緋弾のアリア 血濡れた銀狼   作:浅田湊

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人形

「てっきり、それなりの奴がいるかと思えば戦場に迷い込んだのかしら? ルーキー」

 

 扉の先にいたのは血の臭いもそういった気配も感じないどこからどう見てもただの人。

 確か、記憶が正しければあの時に公安職員に絡まれていた武装探偵――発信機を取り付けて置いて正解だったか。

 室内には他に気配はない。残りは主任とぶつかったか。

 

「誰ですか……。貴女は……」

 

「名乗るほどの者じゃないんだけどな。けど、敢えて名乗るとするなら久世遙とでも名乗っておこうかしら」

 

 実の所、この久世遙という名前も偽名でしかない。

 まぁ、この場で本名を使っているのは間宮や立花繚乱くらいなのだが――。

 そんなどうでもいい事を考えながらも視線をその武装探偵から外さず引き鉄を引いた。

 長年の経験からの自然な動作。殺意と動きに反応し、反射的に死にぞこないを撃ち殺す。

 それが久世遙という人間。長年、戦場を渡り歩いてきた狙撃手としての彼女の本能だった。

 

「諦めなさい。貴方如きでは私を出し抜けない」

 

 この状況下でどうやら逃げ出す算段を考えているらしい。

 データは消去済み。私が来なければ恐らく死んではいたのだろうがデータは引き渡さなかっただろう。

 恐らく、このまま順調に成長すればそれなりに通用する上層部の情報分析官辺りにまでなれるかもしれない。

 まぁ、正義を語るには此方側にどっぷりと浸かろうとしている姿勢はどこか彼や彼女を重ねてしまうのだが。

 

「遊びはここまでよ。ここから先は大人の時間。子供はお家に帰る時間よ」

 

「嫌です――帰りません!!」

 

 その武装探偵の恐怖に震えながらも固い決意の言葉に深い溜息を吐くしかなかった。

 どうしてそこまで恐怖に震えながらもそれに向かって立ち上がれるのか。

 理解に苦しむ。実力が伴っていないだけに余計に。

 

「自殺志願者なら自分で自分の頭を打ち抜いて死になさい。ここはアンタみたいな真人間の来るような場所じゃない。人間の屑どもの掃き溜め。地獄に最も近い場所よ」

 

 武装探偵という上澄みだけを見ただけで世界を知った気になっているのだろう。

 ここはその闇の更に奥。生半可な知識が通用する場所ではない。有象無象の巣窟。

 弱者には死あるのみ。弱肉強食というこの世の理を最もよく表している世界でもある。

 

「強さこそが正義。弱さこそが悪。ここが分岐点よ。選択肢は二つに一つ。ここで死ぬか。生き延びるか」

 

「私は私の意思でここにいます! 大切な物を守る為なら何だって利用する。それが私の覚、ご……」

 

 これまで隠していた殺気を表に出した瞬間、武装探偵の少女は言葉を詰まらせた。

 初めてなのだろう。死という物に直面するのは。

 

「覚悟ってのはそう簡単に語る言葉ではないわ」

 

 そう久世遙は告げると硝煙の香るM9をホルスターへと戻した。

 こういう目をした人間が引く事はないのは自身が一番よく知っている事だからだ。

 例え、今はその目に恐怖を宿そうと歩みを進めてしまう。その先の光景が地獄だと――求めていたモノでなかったとしてもだ。ならば、先を行く怪物として言える言葉は一つだけだ。

 

「その胸にしまっておきなさい。口にしなければ信じられない覚悟なら捨ててしまいなさい」

 

 そう告げると今後の方針を思案する。

 恐らく、公安0課の本隊はイ・ウーと施設襲撃犯と抗争が続いている筈だ。だが、彼らが人形の奪取を諦めたとは思えない。現状、繚乱班の人間で動けるのは久世遙ただ一人。

 抗争の中、奪取を狙うとするならばルートは絞られる。市街地だ。大規模な行動を行ってしまえば目立ってしまう。そうなれば、追撃戦に持ち込まれ不利になるのは目に見えている。目立たず、追撃が難しいルートとなれば答えは絞られるか。被害を考えれば、あまり当たって欲しくはないのだが仕方がない。

