もしも薙切薊の性格がマイルドだったら 作:作者さん
「最高評価の『A』だ……! 流石は『神の舌』を持つ薙切えりな様、完璧な出来栄えです!」
講師の称賛を当然のものとして受け止め、えりなは小さく息を吐いた。器に盛り付けられた料理は、彩りも火入れも寸分の狂いもない極上品。だが、周囲の生徒たちが上げる歓声と溜め息を背に受けながら調理台を片付けようとした、その時だった。
「流石でございます、えりな様。今日も見事な一皿でしたね」
いつもの聞き慣れた、温もりを含んだ声。パタパタと小走りで駆け寄ってきたのは、秘書の新戸緋沙子だった。
「あ……ええ。ありがとう、緋沙子……」
えりなは無意識にほんの数センチ、後ずさりするように身体を引いてしまった。
普段通りに仕えてくれる緋沙子の態度は、何一つ変わっていない。けれど、えりなの脳裏には、どうしても先日の光景が焼き付いて離れなかったのだ。
——楠連太郎との食戟。
セントラルに仇なす者を排除するため、十傑評議会から放たれた連太郎に対し、緋沙子が魅せたあの鬼気迫る料理と、相手を徹底的に完膚なきまで叩きのめした冷酷なまでの眼差し。
そしてその勝利と内外への結果によって、彼女が正式に奪い取った『遠月十傑・第七席』の地位。
今のえりなは、薊の推し進めるセントラルのやり方に深い疑問と葛藤を抱き、気持ちは明確に極星寮——つまり反体制側に傾いていた。十傑としての仕事も事実上ボイコットし、与えられた責務をほぼ放棄している状態だ。
それにもかかわらず、かつて自分の後ろをついてきていたはずの少女は、セントラルの忠実な牙として十傑の第七席にまで上り詰めその場所にいる。その成長への驚き以上に、己の手の届かない場所へ行ってしまったような底知れぬ恐怖に、えりなは微かな気圧されを禁じ得ずにいた。
当然、実習室の周囲にいる一般生徒たちも、その異常な空気を敏感に察知していた。
『おい、見たかよ……新十傑の第七席だぞ』
『あの秘書子だろ? 先日、連太郎先輩をボコボコに返り討ちにしたっていう……』
『えりな様の秘書なのに、いまやえりな様より席次が上なんじゃ……』
ヒソヒソと囁き合われる遠慮のない噂話。
えりなが一瞬、苦々しい表情を浮かべかけたその時だった。
「――。」
えりなへ向けていた緋沙子の柔らかい笑みが、氷が凝固するように一瞬で消え失せた。
緋沙子は静かに首だけを噂話の主たちへと向けると、表情の削ぎ落とされた冷たい瞳で生徒たちを射抜いた。
一切の言葉すら発しない、冷たい視線に噂をしていた生徒たちはひゅっと息を呑み、一斉に顔を蒼白にして黙り込んだ。実習室全体が、凍りついたような静寂に包まれる。
「……えりな様? どうかされましたか?」
生徒たちを無言で平伏させた直後、緋沙子はくるりと振り返り、何事もなかったかのような花が咲くような笑顔に戻って首を傾げた。その完璧すぎるギャップに、えりなは引きつった笑みを返すのが精一杯だった。
「い、いいえ。なんでもないわ……さ、着替えに行きましょう」
「はい、お供いたします」
◇
女子更衣室に入り、コックコートのボタンを外す衣服の擦れる音が静かに響く。
制服に着替えながら、普段と同じように今後のスケジュールを確認し始めた。
「えりな様、本部からの連絡事項があります。……近日中に第二次『残党狩り』が執り行われるとのことです」
「第二次……『残党狩り』……」
言葉を詰まらせるえりなを余所に、緋沙子は淡々と続けた。
「はい。十傑の仕事として、私にも正式にセントラルとしての食戟要請が下りております」
制服のリボンを結び直し、緋沙子は変わらぬ敬意を込めた眼差しで言った。
「それ……私に話して大丈夫なの……?」
えりなは胸元を押さえ、恐る恐る尋ねた。
セントラルの内情、しかも次の作戦に関する情報を、十傑としての職務を拒絶し、あまつさえ反体制側に心を寄せている自分に明かすなど、通常であれば情報漏洩以外の何物でもない。
「もちろんです」
緋沙子は少しも躊躇うことなく、朗らかな笑みを浮かべて頷いた。
「総帥からも『えりな様の力になってあげなさい』とお言葉をいただいておりますから。それに……えりな様がご心配されている極星寮に関しては、今のところ何の話も上がっておりませんので、ご安心くださいね」
「え……?」
まるでえりなの内心を見透かしているかのような口ぶりに、えりなは息を呑んだ。
緋沙子はセントラルの十傑という立場にありながら、まるで個人間の世間話でもするかのように、えりなが欲していた情報を親切に手渡してくる。敵対勢力の機密であるはずの情報が、あまりにもあっけらかんと提示される気味悪さに、えりなの背筋を冷や汗が伝った。
「それから……もうひとつ」
