今は宿屋に向かってる途中なのだが……。人多いな!今が夏休みだからか?別に通りを歩けないほど人がいるわけじゃないが、それでも人を避けるのに少し苦労するくらいには人口密度が高い。プレイヤーで街が飽和しかけるのは流石は大衆がプレイする神ゲーってとこか。夏休みが始まったばかりでこれならこれから先ファステイアはとんでもないことになりそうだ。やることやったらさっさとセカンディルに向かうか。
とりあえずたどり着いた宿屋。他より建物がでかいだけで見た目はそんなに変わらないな。宿屋に入るときに「ヴォーパルバニーにイチコロされた」とか「もうちょっとで貪食の大蛇に勝てたのに」と愚痴りながら出てきたプレイヤー達とすれ違う。
リスポーンしたプレイヤーっぽいな。やはり宿屋はセーブ&リスポーンできる場所って認識であってるらしい。詳細は分からないが「ヴォーパルバニー」に「貪食の大蛇」ね……。最初の街の付近だからそんなにやべー奴はいないと考えていたが、普通にプレイヤーをワンパンできるモンスターもいるらしい。
あのカウンターにいるNPCが受付の人かな?
「あのー部屋に泊まりたいんだけど」
「ご宿泊でございますね。この宿は開拓者の皆様が安心してご利用できる憩いの場を提供しており、例えば宿泊はもちろん、あちらの方では料理も提供しており、開拓者の方々はよく冒険する仲間を募集する場所としても利用されています。」
「なるほど。どこの部屋が空いてる?」
「それでは208号室をご利用ください」
部屋に向かう途中まで宿屋の内部を見てみたが、確かに外観相応の広さだし、部屋数もそれなりにはあるが……これ部屋足りてるのか?明らかにプレイヤーの数に対して少ない気がするのだが。やっぱりそういったことはシステム面でなんとかしてるのだろうか。それとも複数箇所に宿屋があるのか?
そうこうしてる内に部屋についたのだが、内装や家具はシンプルでシングルベッドが一つある。一人だけ泊まるなら不便はない広さだな。
「ベッドで寝ればリスポーン設定できる感じ?」
早速ベッドに寝てみる。
『リスポーンポイントが更新されました』
これで良いっぽいな。宿屋ですることなんてこれくらいだろうし、次は職業ギルドとやらに行ってみるか。俺のJOBは傭兵だから向かうべき場所は傭兵ギルドかな?
さっきの受付NPCに傭兵ギルドの場所を聞いてみたら宿屋からかなり近い場所に合った。プレイヤーがよく使いそうな施設はできるだけ近い場所にまとめて設置してあるのか。こういったプレイヤーへの些細な気遣いをするのは良ゲーへの第一歩だ。ゲームをするなら快適な方が良いからな。
『傭兵ギルド:ファステイア支部』
やっぱり傭兵JOB選んだプレイヤーはそれなりに多いのか、かなり賑わっている。
「よう!あんたも傭兵志望かい?」
話しかけられた方向に目を向けるとガタイが良くて顔の右側に縦一文字の傷が刻まれた顔が強面の斧を携えた男性がいた。一瞬プレイヤーかと思ったが、どうやらNPCのようだ。ギルドに所属する時には大体先輩的なやつと知り合いになるのがよくある展開だが、このゲームでもそのようだ。
「そうです。傭兵ギルドに所属するには何をしたらいいですか?」
「何も特別なことをする必要はないぜ?ただ登録をすれば終わりだ。その際にギルド所属の証になる物を貰うんだ。ギルドによって違うんだが、傭兵ギルドの場合は識別章だな。あと別に敬語とかは使わなくていいぞ?傭兵の間に上下関係なんて無いからな!俺の名前はラルドだ。よろしくな!」
見た目とは裏腹に結構フレンドリーな人だな。
「それじゃあタメ口を使わせてもらうよ。俺の名前はルシッドだ。その登録とやらはどこですればいいんだ?」
「あそこの受付ですぐにできるぜ」
「それじゃあ早速登録してくるよ」
受付で登録をして、傭兵であることの証明となる識別章を貰った。名前と現在の職業を聞かれただけで登録できたんだが結構仕組み緩くないか?
