閃光少女ノ魔女裁判   作:楓舞星

14 / 17
14話:喝采はいらない、賛美も不要

 

 13人の魔女が揃った時、その場には異様な雰囲気が漂っていた。

 

 まるで、体が本能的に震えてしまうような、そんな気配に苛まれる。

 

 だが、テラスは精神のみでそれをカバーすると、儀礼剣に目を向ける。

 

 そこからは、血肉が溢れ出てきた。ドス黒い赤い血は、徐々に蝶となり飛び去っていく。

 

 そうして降臨したのは、白髪の少女だった。

 

「こんにちは、皆の衆。私がこの度の真の黒幕、大魔女と呼ばれる存在です」

 

 テラスは周囲を見渡す。

 

 全員、震えているように見えた。当然だろう。この大魔女がその気になりさえすれば、只人は跡形となく粉々に粉砕される。

 

 テラスもつい舌打ちをしてしまう事が起きている。それは...

 

 何故か魔女化が解けている点だ。大魔女を呼び出すための素材としてでも使われたのだろうか?    

 

 だがーーー体からは再び【魔女】化出来る気配を感じる。テラスはその一連を不可解と思いながらも、現れた大魔女の動きを見る。そうして、やはりと気づく。

 

 (こいつ...強い...おそらくエマよりも...)

 

 ...よくよく考えれば当然だろう。エマは急造の魔女で、こちらは本家大元の大魔女なのだ。戦った際にエマにあった甘い点も、こちらにはないと考えるべきか...

 

 テラスがそう思案している間にも、大魔女と関わりのある少女、エマ、ヒロが大魔女とは話をする。

 

「どうして、どうして君なんだ...ユキちゃん!」

「ユキ...君には聞きたいことがある。話してくれないだろうか?」

 

 そうやって、一通りの会話が終わった時だった。テラスが会話に割って入る。

 

「やあ大魔女。いや、月代ユキというべきかな?とりあえず、こちらの要求を言おうか。私たちの、世界中の魔女因子を回収しろ」

 

「ふふふ、ご冗談が得意なのは相変わらずなんですね。テラス...」

 

「今のはファントムトークでもなんでもねえよ。ただの『脅し』だ。今の私から見えるお前はただの全人類を虐殺するクズにしかみえない。命乞いをするなら今のうちだぞ」

 

「『脅し』...ですか。貴女にその力があるとでも?」

 

「やってみなくちゃわかんねえよ?」

 

「わかりきっています。貴女は私に、無惨に殺されます」

 

「なんか...そこまで自信満々に言われるとイラッとしてくるな」

 

「ふふふ、本当に、貴女は記憶を失っても、貴女でい続けるんですね...」

 

 大魔女はどこか、懐かしそうな物を見る目でテラスを見つめる。

 

「...薄々気づいていたことだけど、私の記憶がないのってお前の仕業?」

 

「さあどうでしょう。そうとも言えるし、そうでないとも言えます。なにせ、共犯者がいたものですから」

 

 どこかはぐらかす様子をみせるユキに、テラスは忍耐袋の尾を切らす。

 

「あっそう。じゃあひとつ選びな。私に殺されるか、殺される前に魔女因子を回収して殺されるか」

 

「どちらも『嫌』ですわ。ですが、貴女達はもうすぐハッピーエンドに辿り着く可能性がございます」

 

「ハッピーエンド...?」

 

「私と一対一で勝負をしましょう。そうして、勝った方がなんでも一つ、言うことを聞くのです」

 

「...ほーう、それは一体どう言う風の吹き回しだ?」

 

「簡単です。『友達』同士ならこれくらいの喧嘩、ひとつやふたつするでしょう?」

 

「ト・モ・ダ・チ?それは一体どこの天体の名前だい?」

 

「テラス。貴女も気づいているでしょう?もう一度、魔女化出来ることに」

 

「まあね。実のところ、感覚としては理解できていたよ。フォームチェンジ、【魔女】」

 

 そう言うと、テラス再び【魔女】と化す。背には龍の翼を、左腕は剣のような形状となり左目には大きな亀裂が走る。

 

 都度3度目の【魔女】化である。

 

「本来なら私の儀式に費やした為に魔女にはもう成らないはずなのですが...貴女の魔女因子は私が特別にいじってあるので、それが原因のバグが起こったようです」

 

「そうか、お前はたけのこの里派なんだな。すまんが、私はきのこの山派なんだ。つまり、これは壮絶なきのこたけのこ戦争である!ということで、おら!!」

 

 テラスは天井付近に浮かび上がっていた大魔女に、拳を振り上げる。

 

「閃拳」

 

 魔女と化し、人外の膂力をもってして放たれた閃拳は拳圧だけで裁判場の天井に大きな風穴をあけた。

 

しかし、大魔女本人に入れたはずの拳は...

