緋弾のアリア 血濡れた銀狼   作:浅田湊

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襲撃

 星伽白雪に打ち込まれた毒は一過性のもので問題にはならなかった。

 だが、問題は毒を使った人間の方だ。あの時、抑えられなかったのが痛い。あの戦い方から考えるに状況に介入された場合、対処するのが厄介だからだ。

 特に直情型の神崎アリアや遠山キンジには厳しい相手だろう。

 既に何本かの侵入経路と脱出経路をシュミレーションしているが、地上部は使われると考え辛い。

 物陰が多い地下での戦い。しかも、爆発物が存在しているだけに戦闘手段も限られる。

 もしも、奪還・追撃になった場合は厳しい状況になるだろう。

 恐らく、魔剣は星伽白雪に直接動くように指示する筈だ。何らかの方法で。

 魔剣のこれまでの実績を見ても明らかに魔剣一人での行動とは考え辛い。

 それを止める術がない。彼女の自由意志であり、監禁でもしない限り……。

 いや、待て。逆ならどうだ。これまでの事件には明らかな計画性があった。もしも、それが土壇場で崩れたなら。

 

「例えば、誘拐対象が死亡した、とか」

 

 状況が状況だ。遺体を確認する余裕はないだろう。

 人が死亡したという状況証拠、噂が流れた時点で逃走に出る筈だ。確実に。

 しかし、そこでもしも一片の希望が出来たらどうだろう。その情報が虚構なのではないかという。

 ここから先は矜持の問題だ。仕事に対する矜持の。

 

「まぁ、地下区画の排水施設に遺体を棄てれば即座には見付からない。そして、その状況で巫女服を連れていれば自ずとそう言う可能性も生まれてしまうか」

 

 だが、この作戦の問題は二つある。

 一つは脱出経路。残り二つは――。

 そう考え、近場のとある場所のデータを調べ始める。

 該当するデータがあれば、それを使えばどうにでもなる。要は視覚的な問題なのだ。

 そして、予想通り該当するデータが存在した。

 あとはコレを確保するだけなのだが、どうやって確保するか。そう考えた時、思い浮かばず盛大な溜息を吐いてしまう。一番、頼りたくない相手に頼る他ないか。

 連絡をしようにも既に午前一時を回っている。

 よし、連絡をしよう。そう考えると、わざと連絡用に渡されていた携帯で彼女の携帯に連絡しようとするのだが、それを寸前で思い止まった。

 部屋のノブがゆっくりと回ったからだ。誰かがこの部屋に入ろうとしている?

 鍵はかけていない。しかし、こんな時間にノックもなしに誰かが侵入するとは考え辛い。

 私は即座にPCをスリープモードにすると、静かに物陰へと隠れる。

 

「きっと、この時間なら眠っていやがるです」

 

 抜き足差し足で部屋に侵入して来たのは星伽粉雪だった。

 あれだけ、警戒されていたのだ。何か証拠を掴む為にでも危険を冒そうとしているのだろう。

 PCはスリープ状態。見られる訳にもいかない。こうなったら、少しばかり痛い目を見てもらうしかないか。

 そう考えると、私は静かに粉雪に背後に立ち、左手を振り下ろした。

 

「い、いた! な、なにしやが……」

 

「なにしやがるは此方のセリフですよ」

 

 頭を押さえて蹲る星伽粉雪の襟首を掴むとそのままリビングまで運ぶ。

 ここで言い争っても時間の無駄だ。見られては不味い資料もある。

 私はレモネードを用意すると星伽粉雪にそれを出した。

 

「レモネードです。珈琲は苦手そうだったので」

 

「うっ、屈辱です……」

 

 悪態しかつかない。どうやら、心底嫌われているらしい。

 まぁ、今更な話だけに何とも思わないのだが、悪態を吐きながらも貰ったモノは飲むのか。

 その状況に思わず苦笑いを浮かべてしまう。

 

「ところで、貴女は私が魔剣だと思っているのですか? 深紅と名乗る武偵との戦闘中に誘拐されそうになったのを食い止めた人間が」

 