 その為に確保しておいたこのバイオリンケースという保険が働いてしまったとなれば、被害は少々厄介な事になるだろうけれど……仕方がない。全部、主任に責任を押し付けてしまえば良い。

 

「えっ!? 項羽さんが負傷……」

 

 何か事態に動きがあったらしい。

 イ・ウーの主力の一人である項羽の負傷。そんな事を出来る人間は公安内部でも限られてしまう。

 恐らく、主任とぶつかったのだろう。こっちも情報が足らない。戦況を完璧に把握できるだけの情報が無ければ狙撃手は目標を確実に狙えない。特に今回はじっくりと息をひそめての狙撃ではない。

 

「着いてきなさい。もしかしたら、見る事が出来るかも知れないから――雨の上がる瞬間を」

 

 状況を見れば既に不利。この状況でもしも第三者の介入があったとするならば、戦況は混迷。

 今回の事件。人形の動き。そこから導き出される答えは一つしかない。

 雨が開けた先に何が待ち構えているのか。それは誰にもわからない。人形にすらもだ。

 だが、それでも人形の行動を肯定するとするなら彼女なりの贖罪なのだろう。物語を終わらせる為に彼女なりの結末を演じる為にこの舞台を用意した。後は舞台俳優の到着を待つだけだ。

 生きているのかそれすらも解らない主人公というものを――。

 

「えっ!? あの……」

 

 なにやら後ろでてんぱっているが気にしない。

 しかし、一つの物語の主人公――クロエ=フローレアの登場を何故だろう。人形と同じように確信めいている自分に久世遙は苦笑いを浮かべながらもどこか哀しげな表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

「お呼びじゃない邪魔者にはお引き取り願いたいのだけど――雑魚をいくら並べた所でたかが知れているから」

 

 人形の目の前にいる公安の兵隊はどれも名のある賞金首ばかりだった。

 これが主任の私兵。司法取引により延命されている犯罪者の屑共。

 SDAランク――そんな物は関係ない。生き残った者が勝者だ。

 蠱毒とも言える絶望の中を生きて来た人間からしてみれば、この地獄すらも生温い。

 周囲は真っ赤に染まり、屍の上に立つ。孤高なる存在。

 

「私を裁けるのは私だけ。貴様ら如きに裁けはしない」

 

 人形の二つ名の由縁。それは自らに遺志を持たないから。

 そんな彼女が遺志を持ったのは単に友と呼べる存在に出会えたからだった。

 人形が目的を達する為の仮面。それを介しての付き合いでしかなかったが、確かに彼らとの繋がりはそこにあった。だが、どちらも選ぶ事が出来なかったが故に全てを失ってしまった。

 そして、その破綻は彼女の愛した存在にも波紋を呼んだ。その波紋は歪みを生み、今も彼を蝕み続けている。

 

「へぇ……今ので仕留められたと思ったんだけどなぁ」

 

 陰から飛び出してきた何かを無意識下で躱すと愛銃であったMk23を取り出した。

 目の前にあるのはガバメントの銃身。だが、その状況下で何の戸惑いもなく人形は引き鉄を引く。

 

「おいおい! そこは互いに同士討ちを避けて一旦引くところでしょうが!!」

 

「引く? 何ぬかしてるの――その程度、どうしようも出来なくてこの場に立っているとでも思って?」

 

