閃光少女ノ魔女裁判   作:楓舞星

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4話: (ペナルティ)を受ける閃光少女

 

テラスは探索の最中、定期的に看守の事を確認している。その理由はーーー

 

 ある時、テラスは遠野ハンナが看守に担がれ、連行されているのを見かけた。

 

 その看守の後ろをエマ、シェリーが尾行するかの如くついて行っている。

 

 テラスはハンナが連行されて行っていることに違和感を覚えていた。

 

 (まだ会って数日だが、ハンナは規則を破ることには非賛成的な立ち位置をとっていたはず。お嬢様の様な振る舞いを徹しようとするせいか、規則などには翻って厳しい...そう言う風に私は思っていた。なのに、なぜ、ハンナは連行されている...?)

 

 テラスはそこに違和感を感じ取り、最終的には懲罰房にたどり着く。エマとシェリーは覗き窓を覗きながら、何か話している様だった。そして、シェリーが構えた。

 

 おい、何をしようとしているーーーテラスがそう言う前に、それは行われた。

 

 シェリーが懲罰房の扉を強引に突破したのだ。

 

 そうして、シェリーは懲罰房の中へと入っていく

 

 隠れていたテラスが駆け出した。

 

「テ、テラスちゃん!」

 

 エマがテラスを認識する。その顔はまさにやっちゃいけない事がバレた子供の様であった。その様子に、テラスは怒号を飛ばす。

 

「なにやってんだ!看守に抵抗したら殺されるって、最初に私は言ったよね!」

 

 テラスはそう言うと、エマはびくりとしながらも答えようとする。だが、テラスの言葉は止まらない。

 

「とりあえず出てけ!ここにはもう近寄るな!」

 

「テ、テラスちゃんはどうするつもりなの?」

 

「私は私のしたい事をしたいようにする...とりあえず離れろ。ほら、いったいった」

 

 テラスはそう言うと懲罰房の中に入る。

 

 そこでは、戦闘がなされていた。

 

 シェリーが鉄の棒で看守を叩きのめしていたのだ。

 

 テラスは判断する。

 

 このままではシェリーは間違いなく殺されると。テラスはまたもや駆ける。

 その予感は間違いではなく、看守によって鎌が振り下ろされた。

 

 

 

 

「ヒーロー見参」

 

 

 

 

 

 だが、その凶刃は拳にて通さない。テラスは看守の横っ面を殴り抜く。吹っ飛ばされた看守であったが、即座に立ちあがろうとしていた。

 

 看守が立ち上がるまでの、その短い間、2人は会話を交わす。

 

「テラスさん!?助けに来たんですか!」

 

 シェリーのその声に対して、テラスは冷静に言う。

 

「そんなことはどうでもいいでしょ。このままじゃあんたと私、共に殺されるだけ。とりあえずハンナを磔刑台から離してキミたちは逃げて。あと、帰ったら話があるから」

 

「そんなことはできません!私も戦力にーー」

 

「『早くしろ』!」

 

 テラスはシェリーにも怒号を浴びせると、シェリーはしゅんと鎮まりかえった。

 

そして、シェリーはそんな自らの状態に内心驚く。

 

 (あれ...どうして私は萎縮しているんでしょうか...?)

 

 だがそうなってしまっては仕方がない、シェリーはそう割り切ると磔刑台の、ハンナを縛っていた紐をぶちぶちと容易く引き裂き、ハンナを連れて懲罰房から出て行った。

 

「さて、私を許してくれる気は...ない様だね」

 

 看守は起き上がり、その鎌をテラスへ向ける。

 

 その瞳は何も映さない。だが、テラスに敵意を向けているのは、なんとなく気づいていた。

 

 それに対し、テラスは、

 

「それでも、私だって死ぬ気はない」

 

 テラスは構える。

 

 そうして、戦いが始まった。

 

 看守がテラスの首を掻き切ろうと人外の膂力を持ってして鎌を振るう。

 

 それをテラスは紙一重で回避すると、技を持ってして立ち向かう。

 

「閃拳」

 

 それはまたもや看守を後方に吹き飛ばす。だが、

 

