緋弾のアリア 血濡れた銀狼   作:浅田湊

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契約

 彩峰の運転で学校へ到着すると、少し遅刻。

 まぁ、この足では仕方ないと大げさに固められたギブスを見ながら、ため息を吐くと教室の扉を開け、中へと入る。

 それと同時に、銃声が聞こえ、目と鼻の先を弾丸が通過する。

 これは新手の歓迎なのだろうか。

 思わず、反撃の為に自身もOTs-38を取り出して、発砲した人間へと反撃しそうになってしまう。殺しかけたんだ。殺されても文句は言えないだろう。

 

「あの、これは新手の歓迎会ですか?」

 

「あんた、確か……この前の――」

 

 神埼アリアですか。

 なんでしょう。本当に喧嘩を売ってるんでしょうか?

 だが、相手は餓鬼。ここは大人の対応をするのが大人と言うものだろう。

 

「小さい子には分からないかもしれないけど、銃って言うのは無闇矢鱈に振り回してはいけないの。危険なものなの。分かるかしら? 小学生にもそれくらい分かるわよね?」

 

 私の言葉に神埼は小刻みに震え始める。

 なにか不味いことを言っただろうか? 見た目、小学生な上に中身も餓鬼。こんなことを言われても仕方ないだろう。銃は簡単に人を殺せると習わなかったのだろうか?

 それにしても、良い天気だ。本当に清清しいほどに……

 

「アンタ、今、一番言っちゃならないことを言ったわね。誰が小学生よ!」

 

「すいません、高天原先生、私の席はどこでしょうか?」

 

「無視するなんていい度胸じゃない……」

 

 無視すると言うより、売られた喧嘩をわざわざ買うのも疲れるから放置してるだけなんだが……。この足の事もある。あまり、暴れられても迷惑だ。

 辺りを見回すと遠山キンジの隣の席が空いている。空いてる席なら座って問題ないか。

 他に空いてそうな席はない。

 

「って、なんでアンタなんでそこに座ろうとしてるの!」

 

「空いてる席ですよね? なら、どこに座っても問題ない気がしますけど? 間違った事を言っていますか? もしかして、神崎さんの国では挨拶が銃撃、お前のものはオレのもの的なジャイアニズムが常識なんですか。すいません、勉強不足で……」

 

 はっきり言って面倒臭い相手に絡まれたものだ。

 いっそ、一発ぶん殴ってやりたい。こっちはさっさとなかったことにして次に進みたいのだ。わざわざ水に流してあげようとしているのに……

 

「それに、言わせて貰いますけど貴方程度でSランクとは随分と温いのですね? それとも、優秀なパトロンがいたからとかでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉にクラスが凍り付く。

 当然だ。フィアナが口にしたのは武装探偵という制度そのものへの嫌悪なのだ。

 ここにいる強襲科の連中が良く思うはずがない。

 だが、二人とも頭に血が上ってしまっている。特にフィアナに関しては先程の銃撃で一歩前へ踏み出していたら死んでいたかもしれない。

 神埼アリアが謝れば済む訳ではないが、少しは楽に収まっていただろう。

 クラスの連中も止める気配はない。

 当然だ。オレだってこんな空気の中に飛び込む度胸はない。だが、誰かが飛び込まなければ確実に暴動が起こる。

 今のオレでは何をどうするのが最善か分からないが仕方がない……。

 

「お前ら、その辺りにしろよ」

 

「キンジ! あんたは黙ってなさい。私はこいつに用があるの」

 

「私、貴方に用なんてこれっぽっちもないんですけど……」

 

 通る筈もなかった。

 

「キーくん、もしかしてこれって私の所為?」

 

「いや、理子の所為じゃないだろ。運が悪かったとしかいいようがない」

 

 そう運が悪かった。

 しかし、周りも面白がり始めている。

 よっぽど、神埼アリアとフィアナ・シュトレーゼが気に食わないのか……いや、気に食わないのだろう。面倒な二人に囲まれたものである。

 

「そう言えば、フィアナさんその右足どうしたの? この前、あれだけ言っておきながら、任務中に怪我したとか? 通信科なのに」

 

「はい。トラックに引かれました」

 

