閃光少女ノ魔女裁判   作:楓舞星

6 / 10
6話:まだ頑張れる『最後◯◯(オメガバス◯◯◯◯)

 

ざわざわと周りがしている中、冷静なのはナノカ、マーゴ、テラスのみだった。

 

 ゴクチョーは語る。

 

『今夜、魔女裁判を開廷します。今いる囚人の中から必ず殺人犯を特定してください。その者は、魔女として処刑されます』

 

 続けて言う。

 

『やすやすと死なない魔女の活動を確実に沈黙させる方法での処刑です。かなり酷い事とか...しちゃうので』

 

『また、囚人全員への告知ですが、特定が出来なかった場合は、全員処刑とします』

 

『だから、投票で確実に魔女を選んでもらって魔女だけを排除しましょう』

 

『あ、あと操作中に不正がされない様にみだりに遺体に触れないでください。現場はそのまま保持しておいてくださいね』

 

『期限は魔女裁判開廷のアナウンスが入るまでです。業務中なら万が一気が向けば質問にも答えますね......多分』

 

「今夜、今日中って事ね。じゃあさっさと捜査してしまおうか」

 

 テラスは踵を返してラウンジを後にした。

 

 ...ここまでで起こった悲劇と、これから起きる惨劇に血が滲まむまで拳に力を入れながら。

 

「...畜生が」

 

 テラスは歯噛みをする。

 

 ノアは天真爛漫な少女だった。だが、決して死ぬべき人間ではなかった。

 

「さて、ノアを殺した殺人犯を見つけます...か」

 

 テラスはそう呟いた。

 

 _________

 

 裁判場はどこか、厳正な雰囲気に包まれていた。

 

 中央には何かを隆起させられそうな構造となっているのが伺える装飾がなされており、その周りには証言台が14個設置されていた。

 

 テラスは自身の囚人番号、671に付合する証言台に立った。

 

 そうして、皆が証言台に立ったとき、ゴクチョーが宣言する。

 

 

 さあ、凄惨な裁判の始まりだ。

 

 _________

 

振り返ると、エマとヒロが裁判場をかき乱していた。エマは意外にもその推理力で、ヒロはその正当性を主張することに長けており、犯人はすぐにボロを出した。

 

 テラスも少しは議論に参加したが、成果は微々たるものだったと思う。

 

 そうして犯人が決まった時、中央に現れたのは鉄の処女、アイアンメイデンであった。

 

 城ヶ崎ノアを殺した犯人、それは蓮見レイアであった。

 

 ...そのことにテラスは何か不自然なものを感じていた。

 

看守に連行されていくレイアにテラスは声をかける。各々が一様に謝罪の言葉を口にしている中、とある質問をしたテラスにレイアは注目した。

 

「なんで殺人なんてしたの?貴女は理性的な人だと思っていた。自供で理由はわかったけど、それにしても弱い...」

 

テラスは知識として知っている。大体の人間は殺人を行うと言う判断は基本、出来ない。イカれたサイコパスやソシオパスなら出来るだろうが、蓮見レイアがそういう人物とは思えなかった。

 

 それに、今はまだ、『一度も殺人が起きていない』。その状態で殺人を行うのは常人にとって、あまりにハードルが高いだろうと推察する。

 

 そうして、テラスの中に合点のいく考察が成された。それが、

 

「キミの身体はもうすでに、魔女因子に犯されているんじゃない?」

 

 そういうと、レイアの体がびくりと震えた。

 

 当たりだ。

 

 そうなれば...テラスの中で、考えが更新される。

 

 (この環境下では、魔女因子による殺人衝動や妄想が酷く出て、それが理由で誰かが殺される。そして、それを続けた最後の一人がなれはてる。それが、基本的なこの牢屋敷の仕組み...)

 

 テラスはレイアに何も言わなかった。

 

 わかってしまったのだ。

 

 この事件の真の動機は『魔女因子』だ。

 

 テラスは喚いているレイアに向けて、同情をしてしまう。が、それを寸ででやめた。

 

 (何をバカなことを...この裁判は、裁判とは名ばかりの人狼ゲーム。村から一人吊れたらそれでオールOKな腐ったルール。もしレイアに、本当に同情するつもりなら、私が吊られれでもしたら良かった...って言える...)