「登録してきたよ。ラルド」
「そうか!識別章は身分を証明する大事なもんだから失くすなよ?」
「わかった。なぁラルド。ここに来る前はギルドに所属するにはてっきり試験的なものがあると考えていたんだが、そういうのはないのか?」
「基本的にはギルドは誰でも受け入れるからな。特に開拓者は腕の立つがやつが多いからギルドからしたら開拓者がギルドに所属してくれるのは願ってもないことだろうよ」
「誰でも受け入れる方針か。それで安全性は大丈夫なのか?素性が分からないやつも来るだろ?」
「もしも変なやつが来たら大体分かるし、俺がすぐに〆るからな」
そういってラルドはとても重そうなゴツイ斧を肩に担いだ。絶対STR高くないと持てないやつだろそれ。傭兵というか戦士みたいな見た目だし。ラルドは結構強いNPCなのだろうか。
そしてどうやら、このゲームでは結構プレイヤーは優遇される立場にあるらしい。
「そういやギルドでできることを説明していなかったな。ここではギルドからの依頼を受けたり、職業指定のパーティー募集に参加できるんだ」
まあ事前に想定していた施設の機能と大体同じだな。
「難しい依頼をたくさんこなしていくとギルドが実力者であることを保証してくれるようになる。そしたら人から依頼を受けやすくなるし、信用されやすくなるから目指してみるといいぜ」
「色々ありがとうラルド。ちなみにラルドの職業はやっぱり傭兵なのか?」
「傭兵っちゃ傭兵だが俺は『戦巧者』だ。まあ実績を積んで実力の保証をされた傭兵みたいなもんだ」
やはりJOBには上位JOBみたいなものもあるようだ。俄然やる気が出てきた。俺の短期的な目標の一つにするのも良いかもしれない。
「そうだ。このギルドに初めて来たってんなら街の外についてもあんまり知らないだろ?」
「そうだな。何か有用な情報があれば教えてくれると助かる」
「開拓者ならそこらへんにいるやつはたいていなんとかなるが、ヴォーパルバニーってやつには気をつけた方が良い。あれはこの街に来たばかりのやつにはちとキツイからな。この付近のやつなら挑んでみてもいいが、あんたには逃げることをおすすめする。俺もここらのヴォーパルバニーは余裕だが、地域によっては対処できないやつもいるからな」
ラルド程の人物が勝てないって相当強くないか?流石に初心者が多いエリアで鬼畜モンスターは出さないと思うが。でもさっきのプレイヤーワンパンされたって言ってたよなぁ。
「分かった。色々ありがとうなラルド。また傭兵ギルドに寄ったときは頼むよ」
「気をつけて行ってこい!あーそれと、機会があったら『ニーネスヒル』の職業ギルドに寄ると良い。あそこの方が人は集まるし、設備も充実してるからな。俺は基本どこかの傭兵ギルドにいるからまた会ったそん時は一緒に依頼でもやろうな!」
いい人だったなぁ。やっぱり会話しているとあれがNPCでAIが操作してるとは全く思えない。まだ始めて間もないが、もう既に俺の中ではこのゲームのクオリティは一番と言っても過言ではない。
そんなこんなで最後に寄る場所、
「誰かいるかー?」
「今行きまーす」
呼びかけると奥の方から何か沢山の本や巻物?を抱えた女性NPCが出てきた。
「開拓者さんですね。どのようなご用件でしょうか?」
「すまないが俺はここに来てから間もないんだ。知らないこと多いから
「わかりました。ではまず
「一つは戦いの中でスキルを閃き、成長させ、自然と備えるもの。二つ目はここ、特技剪定所で購入できる秘伝書などで技の秘訣を知り、それを理解することで習得するもの。そして三つめは同じく特技剪定所でスキルを合成して、より強いものへと変化させる方法がございます」
なるほど。習得と言っても色々な方法があるのか、プレイヤーの理想的なキャラビルドが完成するまでとてつもない時間がかかるだろう。こだわり始めたらキリがないタイプだ。
