなくて前世では科学者として大成しかけたくらいだ。
研究成果を横取りされてそのまま死んだけど。
ペニーは僕との化学談義についてこれるくらい頭がいい。
ついでに家柄もエリートだ、片親だけど。
馬鹿にしてないよ?だって僕も片親だし。
一通り脳内自己紹介も終わった事だし、先生の授業をBGMに寝るとしますか。
ああ、一番大事な事忘れてた。
僕の名前はピーター・パーカー。
スパイダーマンじゃないけど、よろしく頼むよ。
「ペニー、寝るから終わったら起こして」
「はぁ…先生の授業はちゃんと聞かなきゃだめだよ…?ってもう寝てるし」
目が覚める。
窓からは暖かな夕日の光が差し込んできて、既に夕方であることが確定している。
おかしい、起こしてと頼んだはずなのに寝坊している。
寝ぼけた目であたりを見渡すとちょうど教室に入ってきたペニーを見つけた。
何で起こしてくれなかったんだ、文句言ってやろ。
「へいペニー、なんで起こしてくれなかったんだよ」
「私は目覚ましじゃないしー」
「マジかよ初耳なんだけど、ずっと奇抜なデザインした目覚まし時計だと思ってた!」
「OK!殴り合いがお望みだね、表に出ろ!」
「やめてくれペニー、その拳は俺に効く」
両手を上げて降参のポーズをとる。
僕に女の子を殴る趣味は無いのだ、決して負けるのが怖いわけじゃない。
…帰るか。
教科書はランドセルに入れない、宿題をするつもりもないし重いだけだからだ。
中学受験をするわけでもないのに小学校で内申を稼ぐ必要もない。
「ほんとよく寝るよね、夜更かしでもしてるの?」
「一日16時間睡眠、健康的だよね」
「それじゃアメリカ人じゃなくてナマケモノとのハーフじゃん」
「寝る子は育つんだ」
「限度があるでしょ」
ランドセルをからい、教室を出て靴棚まで歩く。
夕方の小学校には子供は殆ど居ない。
ポケットからスマホを取り出す。
ニュースを流し読みしているとペニーから声を掛けられる。
「学校っていつからスマホOKになったんだっけ?」
「OKなんて出されてないし、バレなきゃ犯罪じゃない」
現代人である僕からスマホを取り上げるなんてこと許されるわけがない。
ルールは破るためにあるものだし…
上履きを脱ぎ靴に履き替えるために、靴があるところへ手を伸ばす。
伸ばした手の先、夕日の光が届かない暗闇。
日常の一部で何ともないその行動。
そこで僕は――
――蜘蛛に噛まれた。
「いっつ!」
「どしたの?」
鋭い痛みが走る。
咄嗟に手を引っ込めると、手の甲に蜘蛛が噛みついているのが見えた。
「蜘蛛…?」
「わあ、見た事無い種類だ」
どこをとっても変な蜘蛛だ。
でも一番変なのは腹部、赤に青のラインが引いてある。
…スパイダーマンに出て来そうな蜘蛛だ。
これ以上噛ませ続けてやる理由もない。
手で蜘蛛を振り払う。
吹き飛ばされた蜘蛛は宙を舞い、ペニーの手の甲に着地した。
そして――
「あっ」
「えっ」
――噛んだ。
人食い蜘蛛とかそういうタイプの蜘蛛?
気性が荒いにしても程があるでしょ。
ペニーも同じように手を払い、蜘蛛を振り払う。
「…」
「えっと…ごめん?」
黙ってこちらを見つめるペニーの視線に耐え切れず謝る。
「はあ…まあ、わざとじゃないんでしょ?」
「そりゃ、もちろん」
「なら腹を立てるのもお門違いだし…」
「無罪放免?」
「…うん」
なんとか無罪を勝ち取り、そのまま学校を出る。
それにしても本当にスパイダーマンの放射性蜘蛛に似てたな。
あれ、もしかして僕スパイダーマンになる…?
