東京武偵校でのアドシアードが開幕。外部からの客でにぎわっていた。
人の出入りが少ないこの場所もこの時限りは警備が手薄になる。恐らく、魔剣が狙って来るならこの開催期間中だろう。だが、それ以上に気がかりな事があった。
明らかに空気がおかしいのだ。
上手く言葉には出来ないが明らかにそちらの筋に人間が見え隠れしている。
この状況で何事もなく終わるとは到底考えられない。何より、昨夜から穴倉の人間の幾名かが連絡が取れない状況に陥っているらしい。厭な予感がひしひしと感じられる。
それを裏付けるかのように本来は有り得ないアドシアードへの出場要請だ。近接格闘での。
もしも、穴倉の人間と連絡が取れない原因がアイツの奪還に失敗。もしくは、アイツが死亡しており罠に嵌められたと考えるならば、出場すれば何らかの方法で殺しにかかって来る筈だ。
あくまでも、可能性でしかない。だが、魔剣と公安。どちらかを切り捨てるなら前者だ。
何より、あくまでも推測の域を出ない。
ここで逃走を計れば、もしもまだ生きていた場合に奴らに理由を与えかねない。
ならば、ここは手の内で踊る以外に方法はないだろう。
「あ、あの……ほ、本当に大丈夫なんですか? ほら、あ、アドシアードって優秀な人たちが競い合うのにそんな中に通信科の人間がまざるなんて……」
どうやら、物思いにふけり過ぎていたらしい。
一緒に受付をしていた中空知の心配そうな言葉に現実へと帰還した。
確かに厄介なのは認める。特に殺人を許容している地域の武装探偵は厄介だろう。だが、そこ止まりだ。
負けない理由にはならない。それに最悪の場合はわざと負けるという方法もある。
それよりも問題なのは審判が中立であるかという事だ。
一番懸念しているのはその部分である。
「あぁ、いたいた。てっきり、強襲科だと思って探してたから見付からなかったのよね」
そう言いながら、声をかけて来たのはつい先日に交戦した深紅の異名を持つアメリカ代表だった。
恐らく実力から考え、順当に行けば優勝候補なのだろう。柔と剛を使い分けられる戦い方ははっきり言って、相手にし辛い。一瞬の判断ミスで一気に追い込まれてしまいかねない。
しかし、意外だ。わざわざ試合前に接触を試みて来る事はないと思っていただけに。
「何の用です? 私は貴女に用件などないのですが」
「随分と冷たいのね。まぁ、いいわ。アンタ、今回のグループを確認した方が良いわよ」
見ていない。というより、興味が無かったので相手の事など調べていない。
しかし、トーナメント表をわざわざ確認した方が良い理由。それが一体、どういう意味なのか分からない。
疑問に思い、携帯を使い事前に発表された組み合わせを確認するが、何も変哲な部分はない。
ただ、決勝トーナメントまでグループが違うので深紅と当たる事がないだけだ。
だが、そんな私とは裏腹に中空知は何かに気付いたらしい。
「このグループ……全員が前回の決勝トーナメント進出組ですよね……」
「そう。しかも、その中の一人は出場者を再起不能に追い込んでる奴よ。弱肉強食だからそれも仕方がないの一言で片づけられるけど、この組み合わせは明らかに誰かの思惑があると思うのよね」
「なるほど。つまり、貴女は私を心配して助言に来たと」
つまるところ、生粋の戦闘狂という訳か。項羽だったか、あの女の同類。
別段、自身は戦闘狂ではないのだがどうにもこの手のタイプの人間を呼び集めている気がしなくもない。
しかし、どうする。所詮から潰しにかかってきそうだ。トーナメントに細工をしているのならば、審判も信用ならない。周りは全員、敵。厄介な状況である事には変わりない。
「まぁ、グループで潰し合ってくれるのは構わないけど、骨のある連中と当たれずに優勝なんて虚しいじゃない。何の為に遠路はるばる極東まで来たのやら」
「そうですか。しかし、ある意味では好機ですね。利用できなくはない」
この状況、監視下に置かれているといえなくもない。逆に魔剣を追い詰める罠としても使える。
動けば包囲網は確実に縮められる。その包囲網から星伽を脱出させられれば魔剣は逃げ場を失うだろう。
まぁ、そこまでしてやる義理は毛頭ないのだが……。誰だって自分の身が可愛い。
「それではそろそろ試合時間なので」
「気を付けて……下さいね……」
心配する中空知を他所に試合会場へと向かうとそこには一里塚と火野、その他数名の姿があった。
一里塚は手首に包帯を巻いている。怪我?
