Ryzachat:AI ~異世界の少女と秘密の夢~ 作:#NkY
「なるほど。要するにライザにしかできないお祭りの目玉となるものを作りたいけど、そのアイデアが思い浮かばない……ということだね」
わたしは、現時点でのグルメフェスの構想をタオさんとパトリツィアさんに話した。構想、といっても、まだ細かいことは何も決まっていないのだけれど。
「タオさん、それってちょうどいいんじゃないですか? 今、私たちが調べているのって……」
「うん。今調べているテーマのカギが祭礼関連のことでね。ちょうど、ぴったりなものがあったんだ」
パトリツィアさんに促されて、タオさんが文献をパラパラとめくる。すると、クーケン島の古い歴史を記したページの一つを示してくれた。
「これなんだ。クーケン島は錬金術士によって造られた人工島だから、できた初期のころにはクリント王国の錬金術士も来ていたとされているんだ」
「クリント王国……? というか、錬金術で造られたんですか、ここ!?」
さらっと衝撃的な新情報を聞いた。人工島ってことは聞いていたんだけど……。
こんなに大きな人工島を、錬金術で? 当然、ライザさんが普段使っているような釜のサイズで全部できるとは思っていなくて、多分もっと別の方法でやったと思うんだけど。
「あ、そっか。ユイカは知らないんだね、この島の歴史のこと」
ライザさんが軽く説明してくれた。
現在の王国が成立するだいぶ前の時代、この辺り一帯はクリント王国という国だったらしい。その国は、現在は失われている遥か高度な技術の錬金術があり、その力によって繁栄した。
しかし、異界と呼ばれる場所へのゲートを人工的に造ったことで、そこに棲んでいたフィルフサという強大な魔物の軍団の侵攻を受け、あっという間に滅亡に追い込まれた……ということだ。
そして、このクーケン島は、フィルフサが嫌う水を防波堤とした最終避難場所として造られた人工島、ということらしい。
「わたしの住むような異世界につながるゲートを造れるほどの技術があったけど、滅んでしまった王国……」
「うん。細かいことは時間があるときにタオに聞くといいよ。多分、まだここにいるでしょ?」
「もちろん。本当はもっと複雑な歴史があるからね……ぜひ、ユイカにも知ってもらいたいな」
「はい、ぜひ……!」
閑話休題。
「……それで、クーケン島の最初期の祭礼の時に、錬金術の光で湖を照らす、という記述を最近発見したんだよ」
「へー……タオ、そんなの初めて聞いたよ」
「うん。僕の中でもかなり最近の研究だからね。まだ王都でも発表してないんだ」
「おおー……やるじゃん」
王都で発表……なんて言葉を聞くと、タオさんはちゃんとした学者さんなんだな、と改めて実感する。いや、当たり前かもしれないけれど。
「ただ、肝心の方法とか、どんな道具を使ったのか、そもそもどんな目的でこのことをやったのか……まだまだ色んなことが何も分かっていない。今回の調査はちょうどこのことを調べているんだ」
「なるほどね。ありがとう、タオ。ふーむ、錬金術の光で照らす、か……」
ライザさんは目を閉じてしばらく考えた。
そして、わたしの方を見た。瞳がキラっと輝いている。
「よし、いいアイデア浮かんできたかも!」
「え、ほんとですかライザさん!」
「待ってよライザ、まだ方法とかは分かってないってさっき言ったばかりじゃないか」
「ちっちっち。別に昔の方法をそのままやる、なんてことは一言も言ってないよ?」
ライザさんはタオさんを制し、わたしたちを見渡して、宣言する。
「今回の企画は昔の祭りを再現するんじゃなくて、今のクーケン島を盛り上げること。だったら、あたしらしいやり方でも問題ないでしょ?」
「なるほど……たしかにそうだね。それに、ライザのやり方で盛り上げる方が、今のクーケン島らしいや」
「ちょ……タオってば、たまになんか変なこと言うよね……」
「私もそう思います! ライザさんの考えたアイデア、ぜひ見てみたいです……!」
「パティまで……!」
普段はぐいぐい引っ張ってくれるライザさんだけど、いざ攻勢を受けると意外とタジタジになりやすい。
「ごほんっ! というわけでユイカ。明日の予定はグルメフェスを盛り上げるとっておきのものを作るための、素材採取だよ!」
「はい! わたしも楽しみにしてますね! ライザさんのとっておき!」
「ふっふっふ……楽しみにしてなさい!」
そう言って、ライザさんはえへんと胸を張った。
わたしだってちょっと畳みかけてやろうと思ったんだけど、予想に反して照れの要素みたいなものはなかった。
「……なんかユイカの時だけ反応違うよね」
「はい。まるで可愛い妹ができたみたいに接してますよね、ライザさん」
「そこのふたりー、聞こえてますけどー?」
……そんなやり取りを聞いて、ちょっとだけ……ううん、だいぶ、嬉しかった。
「よし、これでモリッツさんを説得して……あとは、グルメフェスに必要なものですね。なるべくなら、早くに動けるようにしたいですから」
「ねえ、ユイカ。それなら、僕にも協力させてくれないかな?」
タオさんから思いもよらぬ助力の提案。
「え……でも、タオさんって今は調査の途中なんじゃ……」
「僕の故郷のクーケン島を盛り上げてくれるためのグルメフェスなんだよね? だったら、むしろ僕の方から協力のお願いをさせてほしいくらいだよ」
「わ、私もです! タオさんの故郷を盛り上げる企画……ぜひ協力させてください!」
「パトリツィアさんまで……」
ライザさんに集まる人々はみんなそうだ。
まだ会ったばかりのわたしに、なんでここまでよくしてくれるんだろう。
「二人とも、ありがとうございます! ぜひ、素敵なグルメフェスにしましょう!」
ここまで来たら、もう止まれない。
ライザさんの仲間だから、きっと二人ともとても優秀だ。わたしなんていなくたって、成功するのかもしれない。
……でも、それじゃあわたしは平凡未満から脱却できない。
わたしは、わたしなりに。
皆さんを上手く頼りながら。がむしゃらに、頑張るだけ。