結局は、『力』目当てか…
燃えている…
今の今までいた寺院が、煌々と焼かれている。
悲鳴や泣き叫ぶ人の声が響く。
これで何度目だろう…
聴き飽きたくらいに、時が長く感じる。
とにかく、ここを離れなければ。
織田の追っ手をまくには、何処へ行くか
風の噂では、西には隠れた強大な軍がいるときく。
となると東しかないか。
「・・・って、思っていた私が馬鹿だった!」
尾張こそ織田の拠点。そこを軽率に通ったのが間違いだった。
逃げてきた最中に奪った軍馬でかろうじて抜け出せたが、追っ手の数もあり逃げ出すのが精一杯。
日夜駆けているので、馬に疲労の影が見え始めていた。
「もう少し頑張ってくれ…!」
そう問いかけにふと視界がひらけた。
あろうことか森を抜け出してしまったらしい。
これでは格好の餌食だ。
それに続いて、織田軍の騎馬隊がなだれるように飛び出してきた。
「チッ・・・本当に懲りない奴らだ…!」
背後をちらりとみて舌打ちを打つと、弓兵が矢を構えていた。
「くっ・・・!」
手綱を握り、馬の腹をけり交互に走り抜ける。
背後から飛んでくる矢を避けていく。
どうにか此処を切り抜かないと・・・!
そのとき、馬の尻に矢が刺さり、馬は悲鳴を上げ夜明を振りおとした。
「ぅわっ!?」
突然の横転に地面へ投げ出されたが、受身を流し体制を整えた。
矢を受けた馬に駆け寄り傷口を見、顔を見る。
走り続けた結果、泡を吹き黒い目は瞳孔が大きく開いていた。
「・・・すまない」
そんな状況に介し、織田軍の騎馬隊が夜明を取り囲み矢を構えている。
「女よ!ここで観念し、我が織田軍の配下に下るのだ!いささか返事によるが、抵抗すればただでは済まさぬ!」
ゆらりと立ち、背負っていた太刀の柄を手にかける。
「素直に従うと思うか…?」
陰る翠の瞳に、光が宿る。
が、突然なにか気配を感じ取り目つきが変わる。
なんだ?この感じは・・・
「!おい、あれをみろ!!」
弓兵の一人が声を荒げ、上を指している。
ふと空を見上げると、陽の光に照らされ影が二つ目に映った。
「うおおおぉぉぉぉおおおお!!!!!」
「YA-HAAAAAA!!!!」
互いに雄たけびを上げ、粉塵とともに夜明の前に降り立つ二人の男。
一瞬何が起こったのか戸惑う夜明であったが、男二人の背を見て目を見開いた。
竜に、虎・・・?
男二人の背に、確かに視えた。
その幻影に目を奪われていたのか、活気に満ち溢れた一声にふと我に返る。
「貴殿ら!織田軍の兵とお見受けする!多勢に無勢、何ゆえ一人のご武人に手をかけるか!武士の風上にも置けぬ所業なり!!」
赤い長鉢巻を頭に巻き、二つの槍を持つ赤い男。
その男に続き、下弦の月が光る兜に、蒼く染められた陣羽織に身を包む男がこちらに話しかけた。
「Hey!何者かしらねぇが、助太刀するぜ。下がってな」
「こしゃくな…!我らの邪魔立てをする者は切り捨てる!かかれぇ!」
怒号とともに襲い掛かる雑兵に身構える蒼紅。
「全力でお相手いたす!!」
「HA!派手に楽しめよ!!」
______この乱闘に至るまでの蒼紅。
「なんと!織田の軍勢が!?」
「確かか小十郎」
「この目でしかと」
政宗と幸村の闘争に、二人の従者は織田軍が進軍していることを伝えた。
「何ゆえこの川中島に、佐助!お館様に言伝を!」
「もうしたよ。分身使って、多分あっちも気づいてると思うし」
「よもやこのちにくんりんするとは・・・」
「ですが、大将である信長の姿はありませんでした。騎馬隊と弓兵の一個団体であると」
「そうですか、ことづてごくろうでした。かすが」
「…!い、いいえ…!」
