「戻ってこれた...か」
テラスはむくりと上体を上げると、記憶の整理をする。
銀の鍵。どうやら、最後に、エマは私にはよくわからない事を繰り返し、それを生成したらしい。
発動に必要な、キーとなる言葉は『私はまだ頑張れる』。
「それにしても、魔女姿から戻っているな...」
テラスは左目の下を触る。そこには、前回には魔女姿の時にはひび割れが生じていたが、現在では無くなっている。
同様に、龍の翼も無くなっていた。
「まあ、やろうと思えばいつでも【魔女化】できるし、ここはありがたいね。それに、いつでもあんな格好じゃ皆を驚かせてしまう。現状把握終わり。じゃ、仕事を始めようか」
テラスは前回、必死になって屋敷の捜索や情報を集めていた。それを活かせる日が来たのだ。
今度こそトゥルーエンドを目指す。そう、テラスは固く決心し、行動する。その第一歩目は...
「メ・ル・ルちゃん?あっそびーましょー♡」
テラスは2段ベッドの上段から顔だけぴょこりとだして言う。
「...ひぁ!...ど、どうして私の名前を知っているんですか?」
「黒幕だろ?大魔女降臨させっから手伝え。手伝わなかった、こうだ」
テラスは親指で首をクイっと切った。
「ど、どうして貴女は私の事や、大魔女様のことを知っているのかだずねているんです!」
ここは譲れないのか、メルルは勇気を出して発言する。
「タイムリープした。そんだけ。似た様な能力はいくらでも思いつくし、前例はきっとあるだろ?受け止めろ」
テラスはそう言うと、メルルに伝える。
そうして、脅しかける。
「なぁ、メルルさんよぉ、お前大魔女に会いたいんだろぉ?なら協力するってのも吝かではないんじゃないか?」
「...は、はい!大魔女様に会えるなら...わ、わたしはなんでもします!」
「うんうん。いい調子だ」
テラスはにっこりと笑顔を浮かべる。そうして、始まった。
2週目の行動が。
_________
ゴクチョーからの通達があった後、テラスたちはラウンジに向かう。
その時、テラスはヒロとエマのいざこざを前にした。
『君が変わったとして、そのことが、私になんの意味が?』
『私が君を嫌いなことは変わらない。この先永遠に』
そう、ヒロが言おうとした時だった。
「人間とは愚かなものです...特にお前」
テラスはヒロの肩をぽんぽんと触る。
「君は...テラスっ!」
「テラスちゃん!?」
その存在を網膜に映したヒロとエマがそれぞれ驚く。まだ知人がいるとは思わなかったからだ。
「私の顔に免じて許してやりたまえよ。ヒロくん」
「くっ、テラス...君には感謝している。が、それとこれとは話が別だ。それに、君はエマに恨みを持っているんじゃないか?」
「イジメの話?ああ、助けてくれなかったとかそう言う話なら、私はどうでもいいつもりだよ」
「なに!?」
「私は、私がイジメられていたとしても他者を恨んでいくほど、他者をそこまで信用している訳がないんだ」
あっけらかんとテラスは他人事の様に言う。実際、テラスからしてみれば中学時代など他人事の様なものだ。記憶を失っているのだから。だが、かと言って全てが他人的な訳ではない。ただ単純に、今のテラスが想像してもそう思うのだ。
もし記憶を失っても、その人の根本が変わるわけではない。テラスの根本は記憶を失う以前から、殆ど何一つ、変わっていない。
「とりあえず、ラウンジにいくぞ。くだらねえことしてねえで働け」
テラスはそう言うと踵を返し、その場を後にした。
_________
ラウンジでは自己紹介がなされていた。
前回と同じように、最後にテラスの番が回ってくる。
「私は閃テラス。帰宅部の永久欠番。運命を調律する孤高の大エース」
そう、名乗りをあげた。
その瞬間、周りのほぼ全員が可哀想な子を見る目でテラスをみた。
そして、エマは...
(あれ...テラスちゃんってこんな子だったっけ...イメージと違う...ボクと同じ様にイジメられて、頭がおかしくなっちゃったのかな...いや、当然かも...あんなことがあったんだから...)