「それが真実ならです。ですが、それを誰も目撃していやがりません。なら、虚構かもしれないです」

 

 確かにその通りだ。人には二通りしかいない。

 疑ってかかるか、信用してかかるか。彼女は前者の人間なのだろう。

 実際に前者の人間の方が長生きする。哀しい事だが。

 

「確かにそうですね。ですが、それはとても悲しい事だと思います」

 

 人の事をいてた人間ではないのは理解している。

 だが、箱入り娘にまでそのような事を言われる世界は少しばかり、哀しい気がする。

 まぁ、雰囲気から感じ取りに武装探偵という存在そのものを毛嫌いしているように見える。

 

「貴女は武装探偵という職業は嫌いですか?」

 

「嫌いです。金銭の為に武力を用いるなど下賤な行為なのです。――お姉さまがそのような場所にいるには耐えがたい事です」

 

「確かに下賤かもしれませんが、対価という物は何事にも必要な物です。誰もが綺麗なままではいられない。矛盾した世界の中ではそのような物が必要な事は仕方のない事だと私は思います」

 

 そのような人間の影ながらの努力の上で平穏は成り立っている。

 縁の下の力持ちと言えば聞こえはいい。だが、実際にその縁の下に目を向ける人間がどれだけいるだろう。

 その陰ながらの努力がさも当然と思われ、それが人によるものではないと感じられているのが現実だ。見たくない物を見ないのはいい。だが、それを批判するのは間違っていると私は思う。

 

「ですが、それは危険な所に行かなければいい! 不必要に金品を見せびらかしたりしなければいい! 問題に巻き込まれる愚行を犯す側にも責任はある筈です」

 

「なら、今回の騒動の責任は貴女のお姉さんにある事になりますよ?」

 

 少しばかり卑怯な物言いだが、その言葉が真であるなら成り立ってしまう。

 犯罪者は理屈だけでは動かない。時に理屈に反する感情で動く事もあるのだ。

 それに、人は余りにも無力だ。流されやすい。

 

「少し、ずるい言い方をしてしまいましたね。ですが、そういう事です」

 

 自分の為にいれたココアを一口、口に含むとこう続けた。

 

「確かに武力では何も解決しない。それは認めましょう。ですが、貴女が思っている以上に世界は複雑です。私達はその矛盾を抱えて生きていくしかありません」

 

 誰だって武器なんて持ちたくはない。

 本来なら、武装探偵など存在するべきではない。

 しかし、誰かが汚れ仕事をしなければならない。泥を被らなければならない。

 歪んだ社会機構を正常に機能させる為の機構。それが武装探偵なのだと私は考えている。

 その機構すら実際には歪んでしまっているのだが……。

 

「なら、その矛盾を取り除くように努力すべきです……」

 

「なかなかに手厳しい。それが出来れば簡単なのでしょうが、誰もがガリレオのようにはなりたくないですから」

 

 大きな矛盾を社会が肯定している。多くの人間が受け入れている。

 その中でその矛盾を説いてどれだけの人間が納得するだろう。受け入れるだろう。

 もはや、正しさや道理など関係ない。社会システムがそれを肯定しているのだ。

 その中で、その説法こそが反している。異分子でしかない。

 集団的無意識によって潰されるのは目に見えている。人は急速な変革を嫌う。

 

「誰だって普通でありたい。そう願うのは当然です」

 

 私の呟きに星伽粉雪は何の反論もしてこなかった。ただ、俯くばかりで。

 そう誰だって当たり前が当たり前でありたい。

 その望みすら叶わないのだ。不条理で憎らしい。

 

「ありがとうございました。美味しかったです……」

 

「どういたしまして。また、機会があればお茶でも淹れて差し上げましょう」

 

 機会があれば。だが。

 流しへと飲み終わった食器を片付けると軽く洗い流し、電話の通話ボタンを押した。

 

「夜分遅くに失礼します。ちょっと、お願いがあるのですがよろしいでしょうか?」

 

