【龍】編完結!《??????》編に突入します!
「これは確かに、私たち全員が魔女である可能性が出てきたわね...」
前回の記憶を思い出したマーゴがそう呟く。実際そうだろう。ココも今は魔女と化していないだけで、前回では魔女と化しているのだから。
だが、その余裕そうなマーゴの様子に、テラスは冷や汗を流す。
(ぶっちゃけ、ココ、ハンナ、ノア、ナノカはすぐに魔女化させれる...最悪、儀式にどんな悪影響があるかわからないが、この4人は反発を許容してでも物理でぶん殴って『サバト』を完遂させられる...だが、マーゴ、シェリーは違う...)
コイツらは、明確に暴力では屈しない。テラスにそう思わせるほど、2人は暴力に『慣れている』ようにテラスは感じていた。
だから、ここから舌戦だ。つまり...
「エマさん、ヒロさん、やっておしまいなさい!」
「テラスちゃんも参加して!」
「テラス...今が危機だということは君だってわかっているはずだ。冗談を言っている場合ではない」
「いや、わかってますよ...さーせんせー」
テラスは適当に謝ると、会話は続行される。
「...マーゴちゃん、前回ボクを庇ってくれた時、言ってたよね。『焼きが回ったって』...それってどういうこと?」
エマが議論を回す。
「...あれは、まあ、言ってもいいかしら。本当なら私1人で逃げるつもりだったわ。貴女達を囮にしてね」
「だけど、マーゴちゃんはボクを助けてくれた...それって、なんでかな?」
「それは......私にもわからないわ。きっときまぐれね」
そこに、違和感を覚えたのはエマ、ヒロだった。
「「それは違うよ!」」
2人は揃って言う。
「マーゴ、君はエマのことをきまぐれで助けた...と、言ったが、きまぐれで人を助けれるほど、命は甘くないことを君は誰よりも知っているはずだ」
「ふーん...知った風な口を聞くじゃないの」
「その証拠はーーーこれだ!!」
「ーーーマーゴは言っていたな。『人は、人の為に命なんてかけられないわ』と」
「...あのシェリーちゃんが発端で起きた事件の時ね」
マーゴは明晰な頭脳から、その証拠がどこから出てきたのかを瞬時に理解する。
「ああ。だが、実際にお前はエマを庇った。そこには友愛か博愛があったからだと私は思う...違うか?」
そうヒロが言った時だった。マーゴの仮面にピシリと亀裂が入った音がした。
「...そんなの...でたらめよ!愛だなんて呼べない!」
テラス、ヒロ、エマは『愛』と言う言葉に注目する。
「では、なぜエマを庇ったんだ?」
「そうだよ。マーゴちゃん。僕はあの時庇れてなかったら、間違いなく死んでいた...なのに、どうして僕を庇ったりしたの?」
マーゴは動揺し、そして焦る。そして、ふふふと笑いながら言う。
「...きっと、テラスちゃんに影響されたのが悪かったのでしょうね」
「...私?」
唐突に出てきた言葉に、テラスは首を傾げる。
「ええ、貴女の行動を私はずっと見てきたわ。シェリーちゃんを救い、シェリーちゃんと共犯してから、エマちゃんを助けるまで。その間に、私は貴女のことを学んだわ」
「...」
「貴女は私の人生の中で、最も相反する存在だった...きっと、『善』に傾いている存在...私はそう感じたわ」
「何が言いたい?」
マーゴは思い出す。親に痛めつけられ、孤立し、それに納得するための自衛として、沢山の『愛』を積み重ねてきた。だが、それが本当は愛じゃないということぐらい、マーゴも薄々気づいている。なぜなら聡いから。俯瞰して見れてしまうが故にわかるのだ。だからこそ、テラスのことを見てしまう。本当の愛の正体、その居心地の良さに惹かれてしまうのだ。
だが、だからこそ...
