【なんて...こと?...ふふふ...貴女に殺されるなんて、なんて皮肉なんでしょう...もう半ばヤケになっていた...そんな罰が当たったのでしょうか...それでも、私の勝ちです】
そう、声が聞こえた気がした。
「...大丈夫か?エマ」
全身を血で満たし、ボロボロになったテラスがそう声をかける。
「ボクは...一体何をしようとしていたの...?」
エマは混乱しているように見えたので、とりあえずテラスはグーで殴った。
「いったあ!」
「これで過ぎたことはおしまい。んで、これからどうする?」
涙目になったエマを見て、無事を確認したテラスはぼろぼろになった屋敷を見渡す。
残った三人は、それぞれ何があったのか、ココが魔女と化して、マーゴと共に死んだ事、ユキという大魔女の存在のこと、その他の事を情報共有をした後、作戦会議をしていく。
「さて、それではここから打開できる人は手を挙げて!」
テラスが冗談でそう言ったときだった。
ヒロが手を挙げた。
「え?どう言うこと?」
ヒロは言う。
「私の魔法は【死に戻り】。文字通り死んだらその日の朝に戻ることが出来る能力」
「その日の朝か...強い能力だが、それじゃあトゥルーエンドには辿り着けない...」
テラスは思案する。そしてエマはその理由に驚く。テラスは牢屋敷にいた全員を救うつもりなのだ。その姿勢を察したエマが疑問を抱く。
「どうしてテラスちゃんは諦めないの?」
「こんな過去に飛べる魔法なんてあるんだ。なにか、別の方法でその日の朝ではなく、更に遠くへ飛べる何かがあるかもしれない」
「それは...そうかもしれないけど...」
エマは俯いている。ヒロも同様だった。そんな魔法の様なことはありえないと思っている顔。
だが、テラスは諦めない。無理かもしれない。不可能かもしれない。死に戻り以外で過去に戻るなんてそんなの無茶かもしれない。だからこそ、宣言する。
「私はまだ諦めなーーー」
その時だった。
「うっ...ああっ!」
エマが倒れ伏したのだ。
「っ!エマ!」
「おいエマ!しっかりしろ!」
ヒロとテラスが駆け寄ると、息をぜーぜーと乱したエマが息切れ混じりに言う。
「...これは、ユキが残した、呪い...のようなもの...」
「あのクソ魔女、最後に何してくれてんだぁ!ごらぁ!勝負はもうついただろう!」
テラスはすぐさまエマの体を蝕んでいる波長を読み取る。
そして、
「そ、そんな、バカな...」
エマの中にあったのは数十億の魔女因子だった。
それら全てが暴走し、持ち主を食い殺そうとしている。
テラスはヒロに状況を説明した。
「エマは...数えきれない程の魔女因子に体を蝕まれている...」
「ど、どうするつもりだ!テラス!」
ヒロは焦りながら言う。テラスは...
「...私がこれから、全ての魔女因子をかき消す...そうして、エマを救出する」
テラスは覚悟を決めた目でそう告げる。そう、これが
(これから、数十億回のオメガバスティオンを実行する...)
だが、
(無理だ...確実に自分の集中力に殺される...)
それでも、
(やるしかない!殺し切ってやる!!!)
テラスが施術を始める時だった。
「まっ...て...」
待ったをかけたのはエマであった。
「もう時間はないんだぞ!」
「もしかしたら...もっと過去に戻れるかも...知れない...」
「なんだと!?」
「なに!?」
テラスとヒロはその発言に驚いたようだった。
「テラス...ちゃん...私の手に触れて...はや、く...」
「...ああ」
そうして、テラスはエマの手をぎゅっと握った。そして、エマがした事。それは、
「...そっか、テラスちゃんは、だから...」
【幻視】であった。
そうして、エマはテラスの全てを見渡す。
それは、テラスの魂まで含んでいた。
エマはテラスの全てを見通した。
「テラスちゃんは...そっか...そうだったんだね。あとは、これを...」
「何を言っている!?1人で勝手に納得してんじゃねえ!」
「ねえ、テラスちゃん...一つ、たのんで、いいかな?」
「...なんだ?」
「『銀の鍵』、を私の中で作る。だから、心臓を...ああっ!」
エマは痛みに悶えている。
「おい、死ぬなんて言わせないぞ!!エマ、しっかりしろ!」
「大丈夫...『銀の鍵』は全てを解決する、魔法のアイテム...過去に戻って、やり直せる...可能性...」
エマは目が見えていないのか、虚な瞳で言う。
だから...