緋沙子はさも「今日の予定がひとつ変更になった」とでも言うような軽やかさで言葉を継いだ。
「先日の食戟で私が勝ち取りました『一部自治組織の解散撤回』の件ですが……本部の方針変更により、事実上、白紙となってしまいました」
「なっ……! 白紙ですって……!?」
「ええ。解散命令の直前に籍を置いたような短期間の所属者に関しては、食戟への参加の対象外とする新規定が適用されまして。私自身が直前で籍を置いて参加した自治組織も、再度食戟を行うとのことで、その食戟相手に私が選ばれています」
「……っ!? 貴方……自分が何を言っているのか分かっているの!? 貴方が守った自治組織を、 それを今度は貴方自身が潰しに行くというの……!?」
えりなの動揺と悲痛な問いかけに対し、緋沙子は困ったような微かな苦笑を浮かべただけだった。まるで「大したことではない」とでも言いたげな態度で、あまりにも当然のように微笑む。
「……えりな様、どうしてそこまで気になさるのですか? 今回処理の対象となる自治組織は、えりな様や極星寮の皆様とは何の関係もない場所です。ですから、えりな様が心を痛められる必要はどこにもございませんよ」
心底不思議そうに、けれど変わらぬ温もりを込めて微笑む緋沙子。
その瞳には、自身が命がけで勝ち取った成果を反故にされた悔しさも、処分される者たちへの同情も一切存在しなかった。ただ「えりなに関係がないから価値がない」と当然のように割り切っているのだ。
(どうして……? どうしてそんなに平然としていられるの……!?)
えりなは目の前に立つ少女の姿に、激しい眩暈(めまい)を覚えた。
セントラルの残忍な作戦や不当な支配を「なんでもない日常」として処理し、己の救ったはずの存在すら平然と切り捨てる冷徹な十傑としての顔。
その一方で、セントラルの情報をあっさりと漏らし、えりなの身内や仲間を気遣うような素振りを見せる優しい秘書としての顔。
自分自身が勝ち取った功績や守った対象にすら一切の情を挟まず処断し、大したことではないかのように語る緋沙子の姿は、敵として襲いかかられるよりも遥かに恐ろしく、異様だった。
(分からない……。今の緋沙子は……一体どうしてしまったの……?)
温かい笑顔を絶やさない秘書の瞳の奥に、底知れない深淵を見た気がして、えりなはただ言葉を失った。
更衣室を出て、静まり返った廊下を二人並んで歩き始める。
靴音が規則正しく響く中、えりなは胸の奥で渦巻く重い疑問を押し殺しきれず、隣を歩く緋沙子の横顔を盗み見るようにして口を開いた。
「……ねえ、緋沙子。貴方は……今のセントラルのやり方が、絶対的に『正しい』と思っているの?」
その問いに、緋沙子は脚を止めることなく、どこか穏やかな眼差しのまま前を見つめて言った。
「『正しい』……とは、なんでしょうか」
「え……?」
「今、この遠月学園を統べ、絶対的な秩序を与えているのは現総帥です。そうした体制や規律という観点から捉えれば……広義的には、セントラルの推し進める道こそが『正しい』のかもしれませんね」
まるで他人事のように、淡々と客観的な事実として論理を述べる緋沙子。そこには熱狂的な信奉も、反発の意も感じられない。
「それなら……貴女自身は……っ」
それなら貴女は、何のためにセントラルの先兵として戦い、誰のためにその刃を振るっているのか。
言いかけたえりなの言葉を遮るように、緋沙子はふっと脚を止め、困ったような微かな笑みを浮かべた。
「私は……私が正しいと思うことをするだけです、えりな様」
その笑みは、幼い頃から見慣れてきた愛らしい秘書のそれと何一つ変わらないはずだった。けれど、どこか透明で、覗き込めば呑み込まれてしまいそうな底知れなさをたたえている。
「……えりな様は、いかがでしょうか?」
柔らかく、しかしどこか芯の冷たい声で再度問い返され、えりなは息を呑んだ。問いかけられた言葉の重みに、自分の立ち位置を鋭く射抜かれたような気がした。
「……私は……」
えりなは視線を落とし、迷いを孕んだ声でポツリと呟いた。
「今までずっと、父様の言う通りにしていればいいのだと思っていたわ。でも……本当は自分がどうしたいのか、どうすべきなのか……それを今、考えているところよ」
自分自身の意志で歩もうとし始めた、えりなのささやかな告白。
それを聞いた緋沙子は、まるで自分のことのように嬉しそうに目元を緩め、屈託のない穏やかな笑みを浮かべた。
「私と一緒ですね、えりな様」
その花が咲くような温かい笑顔は、かつてと何一つ変わらない、えりなの大好きな「緋沙子」そのものだった。
胸を突くような懐かしさと愛おしさに、えりなの唇が微かに戦慄く。
(もし……もしも私が、私に味方をしてと頼んだら……貴女はセントラルではなく、私を選んでくれるの……?)