「アンタ……何言ってるわけ? トラックに引かれて人間が生きてるわけないでしょう!」

 

 確かに防弾制服は銃弾には有効だが、トラックにひかれた衝撃を逃がしてくれる訳ではない。にも関わらず、右足だけの怪我などどう考えてもおかしい。

 オレと同じ人種だとすれば、納得がいかなくもないが流石にそれは考えすぎだろう。嘘と捉えるべきか……。

 しかし、どうやら神埼アリアの相手をすることにも飽きてきたのか、フィアナは堂々とあくびをし始める。火種を巻くだけ巻いて逃げるつもりなのか……こいつ……。

 

「その辺りにしとけ」

 

「何の用ですか? 鬼塚先生……」

 

「ちょと、こいつ借りて行きますね?」

 

 そう言うと、通信科担当教員の鬼塚にフィアナは連れ去られていくのだった。

 しかし、鬼塚は蘭豹とは違った意味で恐れられている。蘭豹が暴力なら、鬼塚は絡め手を好むのだ。つまり、弱みを握り従わせる。情報戦――目をつけられるとはご愁傷様である。

 ただ、これで二人が争うことはなくなった。

 まだ、オレとアリアの問題が解決したわけではないのだが……。フィアナのお陰で更に不機嫌になっているところを見ると悪化したとも言えなくはない……。

 

 

 

 

 

 

 

「何故、間に入ったのでしょうか? 理由をお聞かせ願えますか?」

 

「理由……お前、私が間に介入しなかったら確実に戦闘になってただろ? その時、怪我するのは確実に神埼の方だ。有望株を潰すのは惜しいからな……蘭豹に借りを作るのも悪くないし……男紹介しろとかうるさいんだよ」

 

 恩を売るために助けたわけか……。

 なら、おれがそれに対して何かを感じる必要はない。

 教室に戻れば、また再燃焼するだろう。ここはどこかで時間でも潰すべきか。

 

「まぁ、それがいいだろうな。お前の言いたいことも分かるよ。つか、私なら確実にぶん殴って病院に送りつけるだろうしな。それを我慢してただけまだマシだよ」

 

「それで、もう行って良いですか?」

 

「ついでだ。蘭豹から頼まれてたことがあったんだ。戦姉妹制度って知ってるか?」

 

 下級生が上級生の下で技術を学ぶ制度だっただろうか?

 まぁ、教えるつもりもないので、完全に無視していた。あれだけの事をしたんだ。嫌われることはあっても、自ら進んでなりたがる人間はいないだろう。

 いちいち、いやいやな人間に何かをしてやるほど善人ではない。

 

「知ってますが、それが何か?」

 

「適当にピックアップしておいたからこの中から良い奴がいたら選んでくれだとさ」

 

 その言葉に私は固まってしまう。

 戦姉妹制度に関しては強制ではなかったはずだ。つまり、拒否権がある。なのに、なんだ? この教師が選んだ中から選べ的な空気……明らかにおかしい。

 そもそも、教師が生徒に深く関わるのは一年次まで――あれ? なんかおかしくね?

 

「意味がわらないのですが? どういうことでしょう?」

 

「簡単に言うと、一年で優秀な人間が何人か戦姉妹作れずに漏れてるからそん中から誰か一人、選んでくれないかってさ。私としちゃ、お前を縛れるから仕事が楽になって万々歳ってとこなんだけどな」

 

「自分は監視者とばらした挙句、教師の職権を乱用ですか……」

 

「役得といってくれ。それに、別に蘭豹はどう躾けろとまでは言ってない。作ったら作ったで適当に指示して逃げたところで文句を言われる事はないだろうしな」

 

 逃げ道がない。

 もとより、鬼塚にこっちの素性がばれている為、拒否権が殆んどないようなものなのだ。

 ただ、それでも引けない一線というのは存在している。使えない屑を抱えるつもりはない。こっちにもやらなければならない事が存在しているのだ。

 雑魚に構っている暇など一秒たりともない。

 

「そう言えば、今朝何かあったんですか? 何やら、騒がしいですが」

 

「チャリジャック」

 

「はっ?」

 

 思わず、その返答に素っ頓狂な声をあげてしまう。

 自転車をジャックするなどバカの極みだ。小学生かと突っ込みを入れたくなる。

 それに何の意味があるというのだ。やるなら、もう少しあるだろう。

 

