シーズン1 第3章ぐらいの後やで。
新エリー都の裏社会において、カルト組織『讃頌会』の名は、いかなる巨大企業やプロキシ、あるいは治安局の特務班であっても、本能的な嫌悪と恐怖なしには口にできない不気味な影を落としている。
彼らはホロウという存在を、人類を脅かす絶望の象徴などとは見なしていない。彼らにとってホロウとは、旧世界を淘汰し、新たなる世界を統べる神そのものであり、その内部で蠢く怪異「エーテリアス」の蔓延こそが、至高の福音であり讃えられるべき奇跡なのだ。
パエトーンやヴィクトリア家政といった有象無象のネズミどもの足掻きによって、『バレエツインズ』での大規模な計画が一時的に狂わされたとはいえ、讃頌会の本質的な強大さは何一つ衰えてはいなかった。
新エリー都の支配者層すらも容易には手を出せない、高濃度かつ不規則な空間歪みが多発するホロウの超高濃度汚染区域。そのさらに深淵、光すら届かない闇の底に、彼らの最新鋭の秘密実験場は厳然として息を潜めていた。
怪しく、そしておぞましく明滅するエーテルの結晶光に照らされたその実験室は、新エリー都の最新科学技術を違法に結集した、冷徹なハイテク機材の迷宮だった。
壁一面に這う無数の太いケーブル、規則的な電子音を刻むサーバー群、そして不気味な紫色の霧が充満する巨大なガラスカプセルが、いくつも防護隔壁の前に据え付けられている。
讃頌会の幹部であるサラは、その特徴的なシルエットを持つ衣服に身を包み、冷たい床の上に直立していた。彼女の黒い手袋に包まれた両腕は、胸の前で厳格に組まれており、その双眸はコンソールモニターに流れる膨大なデータ群を、一切の妥協を許さぬ鋭さで見つめていた。
サラは、白衣を纏うような研究者でも科学者でもない。彼女の役割は、大いなる主の絶対的な意志の執行であり、この計画を確実に成功へと導くための冷徹な指導者だった。
彼女がその圧倒的な威厳を以て指揮しているのは、コンソールデスクの前で額に汗を浮かべながら必死にキーボードを叩き、バイタルデータを管理している讃頌会の科学者たちだった。
「サラ様、サクリファイス化の侵食速度が予定数値を大幅にクリアしました。バイタルデータのエーテル同期率、ともに過去のどの被験者よりも高い安定値を記録しています」
白衣を着た科学者の一人が、興奮で声を微かに震わせながらサラへと頭を下げた。
サラは視線をモニターから外し、隔離ガラスの向こう側へとゆっくりと歩み寄った。彼女の視線の先、カプセル内部の培養液に浸された実験体は、ドクン、ドクンと異様な脈動を繰り返していた。その肉体は人間の形状を敷き写しながらも、すでに皮膚の表面には禍々しい紫色の結晶体がびっしりと浮き上がり、細胞のすべてが最高峰の怪異「サクリファイス」へと変貌を遂げつつあった。
「素晴らしいわ。バレエツインズの一件は少し痛手ではあったけど、私たちの真の計画の前には、ただの通過点に過ぎない。新エリー都の愚か者どもは、あの事件でアタシたちが大人しくなったとでも思っているのかしらね」
サラの口から、冷酷な嘲笑が漏れる。彼女はコンソールの向こうの科学者たちを見据え、その声をさらに低く響かせた。
「私たちが目指すのは、こんな局所的な実験の成功ではないわ。すべては、この都に真なる世界の変革をもたらし、大いなる主をこの地に降臨させる、大いなる導きのためよ」