喉のすぐ裏まで出かかった問いかけ。
けれど、えりなは寸前でそれを呑み込み、口の中で消し去った。
……だめだ。『言ってはいけない』。
もしその言葉を口にしてしまえば、自分の中で緋沙子という存在が、取り返しのつかない決定的な『何か別者』に変質してしまう――そんな恐ろしい予感が、直感的に背筋を駆け抜けたからだ。
重苦しい沈黙が二人を包みかけた、その時だった。
「……? えりな様、あちらは……」
ふと足を止めた緋沙子が、廊下の先にある調理実習室へと視線を向けた。
少しだけ開いた扉の隙間から、見知った威勢の良い声と、どこか申し訳なさそうに気おされた声が漏れ聞こえてくる。
「いいっすよ。その勝負、受けます」
実習室の中での異様な熱気と雰囲気に気づき、二人は顔を見合わせた。
――
「おいおい……マジかよ」
実習室の中に広がる熱気とざわめきの中、幸平創真は、調理台に肘をつきながら周囲を見渡した。
今日の授業はいつもと違う。なんでも遠月十傑第一席、司瑛士が直接講師として壇上に立つという噂が、朝から校内に駆け巡っていたのだ。高等部頂点の料理を間近で見られるとあって、教室内の生徒たちの緊張と期待は最高潮に達している。
だが――ガラガラと重い音を立てて扉が開き、現れた人物を目にした瞬間、その熱気は一瞬でズッコケたような静寂へと変わった。
「お、待たせ……みんな」
白髪のウィッグをかぶり、どこか気弱そうで神経質そうな猫背の姿勢。完璧に司瑛士の見た目を模した男。――だが、どう見ても体躯が規格外にデカすぎる。
『ええと……今日の授業なんだけど、俺が実際にここで料理を数点作ってみせるからさ。それを君たちのこれからの手本にしてほしいんだ。……ああ、どうしよう、俺なんかの料理が本当に手本になるのかな。プレッシャーで胃が痛くなってきたよ……』
周囲から一斉に怒号のようなツッコミが飛んだ。
「美作じゃねーか!!」
「デカすぎるだろ! どこが司先輩だ!」
「何やってんだお前はーっ!?」
荒れ狂うブーイングをどこ吹く風で、司のトレースを続ける美作。彼がさらに『俺の繊細な技術をこんな大人数の前で見せられるか不安でさ……』とボヤきを重ね、教室が半ば暴動のような騒ぎになりかけた、その時だった。
ガラッ、と再び扉が開く。
「……あ、あの、美作? 俺の代わりに説明しておいてくれた……?」
恐る恐る教室の様子を伺うように入ってきたのは、本物の第一席・司瑛士だった。
美作は即座に背筋を伸ばすと、いつもの厳つい地声に戻って軽く頭を下げた。
「おう、司先輩。バッチリ説明しておいたぜ」
「……なんか、すっごくブーイングされてる気がするんだけど、気のせいかな……?」
自分そっくりの大男と荒れ果てた教室を交互に見比べ、司は心底困り果てた様子で胃を押さえた。
「あ、ええとね……実は今日の授業、美作クンの他にもう一人、俺の調理のサポートに入ってもらおうと思っていてね。誰か参加したい人は――」
司が胃を押さえながら教室を見渡し、そう問いかけた次の瞬間だった。
「へー、面白そうじゃん。俺、やるぜ」
いつの間にか司のすぐ隣に、赤毛の少年――幸平創真がごく自然な動作で並び立っていた。
「うわあああっ!? あ、あれ!? 幸平!? 君、いつの間にそこに!?」
脱兎のごとく跳びのいて目を見開く司の反応などまるで気にせず、創真は隣の大男へとのんきに視線を向けた。
「よお、美作。最近極星寮や授業にも顔出さねーからどこ行ってんのかと思ったら、司先輩のところにいたのか」
「おう、幸平。色々とな。今は司先輩の付き人をやらせてもらってるんだよ」
美作が腕を組み、いつもの厳つい顔で頷く。そのやり取りを聞いていた創真は、ふと顎に手を当てて、実に軽やかな口調で問いかけた。
「へー。……じゃあ美作、お前セントラルに入ったのか?」
「――っ!?」
あまりにもあっけらかんとした、けれど劇薬のようなその一言に、実習室の空気が一瞬で凍りついた。生徒たちの息を呑む音が静まり返った教室に響き渡る。セントラルと反体制勢力との緊張感が増す中、あまりに無防備で危険な踏み込みだった。
だが、当の美作はハッと鼻で笑うと、呆れたように肩をすくめた。
「なんじゃそりゃ。入るわけねーだろ、俺が」
「あはは……違うんだよ、幸平」
緊張で冷や汗をかいた司が、苦笑いを浮かべながら助け舟を出すように口を開いた。