「...手応えを感じないな...まさか、不死身か?」

 

 テラスはその手応えのなさに驚愕する。どれだけ殴りつけても死なないだろう感覚。それがテラスの拳を支配した。

 

 だが、テラスはここまで殴りつけてきて一つだけ、看守の弱点の様なモノを見つけていた。

 

「お前の『中心』...それを穿てば、きっとお前は死ぬ」

 

自分で言ってみたものの、その『中心』というのがなんなのかはテラス自身にもわからなかった。魂か魔女因子かそれとも別の何か...だが少なくとも、その何かを打ち抜けば看守を殺せるとテラスは悟った。

 

 合理的に考えて、今現状は命の危険を伴っている。自身の力だって実際のところ良くわからない。どこまで通用するかもわからない。なのに前に出てしまった。

 ならば、穿てばいい。常識的に考えて、こちらは拳で向こうは刃だ。これは正当防衛であると司法は納得してくれるだろう。

 

 

 だが...その判断は、テラス本人がしなかった。

 

 (看守というのも、元は私たちと同じようにここに連れてこられ、殺し合いをさせられ、なれはて、そうして勝手なマインドコントロールの末に生み出された存在...つまり、ただの被害者だ)

 

 テラスは内心、呟く。

 

 (もしもなれはてが魔女因子由来のものだとするならば...それをうまい具合にとり除ければ、もしかしたら救えるかもしれない...だから、まだ、道は残っている...!よって、まだ救える!)

 

 看守は再び、地面に脚をめり込ませるほどの圧倒的な力により、加速し、テラスへと襲いかかる。

 

テラスはまたもや技をかける。体勢を極限まで低くしたテラスは呟く。

 

「深淵閃風」

 

 その技を見た武に属するものは言うだろう。その技はまさに、御業であると。

 

 テラスは看守の足を掬うと、看守は自身の勢いを殺しきれずに壁に衝突する。そしてテラスは処刑用の剣が放置されているのに気づいた。

 

 テラスはそれを掴む。

 

 そうして、思った。

 

 (何故だろう...剣なんて持ったことなんて無いはず。だって現代社会で剣を持つ機会なんて、ありもしないのだから。なのに、私の手にはとてつもなく良く馴染んでくれている...意味がわからない...)

 

 だが、今この状況を打破するには行幸である。そう思ったテラスは、その違和感ごと、看守を切る。

 

 その時、テラスの体が選択した技。

 

 その技は、

 

細転一閃(さいころいっせん)

 

 一瞬で、看守をバラバラにした。その具合は、まるで、肉を2秒間ほど強いミキサーにかけたほどの、見事なバッラバラ具合だった。

 

「『中心』は外した...あくまで切ったのはコイツの外殻部分...多分、これでもこいつは生きてる」

 

 そうぼやくと、テラスはその気配に気づいていたかのように言う。

 

「見てるんでしょ?来なよ、早く」

 

 看守がうねうねと再生している中、パタパタと翼をはためかせる音が聞こえる。

 

「...全く、みなさん...鳥使いが荒いこと...」

 

 テラスがどうしてここにいるかをゴクチョーに尋ねると、その理由は簡単だった。

 

 エマ達がゴクチョーを探し出し、ここに連れてこさせたと言うことらしい。

 

「ふーん...で、私の処遇はどうする気?」

 

 テラスはその質問がしたかった。だが、相手に許している返答は既に決まっている...もしも許されざるのならば、テラスは反抗するだけだ。己の命が尽きるその時まで。

 

 そう、ギラついた瞳をテラスは見せつける。

 

 それを見て、ゴクチョーはため息をするかの如く言う。

 

「...反抗したら死、と、私は言ったはずなんですけどねぇ...いいでしょう。見逃します...ですが...本来なら処刑モノであることは忘れないでください」

 

「ありがとナス!」

 

「本当にわかってるんですか?それ...」

 

 そう言い、テラスはそこから去って行った。

 

_________

「勝ったのは......俺です!」

 

 テラスがそう言いながらラウンジに戻った。

 そこでは、騒ぎを聞きつけたのか、囚人全員がラウンジに戻っていた。

 

