親が再婚して推しのVTuberが姉になった〜きょうだいなら一緒に遊びに行ったり配信に出てもセーフらしい〜   作:あいうりんどー

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第13話 クラスメイトの正体

「ひゃああああ!?」

 

 困惑していた王城さんは、少し遅れて叫び声をあげた。

 それと同時に、2階から誰かが駆け下りてくる足音が聞こえてきて。

 

「ど、どうしたのララちゃん……って」

 

 脱衣所に、姉さんがやってきた。

 裸の王城さんと、立ち尽くして明後日の方向を向く俺を見て、大体の事情を察したらしい。

 

「あちゃー」

 

 姉さんは、いかにも失敗した感じの声を漏らしていた。

 それにしても、今。

 姉さんは王城さんのことを「ララちゃん」って呼んだよな。

 

〇

 

 その後、リビングには四名が集まって、各々ソファに座っていた。

 俺と姉さん、私服を着た王城さんと、もう一人。

 姉さんと同年代くらいと思われる女の人がいた。

 この人も姉さんの友人だろう。

 

「改めて……人がいるか確認せずに入ってごめん」

 

 俺は王城さんに再度謝っていた。

 勝手に入ったことだけじゃなくて、見てしまったことも謝るべきだけど、蒸し返すのも気まずいからあえて触れないでおこう。

 

「あれは……鍵をかけてなかった私も悪いから。それに黒川君だって、人の家でいきなりシャワーを借りてる人がいるとは思わなかったでしょ?」

「まあ、さっき学校で話した人が自分の家でシャワーを浴びてるなんて想像してなかった」

「だよね……」

 

 俺が返事をすると、王城さんは苦笑した。

 

「実はあの後、一度家に帰ってからニノンさんと合流してこの家に来たんだけど、ここが黒川君の家って気づいたから……じゃなくて! 急いで支度をしたら汗をかいたから、ニノンさんの厚意に甘えてシャワーを使わせてもらっていたの」

「なるほど……?」

 

 妙にそわそわしている王城さんの様子を疑問に思いながらも、説明自体には納得する。

 姉さんはいい加減な一面はあるけど、気遣いができる人でもあるからな。

 

「私もちゃんと弟くんに伝えておけばよかったよ……」

 

 姉さんはすっかり反省している様子だった。

 ともあれ、そうして話が収まりかけたその時。

 

「みんなに落ち度があったってことでこの話は終わりましょう。噂の弟くんはララの裸を見られてラッキーでしたね」

 

 リビングにいたもう一人の女性が、口を開いた。

 落ち着いていて上品な雰囲気の黒髪美人って感じだ。

 この人もやはり、王城さんのことを「ララ」と呼んでいる。

 

(そこにあえて触れていくのは、姉さんの友達らしいというか……)

 

 俺は少し気まずく思いながら、王城さんの方を見る。

 

「それについても、黒川君なら特別に許します……あ、変な意味じゃなくて、今日ちょっと借りがあったので!」

「じゃあこれでチャラ……ってのもおかしい気がするけど、そういうことで」

 

 クラスの美少女に頼まれて図書委員の仕事を代わったお礼が、裸を見ることってどうなんだ。

 図書委員の仕事の方は次の俺の当番の時に代わってもらえるって話だったし、俺だけ一方的に得してないか……?

 いや、偶発的に人の裸を見ておいて「得した」って表現するのも失礼か。

 

「うーん? さっきから話を聞いていて思ったけど、二人ってもしかして知り合いなの?」

「知り合いも何も、クラスメイトだよ。俺としては姉さんと王城さんが知り合いって方が驚きだ。なんとなく、どういう繋がりなのかは察してるけど……」

 

 姉さんから聞かれたのをきっかけに、俺は二人の来客の正体について踏み込むことにした。

 

「お察しの通り、二人とも私と仲の良いVTuberだよー。弟くんのクラスメイトが佐々城ララちゃんで、もう一人がネリネちゃん」

 

 姉さんは、あっさりと二人の正体について口にした。

 二人とも、今度ニノンと一緒にイベントを実施する予定の人気VTuberだ。

 

「もう一人って、なんだか雑ですね……他に紹介の仕方があったでしょう」

「そっちの名前でリアルの知り合いに紹介されるのは、やっぱり照れるなあ」

 

 ネリネさんと、王城さん改めララさんはそれぞれに反応を示していた。

 

「察してるとは言ったけど、そんなにあっさりバラすのはありなのか……?」

 

 VTuberの正体って、本人たちにとって最重要機密なんじゃないのか。

 その割には、正体を明かされたことについて特に非難する様子はない。

 

「大丈夫ですよ。今日の目的の一つは、噂の弟くんに会うことだったので」

「私も同じく。まさか黒川君がニノンさんの弟だとは思ってなかったから……正直、次から教室でどんな顔して会えばいいか分からないけどさ」

 

 本人たちが承知の上ならいいのかもしれないけど……ニノンの「弟くん」って正体を晒してまで会う価値がある存在なのか……?

 

「友達が来るとは聞いていたけど、もう少し事前に説明があってもいいんじゃないか……?」

「いやー、そこはほら。サプライズ的な?」

「姉さんはいつも突拍子のないことをするな……」

 

 姉さんには振り回されてばかりだ。

 そのことに心地よさを感じているあたり、俺も大概だけど。

 

「ニノンさんがお姉ちゃんだと大変そうですね」

「ははは……」

 

 ネリネさんに同情されて、俺は笑うしかない。

 

「お、弟くん! そこは反論しようよ」

「大変なのは事実だから。初めてニノンの配信に出た時もいきなりだったし」

「そう言われると、何も言い返せないような……」

 

 俺の指摘に対し、姉さんは目を逸らした。

 

「この調子だと、この後の予定も弟くんにとってはいきなりかもしれませんね」

 

 ネリネさんが何やら思わせぶりなことを口にした。

 

「この後の予定……?」

「実は今日、この家でコラボ配信とお泊り会をする予定なんだー!」

 

 なるほど。

 それは確かに、いきなりだ。

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