パチン。
「ここは...どこ?」
「私は...だれ?」
どうにも、記憶が曖昧だ。自身の事すら忘れてるなんて、とんでもない大事件である。
...かといって焦っても何も始まらないだろう。
「知らない天井...」
努めて冷静に辺りを見回すと、ここが牢獄の様な場所だとすぐに理解した。そして、自分の下に人の気配を感じる。
どうやら、この私が寝ていた寝具は2段ベッドの用だ。私は上段だった。下段を覗くと、そこにはシスター然な服装をしている、銀髪の少女が横たわっていた。
おそらく、私と同じ境遇...という事だろうか。
「やあ初めまして。少しいい?」
「ひゃあ!は...はい!」
上段から顔だけチラリと覗かせて喋る。つい彼女を驚かせてしまった様だ。
「ここは牢獄だと思う?」
「...そ、そうですね...た、多分そうだと思います」
「そう。ありがと。それで最後にーーー
君にここに来る以前の記憶はある?」
そう聞くと彼女は困惑した仕草を見せた。
「...えぇっと、よくわかりません...記憶喪失、ということでしょうか?」
「まあそんなとこかな」
軽々と言ってのけた。まあ、今はとりあえず置いておこう。軽い健忘症のような可能性もある。
心の平常を保つため、敢えて楽観的に捉えた私はぴょんと2段ベッドから飛び降りると、鉄格子から外を覗き見た。外からは別の檻房からだろうか、少女たちの喚き声が聞こえる。
そうしていると、部屋に不自然に置いてあった近代的なモニターが、唐突にパッという音と共に電源がつく。
そこにはフクロウのようなどこか愛らしいマスコットが座っていた。
「あ...もしもし...映像って見えてます......?何せ古くて故障も多いので...やれやれ」
「私、ゴクチョーと申します。詳しい説明がしたいのでラウンジに集合してください。」
「檻房の鍵を開けますので、看守の後をついてきてください。抵抗とかは自由なんですが...命とかなくなっちゃうので...はい」
そう言い切ると、モニターは再び真っ暗になる。
少しの間を開けてからズルリズルリと地を這いずる音が聞こえた。
鉄格子の外からだ。私が鉄格子の前に立っていると、そいつは出てきた。
「化け物...コイツが看守って奴か...逆らわない方が良さそうだな...うん...」
彼女の小心者めいた心を、看守は置いていくように鉄格子の錠を外した。
「まあとりあえず、いこうか」
「は、はい...っ!」
そうして外に出たとき、でくわしたのはイジメの現場のような場面だった。黒髪ロングの子が桜色の髪をした子を突き飛ばしたのだ。
そこには、明らかな敵意が感じられた。
「君が変わったとして、そのことが、私になんの意味が?」
「私が君を嫌いなことは変わらない。この先永遠に」
そう聞こえた時、彼女はその現場に踏み込もうとして、やめた。
(ただのイジメの現場ってわけではなさそう...イジメの現場だったらもっと強者と弱者がハッキリする...ただ片方は困惑の色が大きい...だったらここは口を出すべきではない...)
そう判断すると、その場からゆったりとした足取りで目的地に向かった。その時、ピンク髪の少女がこちらをチラリとみた気がした。
そうして、ラウンジに集まったのは14人の少女たち。
彼女は初対面にて、集まった者達の顔を伺う。一人は沈黙尊ぶようで、もう一人はお喋りな子で...もう一人はこちら見つめている様にみえた。最後はよくわからないものの、十人十色の性格が伺えた。
「みんな初対面だと思うから、良かったら自己紹介をしていかないか?」
透き通るような声だった。
「先に名乗らせてもらうよ。僕の名前は蓮見レイア」
そうやって、どんどん自己紹介が進んでいった。
最後に自分の番が回ってきた。さて、記憶喪失を暴露するか、それともしないか...
「...テラスちゃん?」
桜色の髪をした少女、桜羽エマがそう問いかけてきた。...ほう、自分をみてそういうなんて...答えは一つしかない。
「もしかして、前に会ったことがある?」
そう聞くと、エマはコクコクと大きく首を振った。
やはりそうらしい。ならば記憶喪失も言っておいた方がいいだろう。ついでに、自分の名前も判明した。私はテラスというらしい。性はなんだろうか。
「ごほん。それじゃあ私の名前はテラス。そして、今の私は記憶を喪失してる。よろしく」
そう言った直後、ゴクチョーが通気口から飛び出し、私たちに説明をし始めた。
「あっ...人がいっぱい...えっと、改めまして...この屋敷の管理を任されているかわいいフクロウ、ゴクチョーと申します...」
(さっきのモニターに映し出されていた奴だな)
「...定時とかもあるので...さっさと説明をしていきますね」
「あっと...すっごく申し上げにくいのですが、皆さんは【魔女】になる因子を持っています」
(魔女...なんかのアニメでも見てるようだ...)