 人形はただ天秤にかけただけだった。

 この場にこの女の仲間がいないとも限らない。公安がスタンドアローンだけで成り立っていないのは立花繚乱で知っている。もっとも危惧しているのはそちらの方なのだ。

 スタンドアローンで動いている輩に対しては数が多くとも、全て一対一という最小単位に過ぎない。

 それだけにある程度の誘導が出来るのだが、逆に多数の人間を同時に相手にするとなれば訳が違う。

 ただ、どうやら危惧した事は杞憂だったようだ。

 しかし、何故だろう。肝心の立花繚乱の動きが見えない。

 この状況下だ。何かしらの動きを見せていい筈。にも関わらず、久世遙も彼女自身も未だ動きを見せていない。

 彼女達は私の目的を何としても止めたい筈だ。人形の目的が達成された時、それは即ち猟犬が解き放たれる事と同義。その最後のピースが彼女なのだ。

 

「随分と余裕だけど、そういう態度が一番ムカつくんだよ!」

 

 一瞬、視線から襲撃者の姿が消える。

 油断していた訳ではない。気を抜いていた訳でもない。

 ただ、辺りに気を回し過ぎていただけだ。それ故に隙を突かれてしまった。

 だが、それすらも簡単にいなしてしまう。

 隙を突かれても問題なく手を打ててしまう。決定的な経験の差だった。

 いや、経験値の差と言い換えた方がいいのかも知れない。人間を構成するのが環境というのであれば、人形という存在を構成する決定的な物は殺意、視線、そういった感覚への反復的行動だ。

 生半可な技では彼女を捉える事は出来ない。それはモデルとなった存在も同じ。

 それがクロエと人形と呼ばれる少女の決定的な違いでもあった。

 

「この……化物が!!」

 

「人は生まれながらに殺すもの。生きるとは奪うと同義。獣でしょう。どれだけ倫理観や道徳という皮を被った所で変わらない。ただ単に貴女が弱者であっただけよ」

 

「なら、貴様は強者なのか? 『人形』」

 

「あら、意外とお早い到着ね。私の推測だとコレを片付けてから数分は余裕があると見ていたのだけど、やはり資料だけでは相手の力量の判断が難しいわね。それとも、それだけ貴方が成長したという事かしら?」

 

 そこに立っていたのはイ・ウーのジャンヌだった。

 但し、異能を使っているようには見えない。恐らく、この状況下での局地的な使用を制限しているのだろう。

 だが、何だ。雰囲気がおかしい。こちらはまだ準備運動すらも終わっていないのだ。

 ようやくエンジンに火が灯った。ここから先がようやく慣らし運転だ。

 

「悪いがお前を攫わせて貰う」

 

「この状況下で告白? でもね。私の隣りはもう予約済みなの。お引き取り願える?」

 

「なら、無理矢理に奪うまでだ。他人の恋路を邪魔するのは主義ではないが、許せ。仕事だ」

 

 仕事。イ・ウーの上層部までアレを求めているのだろうか。

 つくづく本当にこの世界は救いがない。どれだけ犠牲を払えば理解出来るのだろうか。

 あぁ、もうやめだ。こいつらは全員ここで皆殺しだ。

 これ以上、同類を生み出さない為に。私が最後になるように。

 あのプログラムを再開しようとする輩は殲滅しなければならない。

 悪魔のプログラム。人道も倫理観も道徳も人間性も全て剥ぎ取った。ただ純然たる怪物。人殺しを生み出す為だけの狂ったプログラム。あんなものを再開させていいはずがない。

 クロエ=フローレアが全てを賭けて潰したのだ。そして、彼から全てを奪って今の私がここにいる。

 

「そうね。仕事なら仕方ないわ。なら、死んでも問題ないわよね」

 

「テメェ……あの時の魔剣。この傷の借りは返したいところだが、そう言っている場合でもないか。どうする? 共闘してやってもいいが」

 

「信用出来ない連中に背中を預けるつもりはない。私は私の役割を果たすまでだ」

 

 ジャンヌはそう告げるとデュランダルを抜き放った。

 

 

 

 

 

 

――同時刻、東京湾沿岸部

 

「状況はどうなってる? ルートなんてのは生ものだ。戦況が変われば使えなくなるぞ」

 

