「凪くんの可愛いの価値観ってズレてるんじゃないかって思うんだ」
「呼ばれて開口一番に言われるのがそれ?」
愛音ちゃんめ、失礼な話だ。俺だってまともな価値観で生きてるつもりだ。
「だってさ、凪くんがりっきー以外を可愛いって言ってるの聞いたことないもん」
「いや、一々言わないだろそんなこと」
「でも、りっきーには言うじゃん」
「だって可愛いじゃん」
なんで、そんな引いた目で俺を見つめてくれんだ。
「じゃあさ、身近なところでともりんとかどう思う?」
「1番可愛いのは立希さんということを前提だけど、普通に可愛いと思うよ」
「じゃあ、そよりんとか」
「見た目は可愛いと思う」
愛音ちゃんと話してる時、そよさんは結構強めの口調だったり毒吐いたりしてるのを聞くし。
「楽奈ちゃんは?」
「まぁ、可愛いんじゃない」
「じゃあ、私とか〜!」
「世間一般的には可愛いと思う」
ドン!
二人の間に勢いよくお冷が置かれて、ビクリと肩を震わせる。
「ご注文は?」
「えと、俺はコーヒーを……」
「じゃあ、私はアールグレイで……」
なんでだろう、とんでもなく不機嫌な表情で睨まれた。
「俺たちなにかした?」
「……さぁ?」
また愛音と凪が二人で話してる。
それは別にどうでもいいんだけど、ここ最近のあいつらが二人で話してる時は大体ろくな会話をしてない。
注文を取りに行こうと、お冷を持ってカウンターから出ると二人の声が聞こえてくる。
「楽奈ちゃんは?」
「まぁ、可愛いんじゃない」
こいつ、楽奈のことそんな目で見てたの?
挙句の果てに愛音のことまで。
こいつ誰にでも可愛いって言ってるじゃん。
まぁ、別に特別に私だけに言われたい訳じゃないし。
冗談じゃないとか前は言ってたのに。
次の日のバイトは立希さんと同じシフトだった。
「相変わらず今日も立希さんは可愛いと思う」
「別に可愛いのは私だけじゃないんでしょ」
「……?そりゃ、みんなそれぞれ可愛いところはあるじゃん」
「じゃあ、誰でもいいじゃん」
どういうことだ……いつもよりも立希さんの機嫌が数段悪い気がする。
「誰でもいいわけじゃないんだけど……愛音ちゃんにも言ったけど、1番可愛いと思ってるのは立希さんですよ?」
「……は?」
「これが大前提だから」
「……そういう話じゃない!」
なんで俺は立希さんに怒られているんだろうか……
「……じゃあ、愛音とか楽奈にも可愛いって言ってんの?」
「いや、本人には言わないですね」
「……なんで私には言うわけ?」
なんでと言われると難しい。
「立希さんには言いたくなるから?」
「お前……はぁ、もういい仕事して」
……1番、か。
別にどうでもいいけど。
「立希さん耳赤いけど大丈夫?」
「お前!いい加減にしろ!」
その日のバイトのあとしばらくして、愛音ちゃんからメッセージが飛んできた。
『凪くん、りっきーになにかした?』
どうしたんだろう急に。
『別に何もしてないけど』
『今日めちゃくちゃ機嫌悪かったんだけど』
『というか、凪くんの話したらもっと機嫌悪くなって大変だったんだから』
『なんでだろう……』
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立希ちゃんの可愛いところもっと知りたい。