『こんな真夜中にどのようなご用件でしょうか? ようやく、眠れそうだったのですが』

 

 どうやら、起こしてしまったらしい。まぁ、そちらも色々とこちらに無理難題を押し付けて来たのだ。これくらいお相子というものだろう。キナ臭い動きもある。

 

「少し頼まれて欲しいモノがあるのですが――用意出来ます?」

 

『無理を言いますが、魔剣の捕縛の為ですか……確かに今後の事を考えれば、星伽に恩を売っておくのも悪くはない、と。分かりました、用意しましょう。但し、無茶だけはしないで下さい』

 

「それを貴女がいいますか」

 

 約束を守るつもりがない人間が。

 公安の人間が私に。

 色々な想いをその一言に込めると私は通話を切った。

 そして、自室に戻ると静かに鍵をかけるのだった。

 アドシアードまで残り三日。どう転ぶかは分からないが、計画は念密に練らなければならない。

 被害を最小限に抑える為にも。

 

 

 

 

 

 

「危なかったです……。アレは確実に殺す気で来てました……」

 

 ジャンヌが滞在しているアジトへと戻ると一里塚は付けていた仮面を外した。

 よくみれば、その仮面にはひび割れが走っている。もしかしたら、頭がい骨が砕かれたいたかもしれないと考えると背筋が凍り付く。やはり、あの四名の中で注意すべきはレキ先輩とフィアナ先輩だろう。

 狙撃はどこからくるか一射目が分からない以上、運が悪ければ一撃必中で殺される。

 そして、フィアナ先輩は色々とおかしい。あの状況で優先順位を即座に組み直し、ナイフを投げる事で深紅の視線を逸らすとそのまま此方側に突っ込んで来た。

 確かにあの状況ならそれが正しいのは理解出来る。だが、博打すぎる。もしも、深紅がフィアナ先輩を即座におったらどう対処していたのだろう。

 

「無茶し過ぎだ。だが、お蔭で奴が守るのが不得意である事は見えた」

 

 確かに最初の行動でそれらしきものは感じ取れた。

 攻めるのは得意だが、守るのは苦手。あの状況で星伽白雪をどうするかという判断で戸惑っていたのがその証拠だ。攻め込む経験はあっても、守りに入る経験は薄いのだろう。

 ただ、怖かった。目の前にしたとき、一瞬だが恐怖してしまった。

 瞳の奥底に宿っていたのはきっと、狂気なのだろう。

 

「その所為で私は死にかけましたけどね。でも、どういう作戦で来るでしょうね。夾竹桃は中距離からの狙撃で潰されたんでしょう? なら、こちらについても調べ上げられている可能性は高いでしょうし」

 

 魔剣に関してはそれなりに情報が残っている。

 恐らく、手の内も全て推測した上で逃走経路を潰して来るだろう。

 地上部分はレキ先輩に潰される事を想定しているだろうから、地下の区画での戦闘。使える武器も制限される。その状況でどう動くか。いや、そもそも動けるのだろうか?

 アドシアードの出場選手に名前が残るように細工をしておいた。恐らく、それを回避する事は無理だ。

 出場しないという方法もある。だが、衆目の中で事を起こせるようには思えない。

 

「だろうな。だが、私は私のやり方を貫くまでだ」

 

「まぁ、確かにそれしかありませんけど……。無事に事が済みますかね」

 

 不気味なのだ。

 何度も手合わせした事があるから分かるが、あの時の戦闘に比べれば手を抜いている。

 いや、その言い方には語弊があるか。手は抜いていないのだが、何かが違うのだ。

 あの人の中の線引きに味方はいない。敵か敵じゃないか。この二択だ。

 

「項羽が認めるだけの相手だ。力だけで認めさせたのではないとすれば、油断すれば此方が喰われる」

 

 ジャンヌ自身も解っているのだろう。

 明らかに格下との戦いではない。かといって、同等の相手かも分からない。

 未知数の相手だ。ジャンヌのような策士や私の様な暗殺型の人間が相手にしたくない類いの人間である。

 計算違い。それにどれだけ対処出来るかの問題になるからだ。

 計画実施日まで残りわずかだ。白紙に戻すチャンスはあと少しだけ。

 

