「へぇー…ただの人間にしちゃ、大したモンだけは持ってるんだな」
その光景を遠目で見ている銀は、白縄を巨大な円形に形作っていた。人ひとり入る大きさで、その四方には三角錐に積もった塩が置かれている。
打って変わり、刀から放たれた雷撃は夜明の身の周りを纏っていた。
「Unbeliebable!俺以外に雷を出せるとは、面白ェな陰陽師ってやつは」
そういいながら外に出た政宗は、夜明に近づいた。不規則にくねらせる雷は、なぜか赤い狩衣を避けている。いや、寄り付こうとしていないように見える。それと、赤い髪が逆毛って猫が怒っているように見えた。
「フッ・・・」
「!何がおかしい?」
「いや、なんでもねぇ…!」
政宗の様子にふと不問を抱くが気にせず、キンと鞘に刀身を納めると迸っていた雷も徐々に弱まり消えた。
「覇気を扱えるのはお前だけじゃない。あんな荒々しい使い方も、初めてみた。武人としての性か、はたまた天性の賜物かはわからないが…」
夜明はそういうと、式神の銀のもとへと赴いた。
「・・・小十郎」
「はっ」
「アイツの素性、何か分かったのか?」
「京の都の出であることは明白ですが、後の情報が定かであるのか・・・」
「どういう意味だ?」
「探ろうにも都の官僚達の目が光らせ、まともに探ることができませんでした。面目しだいにございます」
「hum…ただならぬ輩ってわけじゃなさそうだな」
「しかし、これだけは握りました。あの陰陽師は、比叡山のある寺に幽閉されていたようです。だが、後の織田の軍勢に手がかかるところを、逃げ出したとのことです。織田に追われていたのも事実。織田がてずらわせるほどの理由が」
「それは本人に聞きゃわからねェってことか…フッ。面白れぇ、祓とやら終わったらだな。夜明の正体がつかめんのは」
「そう容易く話すとは思えませんが。我らの目をかいくぐり逃げ出すやもしれませぬ」
「・・・いや、あいつはんなことしねぇよ」
「!なぜ、そう言い切れると?」
「ん、何でだろうな…そんな気がするだけだ」
話し終えると、政宗も夜明のもとへと歩み寄った。
小十郎(・・・政宗様、興味本位で身を滅ぼさぬよう。その時は、私がお守り致します)
「準備はできたぜ、主」
「ん、上々だな」
「しかし珍しいな、ヒト嫌いのアンタがヒトのために妖怪退治なんてよ」
「お前も言える口じゃないだろう」
「確かになー、アンタに縛られてる以上手ェ出せねーし。って話はぐらかすなよ!織田の手先から逃れて、隠れ家としてここに居座るつもりだったんじゃないのか」
「まぁ確かに。最初そのつもりだったけどな・・・」
「…興味が湧いた、か?ヒトのそういうところよくわかんねぇなー」
「私もよくわからん」
「…にしても、主。今回の相手は一筋縄じゃいかねぇと思うぜ。相手が幽鬼で、生成り。正体はつかめてんのか?」
「ああ、ある程度。後は本人が認めれば・・・」
「何が認めるって?」
すると、いつの間にか政宗は二人の側に居た。
「おお、居たのか」
「居ちゃ悪ぃかよ。しかしなぁ、式神ってのはこうも人に近いモンなのか?妖怪にはみえねぇな」
まじまじと自分の顔をのぞく政宗に対し、怪訝な表情を浮かべる銀。
「あんだよ、見世物じゃねぇぞ」