「エラい人が決めた話では【魔女】はこの国にとって災厄をもたらす悪らしいです」
「わが国の法に基づいた全国検査によって皆さんはその因子が大きく抽出された存在」
「この国にとってあまりに危険であると判断され、この牢屋敷への収容が決まったんですねーーー」
そうやって淡々とゴクチョーが話を続けていると、気になること言い放った。
「救済はなくはないのですが...【大魔女】さえ見つければ皆さんの呪いを...」
(救済...大魔女...呪い...)
テラスはゴクチョーの言ったことを反芻する。
「あっ、因みに看守はかつてここに収容された者が魔女になった姿です」
「逆らったら殺すように洗脳してしまったので...ほんとすみません。逆らったら死んでください」
(やっぱやべー状況じゃん)
彼女は素直にそう思った。
皆が騒然としている中、一歩踏み出した者がいた。二階堂ヒロだ。
彼女は凛とした声を上げる。
「間違いです。私は悪ではない」
「この国に災厄をもたらす危険因子はこの子の方だ」
ヒロはびしりとエマを指差した。
(なるほど、やっぱり先ほどの檻房でのいざこざやこの発言の理由はヒロがエマに向けている敵意にある)
「はぁ〜〜〜......、あの、頼みます。悪者を受け入れてください。私は残業をしたくはないですし、みんな平和で楽しくがいいので...」
それでも、ヒロは先とおなじ凛々しい声で発言する。
「間違っている。私は悪じゃない」
「私はこの世の悪を排す...まずはーーー」
そういうとヒロは暖炉脇に立てかけられていた火かき棒を手に取った。
(ん?おいおいまさか...)
彼女がつい口をぽかんと開けていると、ヒロは手に取った火かき棒で看守に殴り込んだ。
(おいおいアイツ死んだわ...じゃない!)
テラスは全力で駆け出した。
火かき棒が振り下ろされる。それがゴン!と鈍い音を鳴らした。その元は看守ーーー
ーーーではなく、テラスの右手であった。
「...っ!何をする!テラス!」
「穏やかじゃないねぇ。これで看守に殴りかかろうとしたの?ーーーやめておけ、死ぬぞ」
「っ!」
テラスはそういい、火かき棒を掴んでいるヒロの手の手首を片手で掴む。そして、『それ』を行なった。
「うっ!」
途端、ヒロの体勢がへなっと崩れる。それはまるで立っているとまずいと判断した身体がそう勝手に動いたようだった。
テラスはへたり込んだヒロから火かき棒を取り上げると、部屋の奥へと放り投げる。
「全く...看守に逆らったら命はないって言われてるよね?バカじゃないの?」
テラスは少し引いたような目をヒロに向けたあと、同時に自身の両手を見つめた。
(......んで、これはどういう事なんだ..普通の人間は相手を掴んで倒れ込ませるなんて出来ない。...だけど、私は合気道の約束組み手でもしたかのように綺麗に倒れさせれた...まるで、『体がしたいと思ったことを100%の精度で叶えてくれたような...』)
テラスは困惑する。体がとても自由に動いたのだ。そして、合気道の有段者でも実践で決めるのは難しいだろう技をしてしまった。本当なら、ただ手首を掴み拘束しようとしただけだった。なのに、現実では、もっとも叶って欲しい結果を勝手に体が選んでくれた。
テラスが考え込んでいると、唐突に声がラウンジに響いた。
「あのぉ...発言、よろしいでしょうか?」
そう言ったのはゴクチョーだった。今度は何のようだと訝しんでいると、それは情報提供だった。
「何度もすみませんねぇ...皆様にもっとも大切なことをお伝え忘れていました。魔女になりつつある者は抑え切れない殺意や妄想につかれてしまいます。面倒なことに、いずれ囚人間で殺人事件が怒るんですよ」
「殺人事件っ!?」
青髪の少女、橘シェリーは目を輝かせているようだった。
「そうなんですよ...毎度の事なんですよねぇ...さすがにそんな危険人物とは一緒に生活できませんよねぇ。ああ、あと...魔女になった囚人は...処刑しますので...」
「詳しくは魔女図鑑をご覧ください。では私はこれにて...」
魔女に処刑に規則に...テラスは頭が痛くなりつつも、どうにか、この環境へ適応しようとし始めていた。
魔女図鑑:
【性】??
【名】テラス
【身長】157cm
外見からはこれといった特徴は見受けられない。藍色の髪が特徴といえば特徴的だろうか。
和装をしており、長羽織と巫女装束の様なものを着こまされている。身長は15歳の平均身長と殆ど同じなようだ。
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処女作ならではの甘さを皆様には感じ取ってもらいたいです。
ということで、感想、評価など随時募集します。できる限り返信もしていきたいと思います。再三ですが、よろしくお願いします。