「はい。新エリー都全土をホロウの深淵へと誘い、すべての偽りの秩序を破壊する……。そのための礎となる、最高純度のサクリファイスが、今まさに完成しようとしています。この被験体が更なる高濃度汚染を呼び寄せるアンテナとなれば、防衛軍もTOPSも、すべて等しく神の領域へと呑み込まれるでしょう」
科学者は歪んだ恍惚の表情を浮かべ、サラの言葉に続いた。
あのバレエツインズでの激動の事件において、どれほどの不利益を被ろうとも、サラの胸中に焦燥や絶望などは微塵も存在しなかった。むしろ、その瞳の奥には、新エリー都の既存のルールをすべて嘲笑うかのような、より深い闇への確固たる狂信と不敵な笑みがギラギラと輝いていた。
この実験が成功すれば、新世界を統べる真なる神の姿が、もうすぐ自分たちの手によって目の前に現れるのだ。その栄光を確信し、サラが次なるフェーズへの移行を科学者たちに命じようとした、まさにその瞬間だった。
実験室のエーテル濃度を常に監視していた安全アラートが一斉に鳴り響き、最新鋭のモニターの数値が、一斉に真っ赤なエラー画面へと切り替わった。けたたましいビープ音が、静謐だった狂信の空間を乱暴に破壊していく。
「……何事だ? エネルギーの逆流か? いや、空間の位相が急激に反転している! サラ様、隔離壁の向こうに、未知の超高エネルギー体が――」
科学者たちが慌ててコンソールを叩き、原因を突き止めようと血眼になる。しかし、その狼狽さえも強引に圧殺するほどの、おぞましいまでの質量を持った威圧感が、防護天井を突き破るようにして実験室全体へと降り注いだ。
肌を刺すような、絶対的な拒絶のプレッシャー。
それはホロウの汚染による不快感などとは全く違う、もっと根源的で、圧倒的な『存在の格』の差だった。まるで空間そのものの重力が一瞬にして数十倍へと跳ね上がったかのように、鉄製の強固な床がミシミシと物理的な悲鳴をあげ、カプセルの中でうごめいていた紫色の霧さえもが、恐怖に震えるようにピタリと動きを止めた。
生物としての本能的な恐怖。讃頌会の最高幹部として数々の死線を潜り抜け、人間の倫理もホロウの怪異すらも恐れぬ狂気を持っていたサラでさえ、その放たれる覇気の前に、肉体が勝手に限界までの危険信号を発し、一歩、無意識に後退りを強いられた。
そして、新エリー都のあらゆる探知システムを完全に無視し、隔離されたはずの実験室の中央で、空間そのものが黄金色の波紋となってパキパキと硝子のように引き裂かれた。
立ち込める圧倒的な黄金の光輝の中心から、その男は、まるですべての世界を支配する暴君の如き足取りで、悠然とこの秘密実験場へと足を踏み入れた。
まばゆいばかりの金髪。夜のホロウの底にはあまりにも場違いなほどに洗練された、現代のストリート系の超高級ブランドを完璧に着崩した衣服。しかし、それらの装飾品がすべて霞むほどに、その男の存在そのものが放つ輝きは異質であり、神格そのものだった。
ギルガメッシュ。
なんの気まぐれか、この世界の終末都市をただの観客として観光している『王』が、防護服もマスクもつけずに、讃頌会の最深部へとただ一人で降臨したのだ。
もちろん、彼はこのカルト組織の陰謀を阻止しに来た正義の味方などではない。ギルガメッシュはただ、ホロウ内へと散らばってしまった自身の財宝の微かな気配を感知し、この深淵を気まぐれに探索していたに過ぎなかった。
しかし、ホロウの影響によるものか、確定した正確な場所まではおぼろげにしか絞り込めず、その気配の残滓を辿って歩いていたところ、偶然にもこの讃頌会の秘密実験場へと行き当たったに過ぎなかった。
