フルダイブVRゲーム。それはこれまでのゲームに必要であったディプスレイやコントローラーなどが一切必要なく、肉体を動かさずに意識だけで操作し、遊ぶことができるゲーム。それが現在のゲームの主流だ。
そういえば最近確立されたフルダイブVRシステムがこれまでのVRシステムを凌駕するとんでもないものだとかニュースで見たっけ。全く知らないわけじゃないけどゲームは関わりないんだよなぁ。まぁそれよりも……。
「なんでいきなりゲーム?」
なぜいきなりそのようなことを提案するのかがわからない。俺の観察癖がどうとかそんな話だったはずだ。
「ご両親と話してる中で思いついたことなのよ。ご両親も透君が小さい頃からその好奇心をうまく抑えることができないか試行錯誤していたんだって」
「お前は覚えていないかもしれないけどなぁ……。ほんとに大変だったんだぞ?」
「目を離したらすぐにどこかへ観察しに行くし、何度透を探す羽目になったか……。家に帰るよって言ってもまだ観察するんだー!ってその場から頑なに動こうとしなかったからねぇ……」
そういえばそんなことがあったな。何度もそういうことやって叱られたなぁ。
「興味の対象を別のことに移せないか色々試したんだぞ?そうしてくれればすぐどこかへ行ってしまうことや人のことをジロジロ見て不快にさせることが減ると思ってな」
「図鑑や動画とかでもいいんじゃないかと思ったんだけど見ていて面白くない、観察してる方が楽しいって全然興味持たなかったのよね」
自分のことを改めて両親から聞くと、自分はかなりの問題児で小さい頃から迷惑をかけ続けてるんだなぁ……と自覚する。ちょっとだけ両親に申し訳なくなってきた。
「先生にその話をしたときに提案してくれたんだよ。VRゲームをさせてはどうかって。」
「先生もVRゲームをよくやっているんだけど、透君のことを聞いたときに思ったの。まるで現実であるかように感じられるリアリティのあるフルダイブVRゲームなら透くんも楽しめるんじゃないかって。」
「透の実物が見たいって文句はようするに図鑑とか動画に
「お母さんは現実で人をジロジロ観察するよりゲームの中で観察してる方が人に迷惑をかけにくいしよっぽどいいと思うんだけどねぇ……」
なんとなく両親や先生の言ってることのは分かったし、ゲームのことは周りからも話だけなら聞いたことが何度かある。現実とあまり変わらない感覚でゲームの世界を楽しめてすごいとかどうとか、最新型VRを買ったやつが周りにドヤり散らかしてたのを覚えている。絶対そっちが本命だろ……。
「それでも現実には負けるでしょ。別に興味ないよ」
「確かにそうかもしれないが……ゲームでしか体験できないものもあるんじゃないか?たくさんあるゲームの数だけ未知の世界が広がってるってことだろう?」
「まぁ確かに……」
「それにもう拒否権はないぞ透。もう父さんが最新型のVR
……???
「父さん今なんて言った?VRチェア?」
クラスで自慢していたやつのVRは最新型は最新型でも
「父さんなんでチェア型買ってんの!?」
「最新のチェア型が一番性能いいんだろ?ゲーム楽しむなら性能が高い方が良いに決まってる」
「そりゃそうだろうけども!いやそもそも俺興味ないって言ったよね!?ていうかついさっき先生からVRゲームの話聞いたんじゃないの!?」
「即決でオンラインショッピングでポチッたが?」
「即決!?」
最新型のVRチェアなんて一体いくらするのか……。100万はくだらないだろう。なぜ父はそんな代物を即決で躊躇なくポチれるのか……。
「とんでもなく高いでしょそれ。今からでもキャンセルしなよ……」
「子供がいっちょ前に金のこと気にすんなよ。それにこれで透の観察癖が治まるなら安いもんさ」
「母さんもいいの?母さん節約主義でしょ?」
「別にいいわよ?節約ってのはここぞの時に使うお金のためにするのよ」
「先生もVRゲームの話をしたときにいきなり購入するって透君のお父さんが言い出しちゃってびっくりしちゃったわ……」
「透がVRゲームをしてくれないとせっかく俺が買ったVRチェアが倉庫の肥やしに……」
「もうゲームするしか選択肢ないじゃん……!」
すると父さんはこっちを見てにやりと笑う。
「流石に冗談だ。ゲームをしてみてそれでもなおつまらないと感じるんだったら別に無理強いはしないさ。でも何も
「っ!!」
父さんは俺のことをよくわかってる。俺は自分の目で見ずに決めつけることが嫌いだ。自分の目で見ることこそが大切なことだと思ってる。
「……はぁ。わかったよ父さん。俺VRゲーム始めてみる」
「よしそうと決まれば善は急げだ。ゲームショップ行くぞ!透‼なんのゲームを買うんだ!?RPG系か!?格ゲーとかか!?」
「え?今から!?」
「熱中して夕飯に遅くならないようにね」
そうして俺はこれからいきなりゲームショップに行くことになった。ゲームショップなんて行ったことないからどんなものが見れるか少しワクワクするが……あまりにも急すぎるでしょ……。
父さんが母さんを家に一旦送るので、少しの間先生と待っていたところ……
「透君……」
「何です?先生」
「良いご両親を持ったわね。子供のためだからってそうそう簡単には払えないわよ。VRチェアを買えるほどの大金なんて」
うちの家は別に裕福とかそういうわけではない一般家庭だ。最新型VRチェアなんて普通手をだすものじゃない。
「これまで叱られることは何度もあったけど、それでも自分のやりたいことを尊重してきてくれた両親には感謝しているつもり。」
「そういうのはちゃんとご両親に直接言って伝えなさい。感謝の気持ちはちゃんと伝えるのが大事なのよ」
「わかりました」
「それに先生じゃなくて一個人としては後輩ゲーマーができたことがなによりうれしいわ」
「一回ゲームをやってみるだけでゲーマーになるとは言ってませんからね?」
「わからないわよ?透君ゲームにハマったらとんでもないゲーム廃人になりそうだし」
「ゲーム廃人?なんすかそれ」
「気にしないでいいわよ。とりあえず先生が言いたいのは楽しんで!ってこと」
「透ー‼ゲームショップ行くぞー‼」
父さんが母さんを家に送るのから戻ってきたようだ。
「じゃあ先生これで失礼します」
そのあと父さんにはいろんなゲームショップに連れまわされた。一軒だけじゃないの……?なんか父さんが一番はっちゃけてない?