「安心しろ、計画は私一人で行なう。お前はもう関わらなくていい」

 

「ここまで、関わらせておいてそれをいいますか?」

 

 私の不安を感じ取ったのだろう。ジャンヌは私に計画の実行役は一人でいいと言ってきた。

 分かっている、それが私が生き残る上で最上の選択肢である事は。

 超能力が使える訳ではない。小手先の技術しかもたない私が超偵絡みに無傷でいられる程の人間ではない事は分かっている。だが、ここで引けばまた次も引いてしまう。

 私は自分が弱いのを知っている。精神的にも肉体的にも。

 

「あぁ、峰は失敗した。そして、これは私の領分だ。お前にまで失敗の責任を負わせる訳にはいかない」

 

「分かってないですね。何も」

 

 きっと、その言葉はジャンヌの優しさと矜持から来るモノなのだろう。

 だが、それは私とて同じだ。

 私にも『山の翁』としての矜持がある。請け負った依頼は必ず達成して見せると。

 あの人を越えればきっと何かが変わる。倒した先に何かがある。そう思えてならないのだ。

 それが私を変えてくれる、と。

 

「これは『ジャンヌ先輩の仕事』ではありません。『私達の仕事』ですよ」

 

「そう、だな。そうだった。だが、コレだけは約束してくれ。無茶だけはするな」

 

 ジャンヌは私の言葉に静かに頷くと、はっきりとした声でそう告げた。

 相手が相手だ。無傷ではいられないのは分かっている。捕まったら一生刑務所だろう。

 だからこその引き時は考えろ、か。その言葉の真意は最悪の場合は自分を見限れという事なのだろう。

 ジャンヌを裏切り、『一里塚』として武装探偵側に着く。そうすれば、捜査の目を晦ませられる。

 

「了解しました。誰だって、自分の命は可愛いですからね」

 

 そんなジャンヌの真意を読み取ると、私はそういって微笑んでみせる。

 自分の中でも実の所、分からなくなってきていた。『山の翁』としての私が本当の自分なのか、『一里塚』としての時間の中にいる私が本当の私なのか。

 考えれば考えるほど、分からなくなる。顔を使い分けていた筈が、気付けばその仮面に呑まれていた。

 武装探偵としての時間が息苦しいのは事実だし、その生き方を理解出来ないのは偽りようがない。

 ただ、その中での仮面を付けて付き合っている友人たちとの時間は確かに私の空虚さを埋める物として存在していた。そして、それが失われる事を恐れている自分が確かに存在している。

 もしかしたら、それこそが暗部で生まれた人間が日の当たる場所にはいられないという事なのかもしれない。

 そこに存在しているものは決して手の届くものではないのだから。

 私はそんな事を考えながら、計画の最後の確認を行い始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタには怨みがないんだが、悪いな」

 

 通行車両を監視している検問所にいた捜査官の首を音もなく切り裂くと監視カメラに向かって合図を送る。

 既に監視カメラも無効化されており、写っているのは何事もない映像だ。これで公安の収容所までの直通ルートが出来上がった訳なのだが、その風のと一つない状況に嫌な予感を抱いていた。

 

『流石です。歴戦の傭兵と言われているだけの事はありますね』

 

「いやぁ、撫子ちゃんは大人を煽てるのがうまいねぇ。だけど、ちょとばかし嫌な予感がする。俺は予定通りに動くからそっちは脱出経路の確保とアイツの援護を頼む」

 

『了解しました。四季星様は既に施設内に……。嘘でしょう! どうして、犯罪者の収容区画のロックが外れているの!? まさか、ハメられた?」

 

 収容所のロックを外せば、暴動が起きかねない。時間稼ぎにはなるかも知れないが、明らかに公安の動きとしてはおかしい。つまり、俺達よりも先んじて侵入した存在がいた事になる。