と、思ったんだとさ。
_________
「...これより、魔女裁判を開廷します。いやぁ、私としても不服なのですがね、主からの命令なもので。全く、鳥使いの荒い...」
そう言うと、自己紹介を終わらせた皆たちの前でゴクチョーが宣言する。
それは、少女たちからすればよくわからない固有名詞が入っており、皆同様に、魔女裁判という言葉に首を傾げていた。
だが、そこでテラスは、
「はいはーい。とりあえずみなさん、ゴクチョーさんについて行ってくださーい」
そう言って、文句を言う皆を仕切り始めたのだった。
_________
「裁判場では自分の囚人番号に付合する証言台につけ。囚人番号はポケットに入っているスマホから確認できる」
敢えて、テラスは手慣れた風にいうとテラス本人も証言台につく。
「んで、何について話すの?私帰りたいだけなんだけど」
ココが開口一番に言う。
それに対してテラスは発言する。
「これより、魔女裁判を開廷する。メルル、持ってきたか?」
「は、はい!」
メルルは儀礼剣を裁判場の中央部に設置した。それを確認したテラスは、告げる。
「さて、これから始めるのは儀式『サバト』だ。では、よろしく頼むよゴクチョー。いつものお願い」
「......なぜアナタがいつもの様に、魔女裁判開廷を求めるのかは知りませんが、私は定時で帰りたいだけですからね。それでは、魔女裁判、開廷です」
そうして、始まった。過去を、トラウマを、願いを、禁忌を求める裁判が。
_________
「そもそも、魔女なんているの?」
発言したのはエマだった。
「まあまず、私から行こうか、ほい」
テラスは完璧な調整を持ってして変身する。みなはその姿に驚いている様だった。
「...でも、1人だけでは、全員が魔女となる...なんて言えないわよねえ」
マーゴが口を挟む。
それに対し、テラスは...
「メルル、覚悟はいいか?私はできてる」
そういい、メルルを指差した。
メルルは疑問に思う。なぜ真たる魔女である自分に標的が向くのかと。
「ノアが見つけてくれた資料...それに書かれていたこと」
大魔女は被検体としてメルルを連れてきた。
「そんな、そんなの嘘です...」
「いーや、事実だね。だって、実際に大魔女に聞いたけど、メルルのことどーでもいいって言ってたよ」
テラスは嘘をついた。偽証とも言えぬただの嘘である。だが、割と効果はある。
「そんなの嘘です!!」
そうして、メルルの逆鱗を作る事に成功した。そこまでストレス要因を作れたのなら...
「なら、あとは身を委ねるだけ。15歳の小娘でも出来たんだ。数百歳のお前が出来ないはずがない。怒れ!怒るんだ!悟飯!」
そう言い、テラスはメルルに魔女化を促す。
メルルもテラスを見て思う。意外と、魔女化とは制御できるのではないかと。
実際、それは勘違いなのだが、テラスのとんでもなく平然たる面持ちをみたメルルは、出来ない事はないのだろうと感じ...
「...うう、これでよろしいですか?」
額に第三の目をもつ魔女が誕生した。
元々、このサバトを完成させたいという思いもあったのだろう。その願いも後押しし、メルルは魔女と化した。
人間の願いや思い込みの力は時に、とてつもない力を生み出す。
「おーけ。それじゃあ次」
テラスが指を指したのはエマであった。
「ぼ、ボク?」
「メルル、写真プリーズ」
テラスがそう言うと、メルルは写真を提示する。
それを見たエマは...
「あ、ああ...そっか...そうだったんだ...」
魔女と化した。
「...みんなし」
「おらぁ!」
テラスは間一髪のところでエマを殴り、そして気絶させる。
「メルえもん。これ、なんとかできない?」
「そ、そうですね...」
メルルは感じていた。今の自身の魔法は過去最大級であると。そうして、予感通り...
メルルがその【治癒】の魔法を使えば...
