「あの二人、あんたらの大将か」
「お察しのとおり。本人曰くまだまだなんだと。あの熱血漢丸出しのが真田の旦那ね」
「真田・・・」
「おう!佐助!見事追い払ったぞ!」
「うん、見てた見てた。すごかったよ~」
満足そうに興奮している赤い若者。
こちらに気づいたのか、まぶしい限りの笑顔を振りまきながら声をかけた。
「ご武人、お怪我はござらぬか?某は真田源次郎幸村と申す!」
「ああ、そこの忍に聞いた」
「あー、旦那?ご武人とか言っちゃってるけど、この人女性だよ」
「んなっ!?なんと・・・!!これはご無礼仕った!!お許しくだされ!!」
「いや、別に…」
「全く、あなたという方は・・・」
「心配すんな小十郎、結果的に追い払ったんだからいいじゃねぇか。んで?そいつの身元はなんか分かったのか?」
そいつと指すのは夜明のことだろう。隻眼で夜明の姿を見る。
「蘇芳夜明と名乗る者です。身元はこれから聞き出そうと」
「変わった名前だな・・・第六天魔王に追われるくらいだ、あのおっさんに喧嘩でも仕掛けたか?」
「・・・別に、仕掛けてなどいない。何故私を助けた」
「Ah?」
「見ず知らずの武将に、助けを請うつもりはなかった」
冷たく言い捨てるその女に、政宗はむっと眉を寄せた。
「失礼する。戦場である限り、ここに長居する必要はない」
それに、この地から異様な気配がする…
二度面倒なことに巻き込まれるのは御免だ
夜明はその場から離れようと、倒れた馬の方向へ歩いていった。
「んだよ、coolじゃねぇな…」
「なんとも不思議な女子でござる…」
「真田の旦那、俺達もそろそろ行くよ。大将達ももう引き上げてる頃だし」
「承知した!政宗殿!!」
颯爽と軍馬にまたがる幸村は、政宗と向きあった。
「我らの雌雄を決する時を、再びあい見えましょうぞ!!」
「HA!上等だ、首を洗って待ってろよ真田幸村ァ!」
一方、夜明は馬の怪我の具合を見ていた。
深手には至ってない、療養の札を貼ればなんとか・・・
そのとき、背筋に悪寒が走った。
「なんだ?」
背後から漂った只ならぬ気配を目で探る。その気配は、伊達政宗から漂うものだった。
一瞬黒い靄のようなものが背に出ていたが、後に消えてしまった。
「今のは・・・まさか・・・」
「政宗様、あの女がこちらを見ております」
「ん?あいつ、まだ離れてなかったのか」
幸村達が去り、平原には政宗と小十郎しか残っていなかった。
すると謎の女はこちらに向かって歩いてくる。
歩きながら頭巾に手をかけ、するりと覆面を取った。
現れたのは緋色に染まる鮮やかな赤い髪。
凛とした顔立ちに、憂いを帯び翡翠にも劣らない瞳。
白い肌にさらさらとかかる髪をのけ、二人の目の前に立った。
「すまないが、馬の怪我を治したいついでに、あんたん所に寄らせてもらいたい」
「ah?さっきまでの冷たい態度はどこにいったんだ?筆頭として、正体もわからねぇ奴に奥州に近づけさせるわけにはいかねぇ。それに次いでという言葉もいただけねぇな」
「私は、陰陽師だ」
「・・・!なに?」
「陰陽師?」
そういうと陰陽師と名乗る謎の女は、少し頭を垂れるとこう続けた。
「生は京都(きょうのみやこ)。名は『蘇芳夜明』。都の陰陽寮に仕えていたが、わけあって都を追われ流浪の身に。織田軍に追われていたのは、怪しい者と断定されたてのとばっちりだ」
「hum…あんたの素性はわかった。だが、俺のところに来るってのが話があわねぇ。俺の運勢でも占ってくれんのか?」
「…恐れながら政宗殿。あなたに、死相が出ております」
「what…!?」