たった今セカンディルへ行くための吊り橋に着いたわけなんだが……。目の前には立ちはだかるように巨大な蛇が蜷局を巻いている。次の街に行くにはこの吊り橋を通らなければいけないはずだ。どうやらこのゲームはボスモンスター的なやつを倒さないと次の街へ進めないようだ。
エリアボス『貪食の大蛇』
推奨レベル:10
推奨人数:3人
推奨レベルは余裕で越してるが、エリアボスはマルチ推奨か……。ファステイアにいたNPCもエリアを一人で突破するのはおすすめしないって言ってたもんな。それでも、じゃあ街戻ってパーティー募集しますってわけにもいかない。それに俺にもプライドってもんがある。
「ただのマルチ推奨エリアボスくらいソロで初見突破してやるよ……!」
「シャァァァァ‼」
早速貪食の大蛇は俺を丸のみしようと口を大きく開けながら突進してきた。
「タップステップ‼」
回避行動に補正が入る「タップステップ」を使用し、横に跳んで避ける。そして貪食の大蛇の胴体
を傭兵の片手剣で斬りつけるがすぐに弾かれてしまう。
「流石に簡単には入らないと思ってたが鱗が硬い……!」
貪食の大蛇はすぐに体の向きを変えて何度も攻撃を放ってくる。
「おっと」
噛みつき攻撃は自前パリィで対処。そしたら貪食の大蛇は尻尾を上げて振り下ろしてくる。
「ッ‼ぶね……」
噛みつき攻撃くらいなら盾や剣でいなせるが、尻尾の薙ぎ払い攻撃などの単純な質量の押し付けによる攻撃はどうにもならないから避けるしかない。今のところ噛みつきや尻尾を利用した攻撃、単純な突進など、他のゲームでもよく見るような攻撃しかしてきてない。一応牙を確認してみたが、毒蛇のものじゃなかった。毒は使ってこないと予想しているが……。決めつけるにはまだ早いか。流石に神ゲーで変な初見殺しムーブはしてこないと信じたい……。
おっと尻尾を巻いて……薙ぎ払いか!
ジャンプして避ける。モーションは正直言って初心者のことを考慮しているのか、わかりやすいものが多い。だがアイツの鱗は硬くてあまり攻撃が通らない。このままだとジリ貧だし、武器の耐久力も結構心もとない。
「傭兵の片手剣も耐久が少ないし、お前の出番だ!
インベントリから致命の包丁を取り出したとき、なんだかその赤い刀身が鈍く光った気がした。
「……いくぞ!」
このゲームなら多分鱗剥がして弱点部位を作るとかもちゃんと出来そうだが、そんな手間かかることはしない。狙うのはただ一つ!お前の頭だ!
貪食の大蛇の噛みつき攻撃を「フラッシュカウンター」を発動しながらパリィし、頭部に一閃入れる。
「キシャァァァァ‼」
大抵の生物が弱点とする頭。ちゃんと他の部位より攻撃が通る!これまで俺を驚かせてくれたこの神ゲーならちゃんと肉質を再現してくれてると信じてたぜ……!
「次はこっちから行くぞ‼」
貪食の大蛇の突進を避け、後隙を晒している間に貪食の大蛇へ飛びついて頭に肉薄しようとする。だが貪食の大蛇は俺が見たことのない動きを見せる。
クッソタイミングトチったか……!
俺は一応何してきても対応できるように構えるが、貪食の大蛇は尻尾の先端をこちらに向けて紫色の何かを放ってきた。
紫色……毒!空中で避けられ……
「ぐッ……!」
俺はその攻撃を食らってしまい、地面に倒れる。HPを確認するがダメージはない。その代わりに表示されてたのは毒の状態異常。やっぱり毒使ってきやがったか……!一応警戒していたのに食らってしまうとは。あの森で色調反転ベニテングダケとか毒があるものが多いことから予想するべきだった。こいつは毒を使うと言っても摂取した食べ物由来の毒を使うようだ。毒腺が確認できなかったからと油断していた。
「だけど残念だったな貪食の大蛇!お前の不意打ちもこれがあれば意味を成さない!」
インベントリから取り出すのはファステイアでおまけでつけてもらった解毒薬。早速使うことになるとはな……。これもあの道具屋のおば……お姉さんのおかげだな!
「一度見せた攻撃は二度と食らってやらねえからな。今度こそこっちのターンだ!」
貪食の大蛇がまた突進してくる。だがそろそろ目が
貪食の大蛇が攻撃してくる瞬間に全神経を『それ』に集中させる。ビビるな!目を逸らすな!ギリギリまで引き付けろ……!まだだ……まだ…………今!
突進が当たる寸前に避けて、貪食の大蛇が横を通り過ぎる瞬間に『それ』を掴む。随分と掴まりやすそうな白髪だなぁ……!