「頑張って下さい師匠! でも、強襲科じゃないのに近接格闘部門で出場なんて少し変ですよね」
「まぁ、どの分野にいたとしても近接格闘は出来ておいて損はありませんから。前にいた所でも、それなりに近接戦闘での成績はありましたし、――ところで、一里塚さんのその怪我は任務か何かで?」
「いえ、私生活でちょっとひねってしまいまして……」
捻った、か。まぁ、今はそんな事を気にしている暇はない。
会場を見た限り、暗器の類は回収されるだろう。純粋な近接戦闘という名目なのだろう。
観客との距離は離れている為、爪に仕込むなどの小型の暗器ならば分からない。審判の目を盗めれば、容易にどうにでも出来る状況だ。
そして、何より入場して相手を見た瞬間に理解してしまった。
あぁ、これは暗器を隠しているな、と。これでは審判もグル確定だ。
深紅の情報が正しければ、相手は壊し屋とでもいうのだろうか? 再起不能に追い込んだという事は関節でも破壊したのだろう。負けに行くにしても、それを審判が認めなくては意味がない。
つまり、勝つ以外には逃げ道はないという事になる。
実に面倒な展開だ。
「へぇ、貴女が私の相手ですか」
「思ったより、優男が出て来ましたね」
内面は前情報を聞く限り、屑以下なのだろうがという言葉は飲み込んでおく。
煽って冷静さを失わせるという方法もあるが、相手の力量が分からない状況でやるには危険だ。
試合開始の合図と共に優男は一気に距離を詰めて来る。初撃で一気に仕留めようとしているのだろう。
その初撃をなんでもないかのように身体を軽く反らす事で躱すのだが、その瞬間に爪が僅かに光るのを見逃さなかった。つまり、爪に刃物を仕込んでいるという事になる。
どの程度か分からないが、毒を持っている可能性がある以上は不用意に受ける訳にはいかない。
「随分と粗暴な男ですね。女性の扱い方が分かってないんじゃない?」
距離を取ると腰を低くして身構える。
勝ち残る以外に道はないが、あまり目立つわけにもいかない。何より、判定する審判が平等ではない以上、そちらもどうにかしなければならない。
「金と名声があれば、どうとでもなりますからね。何より、犯罪者が相手であればある程度の事が許されますし」
「随分とそういう臭いがすると思ったらそういう事ですか」
随分と歪なシステムな物だ。こういう人間も成り立ってしまうのだから……。
だが、おかげで容赦する必要がなくなった。こちらも手加減なしで潰せる。
頭の中で今後の行動を練り終わると横目で審判の位置を確認した。
「フィアナ先輩、いつもなら仕掛けていくのに全然仕掛けないな」
「相手の力量が分からないから当然でしょう。むしろ、一対一ならこれが普通です」
そうは言うモノの幾つか引っかかる点がある。
今はそれよりも腕の怪我で警戒されているようにも思えるが、ここで反応すれば確信を与えるだけだ。今は何でもないように装う他にない。
会場の様子を確認する限り、ジャンヌの計画自体に練り直しの必要はなさそうだが、少しばかり不穏だ。
特にこの試合。審判はどうやら、暗器に関して止めるつもりはないらしい。
気付いている人間は少ないだろうが、あの手の暗器を仕込んでいるという事は他にも持っている可能性がある。それだけに攻めあぐねいているのだろう。
実際にやりあって分かった事だが、死神と言われても納得してしまう程の気迫があった。
あれは直視して見なければ分からない。それがあの人の本性なのだろう。
「でも、それにしても引き過ぎじゃないか? しかも、躱すのに仕掛けてないんだぜ?」
「確かに気になるね。あれだけ避けられるなら仕掛けるチャンスがあると思うけど……」
間宮あかりや火野ライカの疑問。それは私も感じ取っていた。
この程度の相手なら問題なく組み伏せられる。項羽に認められた人間がこの程度なのか、と。
何かを狙っている? いや、逆だ。出来ないのではない。しないのか。
ここで一方的な試合にしてしまえば、実力を見せ付ける事になる。ここにはそちら方面で顔が利く人間が多いだけにそれを避ける為にこんな試合をしているという事だろうか?