「私の、しんぞうを、貫いて?」
「だから!!!何をバカな事を言ってるんだ!」
テラスは叫ぶ。それを聞いて、エマはにやりと苦しげに笑い、痩せ我慢をしながら説明する。
「【創造】で、テラスちゃんの、『銀の鍵』を作る。【創造】には、コストが必要...それをボクの最も重要な部分で...ううっ...」
【創造】、それは奇しくも過去の少女が使っていた魔法。己の重大なものの代わりに、魔法のアイテムを【創造】する。重要なモノをかければかけるほど、その質量は当然の様に重くなる。
「だから...」
「死ぬんじゃない!エマ!」
「っ!エマ!私はお前に謝らないといけないことがーーー」
「だい、じょうぶだよ、ヒロ、ちゃん。そんなの、最初から、わかってたんだから」
「ああああっ!!!」
ヒロが叫んだ。そうして、エマは最後に言う。それはテラスにとって妙にはっきりと聞こえた。
「...たくしたよ...」
そうして、エマは小さく呟いた。
「神様の、王様...」
エマの身体から、気配がなくなったのを感じ、そして、テラスは感じ取った。エマの胸から、なにか不思議な力を。
「...ごめん」
テラスはエマの胸を貫く。
そうして、見つけた。
「これが...『銀の鍵』...」
その鍵は、どこか武骨で、機能美に優れている様に思えた。
そうして、鍵を大事そうに持っていると、鍵は鈍い光を発しはじめる。
どうやら、早速、時間の様だ。
...テラスは世界に向けて言う。今度こそ、言う。何度も言いそびれたけど、今度こそ、そして、今こそ。
これは世界に対する不屈宣言。
ようやく言えた。
「私はまだ頑張れる」
鍵が加速度的に光を発しはじめる。
辺りが無機質な光に包みこまれる。
最後に聞こえた気がする。
いってらっしゃい。
テラスはーーー過去に戻る。
_________
テラスちゃんと出会ったのは、中学生の頃だった。
初めてのホームルームで、その姿を見たのをボクは覚えている。その姿はどこか神聖で、触れちゃいけないような雰囲気を醸し出していた。
だからと言う訳じゃないけど、ボクとテラスちゃんとの間になにか特別な事はなんにもなかった。
高嶺の花の様に見えたテラスちゃんに近づき辛かったと言うのもあるけれど、テラスちゃん本人も誰かと付き合う事を拒絶しているようにも見えていたから。
当時、ボクはいつもヒロちゃんに甘えていた。気を引くために、わざと失敗したこともあった。
そんなボクを気味悪がってか、ヒロちゃんとも疎遠になっていった。ボクは孤立していく。
同じ中学に入れて浮かれていたこともあったと思う。そんな時だった。ユキちゃんが現れたのは。
彼女は大勢の人達からいじめられていた。それに気づきそうな間際、ボクは彼女からのお誘い、友達のお誘いを受けたんだ。
そうして、ボクとユキちゃんはだんだん仲良くなっていった。時には喧嘩もしたりしたけど、それでも、心の底では友達なんだって思えるくらい、それぐらいの親友になった。
どこかのタイミングで、ヒロちゃんも一緒になった。きっと、いじめられるユキちゃんの世話を見る為だと思う。
そんな風に僕たちは3人一緒になっていったんだ。
ある日の事だった。ヒロちゃんが留学することになった。そして、ボクはヒロちゃんから頼まれたんだ。
『私が向こうに行ってる間にも、ユキを頼んだ』
その言葉をボクは絶対守る気でいた。だけど、現実はどうだったか。
ボクは守れなかった。ユキちゃんはイジメられた。
理由は単純、勇気が出なかったのだ。
ボクは見てしまった。
誰にもバレない陰裏で、ユキちゃんは殴られていた。
殴られながらも、ユキちゃんは不敵な笑みを浮かべていた。
『...ふふふ』
そうしていると、ユキちゃんは首を絞められ始めた。
『ぐっ...っっ...』
ボクは言えなかった。
『もう虐めないで』
その一言が、どうしても言えなかった。
...クラスの一人を除いた全員がユキちゃんをイジメるという異常事態に、ボクはもう諦めてしまったのだ。
だから、ボクは、ボクのことを縛った。自身の余りの情けなさに吐き気を催しそうになった。
でも、そんないじめはどこかのタイミングで『無くなった』。ボクは安堵した。いじめなんて最初からなかったんだって、心の底で記憶を封印しようとした時、ユキちゃんの訃報が入った。
ボクは完全に心を閉ざした。
それと同時に、学校内では妙な噂が立つ様になった。
その噂はテラスちゃんのことだった。
『アイツの近くにいると不幸がおきる』
『見たこともない虫が湧いた』
『ドブのような匂いがした』
『花が枯れてしまった』
そうして、それまでユキちゃんにあった生徒の恨みはテラスちゃんへと向いた。
元々孤立していたテラスは、ユキちゃんが受けていたイジメを、より酷くなったイジメを一心にうけた。
ライターで炙られた。
小水や汚物が入ったバケツをかけられた。
集団リンチに遭いボコボコにされた。
上履きに画鋲を敷き詰められていた。
今度も、ボクはイジメを止められなかった。
そのイジメが表向きだけでも止まったのは、ヒロちゃんが留学から帰ってきた時だった。
ヒロちゃんはリーダーシップをとり、テラスちゃんへのイジメをなんとか沈黙させようとしていた。
それでも、膨れ上がった群に、個は対抗できなかった。それが、ヒロちゃんほどの正しさを持つ人でも...
それが、ボクの知る本当の過去
間話
「因みに、私ってなんか部活とか入ってた?」
「えーと、多分なにも...」
「私も知らないな」
「あっ、そうなの...」
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今日は短編(13000文字強)も合わせての二話投稿です!作者のやる気と狂気にみさらせや!