 そして、そいつらが俺達に警戒して時間稼ぎに走った。

 時間との戦いになる。収容所の暴動は公安にすぐに伝わる筈だ。そして、制圧の為に増援を送る筈。

 こんな事の為に一応、用意しておいてよかった。対車両用地雷を。

 

「そりゃねぇだろ。向こうも此方の動きは想定していたとはいえ、そこまで博打を撃てるほど肝の座った人間じゃねェ。今は泥を被せる相手がいないんだ。なら、別の組織の時間稼ぎと考えるべきだ。俺がそいつらの脱出経路を潰す。お前らは目的通りに例の物を確保しろ」

 

 状況が状況だ。地上からの脱出は考えていない筈。

 割に合わない仕事だが、これで任務に成功すれば四季星も少しは俺の事を認めてくれるかもしれない。

 最後にカッコよく登場して救出すれば、その心を射止める事が出来る筈だ。

 

『分かっています。しかし、どこの誰が? ロスアラモスより先に潜入した筈。奴らの計画時間までまだ半刻程の越している。気を付けて下さい。何が出るか分かりませんから』

 

「そりゃ、戦場でよくしってるよ。それにどうやら、作戦を前倒しにしたらしい。森の中に何人か気配を感じる」

 

 足音から考えるに五名ほど。こんな夜更けに山菜取りなんてふざけた御託は有り得ない。

 スコープで気配の感じる方を覗くとそこには軽装備の人間が公安施設へ向かっていた。

 様子から考え、公安とは思えない。ここから狙撃して数を減らしてもいいのだが、その場合は逃げ場が無くなる。こんな事なら、夜間戦闘を念頭に置いて武器を狙撃から、中距離制圧用に変えて来るんだった。

 

「恐らく、ロスアラモスが動いた。悪いがこっちからは援護できない。――気を付けろよ」

 

 通信でそれだけ告げると、これ以上は傍受の可能性があると判断し途絶する。

 向こうは数が五。こちらは一。数では圧倒的に不利だが、ゲリラ戦の真髄を……と、考えていると何かが背後から走り込んで来る気配を感じ取る。

 咄嗟に身を屈めるとそれをナイフでいなした。

 

「お前のようなイイ女が出歩くような場所じゃないぜ。ここはよ」

 

「なかなかにやるようだな。だが、押し通させて貰おう!」

 

「悪いんだけど、本来なら君みたいな美人を殺る主義じゃないんだけど、愛しのレディからの要請でね。ここから先には公安の人間は通せないんだわ」

 

 恐らく、これだけ腕が立つという事は立花の嬢ちゃんの部下なのだろう。

 あの嬢ちゃんは嬢ちゃんでそそるものがあるのだが、少しばかり青臭いのが頂けない。

 そんな事を考えていると、無言でその女は俺の横を通ろとしていた。

 

「おい、ここから先は通さんと言っただろう?」

 

「貴様は確かにこう言ったぞ。公安は通さんと。なら、イ・ウー所属の私は別段問題あるまい」

 

「ちょっと待て。今、施設に襲撃しているのはイ・ウーじゃないのかよ」

 

 イ・ウーでもロスアラモスでもない組織であり、穴倉の情報網にすら引っかからなかったのは一体何なのか。

 不気味ではあるが、仕方がない。ここは状況が緊迫している。

 

「仕方ない。着いて来い。お前は前だけを見て走り抜け。俺がお前の背中を守ってやる」

 

「共闘か。確かに悪くない。どれだけ敵がいるかも分からん。裏切るなよ」

 

「あぁ、君がこの仕事の後に食事にでも付き合ってくれるのならな。俺の名前はジョンとでも呼んでくれ」

 

「項羽だ。よろしく頼む」

 

 その名前を聞いた瞬間、最近裏の世界を賑わせている不味い相手と手を組んだと考え、この場で処分しておくべきかとも考えるのだが状況が状況。それだけの実力者であるのも事実。

 四季星とだけは出逢わないでくれと心の奥底で願いながら、夜の闇の中を全速力で公安施設へ向かって走り出した。項羽の安産型のお尻を眺めながら。

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