君がカードを引いたなら   作:七紫ノごんべえ

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鳴海結翔

 

 

 日曜日の朝にも関わらず、俺はいつもの待ち合わせ場所である駅前広場にいた。

 今日は白栞(しおり)千夏(ちなつ)桂木(かつらぎ)さんでショップバトルに参加することになっている。発案者は千夏だ。あいつは毎週参加しているのだが、桂木さんも経験を積みたいと相談していたらしい。

 

 で、どうせならみんなで行こうという流れになった。俺もそのショップにはよく行くのだが、ショップバトルとは別の用事だからなぁ。

 

結翔(ゆうと)くん、なんか荷物多くない?」

「あー、いつものクセでな。気にしないでくれ」

 

 パンパンに膨れ上がった旅行鞄を肩に掛けなおしながら、桂木さんに返事をした。

 まあ、カードショップに行くだけとは思えない荷物なのは認めるが、必要になったときに手元に無いと困るのだ。

 

 ショップに着くと、ショップバトルの参加希望者が受付に並んでいた。

 見た所、今日の参加者の年齢層はジュニアが多い。中学校低学年まで合わせると十五人くらいだろうか。

 

「あ、結翔兄(ゆうとにい)ちゃんだ!」

 

 呼ばれた方を向くと、見知った少年たちがいた。

 

「おお、お前らも参加するのか!」

「うん! 聞いてよ、俺この前ついに一勝できたんだよ!」

「マジか!? すげーなサトル!」

「結翔兄ちゃん! 俺もこの前一勝した!」

「タケヤス、お前もか! やったなぁ!」

「もしかして、今日は結翔兄ちゃんも出るの? 珍しい!」

「おお、トモミ! 今日は友達と一緒に出るんだ。もし当たったらよろしくな!」

 

 見知ったジュニアプレイヤーたちに瞬く間に囲まれる。こいつらが出るなら、デッキは一番派手なものを使うとするか。

 やはり全デッキ持ってきたのは正解だった。おかげで肩が痛いが、こいつらの笑顔が見られるなら安いコストだ。

 笑顔の子どもたちに囲まれながら、俺はショップバトルの準備を始めた。

 

 

 

 

 ―楓side―

 

 

 

「な、なんか結翔くんすごい人気だね」

 

 子ども好きなのだろうか。参加者と思わしき子どもたちに囲まれ、次々と声をかけられていた。あれだけの子どもたちに次々と声をかけられれば大変そうなものだが、結翔くんはむしろ楽しそうだ。

 

「ああ、あれは結翔の……なんつーか、弟子みてーなもんだ」

「弟子?」

 

 アビカにも師弟関係があるのかな。

 

「結翔はね、小学生や初心者にルールを教えたり、デッキ相談に乗ったりしてるの。このお店でも定期的にやってるみたいで、多分そこで結翔が面倒を見てあげた子たちじゃないかな?」

「インストラクターみたいだね。そういうイベントもあるんだ」

 

 言われてみれば、アビカについての説明が一番丁寧でスムーズなのは結翔くんだった。

 必要な情報を必要なだけくれたり、言語化しにくい疑問を汲み取って丁寧に教えてくれたり。それに今思えば、初めの頃は使うデッキもボクの力量に合わせてくれていた気がする。

 実際、彼がコンボデッキを好んで使うと知ったのは、つい最近のことだ。それまではスターターデッキや、それを少し改造したものを使っていた。

 

「みんな、何だかとっても楽しそうだね」

 

 子ども達に目をやると、みんな表情がとても生き生きとしていた。結翔くんのところに集まって、我こそはと結翔くんに話しかけている。

 レアカードが当たったとか、ショップバトルで勝ち越せたとか、クラスの子とアビカで友達になれたとか。日常で起こった色々な出来事を結翔くんに報告する子どもたち。

 

 結翔くんもそれを全部拾っていって、一人一人の目を見て会話をしていた。嬉しい報告には一緒に喜び、悔しそうな子には一緒に悔しがりつつ前向きな言葉をかけている。

 なるほど、子ども達に人気なわけだ。

 この光景は、ショップの店員さんや常連さんにとってもお馴染みの光景なのだろう。ともすれば騒がしいと思われかねない状況だが、遠巻きに見ている人たちの視線は優しかった。

 前回足を運んだカードショップとはまるで空気が違う。

 

「結翔はね、人とちゃんと向き合ってくれるの。そして、頑張ってることをしっかり認めて褒めてくれたり、悩んでることにはそっと手を貸してくれたり。ああ、今日もかっこいいなぁ結翔」

「この中じゃ、あいつが一番ティーチングが上手いと思うぜ。大会での勝ち方っていうのとはまた別でな。あいつは、アビカの楽しさを教えるのが上手いんだよ」

 

 確かに僕がここ最近アビカを楽しめているのは結翔くんの影響が大きいかもしれない。

 彼と遊んでいると、どんどんアビカが好きになれるのだ。勝てたら嬉しいし、負けてももう一度挑みたくなる。

 何故と問われると説明が難しいのだが、一緒に遊んでいるあの時間がとても心地よいのだ。

 

「……うん、分かるよ。とっても素敵な才能だね」

 

 

 その後始まったショップバトルでは、子どもたちと結翔くんの楽しそうな声が響き、みんなの笑顔で溢れていた。

 

「いくぜハルユキ! これが俺の最強コンボだ、通ったら俺の勝ちだぜ!」

「させるもんか! 妨害を使って結翔兄ちゃんのカードを無効化!」

「うおお、俺の最強コンボがぁ! やるじゃねえか!」

 

 試合の合間にも、ショップは温かく賑わっていた。勝っても負けても楽しそうな子ども達と、その報告をにこやかに聞きながら言葉をかける結翔くん。

 他の参加者も私たちも、その光景を微笑ましく見つめていた。

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