少しずつ視界が明るくなるにつれて、様々な感覚が俺を迎える。
地を踏みしめる足の感覚。俺を撫で去ってゆく風。遠くから聞こえる人々の喧騒。
そちらの方に目を向ければ、多くの人々、プレイヤーやNPCが行き交う活気溢れる街。
――
ゲームを始めたらまず何をするか迷うのが普通なんだろうが、まあ俺が第一にすることはもちろん観察だ。俺はプレイするゲームのことは事前にあまり調べないタイプだし、シャンフロは突発的に始めたのであまり知ってることはない。だからこそ観察して情報収集するのだ。
街並みをざっと見た感じ、規模はかなり大きいけどまさに中世の田舎の街って感じだな。木造多いし。まあファンタジー系のゲームは大体それくらいの文明の世界観だろうし自然だな。とりあえず観察及び観光として人が多い通りを歩くか。
「らっしゃいらっしゃい‼色んなポーションがあるよ‼まとめて買うとお得だよー‼」
「アルミラージの串焼き肉はどうだい‼一本100マーニ‼安いし美味いよー‼」
「珍しいもん取り扱っとるでー。お客さんが気に入るもんも、きっとあるで。見てってやー」
色々な人、多分NPCであろう人々がそれぞれの露店の商品を人々の喧騒に負けないくらい大きい声で宣伝している。ていうかなぜに関西弁?
「商人さん。どんなものを取り扱ってるか見せてもらってもいいか?」
「こんなもんがあるでー」
ちょっと胡散臭い感じがするローブを着た商人が売るものは……ぱっと見た感じ土産屋みたいなレパートリーだな。それもザ・何か辺境とかに住んでる部族の土産みたいな……。なんだこのお面。マジでどこかしらの部族が作ったらしい狼の面ね……。てか高‼おいてある物全部値段が万からなんだが……。
「面白そうなのがたくさんあるけど今手持ちが少ないんだ。すまんな」
「そら、残念ですわ。ワイはこの街以外にも『セカンディル』や『サードレマ』でも物売ってますさかい。また見に来てやー」
手持ちは4,500マーニしかないからな。最初は大切に使わないと。それに『セカンディル』に『サードレマ』ねぇ。ファースト、セカンド、サードか。わかりやすいな。
さてと、俺がゲームを始めたらする
「串焼き屋のおっちゃん‼アルミラージ?の串焼き肉一本くれ!」
「まいどあり!一本100マーニだ!」
おっちゃんに100マーニを渡す。このゲームにおいてマーニがどれほどの価値を持つかまだよくわからないが串焼き肉一本で100マーニか。基準として覚えといた方がいいかな?それともう一つ気になったこと。
「おっちゃん。アルミラージって何だ?」
「なんだい。あんたこの街に来たばっかのやつかい?アルミラージってのは『跳梁跋扈の森』に出現するモンスターでな?これはそいつの肉を焼いたもんだ。モンスターの肉っつうとびっくりする開拓者さんもいるがなぁ。結構うまいぞ?」
この
ゲームのクオリティを手っ取り早く測るにはゲーム内の食事がかなりいい指標になると俺は考える。料理の見た目から、味、食感、匂いまで。食事はほぼ全ての五感を使う。だからゲーム内で飯食えばそのゲームのクオリティは大体分かる。
これがクソゲーの場合本当にひどくなる。無味無臭とかならまだしも、「テクスチャと内部情報のずれ」のせいで食事がモンスターのドロップアイテムになってたゲームがあってだな……。しかも結構見た目がグロテスクで悍ましい見た目のドロップアイテム。そのゲームはよりによって食事をちゃんとしないと死ぬシステムだから覚悟を決めて口に頬張ってたなぁ。
食べ物食べる前にこんなこと考えるのはよくないな。ゲーム内なのに食欲がゴリゴリ削れていく感じがする。
早速食べてみるか。すごいな。肉汁が既に滴っている。うまそうだなぁ。食事がこんなに作りこまれているゲームそんなにないぞ。それじゃ早速いただきまーす。
………………ん?少し変な感じだな。匂いはしっかりするし、感触もリアルでいうと鶏もも肉っぽい感じで、今までのゲームの中では一番精巧に肉々しさが再現されているが、……味が薄い?