 脱出艇から陸に上がりながらフィアナはリサに問いかけた。

 状況次第で此方の動きを変えなければ、戦況に飲み込まれる。ただでさえ、万全な状態ではないのだ。

 無駄な戦闘を熟している余裕はない。

 

「装甲車両を用意させて頂きました。ですが、少しこちらへ到着する時と事情が変わってしまったようです。項羽様が戦線離脱。ジャンヌ様が単身で人形を抑えているようですが、それもいつまでもつか分かりません。例の第三者によって戦況は混迷を極めており、公安の情報網もうまく機能しておられないようです」

 

「ちょっと待て。その情報、誰から聞いた」

 

 おかしい。どうして、そこまで詳しい情報を先程までイ・ウーの本部にいた人間の口から出てくる。

 そこまで有能な人間に見えないだけにその言葉をどこまで鵜呑みにして良いのか。フィアナは頭を悩ませる。

 何かしらの罠か。向こう側がわざと情報を流している可能性も捨て切れない。

 だが、いくら考えても答えの出ない問題だ。それに今更、罠と分かった所で跳びこまない選択肢はない。

 

「先程、武器商人から連絡がありました。状況が変化し、用意していたモノが使えなくなったので追加物資を用意した、と。塚原漁火より」

 

「――漁火。という事はその情報を流したのはアイツか」

 

 塚原漁火。金さえ払えばどんなものでも用意する死の商人。その正体は穴倉の調達部門の人間であり、幹部の一人である撫子の双子の姉でもある。つまり、この情報は撫子から渡されたものなのだろう。

 だが、この状況であるならば十分に人形を奪還可能。しかし、穴倉は動けずにいる。

 何か裏があるとしか思えない。穴倉の連中はまだ何かを隠している。最悪、彼らも敵に回す事になるのだろう。

 

「分かった。なら、アンタはまず項羽の回収を急げ。ここから先は別行動だ。どうみたってアンタは戦闘員じゃなさそうだしな。なにより、女性にはここから先は刺激が強過ぎる。お前はお前の為すべき事を為せ」

 

「ですが、それでは……」

 

「俺は一人で大丈夫だ。これは誰にも背負わせるつもりはない。俺だけの物だ。だから、お前は自分の大切な物を守ってろ。命令が欲しいのならそれが俺の命令だ」

 

 そう告げるとフィアナはリサと別れて単独行動を始める。

 ここから先に彼女を巻き込む訳にはいかない。これは過去の清算なのだ。

 全てを終わらせる為にここに戻ってきた。なら、彼女には彼女の役割を担って貰うべきだろう。

 部外者の救出という名の役割を。

 

「そうは思わないか? 博愛」

 

「アタシはどうするべきなんだろうね。この状況下でもまだ迷ってる。ここで止めるべきか否か」

 

 そこに立っていたのは雨でびしょ濡れになった狩野博愛の姿だった。

 いつもと雰囲気が違う。その様子にフィアナは深い溜息を吐く。

 

「どうして戻って来たの。公安もあなたの生死は不明だと公に宣言した。このまま姿を晦ませれば自由の身になれた。糞みたいな過去の因縁とも――」

 

「確かにそうだな。でも、関わってしまった。プログラムにしても、人形にしても、さ。それを今更になって知らぬ存ぜぬでは流石に通せないだろ。何より、他人に自分の咎を背負わせるのは御免だ」

 

「プログラムは終わらない。これから先も続き続ける。妄執が、人の欲があなたを阻み続ける。今更、人形一人をどうこうした所で何も変わらない。私でも死んだ人間までは甦らせられない!」

 

 確かに人形を倒してもプログラムは終わらない。未完成品を潰したのなら、新たに作ればいいだけの話だからだ。世界のニーズに合わせ、プログラムは変化していく。まるで生き物のように。