「美作がね、俺の周りをずーっとストーカーみたいにつけ回していたから、俺が捕獲したんだよ。……最初は怖かったんだけどさ。でも、彼のサポートは本当に凄くてね。文字通り、俺の『右腕』として手伝ってもらうのに、これ以上なくふさわしかったんだ」
司の説明を受け、美作は腕組みをしたまま不敵な笑みを深めた。
「……そういうことだ、幸平。司先輩は至高の料理を作るための完璧な手足が欲しい。そして俺は、第一席の調理の癖も技術も、そのすべてを一番近い特等席で盗み出したい。お互いの利害が完全に一致してんだよ。言ってみりゃあ……カバとウシツツキみたいな共生関係ってやつだな」
「ふーん。そっか、なら元気にやってんならそれでいいや」
あっさりと納得してケロッと笑う創真の態度に、凍りついていた教室の空気が拍子抜けしたように緩んだ。美作は鼻で笑い、腕をまくり直すと厳めしい声を響かせた。
「よし、無駄話はここまでだ。授業を始めるぞ」
美作の言葉を合図に、司の雰囲気がガラリと変わった。先ほどまでの気弱でオドオドした様子は綺麗に消え去り、十傑第一席としての鋭く澄み渡った集中力がその瞳に宿る。
「……始めるよ」
短く発せられた司の声と共に、三人の調理が始まった。
そこから繰り広げられたのは、常識を遥かに超越した調理風景だった。
三人から明確な会話の言葉はほとんど発せられない。にもかかわらず、司が手を伸ばすわずかコンマ数秒前に、必要な調理器具や下処理の済んだ食材が寸分の狂いもなく手元へと差し出される。
「ソース、詰め加減あと15秒」
「おう」
「次、ジュの漉し作業……」
「ここだ、司先輩」
司の思考を極限までトレースし、完璧な先回りで右腕として機能する美作。そして、その二人の超絶な領域に、創真もまた何食わぬ顔で溶け込んでいた。
鍋の温度変化を察知して火力を微調整し、食材を刻む小気味よいリズムを狂わせることなく合わせる。言葉で指示を出さずとも、三人は互いの動線と空気感だけで次の工程を察し、交差するように滑らかに立ち位置を入れ替えながら作業を進めていく。
作業の分担という次元ではない。まるで一つの意志を持った「三つの手足を持つシェフ」が、そこに立っているかのようだった。
(……すごいな。俺の思考のスピードに、一切の淀みも遅れもなくついてくる……!)
美作の完璧な補助はもちろんのこと、創真が見せる野生的なまでの対応力と手際の良さ。司の胸に、純粋な感嘆が湧き上がる。
「……やっぱり、いいね。幸平」
ふっと満足気な笑みを浮かべ、司は小さく呟いた。自らの理想とする完璧な料理が、二人によって最高の形で形づくられていく。
瞬く間に、息を呑むほどに美しく盛り付けられた数点の料理が、調理台の上に並べられた。芸術品のような仕上がりに、見守っていた生徒たちはゴクリと唾を呑み込み、圧倒されて言葉を失う。
「……ふぅ。はい、こんな感じかな」
司は額の汗を拭うと、いつもの気弱で穏やかな表情に戻り、どこか申し訳なさそうに教室全体を見渡した。
「それじゃあ……今見せた手順を手本にして、みんなも同じように作ってみようか」
――できるわけねーだろっ!!!!
実習室にいた全生徒の心のツッコミが、見事なまでに完璧に重なった瞬間だった。
「はぁぁぁ……疲れた……緊張した……死んじゃう……」
授業が終わるやいなや、司はその場にがっくりと膝をつき、生気を失った顔でグロッキー状態に陥っていた。
そんな司の手元へ、すっと水分補給用のスポーツドリンクが差し出される。
「おう司先輩、お疲れさん。これ、ドリンクと汗拭き用のタオルだ」
「あ、ありがとう、美作……」
受け取ったタオルは驚くほどふわふわで、かすかに柑橘系の清潔で良い香りがした。厳つい見た目に反する美作のあまりに細やかな気遣いに、司はホッと息を吐きながら顔を埋める。
「次の司先輩の予定は、午後からの実習授業……これは講師としてだな。まだ時間に余裕はあるからここで少し休んでもいいし、十傑の業務を進めに行ってもいい。俺は次の授業の仕込みと準備を先に進めておくぞ」
「う、うん……助かるよ……」
手際よく後片付けの段取りを整えると、美作は「じゃあな、幸平」と軽く手を挙げて実習室を後にした。
その背中を見送りながら、創真はふと首を傾げた。
(……ん? ちょっと待てよ……。俺、成り行きで手伝ったけど……よく考えたらこれ、セントラルの授業の片棒担いだんじゃねーか……?)
