落ちていく   作:作猫

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これはひとりの獣人がただ配達するだけのお話。


僕が最初に身につけたスキルはただ落ちるだけのものでした。

◇ツイ

 

それが主人公の名前。

ヘルメスのファミリアに名前だけを起き日々手紙や荷物の配達をしている猫人(キャットピープル)冒険者。

配達先はオラリオだけではなくてダンジョンのあらゆる場所まで。

日々走り続けている。

 

「おめでとうツイ君、レベル2だ!」

「ありがとうございます!」

 

ツイの背中をヘルメスが叩く。

 

「それで君に新たなスキルが…幽界堕落(アビス・ダイブ)だ!」

 

ヘルメスも驚いた顔をしながらスキルの説明をしてくれた。

幽界堕落(アビス・ダイブ)、それはその立っている位置からただ真っ直ぐ地面や障害物をすり抜けて落ちていくスキル。移動などに便利、しかし戻るすべはないのだそう。

 

「ちなみに服や身につけているものも君と一緒にすり抜けるのだそうだ。あぁ…君が女の子ですり抜けるときに服が脱げていたら…」

 

ヘルメスの話を受けることなく流しては身だしなみを整え、今日も配達を始める。

走るときに脚への負荷が減るブーツの紐をきつく結ぶ。

 

「おーい!ツイー。また配達を頼んではくれないか?」

「わかりました!18階層ですか?」

「あぁ!至急手紙を頼む!」

 

街中で一人の男性に声をかけられては一通の手紙を受け取りウエストポーチへ丁寧にしまう。

18階層…17階層のゴライアスが厄介。

いつも通り18階層へ向かう途中の冒険者を見つけては尾行する作戦にする。

ポーションの数を確認した後にダンジョンへと潜った。

 

◇◇◇

ツイはダンジョンで基本的にモンスターを倒さない。

ただ走って走って逃げるだけ。

もちろん怪物進呈(パスパレード)を発生させないようにするため魔道具をうまく使っている。

 

「速い速ーい!」

 

レベルが上がったことによりアジリティが高くなりいつも以上に速く走れることを楽しんでいるツイ。

上層のモンスターはとても遅く感じる

 

「一匹狩ってみるか」

 

背中からツルハシを取り出す。

普通の採掘用つるはしとはまた違った見た目をしている。

 

ツルハシを一振り、モンスターへ振りかざすと簡単に倒せた。

ランクアップの実感がとてもよく感じる。

 

「さてとーっと次はスキルねぇ」

 

いつもならここでパーティが通るのを待つが真っ直ぐ下へ落ちることのできるチートに等しいスキルがある。試してみることにした

大きく深呼吸をしモンスターがいないことを確認しては詠唱を始める

 

「光も硬さも置き去りにして、あらゆる障害の理をすり抜けながら、どこまでも、ただひたすらに無明の深淵へと墜ちてゆけ。」

 

ツイの足元に紫色の魔法陣のようなものが展開される。

 

幽界堕落(アビス・ダイブ)!!」

 

そのスキルを発動した途端にツイの五感すべてが遮断された。

何も見えない何も聞こえない何も感じることができない。

落ちる感覚もなければ今どこまで落ちているかが全く分からない恐怖。

 

(解除!…止まってくれ!!…)

 

そうツイが心の中で叫んだ途端に五感が戻った。

しかしその途端鋭い激痛が走ったのである。

痛みの元を探っていると、左腕が木にめり込んでいた。

動かすこともできない、粉々に粉砕しているのだろう。

 

「あぐっ…あぁ…」

 

壁から抜けられない。もう一度スキルを発動したらどうなるか分からない。

ツイは右手でツルハシをとっては自身の左腕を切断する。

上腕の真ん中あたりを目掛けて痛みをこらえながらツルハシを振りかぶる。

ウエストポーチの中に入っている包帯を取り出しては断面に巻き付け出血を抑える。

 

例えポーションを飲んでも失った部位は治らない。

大樹の迷宮、モンスターの鳴き声が聞こえる。

地図を開き現在地を確認する、しかしながら19階層から24階層までと広い。

そのためどこの階層にいるのかがまずわからない。

まずは切断した左腕の止血をし周囲の状況を確認する。

出現するモンスターとツイがメモした階層ごとの出現モンスターを比較して階層を判断する。

 

「上級者殺しって言われてるやつの気配はないから二十二階層よりも上なのはわかった…遭遇してないだけかもしれないけど。」

 

その時、戦闘音が聞こえた。どんどんモンスターがやられていく音。

武器は何だろう…短剣だろうか。魔法の音も聞こえる。

音のするほうへ向かう、冒険者かもしれないから。

モンスターにばれないように慎重に。

 

「助けてください…」

 

音のする場所には真っ白な髪に赤い目の冒険者がいた。

ツイは彼の名前を知っている。その名も「ベル・クラネル」、ヘルメスがやけに楽しそうに話していたのを覚えている。異常な速度でランクアップをしていることで有名だ

ベルはツイに気づいては失くした左腕に巻いた包帯から垂れ出ている真っ赤な血をみてはモンスターを片付け彼に近づいた

 

「大丈夫ですか!?」

「まぁ…それよりここは何階層?」

「えっと二十階層ですけど」

「よかった…お願いがあるんだ。飯おごるから地上まで連れていってくれないかな…生憎レベル2にランクアップしたばかりで…」

「レベル2でなんでここまで!?」

 

ご飯を奢ることを報酬としてツイはベルたちのパーティへ同行させてもらった。

そのパーティは女性率が高かった、気のせいだろうけども。しかしヘルメスは言っていた。ベルのファミリア、ヘスティアファミリアは男が二人だけだということ…気のせいではなかった。

 

「ベル様が男の冒険者を連れてくるなんて珍しいですね」

「そうかな…」

 

女性に囲まれているベルの背中を見ながら回復ポーションを飲む

 

「お前、左腕はどうしたんだ?」

「あ、えっとスキル発動したら…」

「いったいどんなスキル使ったらそうなるんだよ」

 

大剣を背負った赤髮の男、確か名前はヴェルフとかヘルメス経由で聞いたことがある。

どれだけヘルメスはヘスティアファミリアの情報を持っているのだろうか…

 

◇◇◇

そうして数時間後、18階層へと到着した。

 

「ありがとうございます、それでは数時間後に」

「どこに行くのですか?」

「手紙を配達に。」

 

ウェストバッグから一通の手紙を取り出しベルにみせる。

するとベルは「僕も同行してよろしいでしょうか?」なんて言ってきては一緒に行くことにした

 

「手紙を配達するのって頻繁にやっているのですか?えっと」

「ツイだよ、名乗り遅れたね…僕が配達する手紙の量は少ないよ、一日に一通が奇跡的。基本はほかのもっとちゃんとした人たちがやってるからね」

「そうなんですか…」

 

そして目的の冒険者へ手紙を渡す。

 

「ありがとよツイ」

「いえいえ!またいつでも」

 

手紙の宛先である冒険者はツイの左腕については何も気にしなかった。

 

「さて、僕の用事は済みましたので改めてお願いいたします。」

「かしこまりました。」

 

改めて地上へ向けて進み始めた




雑な終わり方でした。
時系列は異端児編のちょっと前です。

◇ツイ
・男
猫人(キャットピープル)
・15歳
・レベル2
・スキル「幽界堕落(アビス・ダイブ)
その場から真っ直ぐ下に障害物をすり抜け落ちていく。服や彼が掴んでいるものも共に落ちていく。落下中は五感を切断される。
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