カウンターでコーヒーを淹れていると、ホールの方から声が聞こえてくる。
ふと、そちらを見ると、立希さんと二人の女の子が話している最中だった。内容までは聞こえてこなかったけど、何やらお客さんの方はウキウキで立希さんと話している様子。
(ファンの人とかかな)
立希さんのファンはRiNGには結構多い。mygo自体が結構人気が出てきたのもあるけど、クール系の立希さんは女性客の人に注目されている。
それに、こうやってカフェに来てみれば実際に間近で立希さんに会えるんだし、ファンが多いのも納得なんだけど。
立希さんが注文から戻ってきて、いつも通りと一見変わらなさそうに俺に注文内容を伝えてくる。
「ファンの子ですか?」
「そうだけど、なに?」
「ちょっとだけ耳赤いですよ」
俺がそう言うと、立希さんは慌てて耳を隠した。
「冗談ですよ。慌ててる立希さんも可愛いですね」
「っ、お前!」
人付き合いがあまり得意ではない立希さんだけど、もちろん人に褒められるのもあまり得意ではない。
ファンの子に声をかけられた後はいつもどこかよそよそしい。
「俺からの言葉にはすっかり慣れちゃって……およよ」
「調子乗んな」
バシっと頭を伝票で引っ叩いてくる。
「ファンの人にはあんな優しいのに……」
「凪は別。優しくしてほしいなら可愛いとか言うのそろそろやめたら?」
それは中々難しい。立希さんの可愛さには嘘をつけない。というか、いつも好きにすればって言ってるのは立希さんだし。
「それって、俺は特別ってことっ痛!」
思いっきり足を踏みつけられた。痛い、控えめに言ってすごい痛い。
「次そんなふざけたこと言ったらもっと強く踏むから」
今のでも十分本気だった気がするんだけど……さすがの俺もこれ以上強く踏みつけられたら足が大変なことになる。
***
他人事だと思って、凪は平然と私に可愛いとか特別だとか言ってくる。
本気で止めない私も悪いかもしれないけど……
毎回毎回いなしてはいるけど、何も思わないわけじゃない。
すっごい恥ずかしいし。そりゃ、こんだけ可愛いって言われれば本気なのも分かるから嫌なわけでもない……
(あー!なんで凪のせいでこんなこと考えなきゃいけないわけ)
そもそも、いつもさすが真希さんの妹とか言われてばっかりだったから、ただでさえ褒められなれてないのに。
あいつはずかずかと何しても褒めちぎってくるし。
***
「ねえ」
「どうしたんすか?」
「私が可愛いって言われるの恥ずかしいって言ったらどうする」
ふむ……考えたこともなかった。いつも軽く流したり怒ったりで恥ずかしがってるなんて考えたことなかったけど……
「うん!凄い可愛いと思います!」
その時見た立希さんの顔はこれまでのどの顔よりも可愛かった気がする。
……ただ、俺の足はその日一日中痛かった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
お気に入り登録、評価、たくさんのUA非常に嬉しいです。
もし気に入って貰えたら気軽にポチって行ってください。