だが、それならさっさと捨ててしまえばと思ったのだが、そこでようやく気付いた。
この試合自体が仕組まれた物であり、審判も暗器を認めている以上最初から止めるつもりがない事に。
「なるほど。そういう事ですか。少しばかり、気に喰いませんね」
美学の問題だ。大衆の目の中、こういう戦い方が間違っていないという事は認めよう。
だが、それは私の美学に反している。特にここは血統の場だ。それはその場を穢しているにも等しい。
「でも、どうやらそろそろ試合が動く見たいですよ」
「それってどういう!?」
私がそう呟いたと同時にフィアナ先輩の相手の動きが僅かに鈍った。
息切れなどではない。何をしたのかは分からないが、これで相手の機動力が削がれた。後は独壇場だ。
しかし、そこで審判が介入する。何らかの不正があった可能性があるという事なのだろう。白々しい。
だが、試合は止まらない。何故なら、審判のホイッスルが鳴らないのだ。
そのまま組み伏せられると同時に腕が有り得ない方向へと曲げられる。審判も大慌てで止めに入ろうとするが、もう遅い。どの瞬間でやったか分からなかったが、ホイッスルを試合中にスッたという事か。
問題は同じ手は二度と通じないという事だ。審判をどうにかしない限り、不利な事には変わらない。
「恐らく、躱している最中に分からないようにしかけていたんでしょう。それから、同時に審判からホイッスルを盗んでおいた。随分と手先が器用なようですね」
「お前、まさか全部見えてたのかよ」
「そんな訳ありませんよ。結果からの推測です。戦っていた相手が分からなかった事を外野が流石に分かりませんよ。それが分かれば、私はフィアナ先輩より強い事になりますしね」
恐らく、相対していても気付く余裕はないだろう。
それにしても、誰がこんな事を仕組んだのだろうか。審判、トーナメントに細工を出来る人間は限られる。
イ・ウーが絡んでいるとは思えない。そんな事を考えていると、携帯の着信音が鳴る。
『件名なし』
誰からか分からない。どうやら、使い捨てのメールアドレスのようだ。
内容は一言、気を付けろ。どういう意味だ? 誰からの警告だ?
ジャンヌが送って来るとは考え辛い。イ・ウーの仲間とも思えない。項羽さんの身に何かがあって、警告を送って来た? いや、それもどうなのだろう。
しかし、時期が時期だ。公安絡みなのではないかという予感が頭を過ぎる。
公安絡み、今回の試合。まさか、フィアナ先輩は公安の人間?