主に父さんのせいで家に帰るのが遅れてしまって、親子共々母さんに叱られたが結果的にはいくつかのゲームを買えた。
その翌朝
「透!VRチェアが来たぞ!」
「…………」
父さん……。まだ休日の朝だぞ……?なんでこんな元気なんだ……。
「今日は休日だから一日中遊べるな!じゃあさっそく運んできてもらうぞ」
すると自分の部屋にガタイのいい配達員たちが何かとても大きなものを運んできた。
「設置作業まで依頼されてたのでこれで完了です。指紋お願いします。」
指紋認証父さんじゃなくて僕ですか。あ……はい朝っぱらからご苦労様です……。
とても疲れた様子の配達員たちが部屋から出ていって俺の目に入ったそれは……。どう見ても俺の部屋の広さに合わないサイズのVRチェアだった。
「やっぱり大きすぎない?VRチェア」
「部屋の大きさのことは正直考えてなかったな。すまんすまん」
すまんて。まあ自分の部屋に置く私物はそんなにないからいいけども。
「父さんはVRチェアの初期設定やらやっとくから透は朝ごはん食べて準備してきなさい」
「はいよー」
朝食を食べて、着替えて、歯磨きをして、色々準備してから自分の部屋に戻ってくるとそこにはかなり疲れた様子の父が。やっぱりゴーグル型の方がよかったんじゃないの?
「透……。戻ってきたか……。どうやらチェア型だと設定しなきゃならんことが多いらしくてな……。」
「お疲れ様。さっそく始めようと思うんだけどさ。なんかVRゲームするときの注意点とかないの?なんか気を付けないといけないことがあるって聞いたことがあるけど」
「もちろんあるぞ。父さん説明書で読んだからな。じゃあ今から確認するぞ!!」
「水分・栄養補給はしたか!?」
「はい‼朝食ちゃんと残さず食べたし牛乳飲みました‼」
「トイレは行ったか!?」
「はい‼快便でした‼」
「じゃあ大丈夫だ。あとはすぐ栄養補給できるようにスポドリと軽食置いとくぞ」
「ありがとう父さん」
というわけでゲームショップで店員さんに選んでもらったVRゲーム初心者におすすめらしいゲームカセットを入れてVRチェアに座る。するとVRチェアが動き出して俺の体格に合わせて座席の自動調節を行う。座り心地いいなこのチェア。あとは起動するだけだけどその前に……。
「……父さん」
「なんだ透」
「……色々ありがとう」
「気にすんな!楽しんでこい!」
そう言ってにっかりと笑った父の顔が、自分の意識がゲームに引き込まれる寸前に見えた。
そうして俺はVRゲームへのダイブを始める。さぁ一体どんな世界が待っているんだろうか……。
『おーい。ちゃんとゲーム動いてるかー?透ー』
これからプロローグ始まるっぽいのに呼び出し機能で話しかけるのはやめてよ父さん……。
これが俺、観月 透がVRゲームを始め、そしてハマっていくきっかけとなったのだった……。
透君のご両親が良い人過ぎる件。
観月透の担当の先生はかなりVRゲームに熱中してて、どっちかと言えば廃人側。先生という時間的猶予が少ない職業でありながら、なんとか時間を捻りだしてゲームをプレイしている。
VRシステムの品質
これまでの有象無象≪≪≪≪(オーバーテクノロジーの壁)≪≪≪≪造世謹製VRシステム
その中でも
ゴーグル型≪最新ゴーグル型≪(機体サイズの差)≪チェア型≪最新チェア型
チェア型はプロゲーマーのも御用達の最高環境。そりゃ高くもなりますわな。