「初歩的なスキルの内容は無料で公開しているので、ご覧になってはいかがですか」
「初心者向けのスキルってことか。どんな感じか知りたいし、無料のものをいくつか持ってきてもらえる?」
彼女が持ってきた巻物の中から3つ手渡されたので封を解き、見てみる。
・フラッシュカウンター
敵の攻撃を瞬時に見切って弾き、すぐさま攻勢に転じ、反撃をするべし。
・タップステップ
足さばきと重心移動を意識し、軽やかに敵の攻撃を避けるべし。
・袈裟切り
敵の対角線の点と点を意識し、それを結ぶ線にまっすぐ力を込め、剣を振るうべし。
なんか本当に動きのコツみたいなのしか載ってないな。結構初歩的なことだし。
「内容を知ったあとはスキルを習得できるかどうかは開拓者様次第ですね。秘訣を理解し、行動することで必ずスキルを習得できるようになるはずです。」
「ありがとうございます」
よくよく考えたら自分ゲーム始めてからステータス見てないな。初期スキルとかあるか見てみるか。
――――――――――
PN:ルシッド
LV:1
JOB:傭兵(片手剣)
2,900マーニ
HP30
MP5
STM30
STR10
DEX15
AGI30
TEC15
VIT5(15)
LUC10
装備
右:傭兵の片手剣
左:傭兵の小盾
頭:なし
胴:皮の服
腰:皮のベルト
足:皮の靴
アクセサリー
スロット1:なし
スキル
・スピンスラッシュ
・ナックルラッシュ
――――――――――
キャラメイク時にはなかったスキル欄があるな。初期スキルっぽいのはあるが、読んだスキルはない。やはり読んでおしまいとはいかないようだ。
「それじゃあ最後に、他のやつにも聞いたんだがこの街でやり残したことがないか確認したい。この街を出る前に寄っておくべき施設や店はあるか?」
「街を出る準備なら、武器屋に防具屋、それにアクセサリーショップで装備を整えるといいと思います。それとセカンディルに向かう際に一人で跳梁跋扈の森を突破しようする開拓者様はたまにいらっしゃいますが、あまりおすすめしません」
前者二つは武器と防具あるし行く必要はなさそうだが、アクセサリーはスロット空いてるんだよなぁ。まあマーニないし他の街にもアクセサリーショップはあるだろうからいいか。今現在ソロであるという問題は……。これこそどうにもならなそうだな。パーティーを組んでも迷惑をかけてしまう未来しか見えない。
ファステイアでするべきことはもう無さそうかな。死んで戻ってくることはあるかもしれないが、次の街であろうセカンディルに向かってファステイアには戻って来ない気持ちで行こう。
それに街での観察も面白いが、俺にとってはここからが本番だ。
さて……一体どんなモンスターがいるかな?
そうして俺はファステイアの門から出て、『跳梁跋扈の森』へ向かうのだった。
ルシッドをアクセサリーショップに向かわせるの忘れてたわ。
このままだったらルシッドがどこぞの半裸鳥頭と同じ運命を辿るところだったので存在は一応知ってる状態にはしたが……。あぶねぇ……
ラルドは「原作だとプレイヤーに荒らされると困る場所には基本的にお仕置きNPCみたいなやつがいるからギルドとかにも居そうだなぁ」と思って考えたNPC。
特に深い設定はないよ。
ラルドはまさにギルドにおける先輩枠のNPC。大体どこかの傭兵ギルドに常駐しており、メタ的に言えば傭兵ギルドを初めて訪れたプレイヤーのための説明者兼用心棒。かなりお強い戦斧使い。例えばギルド内で暴れ出したプレイヤーやPKer、マスクデータをAIが読み込んで「危険」と判断されたプレイヤーを〆る役割。
彼はNPCの中でも上位に位置するが、流石に終盤エリアで出現するぷわぷわ言いながら己の背丈の何倍もの大きさの大剣や大槌を振り回すヴォーパルバニーには勝てない。
叩き切られるか潰されてまう……
どの職業ギルドにもそういった役割のNPCはいる……はず。