 

 胸糞が悪い。

 

 テラスは心底そう思い、俯いている時だった。レイアは看守に連行されながらも、言う。

 

「テラスくん...僕が言う事じゃないのは承知の上だ...が」

 

「......たくしたよ...」

 

 そして、刑が執行されるーーー

 

_________

 

 刑が執行された後、黒部ナノカが静かに口を開く。

 

「この茶番をいつまで続けるつもり?」

 

 テラスは撃ち抜かれたゴクチョーを見て一瞬唖然としたが、ナノカの冷静な表情からそれが合理的判断に基づいて行われたのだと理解した。

 

「私たちの中に、いるんでしょ?このデスゲームの黒幕が」

 

 テラスは入口付近にいる看守をチラリとみるが、看守は動作しない。テラスは疑問を浮かべる。どういうことだ?これは間違いなく、死という刑罰が与えられるほどの叛逆のはず...

 

「このバカげた殺人ゲームを仕組んでいる黒幕が私たちの中にいる。私たちが魔女になっていくのを誘導し、近くで見て、愉しんでいるやつがいる」

 

「そいつが真の牢屋敷の管理者よ。もう誰かは予測がついている。大人しく名乗り出たら」

 

 (黒幕...薄々考えていたことだったが、本当にいるのか...?いや、ナノカの魔法が正しければ黒幕の正体には気付けなくとも、その存在を確認することは可能か...)

 

 テラスは合理的に考えることを意識する。

 

(だが、ここでのカミングアウトは果たして正しいのか?それは皆を疑心暗鬼にさせるだけの諸刃の剣なのではないか?いや違う。ナノカはもう疑う余地なく黒幕の正体を暴いているのだろう)

 

 そうして、ナノカの話は淡々と続いた。

 

 だが、その話の途中でテラスはまたもや違和感を覚える。

 

 

 

「少女のふりをして混ざっていた人を信じられると思う?」

 

 ナノカはそう言いながらミリアに銃口を向ける。

 

「ちょっとまて!ナノカ!まだミリアが黒幕と決まった訳じゃないんじゃないか?」

 

「テ、テラスちゃん!?」

 

 テラスはミリアとナノカの間に割って入る。それに、ミリアは驚いた様な声をあげる。

 

 (もし、仮にミリアの体にそこらへんのおっさんが入っていたとしても、それは黒幕と言えるのか?ただの魔法の暴走、魔法の事故である可能性も考えられないか?ナノカは本当に黒幕を掴んでいるのか?)

 

 テラスは訝しんでいた。

 

「テラス...貴女もその黒幕を庇う気?なら、わたしは貴女ごと撃つ」

 

 ナノカは冷静然としてそういう。

 

 だが、テラスはその向けられた銃がどこか震えている事を見逃さなかった。

 

 場が整然とする中、裁判場が揺れ始める。

 

 新しく出てきたゴクチョーからひとこと告げられる。

 

『この裁判場は処刑が実行されたあと、地震のような地響きにおそわれる』と。

 

 結局、みんなからはミリアが黒幕候補として疑われる事になった。

 

_________

 

帰る足はみな同様に疲れ切っている。テラスとマーゴを除いて。

 

 テラスはおくびにも出さないが内心では、無意味なイラつきと虚無感と、憂鬱が広がっていた。

 

 マーゴはよくわからなかった。だが、強いやつだとテラスは思う。裁判の時にも冷静な反論をし、自身への疑いを晴らしていた。

 

 (...私の計画は失敗した。甘く見ていた。魔女因子による影響の大きさを...)

 

テラスはここで殺人事件を起こさせる気はなかった。

 

 (油断していた。今よりも極限状態にならなければ殺人事件は起きないと...)