反体制側として極星寮を守る立場でありながら、ちゃっかり十傑第一席のデモンストレーションを完璧にアシストしてしまった事実に、創真は内心で苦笑いを浮かべた。まあ、面白かったからいいかとあっさりと口の中で打ち消した、その時だった。
「……ねえ、幸平」
タオルで顔を拭き終えた司が、少し真面目な瞳を創真に向けて声をかけてきた。
「君さ……セントラルに入らない?」
「いやっす」
かぶせ気味の即答だった。
一切の迷いもない断り文句に、司は目を見開いて「えっ、即答!?」と小さく声を裏返させた。
「だって俺、前に薙切の親父さん――総帥に直接スカウトされた時も断りましたし。今更入る気ないすよ」
創真にあっけらかんと肩をすくめて言い放たれ、司はがっくりと肩を落とすと、心底残念そうに大きなため息をついた。
「あー……そっか。総帥はまぁ……やっぱり先に行ってるよねぇ……」
がっくりと司は肩を下げる。
「じゃあさ……セントラルに入らなくてもいいから、俺の右腕――は美作がいるから、懐刀にならない? 君が俺の料理を手伝ってくれると、すごく助かるんだけど」
司の思いがけない提案に、創真は少し意外そうに目を丸くした。
「……それって、俺の料理を必要としてくれてる、ってことすか?」
「いいや?」
悪びれもなく即答する司。
普通ならズッコケるか呆れるような返答だったが、創真は「あはは」と可笑しそうに笑った。
「まぁ……司先輩はそうっすよね」
紅葉狩り会で見せた絶対的な自信や、月饗祭で一人店を切り回しながら己の料理に一切の疑いを持たない異様な姿。司瑛士という料理人が他人の技術や存在そのものに敬意を払っているわけではなく、ただ己の至高の料理を完成させるための「理想的な手足」を求めているのだと、創真はとうに理解していた。
「それなら――」
司の眼光が、ふっと鋭く研ぎ澄まされる。気弱な表情は消え去り、遠月の頂点に君臨する男の圧が実習室を満たした。
「食戟をしよう、幸平。俺が勝ったら、君には俺の懐刀になってもらう。その代わり……君が勝ったら、俺の持つ『第一席の座』をあげるよ。どうかな?」
十傑の頂点という圧倒的な価値を、あまりにもあっさりと賭け金として提示する司。学園の誰もが息を呑むような大博打だったが、創真の口元には即座に不敵な笑みが浮かんでいた。
負ければ司の料理を支える手先として縛られるというリスクも、反体制側の立場も、創真にとっては些末なことに過ぎなかった。何より今、目の前に「遠月頂点」が立ち、一対一で全力をぶつけ合える機会が転がってきたのだ。断る理由など最初からどこにも存在しなかった。
「いいっすよ。その勝負、受けます」
創真は胸を張り、ニィッと八重歯を覗かせた。
「受ける……って、幸平くんは何を考えているのよ!?」
扉の隙間から覗き込んでいたえりなは、思わず声を張り上げそうになり、慌てて自分の口を両手で塞いだ。
相手は第一席の司瑛士。学園最高の権威と実力を誇る男だ。そんな存在を前に、リスクも顧みず即座に食戟を承諾した創真の無謀さに、えりなは目眩を覚える。
その隣で、じっと実習室の中を見つめていた緋沙子の瞳に、急速に冷ややかな不快感が混じり合っていく。
「……何を考えているんだ、あの男は」
吐き捨てるような、忌々しげな緋沙子の低く冷たい呟き。その声に含まれた苛立ちの鋭さにえりなは一瞬気圧されたが、二人は息を殺したまま、隠れて実習室の中を見守るしかなかった。
◇
実習室内では、急遽始まった非公式の食戟によって、異様なまでの集中力が立ち込めていた。
司が包丁を握り、食材に刃を入れた瞬間から、空気そのものが変質する。寸分の狂いもない繊細な手つき、調理が進むにつれて立ち上る圧倒的な香り――。目の前に展開される第一席の異次元の調理風景に、創真はゾクゾクと全身の細胞を振るわせるような感覚に襲われていた。圧倒的な実力差を肌で感じながらも、その瞳には挑戦者としての歓喜が燃え上がっている。
フライパンを火にかけながら、創真はふと思い立ったように口を開いた。
「……なぁ、司先輩。ひとつ聞いていいすか?」
「ん? なに、幸平」
手元から視線を外さず、軽やかに答える司。
「セントラルって、結局のところ何をしたいんすかね。……司先輩くらい凄ぇ腕があれば、別にセントラルなんかに肩入れしなくたって、自分の至高の料理なんていくらでも作れるんじゃないすか?」