ギルガメッシュは不機嫌そうに端正な顔を歪め、目の前に広がるハイテク機材やカプセルの中の実験体を、肥溜めに這い回る虫ケラを眺めるかのような冷酷な赤い眸で見見下ろした。
「――不愉快だな。我が財の気配がこの辺りから漂っておると思えば……。どこの馬の骨とも知れぬ雑種が、分を弁えぬ醜悪な泥遊びをしているではないか」
その声が響いた瞬間、実験室全体の空気の分子が、完全に凍りついた。 サラは喉の奥がカラカラに干からびるのを感じ、全身の細胞が最大級の警報を鳴らし続けているのを自覚しながらも、その不敵な笑みを消さぬまま、目の前の絶対的なイレギュラー――黄金の青年を、その双眸で鋭く見据えていた。
◇
怪しく明滅する最新鋭のモニターの光線、そしてカプセルから漏れ出す妖しい紫色のエーテル霧。そのすべてを、上空から降臨した金髪の青年――ギルガメッシュが纏う絶対的な黄金の覇気が一瞬にして圧殺していた。
張り詰めた沈黙の中、讃頌会の科学者たちは、キーボードの上で指を完全に硬直させたまま、喉を鳴らすことさえ忘れて恐怖に震えていた。彼らの最新の演算システムですら、目の前に突如現れたイレギュラーのエーテル適性波形を
しかし、その絶望的なまでの威圧感の渦中にあってなお、幹部であるサラの顔から不敵な笑みが消え去ることはなかった。彼女の黒い手袋に包まれた指先が、スッと実験体のガラスカプセルへと向けられる。
「……随分と生意気な侵入者ね。私たちの神聖な実験室をネズミの巣呼ばわりするなんて。どこの陣営の差し金か知らないけれど、ここがどういう場所か、その傲慢な頭に叩き込んであげる」
サラが冷酷に言い放つと同時に、彼女の指揮下にある讃頌会の私兵たちが、一斉に最新型のエーテル重火器をギルガメッシュへと向け、トリガーを引き絞った。
それだけではない。サラがコンソールの強制起動レバーを引き下げると、背後のカプセルが凄まじい音を立てて開放された。培養液が床に溢れ出し、中から現れたのは、皮膚のすべてが禍々しい紫色の結晶体に覆われ、強大なエーテル波動を放つ完成体サクリファイスだった。新エリー都のあらゆるエージェントを屠るために調整された、カルトの最高傑作の尖兵が、咆哮をあげてギルガメッシュへと跳躍する。
「新世界を切り拓く、私たちの最高傑作の尖兵よ! その身を以て、変革の礎となりなさい!」
サラの狂信的な叫びが実験室に響き渡る。
しかし、ギルガメッシュは迫り来る銃弾の嵐も、空間を歪めながら襲いかかるサクリファイスの巨体も、最初から視界にすら入れていなかった。彼はポケットに片手を突っ込んだまま、ただ退屈そうに赤い双眸を細め、その指先を気怠げに空中に向けた。
「――笑わせるな、雑種。醜悪な泥人形を『尖兵』などと呼び、あろうことかこの我が前でその力を誇示するか。貴様ら雑種の語る変革など、我が庭の蟻塚の模様替えにも劣る、底浅きおままごとに過ぎんわ」
ギルガメッシュの洗練された言葉が空間に響いた、まさにその刹那。
彼の背後の空間が、陽炎のように不自然に、そしてまばゆく歪んだ。
虚空に次々と浮かび上がるのは、夜のホロウの闇を完全に払拭するほどに神々しい、無数の黄金の波紋。その静謐な渦の奥底から、現代のエーテル工学の歴史を根底からひっくり返すレベルの、美しくも禍々しい超古代の武具が姿を現した。
「――『
その名が紡がれた瞬間、事前の予備動作も、周囲のエーテル気流の乱れも一切ないまま、黄金の波紋から解き放たれた財宝の雨が、目にも留まらぬ神速の弾丸となって射出された。
ドンッ! ズドォォン!!