 

 テラスの考えとしては、まず、殺人事件などは起きないというのが根本としてあった。何かあるとしたら、初めは単なる事故による死亡、または過失致死、看守によるペナルティ、それか牢屋敷の怪異だと思っていた。

 

 そんな中、テラスは一人の道を選び、そうやって得た時間を使い独自に探索をし、看守の動きにも注目しながら自らの状態も確認し、他者とコミュニケーションをとりながら、脱出や状況が解決する可能性、大魔女というモノを探す為、誰よりも迅速な捜査を行なっていた。

 

 それでも、なるべく事故や過失致死、そして怪異、看守によるペナルティで死人を出すつもりはなかった。特に最後こそ、もっとも致死率が高いだろうとテラスは思っていた。ずっと注目していたのだ。

 

 もしものことがあれば...自らを盾にするために。

 

 看守の動きに注目するのは、実際、効果があったとシェリーが証明してくれている。

 

 だが、状況は違っていた。魔女因子というモノはあまりに強力で、凶悪だった。その証明は、自らを楽観視させるものでしかなかった。もっと、最悪の状況を想定せねばならなかった。

 

 テラスは考える。これからの自身の立ち振る舞いを。どういう立ち回りをするのかを...

 

「やっぱ、私に出来るのは単純明快な方法か...」

 

テラスは苦虫を噛み潰したような顔でそう呟く。結局、テラスが選んだのは、このまま大魔女を捜査することだった。だが、捜査する対象が一つ増えた。それは全てを解決する可能性ーーー

 

 だが、もう時間は無い。ナノカは知っていた。私達には圧倒的に時間が足りないのだ。私達が立ちすくんでいる間にも、魔女因子や、存在自体はほとんど確定している黒幕が私たちを追い込んでいくだろう。

 

 迅速な解決が求められる...もしも失敗したら...

 

「全員が死ぬ...なれはて、殺される」

 

 テラスは立ちはだかる壁の高さについ吐き気を催した。だが...

 

「諦めてやるものか」

 

「私は...」

 

「まだーーー」

 

 言い切る前に檻房に着いたテラスはそのまま入り、夜を明かした。

 _________

 

 その日の朝、テラスはエマ提案の集合により、ラウンジに集められていた。

 

 そこでは、脱獄をするかどうかの討論がなされた。そこで起きたのは2グループの分裂。脱獄に賛成派と非賛成派だ。

 

 エマ、シェリー、ハンナ、メルル、ミリアは脱獄に前向きで、逆にヒロ、マーゴ、アンアン、ココ、は後ろ向きだった。

 

 テラスはというと...

 

「わたしは脱獄に非賛成かな」

 

 そこには確固たる意志がみえた。

 

「テラスちゃんまで...」

 

 エマは絶句したかのように口をぱくぱくとさせている。

 

 その様子にどこか申し訳なさを感じたテラスが説明をしようとするが、そこをヒロに奪われる。

 

「私たちは魔女因子を持っている。この状態のまま、仮に外に出れたとしてそこで待ち受けているのはきっと魔女と化しなれはてとなる未来だ。そんなこともわからないなんてバカ犬か?」

 

 そういうと、エマは肩を震えさせた。

 

「...それでも、私は脱獄をしたいと思う」

 

 半ばムキになっていたのかもしれない。それとも、魔女因子を甘く見ているのか。テラスはその様子を見て、小さくため息をつく。

 

 そうやっているうちに、エマのリーダーシップに惹かれてか、マーゴとココが脱獄賛成派に加わった。ヒロはテラスと同じく、魔女因子に目を向けて活動する様だった。

 

 (ココはともかく、マーゴは既に魔女因子の危険性に気づいているはず。つまり、なれはてと化しても外に出たい理由がある、または外に出てもいいと考えている。それか脱獄が失敗してもいいと思い行動している...?いずれにせよ、そこにあるのは未練か、はたまた破滅思考か...どちらにせよ、この状況下では碌なもんじゃ無い)

 

 それに気づいた時、テラスは説得を諦め、その場の終焉を見届けてから個人の捜査に戻った。

 




魔女図鑑:

【名前】閃テラス

【情報】基本的に合理的な性格をしている。が、物事には遊びが重要...と思っている所もある。今この状況では流石に殆ど鳴りを潜めている。

評価・感想随時募集中!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。