十傑第一席という頂点に立ちながら、なぜ薊の体制に従うのか。素朴だが本質を突いた創真の問いに、司は困ったように眉を下げ、実に事もなげに言った。
「んー……俺はその方が都合がよかったから、かな」
調理を進めながら司は言葉を探した。
「セントラルの目的はさ……よく言えば、日本の料理界全体のレベルの底上げ。悪く言えば、質の低い、料理とすら呼べないような物を出す要らない店を駆逐すること、かな」
手元で包丁を軽やかに動かしながら、司はどこか遠くを見るような眼差しで淡々と言葉を重ねる。
「そのために、セントラルの思想に同調できる高い水準の料理人を大量に育てる。今この学園で進めている授業は、そのための前準備なんだよ」
トントン、と正確無比なリズムで食材が刻まれていく。司の動作には一切の迷いも無駄もなく、語られる言葉のスケールとは裏腹に、手元は恐ろしいほど静かだった。
「今までなら『才能がない』と切り捨てられ、ただ脱落していくだけの捨て石になっていた生徒たちに、完璧なレシピと確実な技術を与える。彼らが確かな基礎を身につけたシェフとして全国各地に店を出せば、それだけでその地域の食のレベルは劇的に跳ね上がるんだ」
鍋から立ち上る熱気を感じながら、創真は無言でフライパンを揺らした。セントラルが推し進める「平等な底上げ」の正体――極星寮の仲間たちが抗おうとしているシステムの冷徹な全貌が、司の口から解き明かされていく。
「あとはセントラルが彼らを全面的にサポートして、その地域の外食のシェアを占めていけばいい。……もちろん、その競争の流れの中で淘汰されて、潰れてしまう店も当然出てくるだろうけどね」
事もなげに語られる巨大な構想と冷徹な現実。創真はフライパンを揺らす手を止めず、静かに言葉を返した。
「……その『潰れる店』の中にさ。俺の実家みたいな小さな大衆食堂とか……俺や秘書子がスタジエールで行った『三田村』みたいな洋食屋も、要らねー店として入ってんのか?」
創真のまっすぐな問いかけに、司の鮮やかな手元がふっと止まった。実習室に僅かな沈黙が落ちる。
司は困ったように眉を下げ、ゆっくりと創真へ視線を向けると、不意に脈絡のない言葉を口にした。
「……幸平ってさ、大型スーパーマーケットとか嫌いなタイプ?」
「……は? 大型スーパー……?」
突拍子もない話題の転換に、創真は思わず拍子抜けした声を上げ、困惑気味に首を傾げた。
「よく漫画やドラマとかでさ、大型のショッピングモールができたせいで商店街が寂れちゃったから盛り上げよう、みたいな話があるだろう?」
「……司先輩って、漫画とかドラマ観るんすね」
「読むし観るよ! 俺を何だと思っているのさ!」
心外そうに眉をひそめて抗議した司は、手元の包丁を滑らかに動かし続けながら、どこか冷めた眼差しで言葉を繋いだ。
「そういう作品でよく思うんだけどさ……どうして大型スーパーの方が悪役にされているのかな、って思うんだよね。もちろんストーリーの展開で例外もあるけどさ。出店自体は違法でも何でもないし、この国の自由競争や資本主義の中でその恩恵を享受して暮らしているのに、そんな身勝手なことが言えるのかなって」
一切の感情を挟むことなく、社会の仕組みを当然の理として語る司。そして、彼はフライパンを揺らす創真へ静かに視線を向け直した。
「さっきの話に戻るけどさ。『要らない店』っていうよりも……正直、どうでもいいんだよ。そこが本当に多くの人に愛される価値のある場所なら、セントラルの進める出店戦略くらいで潰れるはずがないんだからね」
気弱で繊細な日頃の姿とは裏腹に、料理の頂点に立つ者ゆえの、あまりにも残酷で圧倒的な強者の理屈。そこには悪意すら存在せず、ただ客観的な事実として切り捨てる絶対的な価値観があった。
その冷徹な論理を静かに受け止めた創真は、ふっと口元に笑みを浮かべ、肩をすくめた。
「……へー。やっぱり俺、司先輩の懐刀にはなれそうにないっすわ。どうでもいいだなんて、思えないんでね」
――
会話を交わしながらも手元を一切止めず、二人の料理が仕上げへと向かっていく。
創真が仕上げたのは、力強い炭の香りを纏わせた『鹿もも肉の炭火焼~栗のソース~』。
対する司が皿に盛り付けたのは、部位ごとの特性を極限まで引き出し、皿の上で異なった表情を描き出す『二つの表情を見せる鹿のロースト』。
二つの皿から極上の香りが立ち上り、実習室内に完成の熱気が満ちた、まさにその時だった。
「……何やってんだ、お前ら」
