影の軌跡 〜鉄血の子供たち〜   作:もっさん。

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二十七話 警告

 

 

 

帝国夏至祭・初日

 

朝の目覚めはすこぶる快調だった。

いつものように起き、いつものように準備し、いつものように家を出る。

今日が何か起こってしまうことが分かっていなければ、普段どおりの朝だと言えるだろう。

だが、今日は夏至祭の初日である。

導力演算器並みの頭脳を持つクレア姉が導き出した答えだ。疑う必要性を感じない。

 

「…無事に切り抜けれればいいが」

 

そう呟きながら俺は、二本の刀に手を触れる。

そのとき

 

『主よ』

 

どこからか声がした。

…久々に聴いたぜ、お前の声。

 

「…珍しいじゃないか。お前がこんな朝っぱらから起きてるなんてな……フツノミタマ?」

『たまには早起きも良いじゃろうて。早起きは三文のなんとやら、とな』

「そこはもう全部言えよ」

 

はっはっと笑う声が頭に響く。

 

 

フツノミタマ

 

俺が所持する神刀の一つで、幻の属性を司る刀だ。

神刀とは、このゼムリア大陸に伝わる刀で、種類は七つとされている。

火・水・風・地の基本四属性と、時・空・幻の上位三属性の計七つ。

もう一本、神刀を所持しているのだが…

 

「フツ、コガラスはどうした」

『不肖の妹は寝ておるよ。相変わらず、太陽の光が苦手なようじゃ』

「…はぁ、相変わらずだなお前ら姉妹は」

 

コガラス。

俺が所持するもう一本の神刀で、フツノミタマの妹にあたる存在だ。

だが、こいつは動くことや力を使うことがメンドクサイらしく、一日の殆どを寝て過ごしている。

肝心なときには動いてくれるんだけどな…。

 

「それで、どうしたよ。俺に念話してくるってことは、何かあるんだろ?」

『ふむ、それなのじゃが…。トツカとハバキリの気配を感じた。あやつらは封印されておるはずなのではないのか?』

「・・・昨日、二つ奇妙な出来事があった。一つは、遭遇した謎の男。あいつはアメノハバキリを手にしていた」

 

昨日急襲されたとき、謎の男が手にしていたのは確かにアメノハバキリだった。そして…

 

「二つ目は、帝都の宮殿に保管・封印されていたトツカノツルギが、何者かに盗まれたってことだ」

『…なるほど、外界に放たれたのか…しかしのう主様よ。神刀を扱うには…』

「分かってる。Xの血が流れていなければ使えない。神刀を盗んだ犯人は、Xの人間だろう」

 

神刀を扱う条件。

それは、俺も引く、Xの血が無ければ扱うことはできない。

神刀はXの一族が創りしモノであり、Xの一族が振るうモノだからだ。

 

「この帝国に、俺とは別のXの血を引いている奴がいるってことか…」

『…用心せいよ、主。わしらは主に忠を誓ってはおるが、他の刀はどうか分からん。思いっきり力を解放するやもしれん』

「―――そんときは遠慮なくお前ら呼ぶから。頼むぞ」

『…あい分かった。では今日ぐらい昼寝をせずに待っておいてやろう』

「へいへい、あんがとさん」

 

礼を言うと、もう少しありがたそうに言え、と呟きながら気配が消えた。

念話を止めたのだろう。

俺以外のX…。

―――くそ、思ったよりも深刻な状況だったのか…?

 

俺は二本の刀を腰に差し直し、帝都へと向かった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

帝都に着いた俺は、宰相閣下がいる官邸へと向かうついでに、対暴徒鎮圧部隊基地へと足を運んでいた。

 

「あ、アイゼンブルグ特別大尉。おはようございます!」

「フェイ。おはよう」

 

基地に着いた俺を迎えたのはフェイだった。

いつもの軍服に加え、非常事態用の兵装を装備している。

ちなみに、鎮圧部隊の実力ナンバー2は、このフェイだ。

フェイは東方の武術である根術を極めており、それプラス、武器自体を改造することでさらに自身の武術を完成させた武人でもあるのだ。

……ま、いつもの天然キャラからは想像出来ないんだけどな。

 

「フェイ。今日、もしテロリストと相対し、強いと思ったら迷わず爆破根を使用しろ。俺が許可する」

「は…、しかし、あれは威力が強すぎて、もしかしたら避難している住民に被害が出る可能性が…」

「いい。テロリストを野放しにする方がよっぽど危険だ。それに、使い慣れた武器じゃないとお前の絶対直感(オーバーセンス)が発揮されないだろ」

「そう…でありますね。了解しました。緊急時には根を使わせていただきます」

「ん…。出来れば、そういった機会が無いのが好ましいが…」

「そうでありますね…」

 

それぐらい、俺の頭にはアラートが鳴っている。

力の出し惜しみをすれば、死ぬ。

そんなアラートが。

 

「それじゃあ、俺は宰相閣下のところへ向かう。何かあれば俺の端末に連絡を」

「はい、了解しました!」

 

これで鎮圧部隊は大丈夫だろう。

あとは…、集合の時間はまだだし、軽く警らしてから向かうとしよう。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「あら、トーリ君」

「フィオナ…これはジェラートか。出店か?」

「うん。私たちの店も出すことになってね。手作りのジェラートなの。…そうだわ、お一つどう?味見もかねて食べて欲しいわ」

 

そういい、慣れた手つきでジェラートをよそうフィオナ。

渡されたジェラートは綺麗なオレンジ色をしていた。

 

「それじゃ、頂くよ……うん、うまい」

「本当!?」

 

急に大声を上げたので思わずビックリしてしまうが。

これは本当においしい。

オレンジのさわやかな味に程よい甘さ。

そしてこの冷たさが加わって、なんとも清清しい気分にさせてくれる。

これなら、暑い昼から夕方にかけて人気になるのは間違いないだろう。

 

「ま、でも肝心のフィオナが暑さにやられちゃだめだぜ?」

「分かってるわ。ちゃんと水分補給しながらやりますよー。トーリ君は今からお仕事?」

「ああ。そうだよ」

「なら、あまり引き止めるのも悪いわね。お仕事、がんばってね?」

「おう、サンキューな。ご馳走様」

 

フィオナのおかげで、少し気分が晴れた。

そういった意味も込めて、礼を言い、その場を去った。

 

 

 

後は、その時間が来るのみだ。

 

 

 

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