放たれた一本の黄金の槍が、迫り来るサクリファイスの巨体を空中で容易く貫き、そのまま実験室の強固な鉄壁へと縫い付けた。怪異は悲鳴をあげる暇さえなく、槍から放たれた圧倒的な質量の破壊エネルギーによって、一瞬にして細胞のすべてを爆砕され、塵へと還っていく。
カルトの私兵たちが放った重火器の弾丸は、空間から突き出た別の盾の宝具によって跡形もなく弾き返され、逆に黄金の渦から放たれた無数の長剣や巨大な斧の投擲が、実験室の防衛戦力を文字通り一瞬で蹂躙していった。
戦っているのではない。これは、神が肥溜めの羽虫を気まぐれに潰そうとしているかのような、一方的な試練という名の蹂躙だった。
「ひっ……あ、あああ!」
「化け物だ! エーテル反応がないのに、何なんだこの破壊力は……!」
白衣を着た科学者たちが絶叫しながら、コンソールデスクの影へと進んで這いつくばる。しかし、ギルガメッシュは一歩も動かない。ただ、指先をほんの微かに動かすだけで、空間の波紋から湧き出る至高の財宝の雨が、讃頌会が巨額のディニーと年月をかけて築き上げた最新鋭のハイテク機材を、容赦なくガラクタへと変えていく。
火花を散らし、爆発を繰り返すサーバー群。ガラスの破片が降り注ぐ中、サラは激しい熱風に衣服を擦り切れさせながらも、その場に直立し、目の前の神話の如き破壊の光景を凝視していた。
直撃こそ受けていない。しかし、彼女の鋭い観察眼とこれまで生きてきた経験は、今の一連の攻撃の軌跡が、文字通り何も見えなかったことを理解していた。予備動作も、エネルギーの充填も何もない。ただ、あの黄金の青年がそう望んだからという理不尽な理由だけで、世界の法則が書き換えられているのだ。
やがて、実験室のほぼすべてをスクラップに変え終えたギルガメッシュは、空間の波紋を静かに消し去った。
硝煙とエーテル霧が混ざり合う廃墟の真ん中で、彼は、相変わらず衣服のチリ一つ汚れていない優雅な姿のまま、限界まで足掻き、かろうじて立っているサラを、冷徹な赤い眸で見下ろした。
「――分を弁えぬ盲信は、己の眼を灼くだけだ。貴様らがどれほど泥をこねくり回そうとも、我が歩みを見測ることなど叶わぬと知るがよい」
その一言には、圧倒的な破壊の嵐の終わりを告げる、絶対的な王の宣告が込められていた。実験室は完全に沈黙し、カルトのプライドは文字通り完膚なきまでにねじ伏せられた。しかし、これほどの一方的な蹂躙を前にしてもなお、サラの双眸の奥にある狂気の火が、完全に消え去ることはなかった。
◇
火花を散らし、黒煙を上げて爆発を繰り返すサーバー群。
『ゲート・オブ・バビロン』から放たれた無数の財宝の雨は、讃頌会が巨額のディニーと年月をかけて築き上げた最新鋭の秘密実験場を一瞬で鉄屑の山へと変え、最高傑作として調整されていたはずのサクリファイスも、ただの無価値な肉塊として塵へと還した。
彼らにとって、サクリファイスとは新たなる変革の時代の先触れとなり、新エリー都をホロウの深淵へ呑み込むための、至高の『尖兵』に過ぎなかった。だが、その自慢の尖兵すら、目の前の黄金の青年にとっては、一瞥する価値もない泥細工を払う程度の、一方的な蹂躙の対象でしかなかったのだ。
ギルガメッシュは空間の波紋を静かに消し去った。
硝煙とエーテル霧が不気味に混ざり合う、完全に崩壊した地下実験場の真ん中で、彼は、相変わらず衣服のチリ一つ汚れていない優雅な姿のまま、冷徹な赤い眸で、かろうじて直立しているサラを見下ろした。
これほどの一方的な破滅、 そして讃頌会幹部としてのプライドを完膚なきまでにねじ伏せられた絶望の光景。しかし、実験室を埋め尽くす不気味な静寂の中、サラの双眸の奥にある狂気の火が、完全に消え去ることはなかった。
それどころか、彼女の唇は、恐怖を通り越して不気味に、歪んだ曲線を描いて吊り上がっていく。