 

「バリアです。単純でしょう?」

 

 バリアによって防がれていた。

 

_______

 

 場は空中戦にもつれ込んでいた。殴る蹴るしかできないテラスは、大魔女と付かず離れずの距離を保ち続けながら、戦闘を行っている。

 

 それに対して、距離を離したいのは大魔女であるが、それを許さないのがテラスだ。

 

「十閃楽団!」

 

 テラスは己の技で大魔女を攻撃する...が、

 

「硬えんだよ、おめえのバリアぁぁ!」

 

 テラスはそのバリアの硬さに驚愕しているようだった。

 

 しかし、

 

「これならどうだ?

 

 龍・閃・崩・拳!」

 

 テラスが全力の拳をユキのバリアに向ける。それは、その衝撃波だけで拳と直線上にあった雲をまるまる吹き飛ばす威力だった。バリアはパリーンと割れ、大魔女の長い髪がなびく。

 

「おっと、バリアが壊れてしまいましたか...」

 

 そう言いながら、大魔女は指をパチンと鳴らすと、またもやバリアが出てきた。

 

「そんなすぐに生成出来んのかよぉ...」

 

テラスは奥歯を噛み締める。

 

「ああ、あと、貴女はどうやら【死に戻り】以外の方法を用いてこの世界に帰ってきたようですね」

 

「ああ、銀の鍵っていうヘンテコ謎アイテムを使ってだな」

 

「銀の鍵...私の記憶にはない魔法のアイテムですね。その鍵の効果で、前回は今回へ、今では完全に統合された様です。なら...前回、私の魔女因子を預けたエマと戦ったりしたのではないでしょうか?」

 

「そうだが?というかつまり、今回が救えれば前回も救われるってことね。了解!トランザム」

 

「...それを乗り越えるなんて、さすが貴女です。それでは、これも見た事があるのではないですか?」

 

 そう言うと、大魔女は1から2へと、2から4へと、4から8へと指数関数的存在の膨張を皆に見せつける。

 

 そうして、10000体の大魔女に、テラスは囲まれた。

 

 _______

 

 上空を覗きこむナノカは証言台を叩く。

 

「くっ!やっぱり無茶だったの...?大魔女に敵うなんて...あんな、反則...」

 

 ナノカは脚の力が抜ける思いだった。

 それは他の者達も同様だった。

 

 ーーーエマとヒロを除いて。

 

「桜羽エマ、二階堂ヒロ...どうして貴女達は諦めないでいられるの?」

 

 その言葉に、悩むことになったのは2人ともだった。

 

 悩んだ末にエマは言う。

 

「わからない...けど、多分、それでも、テラスちゃんが諦めない...からだと、ボクは思う」

 

「諦めない...?この状況で...?」

 

「うん」

 

「私も...同じ気持ちだ。きっとテラスは、『なんとか』してくれる...そんな思いを抱かせてくれるんだ。こんな感情には頼りたくないものだが、テラスだったらと...心の底から思ってしまう...もし我々が危なくなったら、彼女はまた叫ぶだろう」

 

「うん、言ってくれると思う!」

 

ーーー『ヒーロー見参』と。

 

  _______

 

 

 テラスはありとあらゆる魔法を受けた。これは前回と同じであったが、前回はまだ、新米魔女を相手取る気分だった。が、今回は違う。

 

 老練な魔法を巧みに操る大魔女だ。

 

 だが、テラスは奮闘する。

 

「こいつら全員バリア持ちかよぉ!!!」

 

 テラスはそう叫びながらバリアを一個一個丁寧破壊していく。そうして、

 

「龍閃崩拳!」

 

「神速一閃!」

 

 テラスはバリアを破壊した後、追撃である神速の一刀で大魔女の胴体を袈裟斬りにする。

 

「ぐっ!ふふふっ...やられてしまいましたわ」

 

 大魔女の分身は、まるで影に呑まれるように消えていく。

 

 ようやく一体の処理が完了した。

 