「マイクロウージーにプラスチック爆弾まで利用してるのよね……それだけのものを揃えて自転車ジャックって言われたら呆れるわよね」

 

「まぁ、バカですよね。身内に犯人がいるって言ってるようなものじゃないですか」

 

 自転車ジャックなど起こせるのはターゲットを監視できる人間だけだ。

 しかも、自転車置き場に自然と入れる人間――変装の名人の可能性もあるが、それでも明らかにこちらの動きを理解していなければならない。

 まぁ、動向次第では一気に犯人像を突き止められるだろう。

 恐らく、変装できるのなら今もこの学校内に潜んでいる可能性が高い。

 

「証拠品の管理、および捜査関係者の名簿を見れますか? 私の推測ではその中に犯人がいると思われるのですが……証拠品があまりに不自然なほどにあがらなかったらの話ですが」

 

「内部犯ね……まぁ、それくらいなら問題ないか。当然、さっきの話の取引材料としてでいいのよね? 本来、こういう情報を渡すのはアレなんだけど?」

 

「わかりましたよ。ただし、選ぶ自由ぐらいはありますよね?」

 

 情報の対価だと言うのならば仕方ない。

 捜査資料は探偵科、内偵部署がない以上、誰が仕事に携わったかは教務科以外では調べられない。情報の対価としては高くついたが、妥当なところか。

 しかし、あげられた資料を見る限り目ぼしい人間がいない。

 A~Cまで様々なランクで一点特化型から万能型までいるが、どうにもメガネに適わないのだ。まぁ、資料上の数値だけしか書かれていないので仕方ないのだが……。

 

「おすすめとかいます?」

 

「まぁ、どれも微妙だな。数値なんてあてにならんし、ランクなんて実践ではただの目安。死ぬときは死ぬからな」

 

「言い切りますね……まぁ、試すなら火野と一里塚くらいですか。今日の午後にでも試験して見ましょう」

 

 CQC戦が行えるなら、適当に指導すればいい。

 一里塚についても射撃も近接戦闘も群を抜いていないが決して、悪い成績ではない。不気味なほどに正五角形を保っている。

 その割りに実戦経験が乏しいのが気になるのだが……

 

「その足でか?」

 

 鬼塚は右足を指差し、呆れたような顔をする。

 だが、この程度ではハンデにもならない。むしろ、丁度良いという位だろう。

 まぁ、それ以上にわざわざ私がテストをするつもりもないのだ。別に試験を行うといって、私が相手になる理由などないのだ。

 

「やり方はありますよ。それじゃ、資料はその後取りに良くのでよろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、五時限目になると強襲科の施設へと訪れるのだが、やはり視線が痛い。

 完全に敵視されている感じである。まぁ、本当にそんな視線で見られても困るのだが……敵対するつもりもないわけだし、面倒ごとに巻き込まれるなどまっぴらだ。

 

「それで、蘭豹先生? 一里塚と火野ってどいつですか? あの二人位でしたけど、書類選考で合格したのは……まぁ、それ以外は没です」

 

「万能型と近接型か。まぁ、妥当だな」

 

 それらしいのは何人かいるが、その中に同族の臭いがする人間がいる。

 まぁ、まだ血に餓えた獣と言うわけではないが……関係ないか。私には関係のないことだ。他人がどうなろうと知ったことではない。

 

「あの、私が一里塚です」

 

「火野は私だけど……」

 

「火野、減点1」

 

 服装に問題あり。一里塚に関しては何だこいつ……いる場所間違えてるんじゃないか? 