「……フフ、アハハハ……ッ! 素晴らしい……本当に素晴らしいわ! 私たちが目指していた『神の力』……その完成形が、まさかこんなところで、こんな形で拝めるなんてね……!」
サラは激しい熱風に衣服を擦り切れさせ、手元のコンソールが爆発した衝撃で黒く汚れながらも、その不敵な笑みを消さぬまま、ギルガメッシュを真っ直ぐに見据えていた。
圧倒的な力への畏怖。しかし、狂信者である彼女の脳髄は、その絶対的な絶望すらも、自身の信仰を補強するための「奇跡」として解釈し、歓喜に狂っていたのだ。
ギルガメッシュは、そのサラの不気味な笑みと、死なば諸共と言わんばかりの底知れない歪んだ執念を一瞥し、激しい不快感を露わにしてフンと鼻で笑った。
「――どこまでも不愉快な雌狐め。出来損ないの偽神を神と拝み、自ら進んで歪んだ檻に繋がれるか。貴様ら泥のネズミどもの喜劇など、これ以上我が目を汚す価値もないわ」
青年は退屈そうに金髪を揺らすと、ポケットに両手を突っ込んだまま、踵を返した。
彼はこの周辺のホロウに漂う己の財宝の気配を確かに感知して、この場所に辿り着いた。しかし、実験室を完全に破壊し尽くした今なお、ホロウの特殊な空間歪みの影響のせいか、財宝が具体的にどこに埋もれているのか、正確な座標までは絞り込むことができなかった。
「ふん。気配の残滓ばかりで、本物はここにはないか。我が財を探す合間に、このような薄汚いネズミの巣を引き当てるとは、つくづく不愉快な大穴よ」
ギルガメッシュは、すぐ近くの瓦礫の底に本物の財が眠っているとは気づかぬまま、見落として吐き捨てる。これ以上、この不愉快極まりないないカルトの巣窟に留まる理由は、王にはどこにも存在しなかった。
ギルガメッシュはそのまま悠然とした足取りで、崩落した実験室の出口へと歩みを進め、ネオンの光が渦巻くホロウの闇の中へと、静かに消え去っていった。
王が去り、絶対的な重圧から解放された実験場跡地には、ただカタカタと壊れた精密機械が虚しく音を立てる音だけが響いていた。
生き残った科学者たちが、瓦礫の隙間から命からがら這い出し、絶望の声をあげる。
「さ、サラ様……私たちの最高傑作のサクリファイスが、跡形もなく……。それに、ようやく再建した、この最新鋭の設備まで、すべてガラクタに……」
「黙りなさい」
サラは冷徹な声で科学者の言葉を遮ると、衣服の汚れを払うこともせず、崩れ落ちた祭壇の瓦礫の山へと歩み寄った。
彼女の鋭い双眸は、ギルガメッシュが破壊し尽くした瓦礫の隙間から、ひっそりと覗く奇妙な輝きを正確に捉えていた。
サラは膝をつき、崩れたコンクリートを素手で退けると、その瓦礫の底から、あの黄金の青年すらも見落として去っていったお宝を、両手で恭しく抱え上げた。
それは、既存のエーテル工学のいかなる理論をも超越した、神々しいまでの純粋な光を放つ『黄金の聖杯らしきもの』だった。
新エリー都のいかなる
「……アハ、アハハハハ……ッ!」
サラはその黄金の聖杯を顔の前に掲げ、その歪んだ瞳にまばゆい輝きを映しながら、不気味に、そして底知れない狂気に満ちた笑い声をホロウの闇に響かせた。
あの恐るべき黄金の破壊を引き起こした男が、見落として去っていった至高の財。運良くこれを発見したことこそが、讃頌会というカルトの執念にとって、これ以上ない『本物の神の奇跡』の証明そのものだった。
「これよ……彼が見落としていった、この本物の輝きさえあれば、私たちの計画は、当初の予定を遥かに超えた完璧な領域へと到達するわ。誰も私たちを阻むことはできない、すべて等しくホロウの底へと呑み込まれるのよ……!」
黄金の聖杯を胸に抱きしめ、不敵に笑うサラの姿は、崩壊したアジトの影で、おぞましいほどの存在感を放ち続けていた。
新エリー都に現れし絶対的なる王ギルガメッシュ。
彼の落とした至高の財宝が、 讃頌会という消えぬ闇の手に渡ってしまったことが、これからの新エリー都にどれほど最悪な、誰も抗えない混沌をもたらすことになるのか、それを知る者はまだ、誰もいなかった。