 どこか『戯れ』を楽しむ様に大魔女は散っていく。

 

 残り1対9999

 _______

 

 そうしてテラスは幾度もバリアを壊し、中にいる大魔女を殺し続ける。

 

 その過程にも、様々な魔法がテラスにダメージを与えた。

 

【発火】

【洗脳】

【雷】

...etc

 と言った魔法以外にも、

 

 【鈍化】

 【記憶消去】

 【沈黙】

 ...etc

 

 などのテラスに悪い影響を及ぼす魔法も頻繁に使ってくる。

 

  テラスも相応に苦しみながらも対応する。

 

 業火を出す魔法を強引に突っ切った。

 洗脳の魔法をその強靭な精神ひとつで耐えきった。

 雷の魔法をその圧倒的回避技術で掻い潜った。

 

「体がうごか...ない!」

「私って誰だっけ!?...【記憶消去】か!」

「...ぷはぁ!せめてファントムトークぐらいさせろやボケェー!」

 

 そうやって、テラスは幾度もダメージを受けながら、反撃を繰り出していく。

 

 そうやって、しばらくが過ぎた頃...

 

「...はぁ、はぁ...」

 

息も絶え絶えなテラスを、1人の少女が空中から見下ろしていた。

 

「よく狩りきりましたね...さすがです」

 

「...当然だろ」

 

 テラスは余裕を気取りそう言うも、体の状態はそこに追いついていない。

 

 体は焼け爛れ、右腕はおかしな方向に曲がっている。

 脚は、片方が大きく潰れていた。

 

 どうやら、魔女の再生力でも間に合っていないようだ。ここまでの戦闘で、これよりも過酷なダメージを受け続けていた。それでも、動けなくなるほどの致命傷は全て回避している。

 

 ただ、肉を断つ為に骨を犠牲にしたのが今のテラスだ。

 

「さて...では終わりにしましょうか」

 

「私は先の儀式でエマの魔法も回収してあります。よって、私も魔女殺しの魔法が使えると言うことです」

 

 ユキは小さく微笑んだあと、天に指をさす。

 

 そして宣言する。

 

「人類よ。全員、往ね(しね)

 

 それに対して合わせるのはテラスである。

 

 魔女殺しの魔法...全人類が標的になったと改めて認知したテラスは宣言する。

 

「ヒーロー見参!」

 

 それは、全人類を守る最後の砦。

 

最後の砦(オメガバスティオン)!!!」

 

 

 

 

 

「...そうくると思ってましたよ。貴女なら、ね」

 

 テラスが血反吐を吐きながら質問する。

 

「私がこの反則チート技が使えると知っての行動なんだ?」

 

「いいえ、知りませんでした。ですが、貴女ならなんとかしてしまうんだろうなと思っただけです」

 

「なにそれぇー?」

 

「貴女があと、どれほどこの不可思議な技を使えるのかどうか試してもいいですが...無意味ですね...」

 

「先に言っておくけど、私の集中力が切れる前にユキ、お前を削り切る事は可能だよ」

 

「そうですよね、ふふふっ、ああ、なんて美しい方なんでしょうか...私には『帰る場所』が...いえ、なんでもありませんわ。ですが、勝負はいったんお預けとしましょう」

 

「まあそれが正しい判断だと思うよ。決して、私が危ないから撤退したいって訳じゃないんだからね⭐︎」

 

「知ってますよ、そんなこと。貴女は私が抵抗すればするほど、大きく激しく燃え盛る...ふふふっ、昔ならそれでもよかった。いつも通りに野蛮な人間に殺される...だけど、今じゃもうダメみたいです」

 

 そう言う大魔女...いや、月代ユキはどこか、嬉しそうにも、悲哀に満ちた顔でそう言った。それをめざとく感じ取ったテラスは、質問する。

 

「なにか、あったのか?」

 

「それは、みなさんの前でいいましょうか」

 

 そうして、上空から、テラスとユキは地上へと、裁判所へ戻ってきた。

 

「さあ、一体どこから話しましょうか...」

 

 ユキは語り始めた。魔女時代のこと、そして、『中学』時代の事を。




魔女図鑑:

【名前】閃テラス

【情報】神速一閃...まさに神速の一太刀。テラスの技で、技の出が速いランキングを作ったら、おそらくトップ5には食い込んでくるだろう技。

今日は2話投稿だぁぁ!!!もてよ体ぁぁぁ!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。