 そう思えるくらい、鉄火場より女子高生をやっていた方がモテる気がする美人だった。

 減点する要因にもならないので、何も言わないが――まぁいいか。

 

「それじゃ、蘭豹先生この二人借りますね。減点5で不合格。減点の付け方に文句があれば言って下さい」

 

 また、別の人間を宛がわれても面倒だ。

 なら、厳しめに成績を付けて合格ラインを上げてしまえば良い。そうすれば、合格ラインを突破するような人材を見つけられなくなり、この話も流れるだろう。

 

「模擬戦闘のルールは死亡した時点で負け――リタイアは許可しましょうか。まぁ、死ななければ、何でもありですかね?」

 

「制限時間は一時間でいいか?」

 

「何言ってるんです? 蘭豹先生――そんなにかかりませんよ。別に勝てといってるわけじゃないんですから、十分あれば大丈夫です」

 

 十分で大体、動きを見れる。

 攻撃に出られなければ、その時点で落第。反撃に反応できなくても論外。

 後は加点するか減点するかだろう。

 

「蘭豹先生……これって?」

 

「あぁ、お前らはまだ戦姉妹決まってなかっただろ?」

 

「そう言う訳です。私としては通信科ですし、わざわざ強襲科に戦姉妹を持つ理由もないのですが、まぁちょっとしたやり取りがありまして……」

 

「パスしていいですか? 勝てないケンカはしない主義なんで」

 

 直感か……

 だが、それでは上は目指せない。敵は常に待ってくれないのだ。

 勝てない喧嘩をしなければ、強くはなれない。現状維持が関の山……いや、落ちぶれる一方だろう。訓練だけではどうにもならないのだ。

 

「まぁ、それもいいでしょう。先程の減点は撤回することにします。その直感は悪くない。ですが、敗北では始めて学ぶこともありますよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 Cランク相当――

 初日の成績を見れば、大体そのレベルの力だろう。

 まぁ、手を抜いてそれだと考えればどれだけ力を隠しているかは分かったものではないが……繚乱を地に着けたという時点で戦闘においては恐らく、武偵を含めても上位に食い込める実力を隠している筈だ。こと、人を殺していい状況においては……。

 しかし、よく観察している。

 先程の火野の減点は首筋のアクセサリーだろう。

 そして、加点されたのは戦う上で重要な直感。相手の実力を暗に感じ取る力だ。

 ここにいる人間でどれだけ手を抜いていることに気が付けるだろうか?

 あの右足もどう考えても折れてはいない。傷めてはいるだろうが、殆んど行動に支障はないだろう。それを試す為?

 試合が始まる。

 はっきり言って、一年二人のコンビネーションはバラバラ。

 当然と言えば、当然か。ここまでコンビを組んだ事がないのだ。

 だが、仕方がないとは言えない。急務で知らない武偵と組まなければならない事もありえる。つまり、対応力がないと判断されても仕方がない。

 

「両者、減点1」

 

 やはり、来たか。

 しかし、あれだけ猛攻を受けても一歩も動いていない。

 全て軽く逸らしているだけだ。一度も攻撃は入っていない。やはり、一年には荷が重すぎたか? 相手にすらなっていない。まぁ、いい経験にはなっただろう。

 

「ナイフ捌きが甘い」

 

「そんな撃ち方では、当たりませんよ」

 

 接近して来た火野の腕を掴むとそのまま鳩尾に一発、拳を叩き込み、一里塚の方へと蹴り飛ばす。一里塚が背後で銃を構えていたのが見えていたのか?

 視界に入っていない以上、感じていたと言う方が正しいか。

 

「無闇に突っ込むのは得策ではありません。それをするのはバカか、相手と数段の実力差がある場合だけです。実戦ではサクリファイスなど行う余裕などありませんよ」

 

 誰かが犠牲になり、相手を引き付ける。

 確かに策としてはありだが、実戦向きではない。死亡して戦力がなくなる事を考えれば、悪手だ。その次が今より簡単な仕事とは限らないのだ。

 なるほど、動きも悪くない。頭の回転も速い事を考えると、作戦立案も行えるだろう。

 チームの中核を担える人材だ。はっきり言うと、通信科にいるのが惜しい人材である。

 まぁ、話を聴いた限りでは仕方がないといった感じだが……。

 

「十分、経ちました」

 

 恐らく、周りから見れば短く感じたかもしれないが、実際に戦った二人は長く感じただろう。特に今回は明確なまでの実力差があった。

 床に倒れこんでいるのも仕方がない。

 

「まぁ、減点7と言ったところでしょうか? 受けていい攻撃などありません。かわすなら攻撃させない。攻撃するなら仕留める。その程度の意思もなしに相手が止まってくれるとでも? 殺さずを貫くのなら、それもまた良し。ですが、その程度の実力では何も守れませんよ? 私に一撃も与えられなかったのがその証拠です」