「だからね...貴女が嫌いなのよ。未知を恐怖するのが人間という生き物だけれど、私も例外じゃない」
「だから、何が言いたい?しょっぴくぞ」
「貴女のことを理解したら、私は魔女になってあげる」
「......」
「だから、言ってみなさい。貴女がどうしてこうも皆のことを考え、助けようとするのか」
マーゴは、考えていた。本心を頑なに言わず、いつも言葉に逃げるテラスが言えるはずがないと。だが、
「私がみんなの事が好きだからだ。人のことを、みんなの事を愛しているからだ。死んでほしくないと、心から思っているからだ」
「っ!」
だが、マーゴは見誤った。テラスが、そのプライドをもドブに捨てれる女であると。
「こんなこと言わせないでよ。恥ずかしい」
テラスは吐きそうな顔でそういうと、おろろと嗚咽をしていた。
「そう...それが、貴女の答えだと言うのね...」
マーゴはふと笑い、観念したように———
成った。
「これでいいでしょう?じゃあ、さっさとこの『サバト』を終わらせるわよ」
そうして、魔女組にマーゴが入る。
武力のテラスに続き、知将のヒロ、マーゴ、エマが仲間になった。
「さて、次はわたしの様ですね。先に言っておきますが、私は手強い...というより、不可能だと思いますよ?」
全員の視線がシェリーに向けられる。
「私は、心が壊れているんです。それは、以前話しましたっけね。痛みは痛いと思うものの、それ以上に何も思わない...そんな人外の化け物。それがわたし...」
「友情がなかったとは言いませんよ?ええ。ですが、結局、その程度で落ち着く人間なんです。いえ、こちらの方がおかしいといえるかもしれません。だって、友情程度で命を投げ出せてしまうのだから。それに、例え火炙りの刑に処されても魔女と化さないのがわたしです。こんなの、おかしいですよね」
「それは違うよ!」
エマはその言葉に反論する。
「シェリーちゃんはハンナちゃんを助ける為に犯行に行ったんだよね?じゃあ、そこには心があったって言えると思うよ」
「っ!」
シェリーは初めて動揺する。
「そうですね...ええ...そうでした。私は、嫌だったんですよ...ハンナさんが変わっていくのもそれを止められない自分も...」
ああ、なるほど。
「これが痛み...ですか。嫌なものですね...」
ですが...
『痛み』それを認識した時、シェリーは成った。
「...これでいいですよね?こんなこと、パッパと終わらせてしまいましょう」
残りは、ココ、ナノカ、ハンナ、ノアである。
「次は......君だ」
テラスがどこかゆっくりと指を指した先にいたのはナノカだった。
「っ...私...」
「勿論、協力してくれるよね?」
「ええ、だけど、一つ教えて頂戴...大魔女には、なれはてをも治す力があるの?」
「私は前回、大魔女に取り憑かれたエマと戦った。その時、大魔女はエマに膨大な量の魔女因子を体に結びつた。なら、大魔女には魔女因子を操作できる力があると考えて相違はないはず」
「うん、テラスちゃんの言ってることは正しいよ。ボクは前回、そうやってテラスちゃんと戦った...らしい」
エマはどこか朧げに言う。どうやら、戦っていた時の記憶はない様だ。
「...そう。なら、いいわ。乗ってあげる。その賭けに。最後に、閃テラス。貴女は大魔女を討ち滅ぼすのではなく、説得できるの?」
「わからない...けど」
テラスは続ける。ログハウスの軒前での会話を思い出しながら、ナノカの禁忌を当てる。
「もしもの時は...」
「私が『身代わり』にでもなんでもなって、キミ達を助けるよ」
「っ!わかった。私も成るわ」
そうして、順調にナノカも魔女と化した。
だが、ココは、ここにきて抵抗する。
「魔女だとか魔法だとか...もういいって!」
「まじでお前らキモいから、こっち見るんじゃなーい!」
賢い者は理解できた。これは逃避行動であると。だからこそ、厄介だ。このサバトはとても細い糸を歩むように進んできた。ここで逃避されると、太刀打ちが...
そう考えている時、ソイツは現れた。
「なら、僕の魔法で現実を見させてあげよう」
ソイツ...それは、レイアであった。突然の登場に、テラスは驚く。
(レイアの魔法は確か【視線誘導】。しかし、それがこの場面でどう光る...魔女と化したら魔法は強化される...まさか!)