「あれ?僕は...何を...って、ええ!何この姿!」
エマを覚醒させる事に成功した。
そうやって、テラスはメルルとタッグを組み、様々な人物を魔女化させていく。
「ア・リ・サちゃん♡」
「な、なんだよテメェ...」
テラスは飄々とした外見とは裏腹に、
心を鬼にして、アリサを魔女化させる。
「両親がどれだけ悲しんだと思ってるんだ!反省しろ!」
「テメェには関係ねえだろ!」
「知らんがな。でも、そっかぁ...アリサちゃんはそう言う子だもんね...」
「あ!?なんだよ!」
「私は『許す』よ」
「っ!」
「君は優しい優しい子...君がやったことは許されること...大丈夫、人殺し以外は許されるってばっちゃまも言ってた...」
「ああ!それ以上、私に優しくするなぁぁ!!!」
「それでも、言おうか。私は『許す』」
テラスは本心からそう言った。案外、人は嘘という機微に鋭いモノでもある。だから、敢えて本心からそう言った。
そうして、効く。
「あああああ!!!」
「はぁ...はぁ...」
そこには、炎を纏う魔女が誕生した。
「どんどんいくよー!」
テラスは考える。
(最低でも、魔女の人数が過半数を越えなければ積極的な魔女化を促すことは出来ないか...)
そう思考しながらも、
「次、ミリア!」
「は、はい!って、ええっ!」
テラスが指名したのはミリアであった。
「君さぁ、過去にあったこと...話しちゃって平気?」
「そ、そんなのダメだよ、そんなことしたら、おじさん...」
「いいだろ。無理を通せば通りは引っ込むもんさぁ...」
「いやぁぁ!!!」
テラスは話す。ミリアの過去がどんなものだったのかを。そして、ついでに一人称がおじさんである理由も話した。
そうして、大衆に過去を知られたミリアは...
「くっ、うう...」
魔女と化した。そして、それと同時に皆の様子が急変する。
「何が起きた!」
テラスは混乱している皆を見て、動揺する。
だが、皆がそれぞれ呟くことを聞いて、情報を察する。そうして、
「君の名はじゃねえんだよぉ!!!!」
と、ツッコミをいれた。どうやら、世界線が違うもの同士で総入れ替わりのような現象な起きた様だ。
「わ、わたしがノアくんを殺害したなんて...」
「わがはいはミリアを殺してしまったのか...?」
皆同様に、唖然としている。
テラスすらも、その光景に混乱しつつ、だが、この場に乗じようとしていた。
そうしていると、レイアから声がかかった。
「テラスくん...約束は果たしてくれたかい?」
「ああ、あの鬱陶しいタスキね。残念ながら、まだ途中だよ。でもこの約束を果たすためには皆には魔女になってもらう必要がある...私にキミの心を解体させてもらえるかい?」
「...ああ、勿論さ!テラスくんの為なら、この私の命だって払おうじゃないか!知名度だけは譲らせないがね!」
よくわからない事を言っているが、レイアは認めてくれた様だった。次は...
「アンアン...協力、してくれる?」
「テラス...」
どこか湿っぽさそうな目で、アンアンはテラスを見つめる。その視線の意図はテラスにはわからなかったが...
「...テラス、わがはいも手伝ってやろう」
その一言で、テラスは
「...ありがとう、レイア、アンアン」
2人の心を抉ることを再び決意した。
そうして、禁忌と罪悪感を刺激する事で、レイアとアンアンを魔女化させる事に成功したのだった。
これで、魔女と化したのはテラス、メルル、エマ、アリサ、ミリア、レイア、アンアンである。
(これで、過半数だ!だが、勝負はこれからか...)
テラスはシェリー、マーゴとヒロを見つめる。
魔女化させるのが難しいだろう人物に目を向けた。
だが、ここで思わぬ援軍がやってくる。
「...月代ユキ...私は必ず、貴女にたどり着いてみせる」
ヒロだ。ヒロが己の憎悪と目的意識を爆発させる。
そうして、成った。
「テラス...前回はすまなかった。今回は役にやってみせる」
ヒロが『サバト』に参加する。
ヒロが加わった事で、
「ぼ、ボクだって!」
エマが参加した。
そうして、裁判最強コンビがついに姿を現したのだった。
テラスは思う...頼もしい援軍であると。だが...
「ふふっ♡」
「...」
不敵な笑みを浮かべたマーゴを見かえす。
テラスは一呼吸入れてから、宣言する。
「それじゃあ、始めようか」
第二ラウンドだ。
魔女図鑑:
【名前】閃テラス
【情報】銀の鍵....タイムリープを可能とする魔法のアイテム。エマがテラスの魂の記憶を読み取り作成した。【死に戻り】とは明確に違う特性を有しており、それはーーー
【祝】いつのまにか1000UA超えてました!とても嬉しいです!!
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