神ゲーに挑まんとする電脳の観察者
「だぁぁぁぁ!!!クソゲェェェェ!!!」
世の中には色々なゲームがある。大衆が神ゲーと認めるようなゲームからバグやテクスチャ崩壊、ストーリー性、ゲームシステムが終わってるなどの様々な理由でクソゲーの烙印を押されるゲームもある。ゲームというものはピンキリであることは俺も理解している。そういったゲームも受け入れてプレイした方が良いことも。そんな俺が夏休みの朝っぱらからこんなにキレてるのにも理由がある。
「リアル一週間拘束はゲームとしてやっちゃダメだろ!!」
現実での時間で一週間の拘束を食らわせるトンでもイベントがあるゲーム。その名は『フェアリア・クロニクル・オンライン~妖精姫の祈り~』通称『フェアクソ』
俺のゲーム仲間に勧められて始めたゲームなんだが、本当にひどい。AIがお粗末すぎるし、起きるトラブルは大体ヒロインの『フェアリア』が原因のクソストーリーだし、変なバグが多すぎてクリアする難易度がめちゃくちゃ高い。バグとかストーリーなどの制作側の技能の問題はまだしも、ゲームに一週間拘束するイベントを仕込むな!!断言できる。このゲームを作ったやつは絶対性根が腐ってる。
「しかもあれプレイヤーの行動関係なく絶対巻き込まれるイベントだろ……」
プレイヤーが変なことしでかして拘束を罰として食らうのはまだわかる。だけどあれはストーリー的に不可避だ。なんでストーリーの誘導に乗って行動するとヒロインの着替えを覘いた冤罪をかけられて牢獄にぶち込まれるんだよ!!
このゲームをおすすめしたあいつもあいつだ。これまで何度かストーリー進捗を確かめる連絡が来ていたが、絶対これだろ!あいつこの確定拘束イベがいつ来るかとかを知った上で黙ってやがったな……。
「もうゲームへのモチベーションが粉々だ……」
モチベーションがきれいさっぱり消え去って、ゲームをすることすら億劫になってきている。これを解決するにはその億劫さすらも上回るやる気が出るようなゲームをするか、もう諦めてゲームから一旦離れるほかはない。
「ていうか自分はなんでこんなクソゲーしてるんだか」
別に自分はこういったクソゲーしか持ってないわけじゃない。これまで買ったゲームはたくさんあるし、高校受験で遊ぶことができなかった積みゲーはたくさんある。約一年ほど積みっぱなしのゲーム。受験終わったら全部やるつもりだったのになぜか今はクソゲーをプレイし、クソゲーにキレている。
「こういったときは初心に帰る!」
なぜ俺はゲームを始めた?それはゲームの世界を見て!観察して!楽しむため!いやまぁクソゲーでもバグや変なストーリーを楽しむこともできたけど……。でもそうじゃない。俺が求めるのはリアリティ!現実となんら変わらず楽しめるゲーム!
「積みゲーの中に目ぼしいもんあったかな……?」
ゲームが沢山しまい込まれている箱をひっくり返して探す。我ながらたくさんゲーム買ってるなー。これいつ買ったやつだっけか。そもそも何で買ったのかすら覚えてないゲームもある。その中で一つのゲームをふと手に取る。
「シャングリラ・フロンティア……」
これ確かあれだよな……?ギネスにも載ったゲーム。全世界で3000万人がプレイする粉うことなき神ゲー。丁度受験期に入った去年の春あたりで発売されたゲームで、遊ぼうと思ったが、時期的にできなかったゲーム。
「大衆から神ゲーと言われているゲームを放っておいてなんでクソゲーやってるんだ自分は……」
きっかけは結構前のことになるが、クソゲー沼に入水することになったのはそん時出会ったあのクソゲーマーが原因だ。俺はまだクソゲー沼に沈んじゃいない……。助かるはず……。まだ半身浴で耐えているはずだ……。
あいつに直接誘われたこともクソゲーを始めた原因でもあるのだが、他にも理由はある。
一つはそいつのゲームプレイやその周りに集まる人々を見るためでもある。あいつは無自覚らしいが、どうもあいつの周りには少々
もう一つの理由としてはプレイスキル向上だ。ゲームをプレイする身としてはもちろんゲームが上手くなりたい。クソゲーを普段やってるアイツや周りの奴はクソゲーという魔境でプレイスキルが極まっている。実際そういった類の者たちの動きは参考になるし、自分も苦行のおかげで最初の頃とは比べ物にならないほどプレイスキルは上達したはずだ。まぁでもその分大事な何かが削られていく感覚がするが。
「まぁいいや。とりあえずお口直しで神ゲー始めてみっか!」
VRチェアのカセット挿入口にカセットを差し込む。あの時、父さんが買ってくれたVRチェアはまだまだ現役だ。新しく出ているチェア型にはさすがに負けるだろうが、ゴーグル型には負けない性能の高さだ。
あ。一応あいつに連絡入れとくか。クソゲーから敗走するのはとても悔しいが……。
ルシッド:心折れたので神ゲーに逃げます。探さないでください
ルシッド:あとお前あのイベントのこと知った上で黙ってたなこのやろー
あいつもどうせフェアクソやってるだろうし連絡はすぐに返っては来ないだろう。確かあともうちょっとでクリアできるとか言ってたな。正直言ってあれをクリアできるの頭おかしいんじゃないかな?