「テラスちゃん、大丈夫だった!?」

 

 エマが心配そうに駆け寄るが、しかし、テラスの反応は冷たかった。そして、事件の真相を知ろうと質問する。

 

「私は無事...で、誰が起こした事件なの?」

 

 その言葉にエマが返答に困っていると、シェリーが申し訳なさそうに前に出る。

 

「あの、あまり...責めないであげてください。この事は私が起こしました。私が牢屋敷の塀を殴ったんです。そうしたら、何故か私ではなくハンナさんが連行されて...」

 

 そこまで言い終えると、シェリーはテラスに「ごめんなさい」と謝った。

 

 テラスはため息をつく。そして、冷静な面持ちで言う。

 

「...私が助けなかったら、多分、お前かエマか、もしくはハンナか...誰かが死んでる事件だった。それに、お前が懲罰房を破り、鉄の棒で看守を殴りつけている所を私は見ている。戦って勝てるとでも思っていたのか?なら、これ以上バカなことはするな。死にたいなら私が殺してやる。わかったか?」

 

 そう言うテラスに駆け寄るのはレイアだった。

 

「まあまあテラスくん、それぐらいにしてくれたまえよ」

 

「レイア...わかっているのか?死人がでる事件だったんだぞ?」

 

 どこまでも真剣な目でテラスは言う。だが、それに対するのはレイアだ。

 

「ああ、それでも僕は言うよ。ここまでにしておいた方がいい...と」

 

 レイアもそう言うと、平行線、悪ければ状況が鬱蒼と化すだろう事を察したのはテラスだった。

 

「そう。わかった。私も先のことがあって興奮していたのかも。ごめん」

 

 そう、空気を読める所も彼女の長所であった。普段は空気をあえて読まないで発言したりもするが、相手が真剣な時、テラスはそれ以上の真剣さで相手を見たりする。

 

「ふふ、テラスちゃんは優しいのね♡」

 

 状況を把握したマーゴがそうテラスにちょっかいをかける。テラスはため息をつきながら答える。

 

「優しい?誰が?まさか私のこと?ふっ、冗談はその年頃に合わない色気さだけにしとけ」

 

「あらあら、嫌われちゃったわ♡」

 

「それ以上言うとキミのこと、おマーゴって呼ぶぞ」

 

「あら、それは嫌だわ♡」

 

「...その人を小馬鹿にしたような、♡がつきそうな口調をやめろと言っているんだ」

 

「ふふ、じゃあ武力行使でもしてみる?その看守をも及ばない能力で...」

 

マーゴは気づいている。テラスは自身に、いや、囚人に手を出せないことに。

 

 何故なら、『ストレス』が溜まるからだ。それが魔女因子の悪化を招く事はマーゴ自身、全員を救おうとしているテラスが気づいていないわけがないだろうと思っている。

 

 マーゴは考えた。テラスが皆を助けようと強く動いていることに。

 

 (この子は、きっと、とーっても『優しい』子...これが世の中一般の『善』というものなのでしょうね...)

 

 マーゴは自身の経験からは大きく逸脱しているその存在を、そう捉えるほどにテラスの何かに強く惹かれていた。

 

 だが、マーゴにはわからない。テラスが何故その様な行動をとったのか。取れたのか。

 

 (きっと、元から看守に勝てる見込みがあったのでしょうね)

 

「人は、人の為に命なんてかけられないわ」

 

 マーゴがぽつりと呟く。それは、ラウンジにいたほぼ全員の耳に入った。

 

 ...そう思うのも無理はない。当然だ。普通、人は人の為に生死を賭けてまで抗えない。それがそこらで会っただけの人間、それもただ数日過ごしただけのーーーなら尚更だ。

 

 腕を組んだテラスが言う。

 

「ねえマーゴ...」

 

「なーに?テラスちゃん♡」

 

「私、あなた、きらーい」

 

「ふふふっ♡」

 




魔女図鑑:

【名前】閃テラス

【情報】
『深淵閃風』:超高速かつ精密な足払い。

『細転一閃』:相手をその剣でバッラバラにする。

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