 それを狩野博愛は知っている。一人の天才を生む事を不可能と判断した前任者は多くの才覚を持つ人間同士を殺し合わせる事により、完成品に近付けようとした。

 その際に人間性を全て引き剥がし、仮初の人格を植え付ける事で人間性を保ち続けた虚ろな少女。

 それこそが『人形』の正体。名前すら失った少女A。

 そして、かつて母親が助けられなかった少女でもあった。

 

「早いか遅いかの違いだ。ここまで来たんだ。今更、嘘には出来ないだろ」

 

 この場所に来るまでに多くの物を失った。奪った。奪われた。

 その結果として今の自分がここにいる。だからこそ、それらを否定する訳にはいかない。

 それがフィアナ。いや、クロエ=フローレアが初めて人の姿をした何かを殺した時に誓った事だった。

 その誓いがある限り、道を見失わずにいられる。

 生かす事だけが救いではない。殺す。終わらせる事もまた一つの救いなのだ。

 

「俺はあの時に付けられなかった決着を着けに来ただけだ。もう、アイツを救おうなんて思わない。思えない。いや、違うな。もう俺にはアイツを救えないんだよ」

 

 全てはIFの世界だ。

 時間が経ちすぎてしまった。人形もまた、全てを終わらせる為に動いている。

 なら、その彼女の想いを汲みとるのもまた一つの答えではないかと考えていた。

 孤独に孤高に蠱毒を生き抜いた少女。物語なら最後は魔法使いに救われる事もあるだろうが、そんな夢物語はここにはない。あるのは非常な現実だけだ。

 

「それにプログラムが終わらないのなら、その芽を摘み続けるまでだ。出来る出来ないの問題じゃない。やるかやらないかだ。抗い続ければいつかきっと届くってものだろう」

 

「それだけの怪我を背負ってまでするべき事か。お前は正真正銘のバカだ。――嫌いじゃない。だがな、お前が思っているようには世界は動かない。盟主より穴倉の幹部へ通達があった。お前を後任に指名するそうだ。その意味が分かるよな。分からないお前でもあるまい」

 

 穴倉の後任をこの暴風の中で宣言した理由。

 盟主が本格的に動くのだろう。あの婆、いい加減に年なんだから隠居すればいいモノを。

 

「まぁ、なるようになるだろ。俺はあの盟主のようには生きられないし、仕切れない。一介の暗殺者だぜ。そんな人間に出来る事なんてたかが知れてるだろ。とは言ったモノの、よくよく考えれば幹部の連中にあの人の後任なんて出来そうな人間いないのも事実か」

 

 盟主以下の幹部は基本的に部門長が務めている。

 それ故に各分野に特化しているのだが、それ故に総括して管理できる人間はいない。

 何より穴倉の象徴でもある。膝を屈する事があれば、それは穴倉の失墜につながる。

 本当につくづく面倒なババアだ。遠回しに生きて戻れ。それがお前への命令だとでも言いたいのだろう。

 

「なぁ、博愛。アンタは今幸せか?」

 

「愚問ね。そんな回答に答えるまでもないじゃない。幸せな人生を歩んでいるのだとすれば、今の私はここにはいない。こんな糞みたいな地獄にね。せめてもの救いは酒が美味しい事くらいかしらね。クロエ――貴方はどうなの? この糞みたいな世界の現実を知って、それでもその答えに頷ける?」

 

「あぁ、なんていうのかね。俺達は善人じゃないし、絶対的に間違ってるだろうけど、俺達が間違ってるのと同じように世界も狂ってるんだ。歪めているのはこの世界に存在するすべて。でも、結局幸せなんだろうな。俺は弱者じゃない。もう何も出来ないまま見てるだけの餓鬼じゃない。こうして自分で答えを選べるんだからな」

 

 力がある事はそれだけで幸福だ。

 それだけ選べる選択肢が増える。こうして、前へ進む事が出来る。

 

「行って来る」

 

「いってらっしゃい」

 

 そう博愛に告げると歩き出す。戦場。人形の待つ舞台の上へ。

 物語の幕を下ろす為に。




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