「まあいいや。それじゃあ神ゲーのリアリティとやらを見せてもらおうか!」
―――――真っ白な空間にウィンドウが現れる。
「まずはキャラメイクだな」
VRゲームにはプレイヤーのアバターが固定のやつもあれば、一から全部キャラメイクできるやつもある。自分はアバターには無頓着だからなぁ。だって自分自身を観察することなんてほぼないじゃん?
「結構項目あるんだな」
基本どの体パーツもたくさん調整事項がある。これキャラメイクするのすごく時間かかるやつだな。自分はそこまでこだわりはないからリアルスキャンしてから少し弄るだけでいいか。
結果的に顔パーツはほぼ変えず、目の色だけ変えた黒髪に青の目のリアルの自分より少しガッチリしてるかなー?くらいの体格のキャラができた。こんなもんでいいかな。
「次はJOBか」
MMORPGというジャンルにおいてJOBはとても重要な要素だ。ある程度方針は立ててあるけど、ここは時間をかけてじっくりやらないとな。
「JOB以外にもなんかあるな。出身?」
なるほどステータスに補正がかかるのか。必ずプラス補正とマイナス補正がセットになっているようだ。自分の考えているキャラビルドに合う出身はあるかな?
「まあとりあえずJOBからだな。」
JOBはどんなものがあるk……いや多い多い。どんだけJOBあるんだこれ。いやでもJOBが多いというよりJOBごとで武器が分かれてるせいで多いな。これいちいち武器種分けてるってことは結構武器の扱いの面での補正が重要そうだな。
「まあそれでもすぐに選べるぐらいには考えていたから即決だな」
JOB:傭兵(片手剣)を選択する。俺は歩き回って観察する以上、身軽に動けることを重要視しているからな。基本的にはゲームは高速前衛だし傭兵とかは使い勝手が良さそうなJOBだ。
「お。初期武器もJOBによって決まるのか。傭兵の片手剣と傭兵の小盾か」
いいな。基本俺は機動力を確保して耐久はそこまで振らないが、防御手段があるに越したことはないし、盾ってのは何も守るためだけに使うわけじゃない。
「てかこれ装備売れるのか。初期装備なんてたかが知れてるからな。金に変えてアイテム買った方がいいだろ。」
そこで防具を売ろうとした手を止める。このゲームかなりの人数がやってるMMOだぞ?流石にほぼ素顔なアバターで全裸プレイはまずいだろ。多分全部売ったとしてもインナーやらはあると思うが、金のためでも変態プレイなぞしたくはない。
「売るのは頭だけでいいか」
所持金が3,000マーニから4,500マーニに増える。まぁまぁ増えるな。
「そして出身と……。機動力確保したいからそのあたりに補正入るやつないかなー」
そして様々な出身の効果を確認しては悩む。そしてかなり良さげなものを見つける。
出身:冒険者
・AGIおよびSTMにプラス補正(小)
・VITにマイナス補正(大)
・感覚値にプラス補正
これはかなり自分の理想に合っている。機動力に加えて持久力にも補正が入るのは嬉しい。耐久を結構捨ててるが……。装備でなんとかなるか?そして感覚値というものはステータス上には載ってない。プレイヤーが見れないステータスかな?ついでであった補正だけど
「初期ステータス振って……。最初はMPとか使わないだろうし、耐久捨ててるからVITも少なくていいや」
「最後にプレイヤーネームか」
PN:ルシッド
俺はゲームでは名前を統一する派で「ルシッド」はゲームを始めて間もないころから使い続けてるネームだ。ニュアンス的には「
「これで良しと」
――――――――――
PN:ルシッド
LV:1
JOB:傭兵(片手剣)
出身:冒険者
4,500マーニ
HP30
MP5
STM30
STR10
DEX15
AGI30
TEC15
VIT5(15)
LUC10
装備
右:傭兵の片手剣
左:傭兵の小盾
頭:なし
胴:皮の服
腰:皮のベルト
足:皮の靴
アクセサリー
スロット1:なし
――――――――――
これで準備は完了かな。
「それじゃあ始めるか!」
―――遥かな太古、神代と呼ばれる時代が―――
スキップ。プロローグは後でも見れるし、俺は早くプレイがしたいからな。あと何も知らないことによる楽しさってのもあるしな。
シャングリラ・フロンティア。皆が認めた神ゲー。一体どんなゲームでどんな物語が待っているのか。そんなワクワクした心を胸に俺は新しき世界へと一歩踏み出す。
・感覚値
触れた指の圧迫、嗅いだ空気が、舐めた刺激が、見聞きした全てが世界を鮮やかに貴方へと教える。そんなマスクデータ。
訓練すれば絶対音感を手に入れることができるように、経験とは何も技能だけに恩恵をもたらすものでは無い。研ぎ澄まされた感覚は時に認識を超えた直感を生み出す。
多少の差異はあるがこのパラメータが高いほど気配に敏感になったりとりあえず口に入れたものの有毒無毒が分かったりする。(シャンフロwikiより一部抜粋)
ゲームで観察することを目的としている以上、視覚に強化補正入るのはルシッド君にピッタリな出身だね。