「あの蜘蛛、スパイダーマンに出てくる奴に似てなかった?」
「言われてみれば…?前一緒にスパイダーマン観た時に見た気がする」
「じゃあ明日からスパイダーマン?」
「病院に搬送されてホスピタルマンにならなきゃいいけど」
暗くなると危ないから少し速足で帰る。
ペニーもそのことを分かっており歩幅を合わせてくる。
この世界、前世と違って死ぬほど治安が悪い。
強盗とか毎日起きるし、夜に子供が出歩きでもしたら誘拐犯が群がってくる。
少し急いだおかげもあってか、日が落ちる前に家に着く。
ペニーと僕は家が隣同士だから登校も下校も一緒だ。
僕の家の方がぼろいけど。
「じゃ、また明日」
「うん、またね」
ペニーと別れ、玄関の扉を開ける。
母さんは車が無かったからまだ仕事に行ってるんだろう。
ソファに座り、テレビをつける。
先程スマホを弄ってた時に変な蜘蛛と関係がありそうなニュースがあったのだ。
「もしかしたら本当に…なんてね」
『今朝、○○大学研究所で実験により生み出された蜘蛛一匹が脱走したとの情報が…』
プツンッ
一度深く息を吸い、すべて吐き出す。
冷静になった頭で考えるが結論は一つしか浮き上がらない。
「これじゃん」
どう考えてもこれじゃん。
この研究所から脱走した蜘蛛だったじゃん。
直ぐにスマホを取り出し、ラインを立ち上げる。
ペニーとのトークを開き、電話を掛ける。
ワンコールで出た。
「ペニー、ニュース見た?」
『見た、あの蜘蛛って絶対に研究所から脱走してきた蜘蛛でしょ』
「やっぱり病院とかで調べてもらう?」
『そっちの方がいいと思う、でも今日は遅いから…学校休んで明日とか?』
「そうしよう」
『オッケー、じゃあ、また明日』
「おう」
電話を切り、もう一度テレビをつける。
しかし、それと同時に眩暈がした。
そこからは速かった。
意識は薄れ、目はぼやける。
そのまま意識は落ちた。
『研究所から脱走した蜘蛛には、遺伝子組み換えで全種類の蜘蛛の遺伝子を持っているらしいですよ。特徴は赤い腹部に青の線が走っているところです』
「あー…?」
寝ぼけ眼を擦りながら上体を起こす。
どうやら眠ってしまっていたようだ。
時計を見ると、既に朝の五時だった。
ソファから立ち上がり、つけっぱなしだったテレビを消す。
「時間には余裕あるし…とりあえずシャワー浴びるか」
覚束ない足取りで脱衣所まで歩く。少し気分が悪い。
制服を脱ぎ、脱衣所に併設されている洗面台の鏡を見る。
「…は?」
そこには、パッと見じゃ俺だと分からない程の筋肉を携えた細マッチョが居た。
それはおかしい、昨日まで俺は平均的な小学生男児の体型だった。
肥満でもなく、痩せすぎても無い標準的な体型。
「いやいや…おかしいだろ」
何度目を擦っても現実は変わらない。
一晩で肉体改造が施された現実なんて今すぐ変わってほしいけど。
蜘蛛に噛まれて…?朝起きたらムキムキで…?
自分の手のひらを見る。
直ぐには分からなかったが、よく見るととげのような物がびっしり生えている。
「まだだ、まだ分からない…」
手を前に出し、あのポーズをする。
親指、人差し指、小指を立てる。
そして中指と薬指は折りたたむ。
THWIP!
「でちゃった…」
つまり俺は…そういうことなのか?
「俺が…スパイダーマン?」
と、とりあえずシャワー浴びるか。
頭を洗い、体も洗い、洗顔をする。
浴室を出て用意していたバスタオルで身体を拭き新しい制服に着替える。
顔を保湿して髪を乾かす。
「マジかぁ…」
少し落ち着きを取り戻した。
その上で受け止めきれない現実に押しつぶされる。
「というかペニーも蜘蛛に噛まれてなかったか…?」
ああ、ペニーの本名はペニー・パーカーだ。
そして俺は八谷ピーター。
成程ね…?
「ペニー・パーカーって別ユニバースのスパイダーマンだったよな?」
あいつもスパイダーマンになってるってことか。
スパイダーマン二人って、ここどんなユニバースだよ。
そういえばこの世界、スパイダーマンはあったけどスパイダーユニバースは無かったな。
「一旦ペニーと連絡するか」
朝食の用意をしながらペニーに電話を掛ける。
またもやワンコールで出た。
『もしもしー?』
「なあ、もし僕がスパイダーマンになったって言ったらどうする?」
『精神科に駆け込む』
「じゃあ俺がペニーの目の前で糸を出したら?」
『…マジ?』
「大マジ」
『じゃあ…私も?』
「もしかしたら」
一泊、間が開く。
『糸出なかった』
「ほんと?」
『うーん…でもなんかできそう』
「なんかって何さ」
『わかんない…『わかんないけど今なんかやってる』』
「えっ?」
ペニーの声が二重に聞こえる。
あまりの出来事に一瞬思考が止まった。
『『なにこれ…ピーターの家?』』
「うっそでしょ…」
片方の声はスマホから。
もう片方は…頭の中から。
「一回電話切ってみて」
『『わかった』』
「話してみて」
『もしもーし』
成程、つまりテレパシーって事だな?
そういえばペニー・パーカーの能力ってSP//drとの精神リンクだって話が…
つまり僕がSP//dr!?
冗談よしてくれ、僕はロボットじゃない。
「聞こえてる、電話切ったのに」
『テレパシーってこと?』
「おそらく…てか確実に。こっちは声が聞こえるだけだけど、そっちはどうなってる?」
『なんか…ピーターと五感を共有してるっぽい?』
「そっちから身体動かせたりとかは?」
『うーん…』
右手が自分の意図しない挙動をする。
『できた!』
「出来るのかよ…」
『慣れればもっとできるかも…ていうかピーターなんか目良くなった?』
「ああ、なんか違和感あると思った」
とりあえず出来るようになった事を確認しないと。
能力が暴走して実験動物コースになったらマズいなんてもんじゃない。
(これも読み取れたりする?)
『どうなってるのソレ!?』
(伝えようとしながら思考してる)
『重要なのは伝えようとしてる意思…?』
「けど口に出した方がやりやすいね」
そういえば時間大丈夫か…?
あっ…
「ペニー、遅刻だ」
『うそ!?』
「正直休んでもいいけど」
『学校は行こうよ』
「…はーい」
えっもしかしてこれって大いなる責任が伴うんですか?
ピーター・パーカー
主人公。
前世では科学者だった。
アメリカ人とのハーフ。
スパイダーマンとしての能力はまだ未定。
ペニー・パーカー
転生者ではない。
主人公と一緒でアメリカ人とのハーフ。
見た目は闘魂版。
能力はまだ未定。