実習室の扉の隙間から息を殺して覗き込んでいたえりなと緋沙子の背後に、ぬっと巨大な影が立ち塞がった。
「っ……! 美作くん……どうしてここに!?」
えりなが思わず声を押し殺して振り向くと、そこには腕を組み、怪訝そうな顔で見下ろす美作昴の姿があった。その手には、分厚い十傑評議会の決算書類がいくつも抱えられている。
「そんなところでコソコソ隠れて……。俺は司先輩がそろそろ十傑の書類仕事をしたくなっている頃だと思ったから、持ってきてやったんだよ。くくく、あの人が『あぁ……事務仕事をしなきゃ……』って胃を痛め始めるタイミングなんざ手に取るように分かる」
「そ、それはどうなの?」
完璧すぎるストーカー的トレース技術を事もなげに語る美作に一歩引いてしまうえりな。
その低く重い声が廊下に響いたことで、実習室の中の創真が気づき、扉をガラリと開けた。
「おう、美作! 良いところに来たじゃん。ついでに薙切と秘書子も」
「こ、幸平……っ!?」
「ちょうど今、料理が完成したんだよ。美作もみんなも、いいから中入って審査してくれよ!」
創真の屈託のない呼びかけに押されるように、三人は実習室内へと足を踏み入れることになった。
審査自体はあっけなく、けれど残酷なまでに明確な形で決着がついた。
創真の創り上げた一皿も間違いなく極上品であり、挑戦的な工夫に満ちていた。しかし、十傑第一席・司瑛士の提示した料理は、食材の命を極限まで研ぎ澄まし、食べる者の概念すら書き換えるような異次元の領域に達していたのだ。
満場一致での、司瑛士の完勝。
圧倒的な実力差を見せつけられ、創真は悔しそうに頭を掻きながらも、どこか晴れやかな笑みを浮かべていた。
「ふぅ……美味しかったよ、幸平。……で、美作は書類を持ってきてくれたんだね。助かるよ」
冷や汗を拭いながら書類を受け取る司の横で、美作はふと疑問を口にした。
「……ところで幸平、司先輩。二人は結局、何を賭けてそんな勝負をしてたんだ?」
その問いに、創真があっけらかんと肩をすくめて答える。
「ああ、俺が負けたら司先輩の『懐刀』になって、調理を手伝うって約束だったんだよ」
「……あ?」
それを聞いた瞬間、美作の顔が呆け、間髪入れずに言い放った。
「いや……そりゃ無茶だろ、どう考えても」
あきれ果てた美作の言葉は、敗者である創真ではなく、なんと隣にいる司へ向けられていた。
「えっ……? 美作、俺に言ってるの?」
「当たり前だろ、司先輩。幸平なんかを懐刀にしてみろ、速攻で先輩のレシピに『アドリブ』を混ぜ込んでくるぞ。こいつは灰汁が強すぎるんだ。先輩の世界に綺麗に収まる手足になんかなり得ねーよ」
「あ、あはは……確かにそうだよな…!」
美作のあまりにも的確すぎる指摘に司はがっくりと肩を落とした。
創真の自我の強さと料理への貪欲さを思い返し、自分の理想とする「完璧な手足」とは真逆の存在であることは薄々気がついてはいたが、骨を折った結果が無意味だったのには変わりないのだ。
「あー……うん、幸平。ごめん、やっぱり今の話は無かったことにしよう」
「いいや……俺の負けっすよ、司先輩」
創真は不満げに口を尖らせ、恨めしいような視線を司へと向けた。勝負は勝負だ。敗北した以上、約束通り「懐刀」として手先になる覚悟を決めていた創真にとって、勝者であるはずの相手から勝手に反故にされるのは何とも収まりが悪い。
だが、司は底知れない余裕を漂わせてふっと微笑んだ。
「そうだね、俺の勝ちだ。だから……今回は勝者である俺の顔を立ててくれよ」
あくまで食戟の勝利者は自分で、勝者には条件を行使する権利も、それを撤回する権利もある。圧倒的な実力差を見せつけた余裕のまま、司は涼しい顔で「幸平を招き入れない」という選択を『勝者の権利』として勝ち取ったのだと宣言した。
創真の灰汁の強さを自身の完璧な世界に入れるべきではないと判断したからこその撤回ではあるのだが、言い訳めいた必死さは微塵もなく、その立ち振る舞いには遠月の頂点に君臨する者特有の揺るぎない自信と優雅さが満ちていた。
「ちぇっ……勝った方がナシにするなんてズルいっすわ」
創真は諦めたように肩をすくめて溜め息を吐くと、視線を隣に立つ大男へと向けた。その瞳からいつもの軽妙さがふっと消え、まっすぐな観察眼が宿る。
「……なぁ美作。一つ確認したいんだけどさ」
「あん?」
「お前……セントラルのやってることや目的、さっき司先輩が話してた内容を知ってんのか?」