 

 確かに、何度か防げる場面で攻撃を打たせてかわしていた。

 攻撃しても殺意がないだけに鋭さがない。相手は待ってくれない以上、その甘えは捨て去るべきものだろう。一年でそれが理解できるかは分からないが……。

 

「貴方達は誰の為に戦う? なんで銃を手に取った?」

 

「それは……」

 

「……」

 

 それを聞くのは酷というものだろう。

 覚悟を決めるなどなかなか出来るものではない。一年時点では武偵がかっこいいからなんて理由の奴もいるのだ。銃を持つ理由。それが為す意味を理解するのはなかなかに難しい。

 何より、学校指定の防弾制服がその意味を大きく覆い隠してしまっている。

 今の世の中、銃が人殺しの道具だと思えるかは分かったものではない。

 

「まぁ、実力差は無視するにしても決定的な差はそれです。私は銃が怖い。だからこそ、常に目をやる。狙撃手が隠れていないか常に注意する。銃に対する感覚を麻痺させるのは良いですが、今のままだと末路は捕まって薬物漬けとか好事家に売られますよ」

 

 そういう末路を辿る奴がいないとは言わない。

 危ない橋を渡ればそうなる。実力があっても、結局は負けるときは負ける。

 それは武偵を目指す以上、誰しもが理解しなければならない。覚悟しなければならない。

 敗北は死よりも惨めである可能性……。

 

「戦いでは相手が超能力者だから、実力が上だからとかそんな理由は許されません。あぁ、そうですね。その点では訂正しなければなりませんか。貴方達はこうして生き残っていると言うことは加味せねばなりませんね。合格としましょうか。二人とも――でも、私は通信科なので、忙しいですし話を聞くくらいしかしませんけどね。基本見てるだけのつもりです。それで、どちらが私の戦姉妹になりますか?」

 

 最後は選択か。

 これまでの会話から考えると、現実を叩きつけられ折れかけているだろう。

 特に二人は一年の中でも有望株だった。まぁ、ここで腐るようならそこまでだったと言うことだろう。それ以上でもそれ以下でもない。

 

「一週間程、時間を差し上げます。よく考えてください」

 

 それだけ告げるとフィアナ・シュトレーゼは何事もなかったかのように私の横を通り過ぎる。あれだけの攻防でも息一つ荒れず、制服においては崩れ一つない姿で――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここじゃのう」

 

 立ち入り禁止のテープが張られている。

 昨晩、襲撃のあった中華料理店だ。捜査官はいないが、その中に一人だけ着物を着た女性が立っていた。

 背中には人が振るうには大きすぎる3mを超える野太刀を背負っている。

 捜査員が何人か残留しているが誰も彼女を気には止めない。まるで、空気のように誰も彼女を見ていないのだ。

 

「しかし、荒れておる。我が隠居しておった間に随分と血の気が多くなったものよ」

 

 別段、領地で人が殺しあったところで干渉するつもりはない。

 それが人の性であるのならば、化物である自身が関与する余地がないからだ。

 だが、それがそれで終わらないのならば話は別だ。

 人の世は移り変わる。世代は変わる。

 世界の欺瞞に満ちた安定はいつか終わりを告げる。そして、その代償を払わなければならなくなる。果たして、それは誰が払う事になるのやら。

 蓋をした怨嗟は積もり積もり、更なる澱みを生み出す。

 人がどうなろうと知った事ではない。人の気持ちなど、化物である我には理解出来ぬのだから……。

 

「少しばかり、試して見るか――次世代とやらを」

 

 久々に項羽の実力を見るのもいい。

 『立花』の言った期待をどの程度か見極めるのも良し。

 そう呟くと、ゆっくりと姿を消すのだった。




文字数減らすかもしれません。
八千文字書くのがつらくなってきました。
三千文字前後が丁度良いかな?
一応、構想としては魔剣までは原作通りに、ブラド時に別の事をやるつもりです。
裏で動いている組織に関しては全貌が明らかになるのは先になりそう。
感想待ってます。
もしかしたら、オカルトチックな恋愛をオリジナルで書くかもしれないのでその時はよろしくお願いします。
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