貪食の大蛇は暴れて俺を振り落とそうとするが、俺はしっかり髪を掴んで離さない。
「頭部が柔らかくて攻撃が効いたんなら、何も保護するものがない目に攻撃したらどうなるんだろうなぁ!」
何度も致命の包丁を目にぶっ刺しクリティカルを発生させる。そのたびに赤いポリゴンが溢れ出て貪食の大蛇は苦しみ、暴れる。それでも俺は踏ん張り、振り落とされない。
「さっきはよくも糞かけてきやがったなクソ蛇!これでさっさと沈め!」
「スク―ピアス‼」
貪食の大蛇の目にスキル込みの刺突を思い切りブチ込み、貪食の大蛇が一瞬痙攣して止まったかと思ったら、その巨体はポリゴンとなり消えた。
「エリアボス撃破!初見突破してやったぜ!」
いやー楽しかった!跳梁跋扈の森でずっと雑魚狩りしてたからマンネリ感じ始めてたんだよな。モンスター観察するのも楽しいが、ああいうピリピリする戦いも楽しいな!
貪食の大蛇からドロップアイテムが落ちたのでそれを拾う。
・喰蛇の鱗
・喰蛇の白髪
・喰蛇の牙
結構落ちたな。これ使ってなんか新しい装備作りたいな。レベルも上がったし、スキルも習得できた。早速確認してポイント振るか。
――――――――――
PN:ルシッド
LV:16
JOB:傭兵(片手剣)
2,900マーニ
HP30
MP5
STM45
STR20
DEX25→30
AGI40→45
TEC25
VIT5(15)
LUC20
装備
右:致命の包丁
左:傭兵の小盾
頭:なし
胴:皮の服
腰:皮のベルト
足:皮の靴
アクセサリー
スロット1:なし
スキル
・スピンスラッシュ
・ナックルラッシュ
・シールドバッシュLv.4
・袈裟斬り
・タップステップ
・フラッシュカウンター
・集中 Lv.1 NEW!
――――――――――
そういえば早くログアウトするために急いでるんだった!ヤバいさっさと素材拾ってセカンディル行かないと!
―――『
急いで全力疾走で来たのですぐにセカンディルに着いたわけだが、街並みを見てると観察とか色々なことしたくなってきたな……。でももうログアウトしなきゃだからなぁ。まだ朝飯食べてないし、今何時だ?さっさと宿屋向かってログアウトしないと。
そうして俺のシャンフロライフの一日目は幕を閉じた。
一方その頃とあるクソゲーマーは……
「お前も邪神と共に沈んどけぇぇぇい!!!!」
フェアリアに飛び蹴りをお見舞いしていた。
「お前の方が邪神じゃ!ほとんど!お前の!せいだろうが!!!!」
そしてひたすらエンドロールが始まるまでの3分間でボコボコに殴り倒した。
「よっしゃぁぁぁ!!ついにフェアクソクリアしたぞぉぉぉ‼」
彼の名前は陽務楽郎。クソゲーをこよなく愛し、青春をクソゲーに捧げる変態。そして彼が観月透をクソゲー沼に引きずり込んだ張本人である。
「噂に違わないとんでもないクソゲーだったなぁ。二度とやらねぇ」
そう言って彼は『フェアクソ』を「二度とやらないゲーム」の棚に入れる。
「開放感がヤバい……まるで刑務所を出所した受刑者のようだ……ん?」
そこで自分のスマホにメールが来ていることに気が付く。差出人を確認したらルシッドからの連絡。それで楽郎はなんとなく内容を察した。
「ようやくあいつもあのクソイベに引っかかったか」
メールを開いてみる。
ルシッド:心折れたので神ゲーに逃げます。探さないでください
ルシッド:あとお前あのイベントのこと知った上で黙ってたなオイ
予想通りの反応だ。あいつがキレてVRをぶん投げる光景が浮かんでくるわ……。まぁあいつリアルで会ったこと無いから顔知らないけど。
そしてあのイベントについて黙っていたことについてのこちらへの恨みつらみが書かれているが、そりゃ教えるわけないだろう?こういうクソ展開が分かってる中で他人がそれを踏んでどう反応するのか見物するってのもまた乙なものだ。それにこれくらいで心折れてるとこの先の展開は耐えられないぞルシッドよ……。
フェアリアをシバいた後なのにあの後のクソ展開思い出したらまた腹立ってきたな……。よし。学校終わったら「ロックロール」行ってクソゲー漁ってすぐに忘れよう。切り替え大事。
そういえば神ゲーに逃げるとか言ってたが、何のゲームだ?まぁ神ゲーなら自分は関わること無いし、しばらくゲームは別々でやることになるか。
そんなことを考えながら楽郎は学校へ行くための準備を始めるが、彼がその神ゲーとやらに関わり、色々とやらかすことになるのだが彼はまだ知らない……。
ようやくサンラクとルシッド合流させられそう……。一応気を付けてますが、原作キャラでこれ口調おかしくない?と思ったところは容赦なく指摘していただけるとありがたい。
できるだけ原作準拠でやっていきたいからね。
ちょっと確認したら描写間違ってたので修整しました。透が学校行かずにゲームしてるのは楽郎の高校より早く夏休みが始まったってことで…。