でも、だとしたら何故武装探偵などやっているのだろうか。しかも、扱いは留学生。国籍は日本ではない。
何か危ない橋を渡っている気もしなくはない。今回の誘拐は見送るべきだと何かが囁いている。
あれ? そこである事に気付いた。このメールには添付ファイルが存在している。
それを開いてみると、一枚の写真が画面に表示される。
男だろうか? 何を思ってこの写真が添付されているのか分からない。文章から察すれば、この男に気を付けろという事になる。誰だ? こんな顔の男を私は知らない。
念の為、会場中の人間の顔と確認してみようと辺りを見回すと、向かい側の観客席にその顔を瓜二つの人間が確認できた。しかも、どうやらこちらの視線に気付いたらしい。危なかった。少しでも視線を逸らすのが遅れていたら気付かれていた所だった。
確かにメールの送り主の言う通り、警戒はしておいた方が良さそうだ。
あの飲み込まれそうな深い闇の目に私は僅かに背筋を凍らせた。
「何か気になる事でもあったのかな? 公安0課課長」
「止めて下さいよ。まだ、正式な辞令は降りていないんですから。今はまだ代理ですよ。そこを間違えないで貰えますか? 大臣殿」
正式な事例は例の取引完了後という事になっているが、恐らく失敗だろう。まぁ、もはやあの女に価値はない。
まぁ、穴倉の連中と例の襲撃犯がどうなったのかは目下調査中だが……。
それにしても、今の視線は何だ? まるでこちらを観察するような視線を感じた。
情報によれば久瀬が確認されていなかった以上、ここに配置されている可能性は捨て切れない。
この程度では雑種は潰せなかったようだが、策は講じてある。
今回、わざわざ出向いて来たのはアレを確実に殺しておく為だ。あの男が野放しになる事は危険だ。首輪が首輪として機能しなくなった以上、即刻処分しておかなければ危険過ぎる。
潜られてしまえば探すのは恐らく困難。それだけの裏社会との繋がりがある。
「課長代理……彩峰に怪しい動きが見られますがどうします?」
「彩峰か。課長のお抱えの人間も姿を消しているしな。元々、奴もあちら側の人間だ。もしも、何らかの動きがあったなら処分しろ。ただ、極力は泳がせておけ。撒き餌になるかもしれなだろう」
ここに来て彩峰が動いたのはアイツに手を貸す為か、立花の命令のどちらかだ。
恐らく、前者なのだろう。情報が確かなら、星伽の娘がイ・ウーに狙われているという話だ。それを助ける事で後ろ盾を得ようとしているのかも知れない。政治的にあの家は大きな影響力があるだけにそうなると、ちと厄介な事になる。それだけに、出来れば魔剣には成功させて貰いたいところだが、直接的な手を貸す訳にもいかない。
「了解しました。それより、例の作戦は成功したようです」
「生存者なしか。まぁ、予定通りだな」
これで抱えている負債は一つだけになった。
まぁ、奴が生き残れるほど甘い罠を用意しているわけじゃない。
死ぬ時間が来たのだ。その為に万全の体制を敷いている。逃げ場はない。
しかし、先程の視線が気がかりだ。イ・ウーの人間か? 確か、まんまと武装探偵として潜入されていたな。まだ他にもゴミが紛れ込んでいるのだろうか? 知った事ではないが――。
包囲網に穴が開く程度の不確定要素とは思えないが、久世の事もある。協力されると厄介だ。
「もしもーし。聞こえてるかな? 一人、消して欲しい人間がいるんだけどさ」
『わざわざ、私まで担ぎ出すって事はそんなにヤバい訳? スナイパーまで配置してるみたいだけどさ』
「保険だ。ほ・け・ん。スナイパーじゃ東京武偵校の地下までは網羅できないだろ。最後は歩兵が重要になる。何より、確実に死体を確認出来なけりゃおちおち眠れもしない」
『ふーん。アンタがそこまで言うのなら、楽しめそうね。でも、期待以下の奴だったらその時は分かってるでしょうね?』
「安心しろ。俺がお前の期待を裏切った事があったか? まぁ、今回は穴倉の連中は出て来ないだろがな」
これで地下の区画にも逃げ場はなくなった。もし、奴が生き残る道があるとすればそれは奴が本物であった場合だけだ。まぁ、その時は奴の居場所はこの国には無くなっているだろう。
その血が穢れている以上、誰もその存在を認めない。
「しっかし、こうも課長の動きが見えないと逆に不気味だねェ。あの副官すら動きを見せないわけだしさぁ」
もはや、自身の体制はほぼ盤石。立花が今更どうこうできる問題ではない。