実習室の空気が再びわずかに緊張を帯びた。審査に参加したえりなたちにも、その問いの重さが伝わっていく。
「……さっき何を言ってたのかは知らんが、セントラルの目的とかなら知ってるぜ」
美作は腕を組んだまま、一切の躊躇もなく即座に答えた。
「知った上で、ここに居るのか?」
「当然だ。……だがな、幸平」
美作は鼻で短く笑うと、組んでいた腕を解き、自身の大きな掌を見つめながら静かに言葉を継いだ。
「司先輩がこの遠月学園に居られる時間は……あとたった半年しかねぇんだよ」
その重厚な声には、かつて他人のレシピを完璧にトレースすることだけに執着していた頃にはなかった、泥臭くも純粋な執念が滲んでいた。
「セントラルの思想がどうだの、体制の政治がどうだのに首を突っ込んでる暇も余裕も、俺にはねぇ。今はただ……目の前にいる第一席の背中を追いかけて、追いかけて……その圧倒的な高さから技術も癖もすべてを盗み取る中で、俺自身の『俺だけの皿』を探すことに手いっぱいなんだよ」
その鬼気迫るような言葉に創真は何も発することができなかった。
「その結果……自分の友を失い、作るべき皿の形までセントラルに固められることになっても、なのか?」
静寂を破って一歩前へ踏み出したのは、新戸緋沙子だった。その声には硬質さと、刺すような鋭さが孕まれていた。
「幸平は反体制の筆頭……セントラルが真っ先に排除すべき退学の筆頭対象だ。貴様にとっても、月饗祭で共に店を切り盛りした戦友のはずだろう。それに……第一席である司先輩の料理を完璧に模倣した後、将来的にセントラルが掲げる『あるべき基本』を全てマスターした、模範的な代表的存在として組み込まれ、利用されるだけ……。それが、貴様の望む結末なのか?」
流れるような緋沙子の指摘に対しても、美作の表情は一切揺るがなかった。組んでいた腕を解き、自身の大きな掌を一度固く握りしめると、静かに緋沙子を見据えて言い放った。
「言ったろ。……俺の手に『俺の一皿』が無きゃ、俺は料理人を始められさえしないんだよ。そしてそれを進めるチャンスが手の中にあるんだ」
自身の中に芯となる料理を持たない恐怖と戦い続けてきた美作だからこその、譲れない原点。それを短く吐き捨てると、美作はふっと自嘲気味に鼻で笑い、含みを持たせた視線を緋沙子へと向けた。
「……つかよ、新戸。お前がそれを言うのか? 『そんな余裕が無い』ってのは、俺と同じだろうに」
その一言に込められた真意を悟り、緋沙子は息を呑んだ。
他者の思考や執着を極限までトレースしてきた美作の洞察眼は、緋沙子がなぜセントラルの忠実な先兵となり、十傑の座を奪い取ってまでそこに留まり続けているのか――その根底にある「誰かのため」、そして『何のため』という強い執着と、矛盾を孕んだ歪みを完全に看破していた。
緋沙子は返答の言葉を失い、氷のように冷たい瞳で美作を強く睨みつけた。だが、美作はその射抜くような殺気すら全く意に介さず、あっさりと視線を外すと、隣に立つ創真へと向き直った。
「悪ぃな、幸平」
美作は厳つい顔を少しだけ崩し、頭を下げた。
「いいよ別に。俺、退学になるつもりもねーし」
創真は頭の後ろで腕を組み、いつものマイペースな調子でケロッと言い放った。どんな逆境や脅威を前にしても揺らぐことのないその軽やかさに、張り詰めていた実習室の空気がわずかに和らぐ。
美作は一瞬呆れたように目を丸くしたが、すぐに不敵な笑みを口元に浮かべた。
「……フッ、違いねぇ。……おう、それならここでのお前の最後の食戟は、俺のリベンジにさせてもらうぜ」
「いや、まずは司先輩にリベンジするから最後なんてねぇよ」
創真が間髪入れずに即答すると、突然矛先を向けられた司は「えっ、俺!?」と露骨に青ざめて跳びのいた。
「幸平、君はさっき負けたばかりだろう!? もう勘弁しておくれよ、俺の胃が持たない……!」
頭を抱えて本気で怯える第一席の姿に、創真と美作は顔を見合わせ、ニッと同時に不敵な笑みを交わした。
セントラルという巨大な渦が学園を飲み込み、置かれた立場や歩む道がどれほど分かたれようとも――料理への飽くなき探究心と、目の前の相手を超えようとするライバル意識だけは、決して揺らぐことはない。
背中を向けて歩き出す美作と、前だけを見据える創真。二人の間に横たわる確かな絆と熱量を前に、えりなは息を呑み、緋沙子はただ無言でその光景を目に焼き付けていた。
モデムかルーターが壊れたくさいので治るまで止まります。