「ふむ。攻めてきたとは言えん軍勢か。織田に追われておるその者も気になるところじゃが・・・」
「近い陣地では、真田の旦那と奥州の伊達軍が待機しています」
「そうか。佐助、幸村に言伝を」
「織田軍と迎え撃てと!?」
「場合によっちゃね。侵攻する様子が見られるならの話だよ」
「hun...小十郎、その追われてる奴は何者だ?」
「容姿ともども、この地の者ではありませんでした。織田の兵と確信できませぬが」
「理由はどうあれ、そいつが連れてきたと変わりネェ。俺達のpartyに水を差した織田もろとも、灸をすえてやらねぇとな」
「!まさか、織田とやりあうおつもりですか?」
「All right.真田も断る理由はねぇな?」
「否!攻めてくるとなれば、例え織田でも全力で迎え撃つ所存でござる!!」
「ちょ、ちょっと?うちの旦那をたき付けないでよ…!」
「政宗様!ここはひとまず、退却なさることが一番の得策かと」
「あ?」
「今の織田と張り合うことは、一触即発と奥州に火の粉を降り注ぐようなもの。先を急がれるのはわかりますが、慎重に事を運ぶのも策です!」
「・・・・・」
______現在に至る・・・
「うおおおおお!!!“大車輪”!!!」
「DEATH FANG!!!!」
吹き荒れる炎の柱に、青い稲妻が迸り敵をなぎ倒す。
その様子に、一人の陰陽師は呆気に取られていた。
なんなんだ、あの男二人は・・・
「あ~ぁ、結局こうなっちゃうよね~・・・」
「全く、こちらが重荷になることを少しはうやまって欲しいものだ・・・」
すると背後からまた、二人の男がこちらに歩いてきた。
一人は迷彩柄を纏い、どこからどうみても忍と思われる者。
もう一人は頬キズと強面の表情でこちらを睨みつけている。右の腰に刀を差しているので、左効きとわかる。あの二人の従者のどちらかだと悟った。
「どうも。うちの真田の旦那が割り込んじゃってすまないね。どこか怪我はない?」
軽い言葉で話しかける忍に対し、警戒する夜明。
「・・・・・」
「あれ?ああ、もしかしてこっちから名乗り出ろって空気?忍が名乗るってのもおかしいけど。俺様は武田軍の忍、『猿飛佐助』」
「猿・・・」
「うん、まぁそう思うよね・・・。名乗ったところで、お嬢さんは一体何者なんだ?」
「お嬢さん…?」
気に障ったのか苛立ちを見せた。
「え?俺様なんかへんなこと言った?」
頭巾を被り、目元だけさらしている姿に小十郎は堪らずわって出た。
「こっちはお前の名を知りてぇんだ。それとも、名乗れねぇ事情でもあるのか?」
鋭い眼光で睨みつける男は刀の柄を手にかけている。
「あんたも名乗り出たら、教える」
「…片倉小十郎。奥州の国主である、伊達政宗さまに仕える者だ」
「伊達、政宗・・・」
「さぁ、名乗ったからにはそっちも名乗ってもらうぞ」
「・・・蘇芳、蘇芳夜明」
「へぇ、変わった名前だね。もしかして都からきた人?」
「…どうしてそう思う」
「服装からしてこの辺のものじゃないし、背中に物騒なものまで背負ってるし…?」
佐助と名乗る忍は、夜明の背に背負っている太刀を指した。
「身を守るため、必要なものだ」
「ごもっともな意見だね」
話をしている間、背後での乱闘が終わったのか静まりつつあった。
「ひけい、ひけい!!」
二人の武将の壊滅的打撃に、織田の兵は散り散りに後退していった。
「ah?もう終わりかよ、張り合いのねぇ奴らだぜ」
「いつでお相手致す!!改めてまいられよ!!」
「あ、終わったみたいだね」
多勢にあった織田軍を、たった二人で退けた。若き武将に興味をもった夜明は様子を見ていた。