問題があるとすれば、前課長なのだが公安の深い部分に関するアクセスキーはいまだ行方不明。外面的な制圧は終わったが、内部の制圧はまだ三割にも満たないのだ。
あの元課長が転んでもただで起きる人間とは思えない。あの人の直属部隊は公安内部でも動きを見せていなかった。立花班以上に異質な存在。それだけに警戒せずにはいられない。
「フィアナ・シュトレーゼが潰れれば穴倉に交戦理由を与える事になる。そうなる前に何かを仕掛けて来る気がするんだけどねェ」
だが、その呟きは誰にも聞かれる事はなかった。
「流石にここは目立ち過ぎか。ここから狙撃してますって言っているようなものね」
校舎の屋上に出るとそこから対岸を照準器越しに確認する。
遮蔽物はないという事は向こうからも筒抜け。しかし、わざわざ主任自らお越しとは思わなかった。恐らく、大臣のお守と言った所だろう。出来れば、消してやりたいのだが今はその時ではない。
念の為、校舎から降下する為のロープを使える場所を確認しておくのも忘れない。
あの主任の厭らしさの事だ。スナイパーを潰しても、まだほかにウジャウジャいる筈だ。
携帯食用のチョコスティックバーを口に咥えると、もう一本取出しそれを背後にいる人間に差し出した。
「いります?」
「一応は職務中やからな。それより、お前らはアイツをどうするつもりや」
「別に。傭兵とは依頼をただ達成するだけです。そこに意思は必要ない。そうでもしなきゃ、狙撃手なんて続けられませんよ。ああ、貴蘭會の関係者でしたね。――もしかして、復讐ですか?」
確か、あそこに人間を何人か始末した記憶がある。
あの頃はまだ公安に属していなかったし、師匠の手伝いとして仕事に同行しただけなのだがまぁ、恨まれても仕方がないのかも知れない。だが、どうしてだろう。腰のM500に手をかける様子がない。
まぁ、殺しに来たのでなければ問題ない。銃弾を無駄にしなくて済んだ。
「別に、そういう仕事ならいつそうなっても仕方ないって覚悟は出来てるだろ。それをどうこう言うつもりはない。だけどな、教え子に関しては別や」
「随分と愛されてますね。それとも、どこかで自分と重ねているのですか」
相手側に動きはない。まだ時間はある。なら、下らない世間話に付き合うのも悪くない。
この世界はそういう才能の持ち主であるほど、生きにくいモノである。だが、どうやら違うらしい。
「少なくとも、ここ一カ月ほどアイツのやって来た事を視ても、どこにでもいる普通に武装探偵、とは言い切れないけどな。餓鬼だよ。まだ、青臭い」
「そうですね。ソレは認めましょう。そして、あんな風にしてしまったのは我々大人の責任だと」
そんな世間話をしながらも、スコープ越しに辺りを確認していると救急車両とその運転席に綾峰の姿を確認する。わざわざ救急車両を用意した理由。何か別の動きがあるという事なのだろうか?
「ところで、今ここは何か問題でも抱えているのですか?」
「魔剣だな。確か、生徒の一人が狙われているらしい。独り言だがな」
「なら、私も独り言を。公安0課の人間が何名か紛れ込んでいるようです。何かしら、行動を起こすつもりなのでしょう。混乱が起きた場合はお気をつけて」
魔剣。恐らく、そいつが行動した際に何らかの行動を起こすのだろう。
それを対処する為にフィアナも動く筈だ。そこが狙い目。彩峰は恐らく、その行動の補助役。
だとすれば、別働隊が動くとすれば地下か。
「地上部分は私一人でカバーできますから、地下の方をお願いできますか? 流石に私一人ではそちらまで地の利がない以上はカバーできませんから」
「確かにこの警備の目を盗むなら地下、か。教務課が本来動くのはルール違反だが、公安が動いているとすれば流石に生徒には分が悪いか。まぁ、散歩がてらに視て来るとでもするかな」
つまり、それは地下は私に任せておけと暗に言いたいのだろう。
まぁ、風の噂程度で耳にした事がある蘭豹の実力とやらを見せて貰うとしよう。繚乱さんや鈴城辺りなら何度か合わせた事もあるので互いのやり方が分かるのだが、ここはぶっつけ本番でやるしかない。
後は運を天に任せるだけだ。
蘭豹に差し出していたチョコスティックを開けるとそれを咥え、一気に食べると口の周りのチョコを拭い去り、狙撃ポイントと思われる場所に狙撃銃を構えるのだった。
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