「さあ、ココくん...」
「こっちをみるんだ...」
そしてレイアは続ける。
「顔を上げ、前を向いて、そして未来を目指す...」
「それが、正しい人生の向き合い方だ」
レイアの魔法、【視線誘導】は相手の心にすら干渉するのかと、テラスは驚愕した。
「あてぃしだって...わかっているよ...」
「でも、どうすりゃあいいのさぁ!教えてよ!」
なんとレイアの活躍により、ココは聞く耳を持ってくれた。すなわち、その場の窮地を乗り越えた。
そして、またもや活躍するのは幻視の魔法。
ナノカが、ココの過去を詳しく見たのだ。
そうして、暴かれる、ココの過去。
「あてぃしはさ...もう嫌なんだよ...」
「お前らで勝手に大魔女と戦っていてよ!」
ココは弱音を吐く。だが、それを見過ごさない者がいる。
「ココちゃん...それもいい選択だと思うわ♡」
「...え?」
「どんなことがあっても、最後にはテラスちゃんが戦ってくれるんだもの...♡」
「...」
押し黙ったココにマーゴは続ける。
「だからね...」
「ココちゃんは、そこらの物陰にでも『隠れて』いたらいいのよ」
「...嫌だ...いやだぁぁ!!!」
そうして、ココは魔女と化した。
テラスは考える。残りはハンナとノアだけだ。この『サバト』は席が一つ空いている。ならば、後は魔女になりやすそうな方を選べばいい。それが合理的だ。よって、友達が少なそうなノアより、友達が多く情報が多いだろうハンナの方を責めることを決意する。
「ハンナおぜうさま〜」
「ひっ、やっぱり、次はわたしですのね...」
「ハンナさん。協力してくれますか?もしもしたくないなら大丈夫です!無理やりさせますから!」
「そんな乱暴なことしないでくださいまし!嫌ですが、わたしだって貴女のようにスムーズに魔女になってやりますわ!」
そう言いながら、ハンナは身体中に力を入れる...が、
「...出来ませんわね」
当然、出来るわけもなかった。
「シェリーちゃん!なにかハンナちゃんについて知っている事とかある?」
エマが、シェリーとハンナの仲を知ってか質問をする。それに、シェリーは、
「うーん、特にありませんね!しかし、ハンナさんはとても庶民的な方ですよ!」
「ぎゃあー!庶民的だなんて言わないでくださいまし!」
魔女の頭脳労働担当組が思考を回す。庶民、優雅な仕草、特技の裁縫、人外になりたくないと言うハンナの考え方...それらを一点にして考える。
「っ、まさか!」
ヒロが何かに気づいた察したようだった。
「ハンナ、君は孤児のような、そんな家出身なのではないか?」
ハンナはどきりとした。図星か。
「君がそう言う口調をしているのはなにか、アイドルか、それとも漫画の主役に憧れてのことだろう」
「そして、自身をそれに当てはめる為にそんな口調をしている。違うかい?」
「ミラーリング効果というものに近いのかしら...」
マーゴが補足を入れる。ハンナは悔しそうに言う。
「...大雑把ではありますが当たっておりますわ。ですが、それとこれとがなんの意味が...」
「そして、キミは貧乏であった為に小さいながらも家事に勤しんだ...だから今のご時世であれだけ裁縫が上手...なのではないか?」
「.....当たりですわ」
「ひとつ聞きたい事がある」
「...なんですの?」
「君の両親についてだ」
「言いたくありませんわ」
ハンナは、断固たる意志で拒絶した。つまり、ここにハンナの禁忌が隠されているのだろう。
「ハンナちゃん、お願い、僕たちに協力して!」
「協力したいのは山々ですわ...ですが、ですが...」
「お願い!」
「...」
親友であるエマからの声も届かないほど、ハンナの家庭事情は険しいようだった。
だが、そこから、これまでの点と点を線でむすめば...!マーゴは気づく。
「あら、ハンナちゃん...もしかして、貴女の両親は既に貴女の元から離れてしまったのではないの?」
「っ!!!」
ヒット...マーゴはそう思った。
「そうして、貴女は1人になり、ずーっと、そのまま、1人で頑張ってきたんでしょうね」
「やめてっ!」
「その間にも、泥のような現実を前にして、ついとった空想、それが貴女の口調の由来」
「やめてっっっ!!!」
「やめないわ♡」
マーゴは冷静にハンナを追い詰めていき...
そうして、ハンナのストレスは最高潮に達した。
「ハンナちゃん、お願い!」
「いや...ですわ」
今、ハンナは理性で魔女化を防いでいる状態だ。即ち、成ろうと思えば成れるのである。なのにも関わらずエマの願いを聞き入れなかった。
そこには魔女になりたくない理由があるのだろうが...
「ハンナさん、お願いします」
「シェリーさん?」
「わたしはこれ以上、貴女が苦しむ目に遭ってほしくない」
「...」
「だから、一緒に終わらせましょう!この『サバト』を乗り越えて、大魔女を説得して!」
シェリーがそう言うと、ハンナの顔の右半分がみるみるうちに黒く染まっていく。
「わかりましたわ...なら、立ち向かってやろうじゃありませんの!」
「それでこそ、ハンナさんです!」
これで揃った。
テラス、メルル、エマ、アリサ、ミリア、レイア、アンアン、ヒロ、マーゴ、シェリー、ナノカ、ココ、ハンナ。ここに、13人の魔女が集まった。
【名前】閃テラス
【情報】前回の話で『人の事を信用していない』と言っていたのにも関わらず、今回は愛の告白をしたことについての考察。
まずそもそも、彼女は非常に臆病な性格である。強靭なメンタルをしている彼女であるが、ぶっちゃけ、好きな人から嫌われるのはテラスだって嫌に思うのだ。これ以外の無数の理由もあって、彼女は交友関係を極力持たないようにしている。
ハリネズミをご存知だろうか。彼女を表すならそれになる。自分からは触りに来るくせに、こっちから触ろうとしたら丸まって拒絶する。彼女はそんな人間なのだ。