「おっちゃん。この串焼き肉の味付けは何を使ってるんだ?」
「塩と香辛料だけだ。素材の味を楽しむならシンプルな味付けの方がいいからな」
料理の味自体が薄いわけではない……。システム側から味覚に制限が掛けられているのか。確かにゲーム内の食事を精巧に再現しすぎて、プレイヤーがそれに満足してリアルの食事を疎かにすることがあったりしたらダメだもんな。VRゲームが原因で何かしらの健康被害が出たとか笑えないからな。だから本当にそういった規制は大事だ……。それはもう……。本当に。
それはそれとしてこのゲームは空腹度なるパラメータがあるようだ。飯食ったら満腹感を感じるようになった。本当にこのゲームすごいな。満腹感まで再現するとか。
次に目についた露店。道具屋らしきものに行く。
アイテム系はどのゲームであっても大事だからな。備えをしたがるのはどのプレイヤーも同じなのだろう。数人のプレイヤーがその露店に集まっていた。
「おばちゃん!薬草を5個くれ!」
「はいよ!1500マーニね」
「おばちゃん‼この採集した素材を売るからそのお金でポーション頂戴!」
「はいよ!ってあんた。採集した物の中で使えるのはこれだけだよ。あとは使えないか毒があるものだね。ちゃんと使えるものかどうか調べてから売りな!これがお代分のポーションね」
「「「おばちゃん‼次いいか⁉」」」
「はいよー!」
すごいなあの人。あの人数を完璧に捌いてやがる……。それにプレイヤーとの応答が完璧だ。AIが操作してるとは思えないほどだ。人でも入ってるんじゃないのか?本当は人入っていますーと言われても納得できるほど自然だ。目線や動作をずっと観察してるが、現実の人間となんら変わらない。どんなAIを搭載してるんだ?
「そこのお兄さん‼さっきからずっと並んでるだけでこっちを見てるだけだけど何も買わないのかい?」
やべ。観察しすぎた。これをリアルでやると非常識だから両親は俺にゲームをすることを勧めたのだ。実際ゲームで観察できる分、俺の分別が小学生の頃よりちゃんとあるのもそうだが、現実で過剰に観察することはほぼ無くなった。両親に感謝だなほんと。そしてここの受け答え……。ちょっと気取ってみるか?
「ごめんな?
周りのプレイヤーの視線が刺さる。このゲームだともしかしてロールプレイ的なことする奴ってあんまいないのか?NPCを口説く変なやつみたいになってしまった。
「あらまぁ。嬉しいこと言ってくれるじゃないかい‼お兄さん気に入っちゃったから解毒薬を一個おまけでつけとくよ!1500マーニね‼」
驚いた。何というベタなセリフだと我ながら思ったが、会話にクリティカルが入るとこういうことが起きるのか。周りのプレイヤーも驚いているようだ。
「お姉さん!ちょっとこれ買いたいんだけど!」
「お姉さん!この中に売れそうなものがないか見てくれないか!」
露骨にプレイヤーどもの態度が変わったな。こういったボーナスがあると分かった瞬間お姉さんお姉さんと。だが残念だな。こういったものは最初に踏み込んだ勇気あるものが手に入れるものだ。
欲しかったらロールプレイに対する羞恥心を捨てることだな。ふははは。
まあ冗談は差し置いて。そろそろ観察を切り上げてゲームを進めるかな。
「お姉さん。俺この街に来てから間もないんだけど寄っておくべき施設とかある?」
「それだったら『宿屋』と『
おおう。なんとなくゲームにおけるどんな施設なのかは分かったが寄る場所多いな……。
「じゃあそれらの施設に行きたいんだが、ここから一番近い施設はどこだ?」
「それなら宿屋が一番近いね。この大通りの突き当りのあの白い建物。あれが宿屋さ。開拓者さんは寝泊りするところが無いと大変なんだろう?先に寄っときな!」
「ありがとうお姉さん」
やっぱりNPCの好感度とか重要そうだな。好感度……。ギャルゲー……。ピザ……。いや今はやめよう。トラウマを再発する必要はない。
「宿屋はあそこか」
多分セーブやらなんやらが関係してるだろうから早速向かうか。
ちょっと早めに後々出る設定とか出した方が良いかなと思いちょうどいいので
シャンフロ二次創作書くならいつかやろうと思ったこと!設定ゲロ!!
???
それは数多の呪いを宿す者。其の眼差しに捉われし者、如何なる者も健常に在ること能わず。
されど、努々忘れること無かれ。其の呪いは主をも蝕み、牙を剝く。
投稿頻度的に出るのはかなり先になりそう。
彼がピザゲーにトラウマ抱えてる理由はもちろん滅茶苦茶ゲームクリアに苦戦したから。
コンマレベルで調整というRTA擬きのようなプレイを常に求められるから観察してる暇無いんですよね。何度観察に気を取られてピザったか……。
設定考えると楽しいけど書く側になってよりわかる硬梨菜さんの設定の作りこみ具合のヤバさ。